頭金を入れると住宅ローン金利は下がる?
住宅ローンを検討するときに、適用金利を重視する人は多いでしょう。わずか0.1%の違いでも、35年といった長期では数十万円以上の差になるからです。
利用する金融機関や取り扱う商品によって金利を決める仕組みは異なり、頭金の割合によって金利が下がることもあります。
【フラット35の場合】頭金1割以上で金利が下がる
住宅金融支援機構が民間金融機関を通じて提供する、全期間固定金利の「フラット35」の場合には、頭金の有無(融資率)が金利を左右します。「融資率が9割以下(頭金1割以上)」と「9割超(頭金1割未満)」で、適用金利が明確に分かれているのです。2025年12月時点の最も低い貸出金利(最優遇金利)は、融資率9割以下では年1.970%、融資率9割超では年2.080%からとなっています(参考:新機構団信付きの【フラット35】等の借入金利水準)。
頭金が少ないと、借入額が物件価格と同程度か、諸費用込みでは物件価格を超えることもあります。こうなると、返済に行き詰まったときに物件を売却しても、売却金額でローンを完済できない担保割れのリスクが高まります。頭金を多く入れればこのリスクは低くなることから、このように金利に差が設けられているのです。
したがって、フラット35を利用する場合は、頭金を1割入れて「融資率が9割以下」にするメリットがあります。
【民間銀行・ネット銀行の場合】金利優遇幅と審査への影響
一方で、都市銀行(メガバンク)や地方銀行、ネット銀行などの民間金融機関では、多くの銀行はそのような条件を設けていません。年収や勤務先の評価が高く、かつ無理のない借入金額であれば、頭金なしでも各金融機関での最優遇金利で借りられることも一般的であるものの、やや不安な場合には頭金を用意することで、最優遇金利で借りられる可能性がより高くなります。
また、頭金を入れることには審査に通りやすくなるという利点があります。その理由は、①頭金を用意できる堅実な家計運営の裏付けになり、ローン審査における属性評価の向上につながるから、②頭金を入れることで借入金額が相対的に減るため、金融機関にとっては安心材料になるからです。
なお、一部のネット銀行などでは、フラット35のように融資率によって適用金利を引き下げるプランを用意しています。このように、適用金利や審査においては、頭金を入れるメリットがあります。
「金利条件」だけでなく「総返済額」への影響を知ることが重要
詳しくは後述しますが、頭金を入れて借入金額を減らすことは、金利条件の改善だけでなく、支払う利息総額が減るため、総返済額の圧縮にもつながるメリットもあります。
住宅ローンにおける支払利息は、「借入残高 × 金利」で決まります。仮に金利や借入期間が同じであっても、頭金を入れて借入残高(元本)が少なくなれば、毎月発生する金利が少なくなります。
金利が低いほうが総返済額が少なくなることだけでなく、頭金を入れて借入残高を減らすことも総返済額を減らす上では大きな効果があると知っておきましょう。
頭金と金利の基礎知識:住宅ローンにおける役割

具体的なシミュレーションに入る前に、そもそも頭金とは何なのか、今の住宅ローン環境ではどのような状況にあるのか、基礎知識を整理しておきましょう。
特に、頭金については「昔の常識」と「今の現実」には大きなギャップがあります。この点を理解しておかないと、古い考え方に基づいた判断をしてしまい、現代の住宅ローン環境に合わない資金計画を立ててしまう可能性さえあります。
頭金とは?いくら入れるのが一般的?(頭金2割神話と平均額)
頭金とは、物件価格のうち自己資金で支払う部分をいいます。かつては、「物件価格の2割の頭金を入れるのが常識」とされる時代がありました。この理由には、①銀行が物件価格の8割までしか融資しなかった、②金利が高かったという背景がありました。例えば、4,000万円の家を買うときは、800万円を頭金として現金で支払い、残り3,200万円をローンを組んで購入する方法が一般的だったのです。
現在では、国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査」によれば、住宅を初めて購入する一次取得者の自己資金比率の平均値は20~30%でした。
これを見ると現在でも同様に思えるかもしれませんが、中央値では新築注文住宅(土地購入あり)と分譲戸建住宅における頭金は3~5%、分譲マンションでは20%であり、頭金を入れないか、入れてもごく少額という人が半数以上を占めています。現在は、物件価格の100%(フルローン)の融資が可能になったので、これを利用する人が多いのです。
