1.マンション購入の住宅ローンを組める年収基準
マンション購入は住宅ローンを利用するのが一般的です。年収によって借りられる金額に差はありますが、申し込みできないというケースはほとんどありません。
年収の下限はない
住宅ローンの申し込みにあたり、年収を申し込み条件に設けている金融機関はほとんどありません。そのため年収がいくらであっても、必要があれば住宅ローンへ申し込み可能です。
例えば、フラット35の利用者を調査した『住宅ローン利用者の実態調査』を見ても、年収400万円以下で契約している人がいると分かります。年収の下限は設定されていないため、条件によっては十分契約できます。
参考:住宅ローン利用者の実態調査(2021年4月調査) P.7|住宅金融支援機構
借入可能額は年収の7倍が目安
年収が低くても住宅ローンを契約できる可能性はあります。ただし借りられる金額は、年収によって異なる点に注意しましょう。『年収の7倍』が借入可能額の目安です。
ここで扱う年収は、社会保険料・所得税・住民税が引かれる前の『総支給額』を指します。源泉徴収票を確認し、総支給額が500万円と書いてあれば、3,500万円が借りられる金額の目安です。
参考:2019年度 フラット35利用者調査 P.13~16 |住宅金融支援機構
2.無理のない借入金額の検討
住宅ローンの申し込み条件に年収が含まれているケースはまれで、年収の7倍を目安に借りられる可能性があると分かりました。ただし借入可能額ぎりぎりまで借りてしまうと、生活が苦しくなることもあるでしょう。
無理のない借入金額を知るために重要なのが『返済比率』です。
年収よりも返済比率が重要
返済比率は年収に対する年間返済額の割合です。この割合が『25%』くらいまでであれば無理なく返済でき、『20%』以内であれば急な出費が必要になっても対応しやすいといわれています。
年収がどれだけ高くても、返済比率が高過ぎるなら、住宅ローンの審査には通過しないでしょう。反対に年収がそれほど高くなくても、返済比率が20%ほどに収まっていれば、審査に通過する可能性が高まります。
返済比率の計算方法
年間返済額と年収が分かれば、返済比率は『年間返済額÷年収×100』に当てはめ簡単に求められます。
例えば年収600万円の人が毎月10万円ずつ返済する場合、120万円÷600万円×100=20%です。この計算では返済比率20%となり、返済の負担はそれほど大きくないでしょう。
注意したいのは、返済比率は住宅ローン以外の借入も全て含めて計算する点です。仮に上記のケースで、ほかに月3万円のローン返済があるとします。
この場合、返済比率は156万円÷600万円×100=26%です。その他のローン額が多いと、住宅ローンを希望額で組めないかもしれません。
ライフイベントごとの支出に備える
借入可能額いっぱいまで融資を受けた場合、毎月の返済額の負担が大きく、生活がぎりぎりになる可能性があります。これでは出産や子どもの教育費・老後の暮らしなどに備えた貯蓄ができません。
ライフイベントのタイミングはあらかじめ分かっているものが多いため、どのくらいの予算が必要なのか調べ、準備しておくことが大切です。
無理なく備えられる余裕のある家計運営ができるよう、住宅ローンの借入額を決定しましょう。
3.年収額が不安な場合の選択肢
年収額が低ければ、その分借りられる金額は低くなります。場合によっては、希望額に満たない金額しか借りられないケースもあるでしょう。年収額の不足が不安なら『ペアローン』や『収入合算』で解決できるかもしれません。
ペアローンを組む
『ペアローン』は一つの物件に2本の住宅ローンを契約する方法です。夫婦や親子がそれぞれ融資を受け、お互いに連帯保証人となります。
別々の住宅ローンを契約するため、配偶者や親にも審査に通過するだけの安定した収入がなければいけません。夫婦共働きの家庭や、親が現役で働いているケースなら、活用しやすい方法です。
住宅ローンを2本契約するため、事務手続きにかかる費用は2本分です。しかしどちらも団体信用生命保険へ加入でき、万が一のときに備えられます。加えて住宅ローン控除も双方とも受けられる仕組みでお得です。
収入合算を利用
住宅ローンを申し込むときに、配偶者や親など同居の家族の収入を合算する『収入合算』を活用してもよいでしょう。契約者は1人で住宅ローンも1本のみですが、合算した収入で審査を受けられます。
その分収入が高くなるため、借入可能額が上がる方法です。ただし収入合算した配偶者や親の収入が途絶える可能性に注意しましょう。
契約者の収入だけでは借入できない金額で契約しているため、返済の負担が重くのしかかります。万が一のときに残債を保障する団体信用生命保険へ加入できるのは、収入合算では契約者のみという点にも要注意です。
合算者が死亡したり高度障害の状態になったりしても保障はなく、返済額も変わりません。
4.マンション購入後のランニングコストに注意
マンションの購入を検討しているなら、住宅ローンの返済額とあわせてランニングコストについてもよく調べておきましょう。特にマンションで注意が必要なのが『管理費』や『修繕積立金』です。
ランニングコストを考慮せずに購入すると、想定以上に出費がかさんでしまいます。
