1. 住宅ローンの仮審査とは
住宅ローンの仮審査(事前審査)とはどのような内容のものなのでしょうか。まずは審査の内容について解説します。
本審査前に行われる簡易審査
仮審査とは、住宅ローンに申し込むと本審査の前に行われる審査です。本審査に通過する見込みがあるかを事前にチェックするのが目的の審査であるため、本審査が通常1〜2週間かけて行われるのに対し、仮審査の期間は3〜4日と短めです。
ただし仮審査においても、さまざまな書類の提出が必要な場合もあります。
さらに仮審査は、本審査を受ける最低限の資格があるのかをチェックするものなので、仮審査に通過したからといって、必ずしも本審査の通過を約束するものでありません。
仮審査でチェックされるポイント
仮審査の主なチェックポイントは、申し込み者の返済能力、そしてその返済能力に見合った無理のない返済プランになっているのかという2点です。
仮審査でまずチェックされるのが、申し込み者の経済状況です。具体的には年収などがメインになりますが、ほかにローンを抱えていないかもチェックポイントになります。
さらに、経済状況に見合った借入希望金額となっているのか、希望する返済期間は適切か、信用情報に問題はないかといった点が重点的にチェックされます。
売買契約前に仮審査に通ることが必要
住宅ローンの仮審査は、物件の売買契約を締結する前に通っておかなければなりません。その理由として、以下のような点が挙げられます。
- ローンの借入可能額が分かれば予算を設定でき、具体的な物件の検討に入れる
- 予算が決まるため、無理のない現実的な返済計画を立てられる
- 明確な金額の目安が分かり、値引き交渉をしやすくなる可能性もある
- 仮審査に通らないと正式な物件売買契約に進めないケースが多い
いくら借りられるのか目安さえ分からなければ、購入する物件のイメージを具体的に持つのは難しいでしょう。
また、特に最後の理由に関しては、売買契約に進めなければもちろん購入はできません。まずは仮審査に通らなければ何も進まない点は、念頭に置いておきましょう。
※ネット銀行の仮審査は簡易的なもののため、ネット銀行の仮審査承認で売買契約を結べるかは、不動産業者へご相談いただくことをおすすめします。
2. 信用情報は仮審査の重要項目
では仮審査では、どのような点が一番チェックされるのでしょうか? ここでは気になる仮審査の審査内容について解説します。
信用情報とは
仮審査において最も重視されるのが『信用情報』です。クレジットカードやローンで買い物をした場合、品物を先に受け取り、実際の支払いは後日行われます。これが信用取引です。
しかし信用取引を行う場合、相手は無条件で信用してくれるわけではありません。あなたが本当に信用取引をするに値する経済状況にあるのかを確認するために用いているのが信用情報です。
信用情報には氏名、住所、生年月日といった個人を特定するために必要な個人情報のほか、クレジットやローンの申し込み、契約内容や返済状況、そして借入残高などが記録されています。
信用情報の調査方法
信用情報の調査は、基本的に『指定信用情報機関』が管理する記録の照会がメインです。
指定信用情報機関には『株式会社シー・アイ・シー(CIC)』『株式会社日本信用情報機構(JICC)』『全国銀行個人信用情報センター(KSC)』の3社があり、これらの情報機関に個人信用情報の開示請求をかけて行われます。
『自己破産を経験しているのでブラックリストに掲載されてしまっている。だからローンは組めない』という話を聞く機会もあるでしょう。しかし実際には『ブラックリスト』という特別なリストが存在するわけではありません。
クレジットカードの支払い遅延などを起こすと、指定信用情報機関が管理する記録に『異動情報』として登録されます。
一般的に『ブラックリストに掲載されている』と呼ばれる状況は、支払い遅延などを起こし、指定信用情報機関が管理する記録に異動情報が記載されている状況を指します。
3. 信用情報に傷が付く原因
住宅ローンの審査において、指定信用情報機関が管理する記録に異動情報が記載されていると、致命的なダメージにつながります。では具体的にはどのような事例が、金融事故情報として掲載されてしまうのでしょうか?