住宅ローン金利の種類(変動・固定・フラット35)の整理
頭金を入れる意義は、住宅ローン金利の種類(金利タイプ)によっても異なります。そのため、代表的な金利タイプの違いを表で整理しておきましょう。
特に、金利が高い固定金利の場合は、頭金を入れて借入額を減らすことによる支払金利の削減効果は大きくなります。一方で、低金利の変動金利の場合は、そもそもの金利負担が少ないため、頭金による節約効果は相対的に小さくなります。
頭金の割合で何が変わる?適用金利・総返済額・毎月返済額・審査の関係
頭金の割合は、適用金利・総返済額・毎月返済額・審査の4つに影響を及ぼします。
このように、頭金を十分に用意することで、審査や返済をより有利に進めることができます。ただし、頭金を入れると手元資金が減ることから、後述するようにそれに伴うリスクもあります。
【金額別シミュレーション】頭金なし・1割・2割で総支払額はいくら変わる?

次に、具体的な数字を使ったシミュレーションを見てみましょう。例えば、4,000万円の物件を購入する際に、頭金をいくら入れるかによって、毎月の支払いや35年間のトータルコストがどう変わるのでしょうか。
シミュレーション条件(借入4,000万円・35年返済のケース)
今回のシミュレーションでは、頭金の金額によって借入金額(元本)が減ることによる支払額の削減効果に焦点を当てているため、金利は全期間一定で0.5%と仮定します。具体的なシミュレーション条件は次のとおりです。
・物件価格:4,000万円
・返済期間:35年間
・返済方式:元利均等返済・ボーナス払いなし
・適用金利:0.5%
この場合で、「頭金0円のパターンA」「頭金400万円(10%)のパターンB」「頭金800万円(20%)のパターンC」を比較していきます。
パターンA:頭金なし(フルローン)の場合
パターンAは、手元資金を使わずに購入金額の全額ローンで賄う、フルローン(借入金額:4,000万円、頭金:0円)のケースです。このときの毎月返済額・総返済額と、支払う利息の総額は次のようになります。
・毎月返済額:103,834円
・総返済額:43,610,126円
・支払う利息総額:3,610,126円
このパターンは、手元に現金を温存できるのが最大のメリットですが、金利負担は約361万円となり、今回の3パターンの中では最も大きくなります。
しかしながら、0.5%という低金利のおかげで、借入額に対する利息は比較的少額に収まっています。もし、金利が2.0%であれば、支払う利息総額は約1,565万円まで膨れ上がります。
パターンB:頭金400万円(10%)を入れた場合
パターンBは、物件価格の10%に当たる400万円を頭金として入れ、借入金額を3,600万円に抑えた場合です。このときの毎月返済額・総返済額と、支払う利息の総額は次のようになります。
・毎月返済額:93,450円
・総返済額(住宅ローン):39,249,098円
・支払う利息総額:3,249,098円
頭金なしのパターンAと比較すると、毎月返済額は約1万円安くなりました。この余裕は家計にとってかなり大きいものでしょう。
また、支払う利息の総額は約36万円安くなります。先に400万円を支払うことで、35年間で36万円分の利息を支払わずにすむことになります。
パターンC:頭金800万円(20%)を入れた場合
パターンCは、物件価格の20%に当たる800万円を頭金として入れ、借入金額を3,200万円に抑えた場合です。このときの毎月返済額・総返済額と、支払う利息の総額は次のようになります。
・毎月返済額:83,067円
・総返済額(住宅ローン):34,888,065円
・支払う利息総額:2,888,065円
パターンAと比較すると、毎月返済額は約2万円安くなります。このように頭金を2割入れれば毎月の支払いはかなり抑えられます。また、支払う利息の総額は約72万円安くなり、総支払額の負担も大きく減ることになるでしょう。
比較の要旨:頭金を入れると「利息」はこれだけ減る
以上のシミュレーション結果をまとめると、今回の条件の場合には、頭金を入れる効果は次の通りです。
ただし、この結果をどう捉えるかによって、頭金を入れるかどうかの判断は変わってきます。「35年で36万円しか変わらないなら、手元に400万円持っておきたい」と考える人もいれば、「支払うお金が確実に減るから頭金を入れるべき」と考える人もいます。いずれにしても、金利が低い現在は、総支払額が劇的に減るわけではないという点は知っておきましょう。
頭金なし(フルローン)であえて借りる合理的な理由は?

