1.住宅ローンの返済比率とは
言葉の意味や計算方法など、返済比率の基礎知識を解説します。希望額での融資可否に関わる審査金利についても理解しておきましょう。
年収に占める返済額の割合
住宅ローンにおける返済比率とは、年間返済額が額面年収に占める割合です。『年間返済額÷額面年収×100』の計算式で導き出します。
返済比率はローン審査で重要視される項目の一つです。返済比率が高いほど返済負担も増加するため、家計を圧迫するのではないかと、申し込み者の返済能力を疑われることになります。
一方、返済比率を高く設定すれば、借入可能額が増額されやすくなることもポイントです。より多くの金額を年収から返済に充てられるなら、融資額も増やせるという考え方に基づいています。
借入可能額と返済負担の両方を意識しながら、バランスのとれた返済比率を設定することが重要です。
返済比率の計算方法
額面年収1,200万円の人が、月々の返済額を20万円に設定した場合、年間返済額は20万円×12カ月=240万円となります。返済比率は240万円÷1,200万円×100=20%です。
自動車ローンや教育ローンなど、住宅ローン以外の借入がある場合は、その返済額も含めて計算しなければなりません。
上記の計算で、ほかの借入における返済額が月々10万円あるなら、年間返済額は(20万円+10万円)×12カ月=360万円です。返済比率は360万円÷1,200万円×100=30%となります。
審査金利が使われるので注意
実際の審査では、返済比率に合わせて設定した借入限度額の目安から、希望額での融資可否を判断します。借入限度額の目安を計算する際、多くの金融機関で使われる数値が審査金利です。
審査金利とは、変動金利や当初固定金利などの審査時に使われる金利を指します。将来的な金利上昇リスクを考慮し、3~4%に設定されているのが一般的です。
現在は変動金利なら1%を下回る数値が適用されるため、審査金利はかなり高めの設定であることが分かります。審査金利が審査で使われる場合、希望額での融資を受けられない可能性がある点に注意が必要です。
2.返済比率の基準
希望額で融資を受けるための返済比率の目安について解説します。実際に返済できるかどうかを考慮し、より現実的な数値になるよう意識することも大切です。
30~35%が目安
返済比率を決める際は、一般的な基準とされている30~35%を目安に設定しましょう。これ以上の返済比率にすると、希望額の融資を受けられない可能性が高くなります。
固定金利型住宅ローンの代表格であるフラット35では、年収に対する返済比率の条件が明確に定められています。年収400万円未満なら返済比率は30%以下、400万円以上の場合は35%以下に設定しなければなりません。
ほかの金融機関でも、年収に応じた返済比率の上限を、非公表ながら審査基準として決めているのが一般的です。30~35%以内に収まるように設定する必要があるでしょう。
無理のない返済比率は20~25%
返済比率を高く設定すると、借入可能額の増額を期待できます。しかし、年間返済額も増えるため、返済負担が増加し家計を圧迫しかねません。
30~35%はあくまでも上限の目安です。実際に返済比率を設定する際は、無理なく返済を続けられる範囲内に収めましょう。
余裕を持って返済できる返済比率の目安は20~25%とされています。借入予定のローン返済だけでなく、現在返済中のローンを計算に組み込む必要がある点にも注意が必要です。
3.返済比率を下げる方法
高い返済比率は、ローン審査で不利に働いてしまいます。希望額での融資が厳しいなら、返済比率が下がる方法を検討しましょう。
ほかの借入を返済する
返済比率の計算で使用する年間返済額には、住宅ローン以外の借入分も含めなければなりません。ほかの借入がある場合、返済が完了した後にローンを申し込めば比率を下げられます。
自動車ローンやカードローンなどの借入があるにもかかわらず、申し込み時に金融機関へ申告しなければ、後から借入の事実が発覚した際に融資の承認を取り消されかねません。
個人の借入状況は、信用情報機関に問い合わせれば簡単に分かります。借入の事実は隠さずにきちんと申告しましょう。
頭金を増やす
自己資金に余裕がある場合は、頭金を増やすのも一つの方法です。頭金とは、物件購入価格のうち、最初に現金で一括払いする分を意味します。
頭金を増やせば、物件価格に占める融資額の割合を下げられるため、希望融資額が減り年間返済額も減らせます。価格が安い物件への変更を検討する必要もありません。
頭金を増やす際は、自己資金が減り過ぎないように注意しましょう。頭金を増やして返済比率を下げられても、蓄えが少なければ万が一の際に対応できなくなってしまいます。あくまでも余剰資金の範囲内で、頭金に充てる金額を決めることが重要です。
借入期間を延ばす
返済比率を下げられる方法としては、借入期間をより長めに設定することも挙げられます。借入期間が長いほど年間返済額は少なくなるため、返済比率を下げることが可能です。
ただし、法定耐用年数が短い中古物件などを購入する場合は、借入期間を長めに設定できない場合があります。法定耐用年数を過ぎた物件は、資産価値が著しく低下するためです。
金融機関は、ローン契約を結ぶ際、契約者が返済不能となった場合に備えて物件を担保に入れます。借入期間が長いと、期間の後半に物件を売却しても十分な売却代金を得られず、残債を完済できない可能性があるでしょう。
このようなリスクを回避するために、金融機関は物件の担保価値を維持できる範囲内で借入期間を設定する場合があります。借入期間を延ばそうと思っても、認められない可能性があることに注意が必要です。
4.無理のない返済のための注意点
マイホームを取得すると、購入時や購入後にさまざまな費用が発生します。無理なく返済を続けるためには、頭金やローン以外の支出を意識することも大切です。
住宅ローンを借りるには諸経費がかかる
住宅ローンで発生する支出は、頭金や月々の返済だけではありません。物件購入時やローン契約時にも、さまざまな諸経費がかかります。
物件購入時に発生する主な費用は、仲介手数料・登記費用・各種保険料・不動産取得税・印紙税です。ローン契約時には、事務手数用や保証料などの費用が発生します。
これらの費用を全て含めた金額の目安は、物件購入価格の5~10%です。4,000万円の家を購入する場合は、200万~400万円の諸経費を見積もっておかなければなりません。
契約時に発生する諸経費は、一般的にローンには組み込まれない点もポイントです。頭金とは別に、諸経費のための現金を用意する必要があります。
購入後のランニングコストも考慮が必要
マイホームを持つと、さまざまな維持費が発生します。無理のない返済を目指すためには、購入後のランニングコストも意識しておかなければなりません。
戸建て住宅の場合は、固定資産税・都市計画税・火災保険料・地震保険料などがかかります。マンションを購入するなら、管理費や修繕積立金も毎月支払うことになる費用です。
返済比率を計算する際にこれらの費用を考慮しなければ、実際の返済開始後に負担が増してしまいます。購入後の維持費も忘れずに返済比率を算出することが大切です。
5.返すときのことも考えて借入額を決めよう
住宅ローンの返済比率は、審査の際に重視されやすい項目です。比率を高めれば融資限度額の増額を期待できますが、高くすることで審査に悪影響を及ぼす可能性もあります。
返済比率が高いと返済負担も増すため、家計が苦しくなりかねない点もポイントです。比率を下げる方法を知り、無理のない範囲で返済できる比率に設定しましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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