1. 自己破産後に住宅ローンは組めるか
住宅ローンの借入には審査が必要ですが、自己破産後でも審査に通過できるのでしょうか?住宅ローンと自己破産後の信用情報について解説します。
一定期間はローンは組めない
自己破産後の『5~10年』は住宅ローンを組むのは困難です。金融機関は住宅ローンの申し込みがあると、信頼して貸し出せる人物か調べるために個人信用情報機関の記録を参照します。
このとき自己破産の記録があると審査に通過することは難しいでしょう。ただし一定期間経過後は事故情報が抹消されるため、収入状況に問題がなければ利用できる可能性があります。
ブラックリストとは
個人信用情報機関に自己破産といったネガティブな情報が記録されている状態を『ブラックリスト』といいます。3種類ある個人信用情報機関では、下記の期間にわたり事故情報を記録しているのです。
CIC:5年
JICC(日本信用情報機構):5年
全国銀行個人信用情報センター:7年
ブラックリストに載っているこの期間は、どこの金融機関で申し込んだとしてもローンに通過することはまずありません。
2. 自己破産後に住宅ローンを組むには
一定期間が経過すれば、自己破産後でも住宅ローンを組めることが分かりました。ただし事故情報が抹消されたからといって、すぐに住宅ローンの借入ができるわけではありません。借入の可能性を高めるためにできることを見ていきましょう。
しっかり頭金を貯める
まず挙げられるのは、頭金を貯めることです。自己資金の多さは信頼や、借入額の割合を減らすことにもつながります。ブラックリストでなくても重視される項目で、貯金額が多いほど借入しやすくなる傾向です。
ブラックリスト状態は自己破産後7年続きます。この間に収入を安定させ、頭金を貯める努力ができれば、金融機関からの信頼を得られローンを組める可能性があるでしょう。
家族にローンを組んでもらう
家族に住宅ローンを申し込んでもらうのも一つの方法です。自己破産により個人信用情報機関に事故情報が記録されるのは、本人に限られます。配偶者や親など、家族の信用情報に影響することはありません。
共働きで十分な収入がある配偶者や、年齢が若く現役で働いている親の名義で申し込むことで、借入できる可能性があります。
信用情報を確認する
申し込み前に自分の信用情報をチェックすることも大切です。事故情報が抹消される時期になっても、見てみると残っていることがあります。
信用情報は各信用情報機関へ開示の請求が可能です。手数料を支払うことで、インターネット・郵送・窓口のいずれかの方法で確認できます。
ブラックリスト状態では審査に通過する可能性はないため、信用情報を確認してから申し込むと確実です。
3. 住宅ローンの審査に通りやすくなる方法
十分な信用がない場合、事故情報の記録が抹消されたとしても住宅ローンの審査には通りにくいでしょう。信用を積み重ねる方法や、借入しやすい金融機関の選び方を押さえておくことが大切です。
クレジットヒストリーを積む
まずは信用を得るために『クレジットヒストリー』を積み重ねましょう。クレジットカードで買い物をして期日を守った支払いをすることで、スムーズな返済の実績作りをするのです。
自己破産した後の信用情報は、事故情報が抹消されると履歴が何もない『スーパーホワイト』という状態になります。過去にクレジットカードやローンの利用履歴が一切ないことで、自己破産を勘繰られることもあるのです。
事故情報が抹消されてすぐに住宅ローンを申し込むよりも、クレジットカードを作り返済実績を重ねてから住宅ローンに申し込んだ方が、スムーズに借入できる可能性が高まります。
比較的通りやすい金融機関を選ぶ
審査に通過しやすい金融機関を選び、申し込むこともポイントです。例えば自己破産したときに借入していた金融機関には、個人信用情報機関の記録とは別に自己破産した記録が残っているかもしれません。
住宅ローンの申し込みは、自己破産当時に借入していなかった金融機関を選ぶとよいでしょう。できるだけ早い段階で住宅ローンを利用したいなら、ノンバンク系を利用する方法が有効です。
銀行は信用情報の確認に事故情報が7年間残る全銀協を利用しますが、ノンバンクは5年間で記録が抹消されるJICCを利用するケースが多いといわれています。ノンバンクなら、より早いタイミングで住宅ローンを利用できるかもしれません。
4. 住宅ローンが払えなくなり自己破産した場合
長い期間かけて返済し続ける住宅ローンは、途中で返済が難しくなることもあります。万が一返済ができず自己破産した場合には、どのような処理が行われるのでしょうか?