シミュレーションの結果を踏まえると、「利息を節約できるなら頭金を入れたほうが良いのでは?」と思ったかもしれません。しかし、最近は「あえて頭金を入れずにフルローンを組む」という戦略が人気です。なぜ、頭金なし(フルローン)であえて借りるほうが合理的といえるのか、3つの理由を解説します。
手元に「現金(生活防衛資金)」を残せる安心感
頭金を入れることのデメリットは、「頭金を入れることで手元資金(貯金)が減ってしまうこと」にあります。
まず、不動産購入時には諸費用や引越のための費用がかかります。他にも、病気やケガによる休職や勤務先の業績悪化による収入減少、医療費や教育費などによる支出増加など、返済中には想定外の事態が起こる可能性があります。
フルローンを組めば、そのようなリスクに対処できる現金(生活防衛資金)を手厚く残すことができるのです。数百万円あれば、突発的な事態が生じたときにも半年~1年程度は破綻することなく、立て直す時間を確保することができるでしょう。
「頭金を入れて借金を減らす」ことよりも、「現金を確保して破綻を防ぐ」ことのほうが、長い人生においては安心感が大きいといえます。
住宅ローン控除(減税)の恩恵を最大化できる
国は住宅ローンを組んで住宅を購入した人に対して、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」という減税制度を用意しています。基本的には、年末時点のローン残高の0.7%相当額が、所得税や住民税から還付される仕組みです。
例えば、金利0.5%で借りているときに、0.7%が還付されるとどうなるでしょうか。差額の0.2%分のメリットがあることになり、実質的に「住宅ローンを借りているほうが儲かる(金利負担がゼロ以下になる)」という現象が起こります。
しかし、頭金を入れて借入残高を減らしてしまうと、戻ってくる税金の額も減ってしまいます。「控除期間が終わる10〜13年後までは、あえてローン残高を多く残しておき、控除期間の終了後に繰り上げ返済する」という戦略が、最も得になるケースが多いのです。
インフレ時は「借金」の価値が目減りする
もう1つは、インフレ(物価上昇)への対策という視点です。日本経済は長年のデフレ(物価下落)を脱却し、インフレ局面に移行しつつあります。インフレが進むと、現金の価値は相対的に下がりますが、これは「借金」の価値を実質的に減らすことにもなります。
言い換えれば、いま借りた4,000万円は大きな金額ですが、20年後に物価や賃金が上昇していれば、その時の4,000万円の負担感は現在よりも相対的に軽くなるはずです。
また、手元資金をS&P500や全世界株式などの投資信託で運用した場合を考えてみましょう。住宅ローン金利よりも、投資の期待リターンが高いのであれば、「低金利で長く借りて、手元資金は運用に回して増やす」ことが、最適な戦略になります。このように考えると、住宅ローンを「低金利の資金調達手段」として活用するのが、インフレ時代の賢い立ち回りと言えます。
頭金をしっかり入れるべきなのはどんな人?

