1.住宅ローンが払えないとどうなる?
住宅ローンの返済ができなくなり、滞納が続いた場合の流れを解説します。物件が競売にかけられるタイミングについても知っておきましょう。
支払い滞納が起こった後の流れ
住宅ローンを1~3カ月間滞納すると、金融機関から督促状が届きます。さらに滞納が続くと、ローンを分割で支払う権利を喪失し、6カ月目までに残債の一括返済を求められるでしょう。
支払いが約3カ月滞った時点で、信用情報機関に滞納情報が登録されます。信用情報機関とは、個人のカード利用状況や金融事故など、一定期間の信用情報を保存している機関です。
約半年経過しても滞納が続く場合は、裁判所から競売開始決定通知が送付されます。滞納開始後8~10カ月目には、競売入札期間の通知が届きます。
落札者と交渉を行い、立ち退かなければならなくなる時期が、滞納10~12カ月目です。立ち退きを拒否し続けた場合、強制執行の措置がとられます。
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すぐに競売にかけられるわけではない
住宅ローンの契約を締結する際、金融機関は購入物件を担保に入れます。債務者が返済不能となった場合に物件を競売にかけ、売却代金を残債に充当するためです。
ただし、滞納開始後すぐに競売にかけられるわけではありません。少なくとも約半年間は、競売にかけるまでの猶予期間があります。
金融機関と債務者の間に保証会社が入っている場合は、約半年経過後に保証会社による代位弁済が行われるでしょう。代位弁済とは、借り主に代わり債務を返済することです。
代位弁済後は、保証会社から一括返済請求を受けます。このケースでも、滞納が続く場合は、最終的に物件が競売にかけられることになります。
2.支払いが厳しくなった場合の対処法
ローンの返済が苦しくなっても、家を手放したくないと考える人は多いでしょう。物件の売却を回避する方法を紹介します。
金融機関へ返済条件見直しを相談
ローンの返済が厳しくなってきた場合は、金融機関へ相談してみましょう。月々の返済額を減らしたり、返済期間を延長したりできる可能性があります。
ただし、返済条件の見直しにより、総返済額は増える可能性があります。あくまでも月々の返済負担を軽減する処置である点に注意しましょう。
返済計画を変更してもらうためには、できるだけ早めに金融機関へ連絡することが重要です。時間が経ち返済不能の状態になってからでは、相談する意味がなくなってしまいます。
返済期間を延ばして借り換え
金融機関によっては、返済期間の延長が可能な借り換えに対応しているケースがあります。返済期間を延ばした上で、借り換えにより金利を見直せば、返済負担を大きく軽減することが可能です。
35年ローンを組んで10年後に返済が苦しくなった場合も、返済期間を再度35年に設定し、より低い金利でローンを組み直せる場合があります。
返済期間を延長できる借り換えを利用するには、申し込み時年齢や完済時年齢などの条件を満たす必要があります。また、他行からの借り換えの場合、多くの金融機関では返済期間を延長できません。
返済期間を延ばしての借り換えとは?
