1. 借金は住宅ローン契約に影響する?
消費者金融などから借入を行っている場合は『借金』という意識があるものの、奨学金やカーローンなどは、それが借金であるという自覚が希薄かもしれません。
借金として扱われるものには、どのような借入があるのでしょうか?そして借金を抱えている場合、住宅ローンの審査にどういった影響を与えるのでしょうか?
借入額が減る可能性がある
抱えている借金が住宅ローンに影響を与えるケースには、二つのパターンがあります。一つは審査が通らず住宅ローンを利用できない場合、そしてもう一つが希望する借入額から減額される場合です。
後者の場合、5,000万円の融資を希望していても、金融機関からは3,000万円しか借りられないといった結果になります。これが『住宅ローンの減額承認』です。
減額承認となってしまう理由はいくつかあります。一つに、クレジットカードのキャッシングの利用状況や、カーローンなどほかのローンの有無が挙げられます。
さらに、過去にローンを組んだ際の返済に滞りがあった場合、またクレジットカードの支払い遅延を起こしたことがある場合なども、審査に影響を与えます。
返済済みの場合は影響は低い
ローン返済の遅滞やクレジットカードの支払い遅延などを起こすと、いわゆる『ブラックリスト』に名前が記載される可能性があります。さらに個人再生などを行った場合には、『官報』に名前が掲載されます。
こうしたものに名前が記載されている間は、信用情報を照会すればすぐに明らかになるので、審査を通過するのは難しいのが現実です。
名前の記載は一定の期間にわたって続きます。しかしその期間が終わり名前が消えた後は、その時点での返済能力に問題がなければ、審査にまったく通らないという事態はなくなります。
これは減額承認においても同様です。すでに名前が消えていれば、過去の履歴だけを理由に減額承認されることはないでしょう。
奨学金も借入に含まれる
貸付型の奨学金が借金であるという認識は薄いかもしれませんが、住宅ローンの審査においては、奨学金も借入に含まれます。そのため、奨学金の返済が残っている状態で住宅ローンに申し込む場合には、ほかにも借入があることを申告しましょう。
ただし仮に奨学金を返済中でも、ほとんどの場合、住宅ローンの借入は可能です。しかし必然的に『返済比率』が上がってしまうため、ローンの審査結果が希望通りのものにならない可能性があります。
これはあくまで滞りなく奨学金を返済している場合です。もし返済の延滞があり、信用情報に記録が残っている場合には、審査に落ちたり減額承認の対象になったりする可能性が高いでしょう。
2. クレジットカードの利用は借金になる?
クレジットカードは後払いだけに、一度は「先月こんなに使っていたのか!残高が足りない!」と焦った経験があるのではないでしょうか。
クレジットカードの利用状況が住宅ローンの審査に及ぼす影響について解説します。
利用状況が悪影響を及ぼす場合がある
クレジットカードは、普通に所有し使用しているだけで住宅ローンの審査に影響を及ぼすことはありません。ただし、利用状況によっては審査に悪影響を及ぼす場合があります。
大きな問題となるのは、やはり支払いの延滞です。記録として残るのは、過去5年間に起こした支払いの延滞で、記録が残っている間は住宅ローンの融資を受けるのは厳しいでしょう。
さらにクレジットカードに付帯するキャッシング機能の利用も、問題になる可能性があります。気軽に利用できてしまうキャッシングも借入と同じなので、支払い遅延だけではなく、利用しているだけでも審査に影響が出る場合があります。
また分割払いを選択していると、返済比率に影響します。分割払いを抱えていると返済比率が高くなってしまうため、希望する金額を借りられないという事態を招くかもしれません。
不要なキャッシング枠はなくしておく
クレジットカードのキャッシングについては、実際に利用の実態がなく、キャッシング枠を設定しているだけでも、今後利用する可能性があるとみなされて審査に影響が出る場合があります。
ポイントサービスなどにつられて気軽にクレジットカードを作ってしまいがちですが、複数のクレジットカードを所有しているとそれぞれに自動的にキャッシング枠が付帯されている可能性もあります。
審査を受ける前に不要なカードを解約したり、キャッシング枠の廃止や減額をしたりすることをおすすめします。
3. 借金額の返済比率への影響
住宅ローンを無理なく返済していくためには、ゆとりのある返済計画を立てる必要があります。年収に見合わない金額を希望すると、審査で落とされたり、減額承認となる可能性が高いでしょう。ここでは返済比率について詳しく解説します。
返済比率とは
住宅ローンの返済比率とは、『年収に占める年間返済額の割合』を指します。具体的には『年間返済額÷年収×100』という計算式により算出されます。
どの程度の返済比率が許容範囲なのかは金融機関によって多少の違いはあるものの、一般的には30~35%以内とされています。
つまり年収500万円で返済比率35%と仮定した場合、年間の返済額の上限は175万円と計算されます。これを12で割ったものが毎月の返済額です。
すでに借入がある場合の計算法
住宅ローンのほかにカーローンや教育ローンを抱えている場合には、その金額も合算して返済比率が計算されます。そのため住宅ローンだけを借りる場合と比較すると、借りられる金額は低くなってしまいます。
前述の通り、年収500万円で返済比率35%と仮定した場合、年間の返済上限は175万円、月額は約14万5,000円です。これを30年で返済する場合、単純計算で総額5,250万円借りられるということになります。
ところが例えば教育ローンを月に3万円返済している場合には、住宅ローンに回せる返済額は14万5,000円から3万円を引いた約11万5,000円です。年額では約138万円、その30倍は4,140万円になります。
5,250万円と比較すると、1,100万円以上も減ってしまうことが分かるでしょう。
4. 減額承認された場合の対処法
減額承認という審査結果が出て、予定していた金額が融資されないと、新居の建設に深刻な影響を与えます。減額承認された場合、対処法はないのでしょうか?