このようにフルローンにはいくつものメリットがありますが、全ての人におすすめできるわけではありません。頭金を入れて借入額を減らす方法は安全で確実であり、状況によっては頭金を入れたほうがよい場合もあります。ここでは、積極的に頭金を入れるべき人の特徴を3つ挙げます。
毎月の返済額を少しでも下げて家計を安定させたい人
フルローンを借りると家計が赤字になってしまう人や、毎年の収入が比較的安定していない人、投資などの資産運用に手を出したくない人は、頭金を入れて毎月の返済額を減らし、キャッシュフロー(収支)の安定を優先すべきでしょう。
先ほどのシミュレーションの通り、4,000万円の物件であれば、頭金を400万円入れるごとに、毎月返済額は約1万円下がります。
月1万円、つまり年間12万円の固定費を減らし、また支払う利息の総額を減らせることで、月々の生活での赤字のリスクを減らすことができます。また、借金が少ないこと自体も精神的な安心感につながり、借金への負担感を覚える人には代えられない価値があります。
審査ギリギリで承認率を高めたい人
希望する借入額に対して年収がギリギリの場合、頭金は審査における切り札になります。住宅ローンの審査では「返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)」が重要視されます。一般的に、この比率が30%〜35%を超えると不承認になるリスクが高まります。
頭金を入れれば借入額が減るので、返済額が減り、返済負担率が下がります。「4,000万円のフルローンでは審査に落ちたが、頭金を400万円入れて3,600万円の申請にしたら通った」というケースは珍しくありません。どうしても欲しい物件があるけれど審査が不安という人は、親からの資金援助なども含めて頭金の増額を検討しましょう。
金利上昇リスクを極力減らしたい人(変動金利の場合)
現在、日本は金利上昇が予想される局面であり、変動金利を選んだ場合には将来の金利上昇リスクは避けて通れません。もし将来、政策金利が2.5%などに大きく上がった場合、変動金利もそれだけ上昇することから、その時点での残高が多ければ多いほど、利息の支払額が増えてしまいます。
頭金を最初に入れて借入金額を小さくしておけば、万が一金利が上がった時でも、利息の支払額の増加を抑えることができます。「金利が安い変動金利を選びたいけれど、将来の金利上昇が怖い」という人は、そのリスクヘッジとして頭金を多めに入れておくのが対策の1つです。
失敗しない頭金額の決め方・3つのチェックポイント

ここまでは、頭金を入れない場合と、入れる場合のそれぞれのメリットを見てきましたが、結局、どれくらいの頭金を入れるのが適切なのでしょうか?頭金額を決めるときの失敗を防ぐために、必ず確認してほしい3つのチェックポイントを紹介します。
【残高確認】諸費用+生活費(半年分)を手元に残せるか
まず、最も重要な視点は「頭金を払った後に、いくら現金が残るか」です。
物件の購入時には、物件価格以外にも、手数料や税金などの諸費用がかかります。これは一般的に物件価格の5%〜8%程度、中古物件の場合は7~10%程度です。
また、生活費の6か月分程度の資金は、突発的な事態に備える生活防衛資金として確保しておくことが理想です。そのため、これらを確保することが頭金よりも優先されます。
例えば、貯金が600万円で、購入時の諸費用に200万円、生活防衛資金に180万円(毎月30万円×6か月)が必要な場合は、「600万円-200万円-180万円」、すなわち220万円が頭金として使える上限の目安です。
【ライフプラン】5年以内に教育費や車の購入予定があるか
次に、今の貯金額だけでなく、近い将来の出費も考慮しましょう。特に注意したいのは、今後5年以内に以下のようなまとまった出費がある場合です。
・子どもの高校や大学への進学費用
・車の買い替え
・結婚や出産に対する費用
・海外旅行
住宅ローンは金利0.5~1.0%程度で借りられますが、教育ローンは2〜4%、マイカーローンも2〜5%、カードローンになれば10%以上です。住宅ローンの頭金で現金を使い果たしてしまい、より高金利のローンを組むことになっては本末転倒です。例えば、低金利の住宅ローンをあえて多く借りておき、車は現金一括購入するほうが、家計全体の金利負担を抑えられます。
