1. 住宅ローンで借りられる金額はいくらまで?
自分の年収の何倍まで借りられるのか、住宅ローンにおける借入限度額の目安を紹介します。審査時には返済比率が重要視されることも覚えておきましょう。
基準は年収の7倍
住宅ローンで借りられる金額の目安は、住宅金融支援機構の最新調査結果が参考になります。フラット35を利用して新築物件を購入したケースでは、年収倍率の全国平均は約6~7倍です。
融資区分別に見ると、注文住宅が6.5倍で土地付き注文住宅は7.3倍、建売住宅は6.7倍となっています。マンションの年収倍率は7.1倍です。
2009年の段階では年収倍率が約5~6倍と低く、10年間でおしなべて倍率が高くなったことが分かります。年収を基準に借入額を考える際は、年収の約7倍を目安にするとよいでしょう。
参考:2019年度 フラット35利用者調査 P.13|住宅金融支援機構
返済比率が重視される
金融機関がローンの借入限度額を決めるにあたっては、返済比率を重視します。返済比率とは、額面年収に対して年間返済額が占める割合です。
金融機関はそれぞれ独自の返済比率の上限値を設定し、融資の可否を決定しています。申込者の返済能力を超えた融資を行わないようにするためです。
長期固定金利タイプの代表格であるフラット35では、年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%に返済比率の上限を定めています。ほかの銀行も同程度の基準であるといわれています。
2. そのほかに審査されるポイント
住宅ローンの申込時には、返済比率以外にもさまざまな要素が審査されます。審査の際に重視されやすいポイントを紹介します。
勤続年数・勤務先の安定性
住宅ローンの審査では、現在働いている勤務先への勤続年数をチェックされます。同じ職場で長く働いているほど、今後も同等以上の収入が見込めると判断できるためです。
勤務先の安定性も審査の対象となります。数十年にわたり返済が続く住宅ローンでは、年収の高さと併せて、収入の安定性も重要です。
大企業の正社員や公務員なら、勤務先の安定性を高く評価されるでしょう。一方、収入が不安定になりやすい自営業者は、年収が高くても安定性の面で不利です。
金融機関は、本審査時に勤務先の事業内容や財務状況もチェックします。勤務先の将来性の高さが認められれば、勤続年数が短くても安定性を高く評価される可能性があります。
借入時と完済時の年齢
住宅ローンを利用できる年齢に関しては、借入時の上限・下限年齢と完済時の上限年齢が、金融機関ごとに定められています。
借入時の年齢が高いほど返済期間は短くなり、返済負担が増すため、審査に悪影響を及ぼすでしょう。できるだけ若いうちからローンを組むのに越したことはありません。
返済期間を考える際は、完済時の上限年齢に注意が必要です。返済負担を減らすために最長35年のローンを組もうとしても、現在の年齢から35年後に完済時の上限年齢を超えるようなら、35年ローンは組めないことになります。
物件の担保評価
住宅ローンを組む際、金融機関は物件に抵当権を設定し、物件を担保に入れます。ローンの返済が滞った場合に物件を競売にかけ、売却代金を残債へ充当するためです。
物件の担保評価が高いほど、売却時にも高い金額で売れるため、審査で有利になります。借入限度額も増額してもらいやすくなるでしょう。
物件の担保評価方法は、金融機関により異なります。多くの金融機関が土地の評価時に用いている指標が、『路線価』と呼ばれる地価です。建物に関しては、取得価格・延べ床面積・法定耐用年数などを用いて評価します。
3. 借入額を増やしたい場合の対策
借入限度額が希望する金額に達しない場合は、以下に挙げる対策を試してみましょう。特に、ペアローンや収入合算を利用すれば、借入額を大幅に増やせる可能性があります。
ペアローンや収入合算を利用