〜返済期間を延ばす〜 毎月返済額を大きく下げる住宅ローン借り換え
リバースモーゲージの利用
自宅を担保にして現金を借入できる『リバースモーゲージ』を利用すれば、借入金を使ってローンの残債を一括返済できるため、返済負担を一気に減らすことが可能です。
リバースモーゲージで借りた元金は、契約者の死亡時に、物件売却代金または相続人の自己資金で一括返済します。契約者が亡くなるまでに支払うのは毎月の利息のみです。
リバースモーゲージを活用することで、自分が亡くなるまでの間は自宅に住み続けられます。ただし、契約者の死亡時に物件を売却して返済する場合、相続人に家を残せません。
リバースモーゲージは、高齢者の生活資金確保をサポートする目的で誕生したサービスです。年齢制限などの条件が比較的厳しいため、利用を検討する際は前もって調べておく必要があります。
リバースモーゲージについてもっと詳しく
3.管理費や修繕積立金の滞納も要注意
分譲マンションを購入すると、管理会社に管理費や修繕積立金を毎月支払わなければなりません。これらの費用も、滞納が続くと問題が大きくなるため注意が必要です。
滞納により競売の対象になることも
分譲マンションの購入後は、管理費や修繕積立金を毎月支払う必要があります。管理費や修繕積立金は、マンションの資産価値を保つために欠かせない費用です。
管理費や修繕積立金を数カ月滞納すると、マンションの管理会社や管理組合から督促を受けます。さらに滞納が続いた場合は、弁護士から支払催告書が届くことになるでしょう。弁護士の支払請求にも応じなければ、訴訟にまで発展しかねません。
最終的には競売にかけられてしまう場合もあります。通常は金融機関の債務回収が優先されますが、管理費や修繕積立金の回収が極めて困難なケースでは、法律により競売を請求することが認められています。
滞納中の売却は難易度が上がる
滞納中のマンションを売却する場合、債務の負担を買い手に強いることになるため、相場価格から債務負担分を差し引いた価格で売りに出されるのが一般的です。
滞納の事実を隠して売却しても、後から発覚した場合に損害賠償請求などの法的措置をとられる可能性があります。売却時には滞納の事実を重要事項説明で告知しなければなりません。
滞納が続いていた物件は、ほかの住人の間で噂になっているケースもあり、風評が引き継がれることを嫌って売り手がつかないパターンもあります。このように、滞納中のマンションは売却の難易度が高くなるのが実情です。
4.メドが立たないなら任意売却の検討を
どうしても返済が困難な状況なら、競売にかけられる前に任意売却を検討しましょう。任意売却の概要や注意点、競売との違いについて解説します。
金融機関の合意を得て売却する方法
任意売却とは、住宅ローンの返済中に、金融機関の合意を得て物件を売却することです。返済を続けられなくなった際に、物件の売却費をローンの返済へ充てる目的で行われます。
ローンの滞納が続くと、最終的には物件が競売にかけられます。しかし、競売は安く売却されやすいなどのデメリットが多いため、競売前に任意売却を検討するのが一般的です。
ローンの返済中は金融機関が物件を担保に入れていることから、金融機関の許可を得なければ任意売却はできません。合意さえ得られれば、通常の売却と同様に手続きを進められます。
競売と任意売却の違い
一般的に、競売では市場価格の7割程度でしか売却できないため、残債がより多く残ってしまいます。一方、任意売却では市場価格に近い価格で売却可能です。
引き渡しできる日にも違いがあります。任意売却では引き渡し日を自由に選べますが、競売の場合は強制的に退去させられる可能性が高く、移住日を自由に設定できません。
プライバシー面に関しては、任意売却なら事情を知られることなく売却できます。一方で、競売は新聞やインターネットに情報公開される上、多くの関係者が調査に訪れるため、事情を知られやすくなります。
残債が発生した場合は返済が必要
任意売却の大きなメリットは、競売より物件を高値で売却できることです。しかし、任意売却を行っても、住宅ローンの債務が残ってしまう場合もあります。
残った債務は引き続き返済しなければなりません。金融機関と交渉し、ローンを組んで返済していく形をとるのが一般的です。任意売却を行う前の状態に比べ、返済負担は大幅に軽減できるでしょう。
どうしても残債を返済できない場合は、個人再生で債務を減らしたり、自己破産により全ての債務をなくしたりする方法をとらざるを得ません。
5.支払いが困難になったら早めの対処を
住宅ローンの滞納が続くと、最終的には物件を競売にかけられます。任意売却を行う方法もありますが、いずれにしても家を手放さなくてはなりません。
支払いが厳しくなった場合、早めに金融機関へ相談すれば、返済条件を見直してくれる可能性があります。返済期間を延長しての借り換えや、リバースモーゲージの利用も検討しましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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