【金利タイプ】変動か固定かで戦略を変える
選ぶ金利タイプによっても戦略は変わります。前述のように、フラット35は頭金1割(融資率9割)を境に金利が変わります。そのため、頭金1割を入れて「融資率9割以下」を目指すのが鉄則です。金利を引き下げる効果は大きいため、親に借りてでも1割を用意するほうがよいという意見もあります。
一方、変動金利を選ぶなら、頭金はゼロあるいは最小限にして、手元資金を厚く持っておく戦略が有効です。住宅ローン控除の恩恵を受けつつ、もし金利が上昇し始めたら、手元の資金で繰り上げ返済をして借入を減らすという柔軟な対応が取れるためです。
頭金を貯める方法・注意点

「頭金を入れたいけれど、今は貯金がない」という人もいるでしょう。ここでは、これから頭金を貯めていくための具体的な方法や注意点、やってはいけないNG行動を解説します。
頭金を貯める具体的な方法(家計管理・積立・ボーナス活用など)
頭金づくりの王道は、「先取り貯蓄」の仕組み化です。生活費の余りを貯金しようとしても、使い切ってしまった経験はあるのではないでしょうか。そこで、給料が入った瞬間に、別の口座へ自動的に移す表のような方法を試してみましょう。
例えば、毎月5万円+年2回のボーナス20万円を貯めれば、1年間で100万円になります。これを3年続ければ300万円です。いつまでにいくら貯めるかを決め、逆算して毎月の戦略を立てましょう。なお、頭金とは別に、生活防衛資金や教育費なども並行して準備する必要があることにも注意が必要です。
頭金準備中にやってはいけないNG行動・注意点(無理な投資・貯金ゼロ化など)
頭金を増やすには資産運用は有用な手段ですが、早く増やしたいと焦るあまり、貯金をゼロにして無理な投資に回したり、他のローンを組んだりしてしまうことはNG行動です。
例えばFX(外国為替証拠金取引)や仮想通貨、個別株の信用取引などは、大きく資金が増える可能性がある反面、元本割れのリスクが高い商品です。住宅購入の直前に暴落し、家が買えなくなったという事例もあります。大きく増やすことよりも、減らさないことを重視した運用方法(定期預金や個人向け国債など)で管理しましょう。
また、頭金を貯めている間に、車のローンやクレジットカードのリボ払いを利用すると、住宅ローンの審査で不利になってしまいます。住宅購入までは、新たな借金を極力控えましょう。
頭金以外にかかるお金(諸費用・家具家電・引越し・オプション工事)
資金計画でよくある失敗が、「頭金のことしか考えていなかった」というケースです。住宅購入には、物件価格以外にも多くのお金がかかります。
頭金に全財産を投入してしまい、諸費用が払えない、家具家電を買うお金がないといった事態にならないように、200〜300万円程度は別に確保しておく必要があります。
「貯金額・購入時期・希望物件価格」から逆算する頭金の決め方
以上を踏まえて、頭金の現実的な決め方とその例を整理すると、次のようになります。
・ステップ1:目標の設定――3年後に4,000万円の家を、800万円の頭金を入れて購入
・ステップ2:現状の把握――現在の貯金は700万円
・ステップ3:手元に残す資金の検討――生活防衛資金と諸費用への備えとして400万円
・ステップ4:必要額の計算――3年後に必要な貯蓄額は、「400万円(手元資金)+800万円(頭金)」の合計1,200万円
現在の貯金は700万円であるため、逆算すると残り500万円を3年間で貯める必要があります。年間約166万円、例えば「毎月8万円+年2回のボーナスで各35万円」を用意する必要があります。
・ステップ5:実現可能性の判断――この金額の貯蓄が難しければ、頭金を減らすか、購入時期を遅らせるか、物件価格を下げるかによって調整
このような逆算によって、「自分はいくら頭金を用意できるのか」を具体的に考えていきましょう。このようにすると、漫然と貯蓄するよりもモチベーションが高まります。なお、計画通りにいかないことは多々あるため、途中で見直しながら進めていきましょう。
よくある質問と回答(Q&A)
住宅ローンの頭金について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
住宅ローンの頭金はいくら払うのが普通?頭金2割はもう古いですか?