家を手放すことになる
自己破産をすると借金は全額免除されます。住宅ローンはもちろん、車の購入費用や教育費のために借りたローンも対象です。ただし生活に必要なものを除き、財産は売却して返済に充てなければいけません。
特に大きな財産である家は、没収され競売により売却されるため、基本的に手放すことになるのです。競売は裁判所の命令で行われるため、確定後は必ず実行されますし、拒否はできません。
競売が決まってから退去までの6カ月~1年間で、次の住まいを探し退去する流れです。
自己破産後も住み続けるには
基本的に自己破産をすると家を手放すことになりますが、そのまま住み続けることもできます。一つ目は家族に買い取ってもらう方法です。自己破産手続きが開始してから、破産管財人を通して家族が買い取ります。
ただし買い取り金額は相場と同程度ですし、家族間の売買で使える住宅ローンはほぼないため、一括払いで購入しなければいけません。
またリースバックという方法で住み続けることもできます。破産管財人の許可を得たうえで、不動産会社に家を買い取ってもらい、賃貸住宅として借りる仕組みです。ただし家賃が通常より高くなりやすく、2~5年後に家を買い戻すことが条件という場合が多いでしょう。
連帯保証人に請求が届く
借入時に連帯保証人を設定した場合、主債務者の自己破産により返済義務が連帯保証人へ移行します。家を売却してローン返済に充てますが、競売は市場価格より安価なため、ローン残高が0円になることはまれです。
連帯保証人は残債の支払いから逃れられません。ローン残高が多過ぎて支払い切れない場合、連帯保証人も自己破産の手続きが必要になることがあります。
できるだけ連帯保証人の負担を軽くするには、家を競売の前に任意売却することです。任意売却は競売より高値で売却できる可能性が高いため、残債をできる限り減らせます。
5. 自己破産以外で借金を整理する方法
自力では返済が難しくなったとき、自己破産以外にも借金を整理する方法があります。中には家を残せる方法もありますし、連帯保証人に負担をかけずに済む方法もあるのです。
個人再生や任意整理を検討
借金の負担を減らしたいけれど家がなくなるのは困るという場合には、『個人再生』や『任意整理』という方法でも返済を軽くできます。個人再生とは借金を最大1/10まで減らし、3年間か5年間で支払う手続きです。
減額した借金を完済すれば、法的な返済義務が免除されます。加えて個人再生には、住宅ローンが免除にならない代わりに家を残せる特則があるのです。他のローンさえ整理できれば支払えるという場合に役立ちます。
家のほかにも残したい財産がある場合には、任意整理を検討しましょう。金融機関と交渉し、将来利息や遅延損害金をなくし返済しやすくする方法です。自己破産以外の解決法を知ることで、自分や家族の状況に合わせた整理ができます。
金融機関に相談をする
長期間にわたる住宅ローンの返済中に、仕事の変化や大病・事故などのリスクがあることは、金融機関も分かっています。そのため無理のない返済でピンチを切り抜けられるよう、相談窓口を設置しているのです。
住宅ローンの返済を負担に感じるようになったら、まずは窓口へ連絡し現状を相談しましょう。このとき現在の収入・支出・毎月の返済可能額をまとめておくとスムーズに対応してもらえます。
厳しい状態と認められると、一時的な措置として支払いを利息のみにしてもらえる『リスケジュール』が適用されるかもしれません。この期間は元本部分を返済できなくても、代位弁済や競売にかけられる恐れがなくなります。
任意売却をする
家を『任意売却』することで借金を返済することもできます。自己破産後の連帯保証人の負担を軽くするために紹介した方法です。
ほぼ相場通りの価格で売却できるため、自己破産や個人再生・任意整理をすることなく、任意売却のみで借金の問題が解決することもあります。完済できず自己破産する場合でも、自己破産にかかる費用の節約が可能です。
自己破産をするときに財産が残っていると、管財事件として扱われるため、裁判所へ予納金200,000~500,000円程度を支払わなければなりません。先に任意売却で財産を処分していれば、費用は同時廃止手続きにかかる30,000円と弁護士費用のみです。
ただし任意売却は、金融機関が家を競売にかける前に実行する必要があります。
6. 自己破産のリスクを理解しよう
住宅ローンは、自己破産直後には借りることはできません。しかし個人信用情報機関から事故情報が抹消されれば、審査に通過する可能性があります。
その際スムーズな借入ができるよう、頭金を貯めることやクレジットヒストリーを積み重ねることが大切です。また借入をしやすい金融機関を選ぶこともポイントといえます。
また、住宅ローン契約後に、やむを得ず自己破産を選択しなければいけないこともありますが、大切なのはさまざまな選択肢を知り、最適な整理方法を選ぶことです。個人再生・任意整理・任意売却なども検討しましょう。
自己破産は連帯保証人にも負担をかける方法です。リスクがあることを知ったうえで借金の整理に取り組むことが求められます。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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