1. 住宅ローンで重要な三つの審査基準
さまざまな審査基準をもとに融資の可否が判断される住宅ローンですが、中でも多くの金融機関が参考としている3種類の審査基準をチェックしましょう。
年収と返済額の割合
年収に占める年間返済額の割合を『返済比率』といいます。『年間返済額÷年収』で算出できる値で、多くの金融機関が『30~35%』を上限に融資額を決定しているようです。
例えば『フラット35』はどの金融機関でも、年収4,000,000円未満は30%以下、年収4,000,000円以上は35%以下に返済比率が設定されています。年収5,000,000円・返済比率35%で借り入れる場合なら、年間1,750,000円、1カ月145,800が上限です。
このように返済比率に上限が設けられているのは、金融機関が貸し出したローンを確実に回収するためです。返済比率が高過ぎると負担が重くのしかかり、返済が滞るかもしれません。
貸し倒れのリスク回避のために、適正なローン金額かチェックする項目が返済比率なのです。
借入時・完済時の年齢
審査基準の大切な項目として『借入時年齢』と『完済時年齢』も挙げられます。借入時年齢は金融機関や商品ごとに、下限20歳・上限75歳というように決められているものです。
完済時年齢も定められており、80歳未満を条件としている商品が多数あります。住宅ローンの返済期間は最長35年や50年などと定められていますが、借入時年齢によっては最長期間では審査に通過しません。
例えば48歳で完済時年齢80歳の住宅ローンを契約した場合、最長でも借りられる期間は80歳までの32年間です。最長35年ローンを組める商品であっても、年齢によってはより短い期間しか申し込めません。
勤続年数と収入の安定性
金融機関の95.6%が審査基準として採用している『勤続年数』は、収入の安定性をチェックする項目です。長い期間をかけて返済することの多い住宅ローンだからこそ、ずっと働き続けられるかを審査されます。
勤続年数が長ければ、将来にわたり返済し続けられる安定性があるだろうと判断されるのです。審査に通過する勤続年数は金融機関によってさまざまで、1年以上のところもあれば数カ月でOKというケースもあります。
勤続年数に不安がある場合には、事前に情報収集してから、自分の条件でも審査に通りやすそうな金融機関を選ぶとよいでしょう。
2. そのほかにもある審査に影響するポイント
住宅ローンは金額が大きくなるケースが多いため、複数の項目を参考に審査されるのが特徴です。そのため先に挙げた三つの基準以外にも、審査に影響するポイントがあります。
カーローンなどすでに借入がある
カーローンや教育ローンなど、住宅ローンのほかにも借入がある場合、審査に影響する可能性があります。先に挙げた返済比率は、ほかのローンでの借入金額を含めて考えられるからです。
例えば返済比率を計算し、1カ月の返済額が125,000円までなら借入可能となったケースで、月30,000円のカーローンの返済があるとします。この場合には、1カ月に95,000円が住宅ローンの返済に使える金額です。
そのためほかのローンを考慮せずに考えていると、当初考えていた計画より借入金額が低くなる可能性があります。希望の住宅を購入するための十分な資金を確保できないことや、借入自体を断られることも考えられるのです。
また借入には、クレジットカードのリボ払いや奨学金の返済なども含まれる点に注意しましょう。
物件の担保価値が低い
他の審査基準を満たしている場合でも『物件の担保価値』によっては審査に通過しないことがあります。住宅ローンは購入する住宅を担保に借り入れるものだからです。
借入金額と同等の担保価値のある物件でなければ、返済不能となった際に競売で売却しても十分な金額を回収できません。そのため担保価値の低い物件だと、ローンが組めないケースがあります。
特に注意が必要なのは、中古物件を購入する場合です。思いのほか担保価値を低く見積もられ、ローン金額が大きく減額されることや融資が下りないことがあります。
3. 健康状態に問題がある場合は要注意
審査基準をクリアし、物件の担保価値が十分ある場合でも、健康状態に不安な要素があるときには注意が必要です。一般的に借入の条件とされている『団体信用生命保険(団信)』に健康状態の問題で加入できない場合、住宅ローンを契約できません。
「団信」の審査に落ちるリスク
団信は住宅ローンの返済中に契約者が死亡・高度障害など万が一の状態に陥った際、残債を代わりに支払ってくれる保険です。生命保険の一種のため、加入には健康状態に関する告知が必要になります。
そのため健康状態に問題がある場合には、審査に落ちてしまう可能性があります。仮に金融機関の審査に通過していても、団信の審査に落ちると借入はできません。
健康状態が不安な場合の選択肢
一般的な団信の審査に落ちたとしても、まだ選択肢はあります。例えば加入条件が緩やかな「ワイド団信」を扱う金融機関を検討しましょう。持病があっても加入しやすいため、審査通過の可能性が高まります。
団信に未加入でも契約できる『フラット35』を利用するのも一つの方法です。借入金相当額の民間生命保険を利用することで、万が一にも備えられます。
引受基準緩和型の保険を新たに契約してもよいですし、今契約している生命保険でも内容によってはカバーできるかもしれません。ほかにも返済能力のある連帯保証人を立てる・親からの援助に頼るなどの方法もあります。
4. 住宅ローンの審査は総合的に判断される
住宅ローンの審査基準は収入や安定性だけではありません。ほかにも返済比率・年齢・物件の担保価値・健康状態など、さまざまな基準があります。
どれか一つが基準を満たしていればいいというものではないため、例えば収入が高くても安定性が悪いと判断されれば審査通過は難しいでしょう。また他の基準を満たしていても、健康状態が悪ければ団信に加入できず借入できません。
総合的に判断されることを知った上で申し込みましょう。
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