1. 連帯債務型はどんなローンの組み方?
夫婦で契約できるほかのローンとの違いや、メリット・注意点を詳しく理解するためにも、まずは連帯債務型の特徴を知りましょう。ローンの組み方や返済義務について紹介します。
夫婦2人でローンを組む方法
連帯債務型は夫婦で1本のローンを組むという点が特徴です。例えば夫が『主債務者』として契約した場合、妻は同じローンを『連帯債務者』として借り入れます。
住宅ローンの名義は夫婦連名です。ローンの負担割合に応じて、購入した家の持分も決められます。2人分の収入を合算して申し込めるのも特徴です。
主債務者と連帯債務者が返済義務を負う
主債務者と同じ返済義務が課されるのも、連帯債務型ならではの特徴です。同等の義務があるため、連帯債務者は主債務者の病気や失業といった相応の理由がなくても、金融機関の求めに応じて返済しなければいけません。
主債務者の状態にかかわらず、どのようなときでも返済義務が存在します。主債務者が返済不能となったときに返済義務が生じる『連帯保証人』とは、義務が発生するタイミングが異なるのです。
2. 連帯保証型、ペアローンとの違い
連帯保証型とペアローンは、連帯債務型と同様に夫婦で契約できる住宅ローンです。それぞれどのような特徴を持っているのでしょうか?連帯債務型と異なるポイントを紹介します。
どちらかが連帯保証人になる「連帯保証型」
『連帯保証型』の住宅ローンでは、夫婦のどちらかを連帯保証人としてローンを契約します。連帯保証人は主債務者が返済できなくなったときに返済義務を負う人を指します。
問題なく返済されている間は返済義務が課されない点が、連帯債務者と異なる点です。連帯保証型の契約で注意が必要なのは、連帯保証人が団体信用生命保険(団信)へ加入できない点です。
債務を負っている当人ではないため、万が一の事態への備えとして加入する団信は用意されていません。同様の理由により、住宅ローン控除も対象外です。
また条件を満たすと収入を合算して申し込みできます。
1本ずつローンを組む「ペアローン」
1軒の住宅を購入するとき、夫婦がそれぞれローンを契約し合計2本の住宅ローンを組むのが『ペアローン』です。住宅の名義を共有にして持分を明確にしておけば、個々に住宅ローン控除を受けられます。
個別に団信へ加入するのも特徴です。死亡や高度障害で返済不能となった場合には、団信によって残債が支払われます。ただし2本の住宅ローン全てが完済になるのではなく、返済不能となった方の住宅ローンのみが対象です。
2人とも団信を使い、万が一に備えられます。ただし事務手数料や印紙代などが全て2人分必要なため、全体的にコストが割高になる点はデメリットです。
3. 連帯債務型のメリット
連帯債務型にはどのようなメリットがあるのでしょうか?具体的なメリットをチェックし、契約を検討するときの参考にしましょう。
借入可能額が増える
希望の借入金額を借りやすくなるのは代表的なメリットです。収入が低く1人分では借入条件を満たせない場合や、購入したい住宅の価格に対して十分な金額を借入できない場合もあります。
そのようなケースでも、連帯債務型へ申し込めば、銀行の定める計算方法にのっとって収入を合算することが可能です。世帯収入で審査に申し込めるため、審査に通過しやすくなるでしょう。
加えて借入可能額の増額も期待できます。十分な資金を用意でき、理想の住宅を購入できる可能性が高まります。
連帯債務者も住宅ローン控除の対象になる
夫婦ともに住宅ローン控除の対象になるのも連帯債務型のメリットです。主債務者と連帯債務者に同等の返済義務が課されるため、税制上の優遇も同じように受けられます。
具体的には、確定申告や年末調整で住宅ローン控除の手続きをしましょう。年間40万円を上限に、年末時のローン残高の1%が所得税や住民税から差し引かれます。2人分の住宅ローンで控除を受けられれば、大きな節税効果が期待できます。
ただし控除を受けるには物件を共有名義で保有し、ローンの負担割合に応じて持分を設定している必要があるため注意しましょう。
ペアローンより諸経費が安くなる
諸経費を安く抑えられるのもポイントです。借入可能額が増える・2人分の住宅ローン控除を受けられるというメリットはペアローンにもあります。
しかしペアローンは2本のローンを契約するため、諸経費が2倍かかるのがデメリットです。連帯債務型は夫婦で契約しますが、ローンは1本のみのため諸経費を抑えられます。
費用を最小限にしつつ、夫婦で契約するメリットを受けられる方法といえます。
4. 注意点もチェック
諸経費を抑えつつ、借入金額の増額や2人分の住宅ローン控除が適用される連帯債務型ですが、デメリットもあります。よく理解した上で契約することで、万が一の事態に備えやすくなりますし、トラブルを回避しやすくなるでしょう。
連帯債務者は団信には入れない場合がある
契約者が返済不能となったとき、ローン残高を肩代わりしてくれる生命保険を団信といいます。長い返済期間中には何が起こるか分かりません。そのため住宅ローンの契約者には団信への加入が義務づけられていることが一般的です。
連帯債務型でも主債務者であれば通常は団信へ加入できます。しかし連帯債務者が団信へ加入できる商品は一部に限定されているため、注意が必要です。
特に収入合算して申し込みしている場合、連帯債務者が死亡や高度障害に陥り返済不能になると、1人では返済の負担が重過ぎることもあるでしょう。
連帯債務者の団信加入ができないローンを契約するときには、民間の生命保険で備えておくと安心です。
提供している金融機関が少ない
連帯債務型の住宅ローンを扱っている金融機関は、それほど多くありません。商品のバリエーションもほかのタイプと比べて少なめです。申し込みたい金融機関に商品が用意されていないケースもあるでしょう。
取り扱いのある金融機関やプランが限定されており、さまざまな商品を比較して自分たちに合うものを選択できない点はデメリットといえます。
離婚後も返済義務がある
将来的に離婚を決断しても返済義務が残る点にも注意しましょう。返済義務はローンの名義人に課せられるため、家を出ていくことになっても完済していなければ支払いは続きます。
注意が必要なのは、連帯債務者は主債務者への督促を金融機関へ主張できない点です。ローンに対して主債務者と同等の責任を負うため、主債務者の返済が滞り金融機関から支払いの請求が来たら拒否できません。
主債務者が支払いに協力的ではない場合、返済の負担が重くのしかかることも考えられます。
離婚しても連帯債務は基本的に解消されません。離婚後のトラブルにつながる可能性がある点にも注意しましょう。
5. 特徴と注意点を知り組み方を選ぼう
連帯債務型の住宅ローンは、夫婦で1本のローンを組みます。収入合算により、1人では申し込みできないケースや希望の借入金額に満たない場合でも、十分な借入額での審査通過が期待できます。
夫婦が1本ずつローンを組むペアローンのように、諸経費が2倍必要になることもありません。諸経費は1人が契約するローンと同じのまま、住宅ローン控除を夫婦で受けられます。
団信へ加入できないプランがある点は注意が必要ですが、商品を選べば加入でき、万が一の事態に備えられます。ただし扱っている金融機関や商品が少ないため選択肢は多くありません。
離婚後に返済義務が残る点もデメリットです。特徴や注意点をよく理解した上で契約を検討しましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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