管理費・修繕積立金
『管理費』や『修繕積立金』は、マンションを購入すると負担しなければいけない費用です。日々の管理に使われるほか、大規模修繕に向けて積み立てられています。
修繕にかかる費用は、建物が古くなるほど高額になりやすいものです。そのためマンションが新しい時期は、修繕積立金の金額はそれほど大きくありません。
しかし年月が経過し老朽化が進んでくると、従来の修繕積立金では不足する可能性が出てきます。マンションによっては、修繕積立金が段階的に値上げされていく計画になっているかもしれません。
加えて、これらの費用は専有面積の広さによって金額が決まる仕組みです。広い部屋ほど管理費や修繕積立金の負担は大きくなります。
固定資産税・都市計画税
不動産を所有すると『固定資産税』と『都市計画税』の納税も必要です。固定資産税は土地や建物を所有すると課される税金で、マンションを所有した場合にも課税されます。
都市計画税は市街化区域内の土地や建物に課税される税金です。購入したマンションが市街化区域外に建っているなら、都市計画税はかかりません。
これらの税金は『固定資産税評価額』に税率をかけて求められます。住宅や住宅用地の場合には、軽減措置も用意されている税金です。税額は市区町村が計算し、毎年1月1日時点の所有者へ通知されます。
火災保険料
住宅ローンでマンションを購入する場合、融資の条件として火災保険への加入が求められるケースがほとんどです。そのため火災保険の保険料もランニングコストとしてかかります。
マンションの場合、購入者が加入するのは室内の専有部分の保険のみです。共用部分の火災保険は、マンションの管理組合がまとめて加入しています。
火災保険は補償が手厚いほど保険料は高額です。内容を見直すと、マンションの立地や階数によっては不要な補償も付いているかもしれません。
よく見直し、リスクの低い災害に対する補償を外すことで、コストを減らせる可能性があります。
5.安定して返済するための住宅ローンの借り方
長い期間かけて返済する住宅ローンは、コンスタントに返し続けられることが大切です。住宅ローンの借り方を工夫すれば、安定して返済しやすくなります。
頭金を入れ過ぎない
総返済額を減らすには、できるだけ頭金を多く入れ、借入額を減らすのも一つの方法です。しかし手元資金が極端に少なくなるほど頭金に使ってしまうと、急な出費に備えられません。
会社員なら生活費3~6カ月分、自営業なら6~12カ月分を目安に手元資金を残しておくと安心です。年齢や家族構成によって、出費が増えるタイミングは異なります。用意しておくべき金額も家庭ごとに異なるはずです。
必要になったときに慌てることがないよう、必要な資金を考慮して手元に残しておきましょう。
ボーナス払いは最小限にする
毎月の返済額を抑え余裕を持たせたいからとボーナス払いに頼ると、元金の減りが遅くなりがちです。結果として、なかなか返済が進みません。
ボーナスが減額されたり出なかったりした場合に、返済できないリスクもあります。月々の負担を減らすためにボーナス払いを選んでいるケースで、ボーナスがなかった場合に対応できる家庭はそう多くないはずです。
リスクを避けるには、ボーナス払いは最小限にするか、月々の返済のみにするとよいでしょう。その上で余裕があるならボーナスで繰り上げ返済を実施すれば、ボーナスがなくなっても対応できます。
金利上昇リスクを知っておく
低金利が長期間続いているため、より金利の低い『変動金利』を選ぶ人もいるでしょう。しかしいつまでも低金利が続くとは限りません。
長い期間で見ると、今後は金利が上がっていく可能性もあります。変動金利で借り入れている場合、金利が上がれば総返済額が増えます。急激な金利上昇が起こっても、すぐに返済額に影響することはありません。
だからこそ返済額が金利分に届かず、返済し続けていても残債が増えていくという事態も起こり得ます。低金利の間はお得な変動金利ですが、リスクもあるという点に注意して選ぶことが大切です。
6.返済まで考えて借入額を決めよう
マンションを購入するとき「自分の年収で必要な金額を借りられるだろうか?」と不安に感じる人もいるでしょう。住宅ローンの審査や借入可能額を左右するのは、年収だけではありません。
ほかのローンも含めた返済比率も重要です。年収が多い人でも、ほかのローン額が多く返済比率が高過ぎれば、希望額を借りられないかもしれません。
順調に返済できる借入金額か考えることも大切です。ライフプランと照らし合わせ、出費が多いタイミングに対応できるか確認した上で、無理のない金額の融資を受けましょう。
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気になった住宅ローンがあればスマホから仮審査の申し込みもできます。万が一審査に通らなくても、審査に通りやすい住宅ローンを提案してくれるので便利です。
いくら、どこで借りられるか調べよう!
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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