クレジットカードの支払い遅れ
個人の信用情報に傷が付くケースで多いのが、クレジットカードの支払いを滞納した事例です。
何年か前に残高不足で数日支払いが遅れたことがあったといった場合、不安になるかもしれません。ただ、支払いが遅れたというケースには『延滞』と『遅延』の二つのパターンがあります。
指定信用情報機関が記録するのは、60日以上もしくは3カ月以上の長期間にわたって滞納している『延滞』の場合のみで、2〜3日支払いが遅れた程度では記録されません。ただし、滞納を短期間に複数回繰り返している場合には記録されることがあります。
任意整理や自己破産手続きをした
『任意整理』とは、抱えている債務の金利をカットし、元本のみを3年程度の分割で返済することで整理する手続きです。
一方『自己破産』は、借金返済の見込みが立てられなくなった場合に裁判所に申請し、法律上借金の支払い義務を免除してもらうことをいいます。任意整理や自己破産を行うと、信用情報には異動情報として記録されます。
例えば指定信用情報機関の一つであるKSCの場合、自己破産の履歴は破産手続きから10年間にわたり記録され、この間は銀行や信用金庫で住宅ローンを組むことはほぼ不可能です。
見落としがちな信用情報に傷を付ける行動
これ以外にも、意外な支払い遅延が信用情報に傷を付ける場合があります。その代表的な例が奨学金の返済の滞納です。奨学金の返済を長期間にわたり滞納している、または滞納した過去がある場合には、住宅ローンの審査に通りにくくなります。
ただし、日本学生支援機構に返還期限猶予を承認されている場合には、信用情報機関に異動情報として記録されません。
さらに、近年増えているのが携帯電話の本体分割購入代金の未納です。携帯電話端末の分割払いはクレジット会社を通じたクレジット契約の一種であるためで、滞納するのはクレジットカード料金の延滞と同じとみなされます。
ただし、携帯電話の通信料金の支払い履歴自体は、信用情報機関に登録されません。
4. 自分の信用情報をチェック
『忘れているだけで自分も過去に支払いの滞納を起こし、指定信用情報機関に異動情報が残されているかもしれない』と不安になった人もいるかもしれません。実は指定信用情報機関にある自分の信用情報は、閲覧することが可能です。
自分の信用情報をチェックする方法について解説します。
信用情報機関へ開示請求
3社ある指定信用情報機関のいずれにおいても、個人信用情報の開示請求を行えば自分の記録の有無が確認できます。
この三つの機関は、それぞれ扱う情報に特徴があります。CICは主にクレジットカード関連、JICCは消費者金融関連、KSCはメガバンクをはじめとする銀行ローン全般の情報です。
滞納履歴や支払いに関する情報の一部は、互いに共有されています。
信用情報機関への開示請求方法はそれぞれ異なりますが、一般的にインターネット、郵送、窓口で申請できます。現在はインターネットを通じての申請が一般的で、アプリのダウンロードを求められる場合もあります。
プライバシー保護の観点から、開示請求は原則として本人以外は行えないため、開示に際しては運転免許証やマイナンバーカードといった本人確認の提示が求められます。さらに開示手数料が500〜1,000円程度がかかります。
信用情報の開示請求をすると、それ自体の記録も残ります。何度も開示請求を行うと、その行為そのものが金融機関に対する信用を失う結果となり、住宅ローンの審査に影響を与える場合もあるので注意が必要です。
情報はいつ消える?
信用情報に異動が記録されてしまっても、永遠に残るわけではありません。信用情報機関により、そしてその内容により記録の登録期間が設けられており、その期間を過ぎれば記録は消去されます。主な記録の登録期間は以下の通りです。
- 債務整理:5年(各社共通)
- 延滞情報・取引事実情報:5年(CIC・KSC)、1年(JICC)
- 破産・民事再生等:10年(KSC)
このように異動の記録は最短で1年、平均で5年、そして最長でも10年程度で消滅します。消去されれば、基本的には住宅ローンの審査にも影響は与えません。
信用情報に傷があった場合
では照会した結果、信用情報に傷があった場合はどうすればいいのでしょうか?基本的に信用情報に異動の記録があると、住宅ローンの審査を通るのは難しいといえます。
そのため最も確実な対策としては、信用情報から異動履歴が消えるまで住宅ローンの利用を待つという方法です。
そのほか、頭金を十分に用意して借入総額を抑えるのも有効な方法です。また審査の基準は金融機関によって異なるため、できるだけ審査の緩い金融機関のローンに申し込むことも検討しましょう。
どこの金融機関の審査が緩いのかという情報は、建築を依頼するハウスメーカーや不動産会社が持っている可能性があります。審査の通過に不安がある場合には先にその旨を伝え、事前に相談しておくことが大切です。
5. 信用情報に問題がなかった場合の対策は?
住宅ローンの審査に影響を与えるのは、実は信用情報だけではありません。それ以外にはどのような要素があるのでしょうか?
ほかに影響する要素を確認
住宅ローンの審査において金融機関は、年収に占める年間返済額の割合である『返済比率』を重視します。金融機関によって多少の違いはあるものの、一般的には審査を通る目安となるのは30~35%以内とされています。
返済比率は住宅ローン単独で算出されるわけではありません。カーローンや教育ローンなど、現在抱えている別のローンや借入金があれば、それも合わせて計算されます。
返済比率を下げる方法としては、年収を上げる、融資希望金額を下げるといった方法があります。中でも最も確実なのは、ほかに利用しているローンを完済することです。
例えばカーローンを抱えている場合には、その車を売却してローンを完済し、カーリースなどに乗り換えることで審査を通る確率は上がります。
別の金融機関へ仮審査を申し込む
住宅ローンの仮審査は、複数の金融機関に申し込むことができます。建築を依頼するハウスメーカーや不動産会社経由で住宅ローンを申し込む場合、その会社が複数の取引金融機関に対して同時に申し込みを行うのはむしろ一般的です。
複数の金融機関に申請すれば、例えば審査が厳しいA社の審査には落ちても、比較的基準が緩やかなB社の審査には通るというケースも出てきます。
ただし仮審査であっても信用情報機関へ照会されるため、その記録は残ります。そのためあまりに多くの金融機関に申し込みを行うと、その行為が審査結果に悪影響を与える要因になりかねません。
もし複数の金融機関に仮審査を申し込む場合でも、多くても3社程度が一つの目安です。
6. 不安な場合は早めに信用情報をチェック
物件の売買契約が完了した後に住宅ローンの審査に通らない場合、ローンの申請者だけではなく、物件の売主や不動産会社など関係者にも影響が出るでしょう。
そういう事態を避けるため、ハウスメーカーや不動産会社などから、購入手続きの前に住宅ローンの仮審査に通ることを求められるケースも多いものです。
仮審査に落ちればその先のステップには進めないので、もし審査に通るか不安がある場合には、早めに自分の信用情報をチェックするなど、できる対策を行いましょう。
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