1.住宅ローンの団体信用生命保険とは
団体信用生命保険とは、どのようなタイプの保険なのでしょうか。一般的な生命保険との違いなど、まずは基礎知識を理解しましょう。
死亡や高度障害時にローン返済できる保険
『団体信用生命保険(団信)』は、住宅ローンの債務者が加入する生命保険です。ローンの返済中に、債務者が死亡したり高度障害状態に陥ったりした場合、団信から支払われる保険金で残債を返済できます。
ほとんどの民間金融機関では、住宅ローンの利用条件に団信への加入を定めています。申込者が団信に入れなければ、その金融機関で住宅ローンは組めません。
契約者本人や家族が保険金を受け取れる一般的な生命保険と異なり、団信からの保険金は金融機関へ直接支払われます。住宅ローンの残債をまかなうことが目的の保険金であるためです。
死亡時以外の保障もある
団信でカバーできるリスクは、死亡や高度障害だけではありません。多くの団信では、さまざまな特約が用意されています。
団信で付けられる代表的な特約が『がん保障』『3大疾病保障』『8大疾病保障』です。がん保障では、がんと診断された場合にその時点の住宅ローン残高相当分の保険金が支払われ、住宅ローンの返済に充てられます。3大疾病保障では債務者のがん・脳卒中・急性心筋梗塞をカバーし、8大疾病保障になると病気の種類に糖尿病や高血圧性疾患などが追加されます。
金融機関によっては、さらに多くの病気やけがをカバーする『11大疾病保障』や『全疾病保障』を用意しているケースもあります。特約は無料と有料のものに分かれており、有料の場合は金利に上乗せして保険料を支払うのが一般的です。
生命保険との使い分けは?
団信は住宅ローン専用の保険であるため、完済後は保障を受けられません。ローン完済後のリスクには、一般の生命保険で備える必要があります。
団信の死亡保険料は、ローンの残債に対してのみ支払われる点もポイントです。葬儀費などにも保険金が残るようにしたいのであれば、一般の生命保険も契約しなければなりません。
疾病保障についても同様です。一般の生命保険で支払われる疾病保障の保険金は、使い道に制限がないのに対し、団信の保険金は残債を減らす目的でのみ支払われます。
団信と一般の生命保険を使い分ける際は、重複する保障がないか確認しましょう。特に理由がないなら、保障の重複を避けることで保険料を削減できます。
2.団体信用生命保険の審査内容
団信に加入する際の審査について詳しく解説します。告知に関するポイントを押さえておくことが大切です。
申込時に健康状態の告知を行う
団信に限らず、生命保険や医療保険に加入する際は、現在の健康状態や過去の病歴を正直に保険会社へ伝えなければなりません。これを『告知義務』といいます。
団信に加入する際の告知は、申込時に告知書で行うのが一般的です。告知書内の告知事項を正確に記入し、保険会社へ提出します。
借入金額が高額の場合は、定期健康診断の結果通知書や所定の診断書を求められることもあるでしょう。現在または過去の健康状態によっては、団信に加入できない場合があります。
告知義務違反は契約解除のリスクあり
健康状態の告知を行う際に、偽りの告知をしたり事実を告げなかったりすることを、『告知義務違反』といいます。告知義務違反が後から発覚すると、団信の契約を解除される恐れがあります。
団信の契約解除を受ければローン契約も成り立たなくなるため、金融機関から残債の一括返済を求められかねません。一括返済できなければ物件は競売にかけられ、マイホームを失うことになります。
競売による売却代金でも残債を完済できない場合は、残りの分を返済し続ける必要があります。このような状況に陥ることのないよう、告知は必ず正直に行いましょう。
告知事項があっても加入可能な場合はある
持病や通院歴があるからといって、全てのケースで審査に落ちるわけではありません。告知事項があっても、団信に入れるかどうかは告知内容により異なります。
例えば、『直近3カ月以内に医師の治療や投薬を受けたことがある』という設問には、軽い風邪などで病院にかかった場合も『ある』と回答することになります。この回答だけで審査に落ちることはまずありません。
ほかにも不安を感じやすい設問はありますが、『ある』と回答した場合でも、審査に通るかどうかは内容次第です。『どのように回答すればよいのか』を考えるのではなく、全ての設問に正直に回答しましょう。
3.入れない可能性が高い病気
申込時の審査が厳しくなりやすい病気や持病について解説します。自分にあてはまるものはないか、念のためチェックしておきましょう。
加入できない可能性が高い疾患・持病
団信の告知書には、告知を必要とする病気や持病が具体的に示されています。該当するものがある場合は、入院期間・手術の有無・症状の経過などを詳しく記入しなければなりません。
審査に落ちる可能性が高い主な疾患や持病としては、心疾患・精神疾患・がん・難病が挙げられます。特に、精神疾患は再発リスクを懸念され、審査が厳しくなりがちです。
ただし、告知を必要とする病気や持病があるだけで、審査に落ちるわけではありません。現在の状態や将来的な再発リスクも考慮した上で最終判断されます。
また、審査基準は保険会社により異なり、ある会社で審査に落ちても別の会社では審査に通るケースがあります。
4.団体信用生命保険に入れない場合の選択肢
団信に加入できなかった場合の対処法を紹介します。団信に入れないからといって、住宅ローンを利用できないわけではない点を覚えておきましょう。
ワイド団信に加入
一般の団信に加入できなかった場合の対処法として、ワイド団信への加入が挙げられます。ワイド団信とは、保険の引受範囲を広げ、より加入しやすくしている団信のことです。
持病や病歴が理由で一般の団信を断られた人も、ワイド団信なら加入できる可能性があります。一般の団信を断られた金融機関で取り扱いがあれば、申し込んでみる価値はあるでしょう。
ただし、ワイド団信を取り扱っている金融機関はそれほど多くありません。ワイド団信の保険料は金利に上乗せされるため、一般の団信に比べ返済負担が増す点もデメリットです。
フラット35
団信の審査に落ちてしまった場合は、フラット35の利用も検討しましょう。フラット35とは、全国の金融機関と住宅金融支援機構が提携して扱う、『全期間固定金利』タイプの住宅ローンです。
フラット35では団信の加入が任意となっているため、団信に加入しなくてもローンを組めます。団信に入らずに利用する場合、通常の金利より低い金利の適用を受けることが可能です。
健康状態に問題がない人の中には、返済負担を抑えるためにあえてフラット35を選ぶ人もいます。ただし、万が一の際の保障を受けられなくなる点には注意が必要です。
病気が治るまで待つ
団信の告知事項は、告知義務の期間が過去3年以内と定められています。告知対象となる病気を患っていても、完治して3年経過すれば告知する必要はありません。
団信に加入できない原因となっている病気が治る見込みのある病状なら、病気が治るまで待てば審査に通る可能性があります。
ただし、年齢が上がると保険料も高くなることや、3年も経つとローンの返済プランに狂いが生じやすくなることには注意が必要です。時間をかけて頭金を貯めたいといった予定がある場合に、この方法を検討するとよいでしょう。
5.団信に入れなくても住宅ローンは組める
住宅ローンの団体信用生命保険とは、ローン契約者が死亡した際などに保険金でローンを返済できる保険です。特約を付ければ、死亡時や高度障害時以外の保障も充実させられます。
健康状態に問題があれば、団信に入れない可能性もあります。一般の団信に加入できなかった場合は、ワイド団信への加入やフラット35の利用を検討しましょう。
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