1. そもそもオーバーローンとは?
物件の購入価格を超えた金額を借り入れている状態をオーバーローンといいます。後述のように、物件の購入後にオーバーローンになることもあります。フルローンとの違いも理解しておきましょう。
住宅価格以上の融資を受けること
オーバーローンとは、預金額を超過した金額を金融機関から借り入れることをいい、住宅ローンにおいては、物件価格を超えて融資を受けることをいいます。
住宅の取得時には、住宅そのものの購入費用だけでなく、登記費用や事務手数料(融資手数料)、各種の税金などのさまざまな諸費用の支払いが必要で、場合によっては100万円を超えるケースもあります。物件価格に対するローンが組めても、諸費用を現金で用意することが困難な人もいるでしょう。
オーバーローンを活用すると、住宅の購入費用と諸費用を合算してローンを組むことができます。現金をまったく用意せずに、借り入れのみで住宅を購入できるようになります。
住宅購入後にオーバーローンになることも
購入した住宅や土地の価値が急速に下がっていくと、物件の価値より残債の方が大きいオーバーローンの状態になる場合があります。
返済期間が25年以上の長期ローンを組んだり、金利2%以上の商品を選んだりしているケースでは、これに該当することも多々あります。しかし、不動産購入後にオーバーローンになっても、完済時まできちんと返済し続けられるのであれば、特に問題はありません。
問題になるのは、返済が苦しくなって物件を売却しようと考えたときであり、売却金額で全ての残債を完済できない可能性があります。そうなると金融機関と相談のうえ、任意売却や競売などのさまざまな手を打たなければならなくなります
フルローンとの違い
オーバーローンと似た言葉に、フルローンがあります。物件価格の全てをローンでまかなう状態がフルローンです。
物件購入時に自己資金を用意できる人は、自己資金から頭金を支払って住宅ローンの借入金額を減らすことができ、これは返済額を減らせるなどのメリットがあります。一方で自己資金の用意が難しい人は、フルローンで融資を受けることになります。
かつては多くの金融機関で頭金を必須としていましたが、現在は大半の金融機関でフルローンを組むことが可能です。ただし、フルローンを利用するケースでは、諸費用は現金で支払う必要があります。
ローンに含められる諸費用
金融機関によってオーバーローンに含めることができる諸費用は異なりますが、次のような住宅取得に関連する費用が対象になります。
・事務手数料
・保証料
・火災保険や地震保険の保険料
・印紙代
・登記費用
・修繕積立基金
・不動産会社への仲介手数料
・水道加入負担金
これらの諸費用は物件価格の5~10%程度となり、少ない金額ではありません。また、諸費用は新築物件に比べて、仲介手数料がかかる中古物件で高くなる傾向があります。
住宅ローン契約に直接関係する事務手数料や保証料、登記費用、印紙代、物件購入時にセットで負担することになる保険料や仲介手数料、その他に修繕積立基金や水道加入負担金などは住宅取得に関する費用ですので、一般的にオーバーローンの対象になります。金融機関によっては、新しく取得した住宅への引っ越し代をローンに含めることを認めるケースもあります。
2. オーバーローンのメリット
オーバーローンは、頭金・諸費用の支払いにあてる現金を手元に準備できないケースで役立ちます。また、住宅ローン控除におけるメリットもあります。
頭金が用意できない場合に便利
近年はフルローンの利用もよくみられますが、住宅ローンを組むときには、物件価格の1~2割程度の頭金を用意するケースも多くあります。しかし、手元に資金がない人は、頭金の調達は難しく、また諸費用の用意にも苦労するかもしれません。
このようなケースで便利なのがオーバーローンです。頭金だけでなく、諸費用分のお金もローンに組み込めるため、貯蓄がほとんどない状態でも住宅を取得できます。
ほかにも、教育費や老後資金などのために現金を残しておきたい場合にも、オーバーローンを活用できる場面があります。住宅取得時のまとまった支出を減らすことで、余裕を持ったライフプランを立てることができます。
住宅ローン控除を利用可能
住宅ローンを組む際には、諸条件を満たすことで、住宅ローン控除の適用を受けられます。住宅ローン控除とは、主に年末のローン残高から算出される控除額を、課税所得から差し引くことができる制度です。
オーバーローンでは諸費用もローンに含まれており、控除額の計算対象となるローン残高は住宅の購入価格のみが基準です。しかし、諸費用に相当する部分の残高の返済が含まれることで、物件の購入価格にあたる部分の残高が減っていくペースはやや遅くなるため、フルローンや頭金ありのローンに比べて控除額が多くなるケースがあります。