「頭金2割」は過去における目安に過ぎず、現在は「頭金ゼロ〜1割」といった借り入れ方が一般的です。かつては銀行の融資率の制限や高金利のため、2割の頭金を準備するのが常識でしたが、現在は低金利とフルローン商品の普及によって状況が変わりました。
特に20代〜30代の一次取得者層では、手元資金を温存するために頭金ゼロを選ぶ人も多くなりました。その人の置かれた状況によって最適な判断は異なりますので、「普通かどうか」よりも、自身の家計の安全性を考慮して個別に判断する必要があります。
住宅ローンでは頭金と繰り上げ返済はどちらを優先すべきですか?
一般的には「手元資金確保を優先して頭金を減らし、余裕ができたら繰り上げ返済」が安全な戦略です。
頭金は一度入れてしまうと、もう戻ってきませんが、手元に残しておけば急な出費にも対応しやすくなります。また、住宅ローン控除が終わったタイミングや、教育費が一段落した時点などに、いつでも繰り上げ返済に回せます。
特に住宅ローン控除期間中は、あえて返済せずに控除を受けた方が得になるケースも少なくありません。また、団信(団体信用生命保険)の保障は借入残高と等しくなるため、「頭金は最低限にして残りは運用に回しておき、必要であれば将来に繰り上げ返済する」といった柔軟性が高い方法を選ぶ人も多いといえます。
頭金ゼロでも住宅ローンは組めますか?「頭金なしは無謀」と言われる理由は?
頭金ゼロでも住宅ローンを組むことはできますが、「無謀」と言われる主な理由は、①返済負担が大きくなること、②金利条件が悪くなる場合があること、③担保割れのリスクがあるためです。家計の収支や資産に対して借入額が大きすぎなければ、頭金ゼロだからといって大きなリスクにはなりません。
ただし、頭金ゼロ(フルローン)で買うと借入額が物件価格と同じになります。ローン残高が、住宅の資産価値(売却価格)を上回るオーバーローンの状態になりやすく、もし転勤や離婚などによって短期間で家を売らなければならなくなったときに、売却代金でローンを完済できず、多額の現金が必要になるリスクが生じてしまいます。
頭金を多めに入れるメリットや入れすぎて後悔するケースはありますか?
頭金を多めに入れることにより、総返済額の減少や金利優遇といったメリットがありますが、手元資金を投入しすぎてしまって後悔するケースがあります。
頭金を多く入れれば月々の返済は確実に楽になります。しかし、「頭金を1,000万円入れた数年後に、設備の修繕や車の故障、子どもの進学費用が重なり、高金利な別のローンを借りることになった」という失敗談もあります。また、比較的高齢の場合には、頭金を多く入れすぎると、老後資金の準備が間に合わなくなる可能性も出てきます。
住宅ローンの金利はあらゆるローンの中でも低水準です。生活防衛資金や今後の大きな支出の見込みをあらかじめ考えておき、低金利の借金を減らすために貯蓄を使い果たしてしまうことは避けましょう。
住宅ローンの頭金はいくらあれば安心できますか?「安全ライン」の目安は?
