1.短期でも住宅ローン滞納はリスク大
たとえ短期間だとしても、住宅ローンの滞納は大きな損失を生みます。具体的にどのようなリスクがあるのかチェックしましょう。
優遇金利の適用が終了
滞納が発生すると、それまでの『優遇金利』の適用が終了します。金利には優遇金利と店頭金利があり、店頭金利が定価、優遇金利が割引価格といった関係性です。
優遇金利が適用されるのは、金融機関が定める基準を満たしている契約者に限られます。あくまでも特別な待遇を受けている状態です。
割引価格から定価に変わると考えると、支払いが多くなることは容易に分かるでしょう。残債と店頭金利との差額によっては、総返済額が数百万円変わるケースもあるほどです。毎月の返済額も1~2万円はアップするでしょう。
信用情報に傷が付く
1~2回の支払い遅延では、大きな影響があるようには見えないでしょう。金融機関からも通知が届く程度のため『遅れていても支払えばOK』と考える人もいるかもしれません。
しかし後から支払っていたとしても、遅延した記録は個人信用情報機関に記録されます。一度記録された情報は、一定期間消えません。
個人信用情報機関に掲載されている情報は、他のローンやクレジットカードへの申込時にも参照されます。記録が残っているとまず審査には通りません。今すぐには影響がなくても、将来困る可能性があります。
2.引き落とし日に残高が不足した場合
住宅ローンを滞納すると、優遇金利が店頭金利に変更されることや、個人信用情報機関へ記録が残ることもあると分かりました。では引き落とし日に残高不足になった場合にも、滞納として扱われるのでしょうか?残高不足への対処法を確認します。
金融機関の指定口座に振り込み
引き落とし日に口座残高が不足してしまう事態は、誰にでも起こり得るでしょう。そのため残高不足が発生したとしても、すぐに対処すれば大きな問題にはなりません。
まずは借入先の金融機関へ、残高不足で引き落としできなかった旨を伝えます。すると金融機関から支払い方法を指定されるはずです。
指定口座への振り込みや返済口座への入金など、指示通りに行いましょう。できるだけ速やかに対処すると、問題はさほど大きくはならないでしょう。
遅延損害金が発生
返済期限を過ぎても返済できない場合『遅延損害金』が発生します。支払期日の翌日から遅延した日数分発生するペナルティです。
遅延損害金は一般的に年利『14.6%』程度に設定されています。
具体的な遅延損害金の金額は『借入残高×遅延損害金利率(年利)÷365日×延滞日数』で計算可能です。
例えば月の返済額10万円・遅延損害金利率14.6%・延滞日数10日間の場合には、400円の遅延損害金が発生します。延滞日数が長くなれば、その分遅延損害金は膨らむでしょう。
3.住宅ローンを長期滞納した際の流れ
たまたま口座残高が不足してしまったのなら、状況はすぐに改善されるでしょう。しかし長期滞納した場合には事情が異なります。滞納し続けたときの流れを見ていきましょう。
1〜2カ月後:支払いの督促が届く
住宅ローンの支払いを行わず1~2カ月が経過すると、金融機関から『督促』が届きます。督促は書面で送られてくるケースが多いでしょう。ほかに電話で連絡がくる場合もあります。
滞納している住宅ローンと発生した遅延損害金の請求に加え、今後のことにも触れられている内容です。例えば延滞が続けば一括返済を請求することや、保証会社による代位弁済が行われることなどが記載されています。
督促が届く段階では、それほど厳しく取り立てられる印象はありません。
2〜3カ月後:催告書が届く
督促を無視し続け滞納の期間が2~3カ月になると『催告書』が届きます。通知の内容は督促とほぼ同じです。
期日までに住宅ローンの元金・金利・遅延損害金を支払わなければ、ローンの分割払いの権利を失うことが記載されています。ただし金融機関からの『最後通告』である点が違いです。
住宅ローンを利用し続けるための最後のチャンスともいえます。このチャンスを逃し期日を過ぎると、住宅ローンを一括返済しなければいけません。
3〜6カ月後:期限の利益喪失通知
延滞期間が3カ月以上になると、金融機関から『期限の利益喪失の通知書』が届きます。期限の利益というのは、住宅ローンを少しずつ長期間かけて返済できる権利のようなものです。
その権利を失ったということは、これまでのように月々返済を続けていればOKという状態ではありません。分割払いは認められず、残債の一括払いを求められます。
このとき契約者が一括払いできなければ、金融機関は保証会社へ住宅ローンの一括返済を請求するでしょう。
代位弁済通知が届く
金融機関の求めに応じ、保証会社が代位弁済を行うと『代位弁済の通知』が届きます。代位弁済というのは保証会社が本来の債務者である契約者に代わり、住宅ローンを金融機関へ返済することです。
ただしここで返済が終わるわけではありません。契約者は金融機関への返済を肩代わりした保証会社に対して返済する義務があります。保証会社から届く返済の請求は、ローン残高と遅延損害金の一括返済を求める内容です。
金融機関からの一括返済に応じられなかった場合、ここでも一括返済をするのは難しいでしょう。すると保証会社は競売に向けての手続きを進め始めます。
自宅が競売にかけられる
それでも何もせずにいると、裁判所から『競売開始決定通知書』が届きます。保証会社の申し立てにより、競売手続きを開始したこと・不動産を担保に差し押さえたことを知らせる書類です。
差し押さえられたということは、これ以降は無断で家の処分をできなくなります。ただしこの段階であれば、競売の申し立てを取り下げてもらうことも可能です。
保証会社はあくまでも代位弁済した費用の回収を求めています。そのため相場と同程度で売れる可能性のある任意売却になら、応じてもらえるかもしれません。
4.住宅ローンの支払いが厳しくなったら
長期間にわたり滞納を続けると、最終的に家は競売にかけられ、強制的に手放すことになります。ただし長い返済期間中には、さまざまな理由により一時的に収入が減ることもあるでしょう。
一時的にローンの支払いが厳しくなったときには、どのように対応するとよいのでしょうか?