3. オーバーローンのデメリット
住宅取得代金以外の費用も元金に組み込むオーバーローンでは、いくつかのデメリットがあります。リスクも知った上で利用を検討することが大事です。
毎月の負担が多い
オーバーローンは住宅価格に加えて諸費用分もローンに組み込まれるため、毎月の返済額が上がります。
毎月の負担を抑えるために返済期間を長めに設定した場合には、完済時まで支払いを続けられるかどうか、金融機関から将来性を見極められることになるでしょう。
通常の住宅ローンに比べて返済負担がより大きくなることを意識し、事前にきちんとシミュレーションしておくことが重要です。
返済額シミュレーションはこちら:返済額シミュレーション
金利が高くなる
金融機関によっては、オーバーローンの融資では諸費用分を住宅ローンとは別枠で設定することがあります。住宅ローン自体の金利が低くても、別枠の諸費用分の金利が高く設定されるケースがあるため注意しましょう。
オーバーローンを利用すると、融資率が上がることも意識する必要があります。融資率とは、借入総額に対する自己資金の比率を100%から引いたものであり、フルローンやオーバーローンでは融資率が100%になります。
融資率が基準を超えると金利が高くなるように設定している金融機関もあるため、金利をチェックすることが大事です。
売却後もローンの支払いが発生
通常の住宅ローンでは、返済中に何らかの理由で住宅を手放さなければならなくなった場合には、住宅を売却すれば売却金額で完済できる場合も多くあります。
しかしオーバーローンでは、諸費用分も含めて元金を返済しなければならないため、同様のケースで住宅を売却しても完済できない可能性があります。
住宅を手放した後にもローンの支払いが発生し、返済を続けられなくなれば、自己破産を選択せざるをえないといった状況にも陥りかねません。
自己破産後の住宅ローンについての詳細はこちら:自己破産後に住宅ローンは組める?審査に通りやすくなる方法も
審査が厳しい傾向がある
オーバーローンは、金融機関にとっては担保である物件価格以上の融資を行うことになるため、審査が厳しくなる傾向があります。住宅ローンの審査では、年収や年齢、雇用形態、業種や職種、返済比率などが特に重要になります。
給与が安定している大企業の会社員や公務員はオーバーローンでも比較的借りやすいと言えますが、年収が低い場合や個人事業主・自営業者などではオーバーローンの審査は難しい可能性が高く、自己資金を準備して購入する必要があります。
購入時より高い金額で物件を売却しないとならない
収入の減少や離婚、勤務地の変更などの事情によって、オーバーローンで購入した物件をすぐに手放したい場合には、購入時よりも高い金額で物件を売却しないと残債を解消することができません。また、返済がある程度進んでいても、オーバーローンの状態であれば、残債を超える金額で売却しないとローンが残ってしまいます。
中古物件の流動性が低く、また価値が低下しやすい地域の物件を購入する際には、このようなリスクを意識しておく必要があります。
4. 利用時の注意点
オーバーローンの融資額に含められる費用は、住宅購入で必要となる諸費用に限られます。金融機関とのトラブルに発展することのないように、利用時の注意点を確認しておきましょう。
住宅以外に利用するのは違法
オーバーローンで融資額に上乗せできる分は、あくまでも住宅取得にかかる諸費用に限られます。虚偽の年収や物件価格で申し込み、水増しして融資を受ける行為は違法となるため、注意しましょう。
また、借り入れた諸費用分の資金を住宅購入以外の用途に使用することも厳禁です。そのような行為が発覚した場合、金融機関から契約違反を指摘され、訴えられる可能性もあります。
オーバーローンに対応している金融機関のルールをチェックし、ローンに組み込める諸費用とはどのようなものを指すのかをきちんと確認することが重要です。
5. オーバーローンの利用はよく検討を
オーバーローンは住宅取得費用以外の諸費用も融資額に含められるローンです。住宅ローンを組みたくても、諸費用の準備が困難な人にとって、便利に活用できる仕組みといえます。
ただし、毎月の返済額が大きくなることや金利が高くなりやすいことなどのデメリットも大きい借り入れ方法です。リスクをきちんと理解した上で、利用するかどうかを検討しましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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