ペアローンとは、一つの物件に対し、自分以外の同居親族もローンを組む方法です。収入が安定した同居親族がいるなら、ペアローンを利用することで借入額を大きく増やせるでしょう。
ペアローンでは、基本的に二つのローン契約を結び、それぞれがお互いの連帯保証人になります。それぞれの契約者は、団信に加入したり住宅ローン控除を受けたりすることが可能です。
収入額を増やして借入額をアップさせる方法としては、収入合算も挙げられます。主債務者の年収に、一定の収入のある親族の年収を追加して借入を受ける方法です。
収入合算は契約数が1件で済むため、ペアローンに比べ契約時の諸経費負担を抑えられます。主債務者に万が一のことがあった場合、団信からの保険金で残債を完済できる点もメリットです。
ほかの借入を返済する
自動車ローンやカードローンなど、ほかに借りているローンがある場合は、そのローンの返済額も含めて返済比率を計算する必要があります。
ほかの借入が多いほど年間返済額は多くなるため、返済比率も高まり、借入限度額は少なくなります。借入額を増やしたいなら、現在返済中のローンを完済することが重要です。
ただし、ローンを完済しても、個人信用情報機関に反映されるまで最大2カ月かかります。完済後すぐに申し込みたい場合は、ローン会社に完済証明書などを発行してもらうとよいでしょう。
4. いくらまで借りるべきか検討しよう
住宅ローンの利用を検討する際は、実際に返済することも強く意識しなければなりません。数字上の計算だけでなく、家計への負担も十分に考慮して借入額を決めましょう。
借りられる額と無理なく返せる額は異なる
借入可能額は、あくまでも金融機関が『この金額なら返してもらえるだろう』と判断した金額に過ぎません。実際に無理なく返せるかどうかは、金融機関には分からない問題です。
希望する金額の借入に成功しても、その後のやり繰りが苦しくなり返済できなくなれば、最悪の場合には住宅を手放さざるを得なくなってしまいます。
実際の借入額を決める際は、無理なく返せる金額を設定しましょう。金額を決めるにあたっては、住宅購入後に発生する費用に注意が必要です。
マンションを購入すれば、管理費や修繕積立金が毎月かかります。固定資産税や各種保険料も支払わなければなりません。現在賃貸物件に住んでいる場合、ローン返済額を現在の家賃と同程度に設定しても、家計が苦しくなる可能性があります。
余裕のある返済比率は20%以内
無理なく返せる金額を計算する際は、返済比率も参考にしましょう。家計を圧迫しにくい返済比率の目安は、20~25%といわれています。余裕を持たせたいなら、20%以内に抑えるのが理想です。
額面年収が600万円の場合、返済比率が20%なら、年間返済額は600万円×20%=120万円です。25%の場合、年間返済額は600万円×25%=150万円と計算できます。
一般的に、手取り年収は額面年収の8割程度になるため、返済比率20%なら手取り年収からの返済額は120万円×0.8=約96万円となります。ここまで計算すれば、返済額をイメージしやすくなるでしょう。
将来のキャッシュフローも重要
無理のない返済を進めるためには、具体的な資金計画を立てることが重要です。先々までキャッシュフローを生み出せるようなプランを立てなければなりません。
資金計画を立てる際は、最初に現在の収支をきちんと把握しましょう。年間収支を分析すれば、返済能力や貯蓄の可能性、妥当な借入金額を算出しやすくなります。
今後のライフイベントを考慮するのも大事です。多額の現金が必要になりそうなイベントを、数十年先まで予測することで、貯蓄すべき金額を明確化できるでしょう。
5. 住宅ローン借入額は資金計画を踏まえて決めよう
住宅ローンで借りられる金額は、年収の約7倍が目安です。返済比率を抑えたり、ペアローン・収入合算を利用したりすれば、借入額を増やせる可能性があります。
借入額を決める際は、家計の負担増につながらないよう、無理なく返せる金額を意識することも重要です。きちんと資金計画を立てた上で、適正な金額を設定しましょう。