シングルマザーでも住宅ローンは組める?
シングルマザーであるという理由だけで住宅ローンを組めなくなることはありません。融資金額を決定する際に家族構成が考慮される可能性はありますが、主要な審査項目ではなく、年収や雇用形態、勤続年数といった重要項目で各金融機関の融資基準を満たしていれば、住宅ローンを組むことができます。
シングルマザーの就業状況
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によれば、母子世帯の母親の86.3%は就業しており、就業していない人は9.2%、不詳4.5%となっています。そのため、シングルマザーの大半は何らかの仕事をしていることがわかります。
母子世帯の就業状況
就業形態としては「正規の職員・従業員」が48.8%と最も多く、約半数を占めています。次いで「パート・アルバイト等」が38.8%、「自営業」が5.0%となっています。平成28年度の調査と比べると、「正規の職員・従業員」の割合は4.6%増加し、「パート・アルバイト等」が5.0%減少しています。このことから、正社員・公務員として働くシングルマザーが増えているとわかります。
母子世帯における就業形態
後述するように、住宅ローン審査では収入の安定性が重視されるため、雇用形態は重要項目です。正職員や公務員のほうが審査には有利ですが、パートやアルバイト、自営業でも申し込み可能な金融機関もあります。住宅ローンの申し込みの際には、雇用形態の条件を考慮しながら、複数の金融機関に相談・申し込みをしてみましょう。
シングルマザーの住居所有状況
同調査では母子世帯の住居所有状況も調査されており、その結果は「持ち家(本人名義)」が15.9%、「持ち家(他人名義)」が18.5%、「借家等」が75.0%となっています。
母子世帯の住居所有状況
賃貸物件に住む人が多数派である一方で、持ち家に住む人も全体の3割を超えています。
シングルマザーの住宅ローン審査で重視されるポイント
金融機関における住宅ローンの審査で最も重視されるのは返済能力であり、具体的には年収・勤務先・雇用形態・勤続年数が特に重要な項目として取り扱われます。
年収については次の項目で取り扱いますが、大半の金融機関は最低でも200万~300万円程度が必要とされます。年収は多いほど有利ですが、一定基準を満たしていればよいので、借入金額に対して十分な年収があれば審査には問題ないでしょう。
勤務先・雇用形態・勤続年数は、いずれも収入の安定性の評価に用いられますが、特に勤続年数は重要です。最低でも勤続1年以上、できれば2~3年以上にわたって同一の事業所に勤務してから審査を申し込みましょう。
なお、これらの審査項目はシングルマザーに限らず、誰であっても重要な審査項目です。
シングルマザーが住宅ローンを組むために必要な年収は?
ここでは、シングルマザーが住宅ローンを組むうえで必要な年収について説明していきます。勤務先や雇用形態も審査対象になりますが、年収は特に重要な項目であることを知っておきましょう。
最低でも年収200万から300万は必要
住宅ローンの詳しい審査基準は公表されていませんが、金融機関が公表している商品概要書には、最低限の年収が示されている場合があります。それに基づくと、最低でも200万から300万円の年収がないと大半の金融機関では審査対象になりません。ただし、年収100万円以上であれば申し込める金融機関や、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の「フラット35」は年収の制限なく申し込めるなど、取り扱いはさまざまです。
収入については将来にわたる安定性も重視されており、勤務先が大企業である場合や、雇用形態が正社員・公務員の場合、勤続年数が長い場合は審査に通りやすい傾向があります。自己資金(頭金)や金融資産の有無や、他の借入金の状況なども総合的に影響を及ぼしますが、審査に通らなかった場合には、雇用形態のステップアップや勤続年数を積み上げてから申し込むようにしましょう。
シングルマザーの住宅ローン借入額の目安は?