借金を返済する
減額承認となってしまう大きな理由の一つが、返済比率の高さです。返済比率を下げる方法はいくつかあります。まずは年収そのものを上げること、次に希望融資額を下げること、そしてほかに利用しているローンがあれば、それを返済することです。
年収は簡単に上がるものではなく、希望融資額も必要だからその金額を申し込んでいるわけなので、そう簡単に下げることはできません。
最も現実的で確実に効果があるのが、ほかのローンを完済してしまう方法です。カーローンを抱えている場合などは、売却してカーリースなどに乗り換えるといった方法が有効です。
ほかの金融機関に審査を申し込む
住宅ローンの審査基準は、金融機関によって異なります。例えば返済比率の平均は30〜35%とされていますが、厳しい基準を設けている金融機関では20〜25%に設定している場合もあります。
そのため現実には、A銀行では減額承認されてしまったけれど、B銀行に改めて申し込んだら減額承認されずに審査に通ったという事例は少なくありません。
金融機関の審査基準の違いについては、建築を依頼する住宅会社や不動産会社が情報を持っている場合もあります。不安がある場合には先にその旨を伝えて、申し込む前に相談しておくことが大切です。
ペアローンや収入合算を使う
1人の年収では希望する融資額に届かない場合には、『ペアローン』を利用する方法もあります。『ペアローン』とは、一つの住宅に対し、夫と妻それぞれがローンを組み、2本のローンで返済する仕組みです。
例えば5,000万円の融資が必要なのに夫1人の年収ではその金額に届かないといった場合に、夫が3,000万円、妻が2,000万円のローンを組み、それぞれが連帯保証人になります。
さらに『収入合算』という選択肢もあります。これは一定の収入のある配偶者などの収入を、申込者(主債務者)の収入に合算して借入を申し込む方法です。
例えば夫の年収が500万円、配偶者の収入が300万円だった場合、合算すれば800万円となり、返済比率にその分余裕が出るので、より多くの融資を受けられます。
なお収入合算の場合には、収入合算者が連帯債務者になる方法と連帯保証人になる方法の2種類があります。
5. 審査に落ちてしまったら
ここまでは主に減額承認された場合の対策について解説してきました。最後に、住宅ローンの審査に落ちてしまった場合の対処法について解説します。
落ちた原因は教えてもらえない
住宅ローンの審査に落ちるのは、実はそれほど珍しいことではありません。しかし審査に落ちた場合、通常はその理由について金融機関から説明はありません。
落ちた原因を指摘されれば、例えば別の金融機関に申し込む場合にその点を改善することもできますが、実際にはそれができません。次善の策として、審査基準について事前にある程度把握し、自分でできる対策はきちんと施しておくことが必要です。
自分の信用情報は照会可能
過去にクレジットカードの支払い遅延などがあり、ブラックリストに掲載されているのではないかと不安を感じた場合には、自分自身で信用情報を照会してみましょう。
支払い遅延といった金融事故情報は、貸金業法上の『指定信用情報機関』により記録にされています。指定信用情報機関にはJICC、CIC、全銀協の3社があり、これらの情報機関に個人信用情報の開示請求を行えば、自分の記録の有無が確認できます。
支払いが遅れたケースには、『延滞』と『遅延』の二つのパターンがあります。指定信用情報機関が記録するのは『延滞』した場合であり、2〜3日程度支払いが遅れたといった『遅延』に関しては記録されません。
落ちる原因はブラックリスト以外にも
信用情報に『延滞』の記録がある場合、それだけで住宅ローンの審査にはまず通りません。しかしこうしたケース以外に、いくつかの理由が複合的に絡み合って落とされる場合もあります。
例えば過去に消費者金融から借入を行っていた場合、一般的にはそれだけが原因で一発アウトになることはありません。しかしその返済においてたびたび支払いが遅れていた記録があるといった要因が加わると、落ちる原因になり得ます。
ほかにローンを組んでいる場合も、それだけが原因で落ちることは一般的にはありません。ただし、その借入が加わることで返済比率が限度を超えてしまえば落ちる原因になります。
年齢や健康上の理由というケースもあります。例えば完済時年齢が80歳を超えている場合や、持病があって団体信用生命保険に加入できないといった場合も難しいでしょう。
ほかに、転職して間もない、連帯保証人がつけられない、個人事業主などで収入が不安定といった要素も、審査に落ちる原因になるのです。
6. 借金の整理や信用情報の確認は早めに
住宅ローンは多額の金額を長期にわたって貸し付けるため、金融機関の審査も厳格です。審査に申し込む前に、できる範囲でほかの借金を整理したり、信用情報に掲載がないか確認するなど、しっかりと事前に準備をすることが大切です。