1.奨学金は住宅ローン審査に影響する?
奨学金を返済中の状況で住宅ローンに申し込むと、審査に影響があることを覚えておきましょう。申告が必要であることや、配偶者の奨学金の影響についても解説します。
奨学金も申告が必要
住宅ローンの申し込み時に他の借入がある場合は、審査の際にその旨を申告する必要があります。他の借入の返済が、ローンの返済に少なからず影響を与えるためです。
奨学金がある場合も、審査時に申告しなければなりません。たとえ無利息であったとしても、決められた金額を毎月返済している以上は、借金とみなされます。
奨学金を申告しないまま申し込んだ場合、後から奨学金の事実が発覚すると、融資の承認や実行を取り消される恐れもあります。金融機関と良好な関係を保つためにも、奨学金があるならきちんと申告しましょう。
返済比率に影響する場合がある
奨学金を借りている場合は、返済比率に影響を与えます。返済比率とは、ローンの年間返済額が年収に占める割合です。
返済比率を高く設定するほど、借入可能額を増額しやすくなります。一方、返済比率が高まれば返済負担も重くなるため、一定の基準を超えると審査に通らない可能性があります。
住宅ローンでは、返済比率を算出するための年間返済額に、他の借入分も含めなければなりません。奨学金の返済が年間返済額にプラスされれば、返済比率が高くなり、審査に通りにくくなってしまいます。
配偶者の奨学金は状況により影響あり
配偶者が奨学金を返済中の状態であっても、自分が単独でローンを申し込むのであれば、審査に影響は与えません。住宅ローンの審査では、申し込み者以外の属性は調査の対象にならないためです。
ただし、夫婦で収入合算やペアローンを利用する場合は、配偶者の奨学金が審査結果に影響を与える可能性があります。夫婦でのローン利用を検討している場合は注意が必要です。
配偶者の奨学金の返済状況に何らかの問題がある場合は、夫婦でローンを組もうとしても融資を受けられない可能性があります。単独で申し込んだ方が無難です。
2.奨学金の滞納があると要注意
借金の返済に延滞や滞納がある場合、住宅ローンの審査では不利に働きます。奨学金も借金の一種とみなされるため、滞納があるなら注意が必要です。
延滞や滞納があると信用情報に傷が付く
借金に支払い遅延や滞納がある場合、2~3カ月以上続くと『信用情報機関』に金融事故として登録されます。いわゆるブラックリストに載った状態です。
信用情報機関に延滞や滞納が登録され、信用情報に傷が付いている状態では、住宅ローンの審査に通ることはほとんどありません。住宅ローンに限らず、ローンやクレジットカードなど、あらゆる借入ができなくなるでしょう。
奨学金に延滞や滞納があった場合も、信用情報機関に延滞や滞納の記録が残されます。他の借入と同様に扱われるため、ローン審査の通過は厳しくなります。
自分の信用情報を確認する方法
信用情報機関の種類は、CIC・JICC・JBAの三つです。取り扱う情報がそれぞれ異なっており、一部の情報は3機関の間で共有されています。
信用情報機関に情報開示を求めれば、自分の信用情報を確認することが可能です。開示手数料は3機関とも1,000円前後です。
開示請求後は、窓口や郵送で開示情報を確認できます。いずれの信用情報機関もウェブサイトでの情報確認が可能です。奨学金の返済に関し、ブラックリストに載っているかどうか分からない場合は、開示請求を行い確認するとよいでしょう。審査に落ちた際の原因を洗い出す手段としても役立ちます。
ブラックリストから消えるまでの期間
信用情報機関に登録された情報は、一定期間が経過すると削除されます。登録から削除までの期間は、5~10年が目安です。
一般的に、延滞や滞納に関する情報は削除までの期間が短く、債務整理情報は長めに登録される傾向があります。
奨学金の延滞や滞納が原因で審査に通らない可能性が高ければ、少なくとも登録から5年間は待つ必要があるでしょう。ブラックリストから金融事故情報が消えた後は、審査に通る可能性が高くなります。
3.事前に奨学金を一括返済するメリット
自己資金に余裕がある場合は、奨学金の一括返済を検討するのも一つの方法です。住宅ローンの申し込み前に奨学金を完済するメリットを紹介します。
借入額が増える可能性がある
奨学金を一括返済して住宅ローンを申し込めば、返済中のまま申し込む場合と比べ、借入できる金額を増やせる可能性があります。希望額に届きやすくなる点がメリットです。
住宅ローンのほかに返済があると、借入希望額を減らされて減額承認となるケースがあります。奨学金も借金の一つとみなされるため、契約後も返済を続ける意思を示せば、減額承認を受けることにもなりかねません。
しかし、奨学金を完済してしまえば、少なくとも借金の一つはなくなることになります。返済負担が軽減されることにより、借入額の増額を期待できるという考え方です。
奨学金の支払利息が減る
貸与型奨学金の種類には、利息が発生しない『第一種奨学金』と、利息をプラスして返済する『第二種奨学金』の二つがあります。第二種奨学金は、月々の返済額が一定額に設定された定額返済方式です。
第二種奨学金を返済中に一括繰り上げ返済を行えば、その後も支払い続ける予定であった利息を支払わずに済みます。総返済額を減らせることが魅力です。
住宅ローンを利用する予定であれば、ローンの月々の返済額にも利息が含まれています。奨学金を並行して返済すると利息が二重に発生するため、奨学金の一括返済で支払利息を減らせることは大きなメリットといえるでしょう。
4.奨学金を借りたままの方がよいケースも
ローンの申し込み前に奨学金を一括返済できるケースでも、借りたままの方がよい場合があります。一括返済するメリットと比較し、自分にとって適切な方法を選びましょう。
無金利または低金利の場合
奨学金を完済できる余剰資金がある場合、一括返済せずにローンの頭金に充てる選択肢もあります。頭金を増やすことで融資額を減らせるため、返済負担を軽減することが可能です。
奨学金を一括返済する場合も、支払利息が減るため返済負担は減ります。しかし、奨学金はそもそも低金利である場合が多く、一括返済しても利息軽減効果は低いのが実情です。
余剰資金の使い道を、奨学金の一括返済と頭金の増額で悩んだら、奨学金の金利をチェックしましょう。無金利または低金利なら借りたままの方がよいでしょう。
手元の現金を減らさずに済む
奨学金を完済せず借りたままにしておけば、手元の現金を減らさずに済みます。将来的に発生する高額な出費や、もしものときに必要な出費のために、備えとして手元資金を残せる点がメリットです。
住宅ローンは長期間にわたり返済していくものであり、完済までには出費を必要とするさまざまなライフイベントが発生するでしょう。病気やケガ、職場の倒産などにより、収入が一時的に途絶えてしまうケースも考えられます。
ある程度の現金を手元に残しておけば、家計のやり繰りを気にせず安心して生活を送れます。将来の備えとして現金を残しておきたいと考えるなら、奨学金を返済し続ける方がよいでしょう。
5.奨学金の状況を事前に確認しておこう
奨学金の返済中に住宅ローンを申し込んだ場合、審査に影響を与えます。延滞や滞納があると融資を受けられない場合もあるため、状況を事前に確認しておくことが大切です。
奨学金を一括完済してから申し込めば、借入額を増やせる可能性があります。ただし、借りたままの方がよいケースもあるため、自分に合った方法を選べるように知識を身に付けた上で検討しましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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