住宅ローンの借入可能額は、年収に対して年間返済額が占める割合(返済負担率)によって決まります。金融機関によって基準は多少異なりますが、「フラット35」では年収400万円未満では30%以下、400万円以上では35%以下になることが求められています。
例えば、年収300万円の場合に返済負担率30%になるのは年間返済額が90万円(毎月7.5万円)のときで、金利1.0%・返済期間35年であれば約2,650万円、金利1.5%・返済期間35年であれば約2,450万円が借入可能です。
ただし、上限いっぱいまで借りると将来の収入減少・支出増加といったリスクに備えることが難しくなります。無理なく返済できる返済負担率の目安は20~25%といわれるため、年収300万円であれば毎月返済額が5万円台に収まる2,000万円までの借入が望ましいでしょう。
年収400万円の借入額計算例
年収400万円の場合で、無理なく返済できる返済負担率25%の借入の例を説明していきます。まず、年収400万円で返済負担率25%になるのは、年間返済額が100万円(400万円 ✕ 25%)のときであり、毎月返済額は8.33万円になります。借入額は返済期間と金利によって次のように大きく異なります。
・返済期間35年・金利0.8%の借り入れ:借入額3,000万円
・返済期間35年・金利1.8%の借り入れ:借入額2,600万円
・返済期間25年・金利0.8%の借り入れ:借入額2,250万円
・返済期間25年・金利1.8%の借り入れ:借入額2,000万円
このように、返済期間が長くとれる場合や、低金利の住宅ローンを利用できる場合にはより高い借入額まで融資を受けることができるようになります。なお、借入額を検討する際には、住宅ローンの返済だけでなく、生活費や将来の教育資金・老後資金などを考慮しなければいけません。貯蓄が少ない場合には慎重に検討することが重要です。
シングルマザーが住宅ローン審査を通過するためのポイントは?
住宅ローンには、仮審査(事前審査)と本審査の2段階の審査があります。仮審査は主に自己申告による情報から、本審査は書面等の根拠に基づいて審査が行われます。
自己資金(頭金)を準備し、返済期間を長くとる
これまでに説明したように、住宅ローンの審査では返済負担率が重要な審査項目になっています。返済負担率を引き下げるための対策には、自己資金(頭金)を準備して借入額そのものを減らすことと、返済期間を長くとることが有効です。
例えば3,000万円の物件を購入したいときに、500万円の頭金が準備できれば借入額を2,500万円に減らすことができます。また、返済期間を25年から35年に変更すれば、毎月返済額は3万円程度減ります。
これらは審査への対策として有用なだけでなく、ゆとりを持った返済を行ううえでも役立つ方法です。
雇用形態や年収の要件を満たす金融機関を選ぶ
住宅ローン審査の対象となる人の基準は金融機関によって異なり、特に雇用形態や年収の要件はさまざまです。比較的厳しい要件を求める商品もあれば、雇用形態や年収に定めがない商品もあります。
パート・アルバイトや自営業といった正社員・公務員以外の人や、年収に不安がある人は、これらの要件が厳しくない金融機関を選ぶとよいでしょう。特に、「フラット35」は金利がやや高いものの、年収制限がないことからシングルマザーにも利用しやすい選択肢です。ただし、雇用形態や年収の要件がない銀行の審査がゆるいわけではない点には留意しましょう。
シングルマザーが住宅ローンを組むと児童扶養手当(母子手当)に影響する?
児童扶養手当(母子手当)は、ひとり親家庭を支援するための福祉制度です。児童扶養手当の支給要件は、父母が婚姻を解消したことなどであり、住宅ローンを利用したり、不動産を所有したりすることで児童扶養手当の支給に影響が及ぶことはありません。住宅ローンについては安心して申し込めばよいでしょう。ただし、児童扶養手当などの給付は収入として考慮されないので、その点には留意する必要があります。
不動産の所有で児童扶養手当(母子手当)が減額されることはない
住宅ローンを組んで不動産を所有したからといって、児童扶養手当の支給が停止されたり減額されたりすることはありません。この手当には児童を1人で育てる人を支援する目的があり、支給要件として定められているのは主に婚姻関係に関することです。
ただし、再婚などによって「ひとり親である」という条件が変わった場合には手当にも影響が及ぶため、注意が必要です。もし、再婚を機に住宅ローンを組むつもりであれば、手当がなくなっても余裕を持って返済を続けられるかどうかを慎重に検討しましょう。
なお、住宅ローンを組んだあとに離婚などによって手当の支給が始まったからといって、住宅ローンの契約や返済に影響が及ぶこともありません。
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まとめ
シングルマザーでも、一般的には200万から300万円程度の年収と、一定の勤続年数があれば住宅ローンの審査で承認を得ることは十分に可能です。特に、正社員・公務員として働いている人は多くの選択肢があるでしょう。年間返済額は年収の20~25%を目安に、余裕を持った返済計画を立てておくことがおすすめです。住宅購入が児童扶養手当に影響を及ぼすと考えている方もいますが、基本的に影響はありませんので、安心して購入計画を立てましょう。