住宅ローンの返済によって家計が赤字になる場合を除けば、頭金の金額よりも、頭金を支払った後に「生活防衛資金+諸費用」が残るかが安全ラインとして重要です。
例えば、4,000万円の物件を買う場合、諸費用で約200万~320万円かかります。さらに生活費が月30万円なら、180万円の生活防衛資金を用意しておくことが望ましいでしょう。つまり、合計380万円〜500万円程度を、頭金とは別に確保できているなら安心です。
この場合、貯金が600万円あるなら、頭金に入れられるのは100万~220万円程度までと判断できます。
ただし、他に教育費や車の購入費などが必要な見込みがあれば、それらを別に確保しておく必要があります。また、返済の安全ラインとしては「返済額が収入の何%になっているか」をあわせて考えてみましょう。
頭金はどのタイミングで支払いますか?諸費用もローンに含めて問題ないですか?
頭金の一部は、「手付金」として契約時に現金で払うのが一般的です。不動産売買契約時には、物件価格の5〜10%程度を「手付金」として現金で支払います。これは頭金の一部として充当され、残りの金額は引き渡し時に決済されます。
多くの銀行では、諸費用もローンに組み込むことができますが、借入額が増える分、審査が厳しくなり、金利が上乗せされる場合もあります。諸費用分くらいは現金で用意するのが、審査において金利条件を良くするための現実的なラインとなることが多いです。
まとめ

この記事では、住宅ローンの頭金が金利や返済額に及ぼす影響、頭金を入れるべき人、入れない理由などを解説してきました。
フラット35を利用するなら、頭金1割(融資率9割)とすることで金利が明確に下がるため、頭金の準備は重要です。一方、民間金融機関のローンは頭金なしでも最優遇金利で借りられることが多いといえます。ただし、頭金があるほうが審査には有利にはたらくでしょう。
低金利の現在は頭金による利息の軽減効果はそれほど大きいとはいえません。フルローンにも、手元資金の確保、住宅ローン控除の最大化、インフレ対策としての合理性があります。しかし、毎月の返済額を下げたい人や審査がギリギリの人、変動金利の金利上昇リスクを抑えたい人にとっては有用な方法です。
頭金を入れるときには、諸費用や生活防衛資金が残るように、適切にシミュレーションを行いましょう。
銀行によって「頭金での優遇条件」は大きく異なる
頭金を入れるべきかどうかは、実は住宅ローンを借りる銀行によっても変わります。頭金が1割あれば金利を0.05%下げる銀行もあれば、頭金ゼロでも年収が高ければ最優遇金利で貸し出す銀行もあります。どのような人をターゲットにするかという戦略が金融機関によって異なるために、このようなスタンスの違いがあるのです。
しかしながら、各金融機関のウェブサイトを確認して回るには相当な時間がかかります。また、審査基準を詳しく公開している銀行は限られます。自分の属性(年収・勤務先)と用意できる頭金の額で、最も条件が良い銀行はどこかを比較するのは、難しい作業になっています。
複数の銀行で「頭金あり・なし」を比較するのが正解
住宅ローン選びで後悔しないためには、希望する銀行で「頭金を入れたパターン」と「入れないパターン」の両方でシミュレーションを行い、実質コスト(金利+手数料+保証料など)を比較するのが正解です。
このように数値で比較することで、「なんとなく不安だから頭金を入れる」という感情論ではなく、合理的に損得に基づいて行動できるようになります。
モゲチェックなら自分に最適な条件の銀行がすぐに見つかる
モゲチェックの住宅ローン提案サービス「住宅ローン診断」は、わずか5分の情報入力で、これまでに蓄積された膨大な審査データをもとに、複数の金融機関からあなたに最適な住宅ローンを比較・提案します。「住宅ローン診断」を利用すれば、あなたの属性で融資承認確率が高い金融機関の中から、金利や条件がお得な住宅ローンを見つけることが可能です。
金融機関ごとに、審査基準や頭金の有無による金利優遇の条件は異なるため、きちんと比較することが後悔のない住宅ローン選びの第一歩です。「住宅ローン診断」は完全無料です! まずは気軽に試してみてください。


