リスケジュール
まず検討するのは『リスケジュール』です。金融機関へ相談し、無理なく返済しやすいよう調整してもらいます。例えば下記のように返済の期間や条件を変更することです。
- 当初20年ローンで契約した期間を35年ローンへ変更する
- 半年・1年など一定期間の返済を利息のみにする
リスケジュールの相談は、滞納が発生する前、もしくは滞納が発生してすぐに行いましょう。期限の利益喪失の通知が届いてからでは、一括返済以外の選択肢がなくなります。
ただし返済スケジュールを変更すると、多くのケースでは返済期間が長くなり、総返済額が増えるでしょう。債務者の年齢や借入内容によっては、リスケジュールができない可能性もあります。
一時的な資金繰りの相談
病気やけが・社会情勢の影響などで一時的に収入が落ち込んでいる家庭もあるでしょう。そのようなケースでは、一時的な資金繰りを金融機関へ相談するのも一つの方法です。
金融機関と相談し、定められた期間中の返済額を減らしてもらいます。ただし返済額を減らすと元本がほとんど減りません。そのため減額期間後は返済額を増やすか、返済期間を延ばすと返済しやすいでしょう。
また多くの金融機関では、困ったときに相談できる窓口を設置しています。一時的な資金繰りの相談は、事情さえ説明すれば分かってもらえるケースも多いものです。
悩んだときは早めに金融機関へ相談しましょう。
5.支払いが不可能になってしまった場合の対処法
既に支払いが難しい状況になってしまった場合には、どのように対処すればよいのでしょうか?競売を避ける方法として任意売却について解説します。
任意売却を検討
滞納し続けずっと何もしなければ、自宅は差し押さえられ、競売で相場より安く売却されてしまいます。この場合、返済しきれなかった金額は、引き続き払い続けなければいけません。
加えて競売では、強制的に退去させられる上、引っ越し費用などの工面もできないケースが多いでしょう。経済的に大きな損失です。
一方、任意売却では、相場と同程度で売却できる可能性があります。ローン残高を完済できるかもしれません。交渉次第では引っ越し費用も確保できるでしょう。
任意売却の仕組み
任意売却とは債権回収会社や保証会社が代位弁済した後に、自宅を売却する方法です。ただし任意売却できる期間は、競売物件として落札者が決まるまでの間と定められています。
落札者が決まってからでは、任意売却へ切り替えできないため注意しましょう。また通常の不動産売却とは、債権者と役所に同意を得なければ売却できない点で異なります。
住宅ローンの返済が終わっていない不動産には『抵当権』や『差押』が登記されており、そのままでは売却できないからです。そこで保証会社や、税金の滞納があるなら役所とも相談し、手続きを進めます。
債権者との一連の交渉は、専任媒介契約を結んだ不動産会社が代理人となるのが一般的です。
6.住宅ローン滞納前に金融機関へ相談を
住宅ローンを滞納すると、たった一度でも優遇金利の適用が終了する可能性があります。高利率の店頭金利が適用されれば、毎月の返済額も総返済額も負担は増加するでしょう。
また個人信用情報機関には遅延の記録が残ります。今は影響がなくても、ほかのローンやクレジットカード作成に困るかもしれません。
さらに滞納の期間が長くなれば、保証会社による代位弁済が行われ、競売にかけられてしまうでしょう。そのような事態を避けるには、できるだけ早い段階で金融機関へ相談することです。
ケースによってはリスケジュールで返済の負担を軽減してもらえるかもしれません。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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