1. 住宅ローンのワイド団信とは
団信に加入する際、一般的な生命保険と同様に健康状態を知らせる「告知」が必要です。告知内容によっては一般団信に入れず、住宅ローンが借りられない場合があります。
そこで健康状態に問題のある方向けに、一般団信より加入条件が緩和された団信がワイド団信です。
金利上乗せによるコスト負担は必要ですが、過去または現在健康状態に問題を抱えていても加入できる可能性があります。
ワイド団信は加入条件が緩和されているだけで、保障内容は一般団信と同じです。各種団信のカバー範囲についてまとめたものが下図です。
ご参考:住宅ローンを組めない病気はある?団信の役割と審査基準を解説
団信に加入する際の告知内容は一般的に以下の3点になっています。
(1)最近3ヵ月以内の医師の治療(指示・指導を含む)・投薬の有無
(2)過去3年以内に病気(注)が原因の手術や、一定期間(概ね2週間以上)の治療 (指示・指導を含む)・投薬の有無
(3)身体の欠損や機能障害や、視力など身体機能の障害の有無
(注)対象となる病名や障害などは日々変動しますので、ここでは記載していません。また同じ病気でも判断により加入できたりできなかったりしますので、詳しくは該当の銀行などで確認するようにしてください。
保険会社から一般団信での保険引受を拒絶された場合には、一般団信より加入条件が緩和されたワイド団信を使います。
ワイド団信は、一般団信に加入できなかった病気や症状の経歴がある人でも、引受条件が緩和されていることで、加入できる場合があります。
2. ワイド団信の保障内容
ワイド団信の保障内容は、各金融機関が提供する一般団信と基本的に同じです。
住宅ローン利用者が死亡、または高度障害になった場合にその時点の住宅ローン残高に相当する保険金が支給され、住宅ローンの返済に充てられます。
また、余命6ヶ月と診断された場合に住宅ローン残高相当額が保険金として支払われるリビング・ニーズ特約が付いている場合もあります。ワイド団信に加入する場合、金利上乗せが必要になります。
(1)死亡保障
保険期間中に死亡した場合
(2)高度障害
責任開始日以後に生じた傷害または疾病が原因で、保険期間中に所定の高度障害状態になった場合
(3)リビング・ニーズ特約
保険期間中に医師の診断書などで保険会社により余命6ヶ月以内と診断された場合
3. ワイド団信の上乗せ金利
上乗せ金利は多くの金融機関で0.3%となっています。
4. ワイド団信で注意すべきポイント
(1) コストがかかる
ワイド団信への加入には通常0.3%程度の金利上乗せが必要になります。
(2) 引受基準が明確ではない
どの程度の症状であれば加入できるのか明確な条件が公表されていないため、実際に申し込んでみないと加入可能かどうかが分かりません。
(3) 金融機関が限定される
ワイド団信を取り扱っている金融機関は限定されます。
5. ワイド団信に入れない病気
ワイド団信の加入対象となる疾病は幅広いのですが、それでもワイド団信に入れる可能性が低い疾病はあります。
一般的に以下の病気は、ワイド団信でも加入を断られる可能性が高いとされています。
・がん
・糖尿病
・うつ病
・適応障害
ワイド団信に関する説明の冒頭で触れたように、加入の可否は保険会社の判断を仰がないとわからないので、まずは金融機関に相談したうえで、必要に応じて事前審査を受けて、その結果が出てから考えた方が良いでしょう。
がん罹患歴があっても団信に加入できる可能性も?
現代社会で比較的多く罹患者がいる「がん」に備え、がん保障付きの団信を希望する人も増えています。しかし、がんを一度経験した人はなかなかがん団信に加入するのが難しいのが実情です。
一方で、「がん経験者も利用できる」ことを謳っている住宅ローンもあります。具体的にはPayPay銀行です。
PayPay銀行が2024年6月から提供を始めた「超サポ団信」では、がん経験者も一定の条件を満たせば「がん50%保障」「がん100%保障」に加入することが可能です。
がん経験者だからといって追加負担があるわけではありません。がん団信を希望するがん経験者は、PayPay銀行を検討してみましょう。
\がん経験者もok!PayPay銀行の「超サポ団信」/
6. ワイド団信を比較!
各金融機関のワイド団信の年齢制限及び特約は、下記表の通りです。
金融機関 |
加入時年齢 |
完済時年齢 |
リビングニーズ特約 |
上乗せ金利 |
65歳未満 |
80歳未満 |
◎ |
0.3% |
|
65歳以下 |
80歳未満 |
◎ |
0.3% |
|
65歳未満 |
80歳未満 |
◎ |
0.3% |
|
51歳未満 |
80歳未満 |
☓ |
0.3% |
|
りそな銀行 |
50歳未満 |
80歳未満 |
◎ |
0.3% |
65歳以下 |
81歳未満 |
◎ |
0.3% |
|
50歳未満 |
80歳未満 |
◎ |
0.3% |
|
65歳未満 |
81歳未満 |
◎ |
0.2% |
◎:付帯している
☓:付帯していない
【おすすめ銀行】低金利!auじぶん銀行のワイド団信
auじぶん銀行は住宅ローン市場でもトップクラスの低金利の金融機関です。
ベースの金利が低いので、ワイド団信を利用した場合も低い金利で住宅ローンを組むことができます。
7. ワイド団信にも入れない場合
一般団信にもワイド団信にも加入できない場合、「団信に加入しない」という選択肢もあります。
この場合、公的な住宅ローンであるフラット35を借りることになります。
また金融機関によっては、健康状態に懸念が無かったときに加入済みの一般的な生命保険があれば、団信未加入でも住宅ローンを借入できる場合もあります。ただし金融機関で対応は異なりますので、ご自身で確認するようにしてください。
8. まとめ:ワイド団信を使える銀行を確認しよう
ワイド団信は持病をお持ちの方でも加入いただける可能性のある、加入条件が緩和された団信です。一般団信の加入ができない方はまずどの銀行がワイド団信を取り扱っているか確認した上で、住宅ローンを選びましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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