1. 親子リレーローンとは
メリットやデメリットをしっかりと理解するためにも、まずは親子リレーローンがどういったものなのかを確認しましょう。基本的な内容を知ることで、どのような住宅ローンなのかを把握できます。
親と子で1本の住宅ローンを組むこと
親子二代で一つの住宅ローンを返済していくのが、親子リレーローンの特徴です。一般的には親が主債務者として、子どもが連帯債務者として契約します。
親が再雇用などを含め現役で働いているうちは親が返済し、引退や死亡などを機に子どもが返済を引き継ぐ仕組みです。たすきをつなぐように返済をするため親子リレーローンと呼ばれます。
金融機関によって商品名が異なり、『親子リレー』や『親子リレー住宅ローン』という名称の場合もあります。
親子ペアローンとの違い
親子リレーローンと似た名前の住宅ローンに『親子ペアローン』があります。親子リレーローンとの違いは、1軒の住宅に対し親と子どもがそれぞれ別に住宅ローンを契約する点です。
そのため返済開始当初から、親も子どもも返済が始まります。収入合算はできないため、それぞれの年収に対する返済負担率で借入可能額が決まります。
さらに親も子どもも、住宅ローンを借りられる年齢や収入といった要件を満たしていなければいけません。また相互の連帯保証人となることも条件の一つとなっています。
メリットとして、親と子どもが別個に住宅ローン控除を受けられる点が挙げられます。年末ローン残高の1%が所得税や住民税から差し引かれる制度で、世帯全体の税負担を軽減することが可能です。
土地購入やリフォームにも利用可能
新築住宅を購入するとき以外にも、親子リレーローンを使うことができます。例えば土地の購入やリフォーム・住宅関連設備の設置や購入・これらに伴う諸費用なども、親子リレーローンでカバーできる内容です。
例えば現在親が住んでいる家を、子ども家族と暮らしやすいようリフォームをしたいというときや、二世帯住宅を建てるための土地の購入や建築費用にも、親子リレーローンを使うことができます。
ただし使える項目の詳細は、金融機関によって異なるため注意しましょう。契約したい商品が決まっているなら、事前に問い合わせておくと確実です。
2. ローンを組める条件
親子リレーローンは、条件を満たしていなければ契約できません。具体的にどのような条件が必要なのか、見ていきましょう。
血縁関係と同居の状況
商品名に親子と付いていることからも分かる通り、『血縁関係』のある親族で契約するのが基本です。親と子ども・祖父と孫といった組み合わせが代表的といえます。
また血のつながりはなくても、親と子の配偶者というように、義理の親子関係でも利用可能です。
契約できるかどうかの条件として、『同居』もポイントとして挙げられます。同居を前提としていなければならない商品もあれば、親子であれば同居か否かは問わない商品もあります。
契約前に条件の詳細を問い合わせ、自分たち家族の状況に合っているか確認が必要です。
返済能力がある
通常の住宅ローン同様、返済能力があることも契約の条件です。そのためには、まず親子ともに安定した収入がなければいけません。一方が安定していても、もう一方が転職や退職直後では不安定とみなされます。
借入希望金額が返済負担率の範囲に収まっていることも、重要なポイントです。親子リレーローンは親子で収入を合算できますが、返済負担率を超えた金額では当然契約できません。
目安として『フラット35』では、借入金の返済負担率が年収400万円未満は30%・年収400万円以上は35%の範囲内になることを基準としています。
また信用情報に事故情報が掲載されていると、返済能力を疑われかねません。
3. 親子リレーローンのメリット
二世代で住宅ローンを返済する親子リレーローンには、どのようなメリットがあるのでしょうか?代表的なメリットを紹介します。
借入額が上がる
親と子どもの収入を合算して金融機関へ申し込めるため、1人で契約するときよりも借入金額を増やせる可能性があります。特にまだ収入がそこまで多くない子ども世代にとっては、大きなメリットでしょう。
より多くの金額を借入できれば、住宅の設備や仕様をより充実させられます。豊富な資金により自由度が高まれば、将来にわたり長く住みやすい住宅を入手できるでしょう。
長期でローンを組める
親世代のメリットとしては、長期ローンを組みやすいという点が挙げられます。住宅ローンの完済時年齢は80歳前後に設定されていることがほとんどです。
そのため65歳で住宅ローンを組もうとすると、最長でも返済期間15年までしか契約できません。もし35歳の子どもと親子リレーローンを組めれば、子どもの年齢を基準として契約できるため、35年ローンも可能です。
親が高齢でも契約可能
住宅ローンは完済時年齢だけでなく、契約時年齢も定められています。20~65歳まで契約可能な商品を検討している場合、65歳を超えると申し込みさえできません。
新たに家を購入したい・リフォームをしたいと考えていても、高齢の親だけでは住宅ローンを契約できないのです。一方、子どもとともに契約する親子リレーローンであれば、親が高齢でも契約できる可能性は十分あります。
主債務者が親であっても、途中で子どもが残債を引き継ぐ仕組みだからです。
4. デメリットや注意点も
親にも子どもにもメリットがある親子リレーローンですが、デメリットや注意点もあります。高額な契約をする前に、負担やトラブルについて知っておくことが大切です。
子どもへの将来の負担が大きい
デメリットとしてまず挙げられるのは、子どもの負担が大きくなりやすい点です。例えば独身の子どもと親子リレーローンを組んだ場合、ライフステージの変化に対応できないかもしれません。
結婚により別の家に住みたいと感じることもあるでしょう。しかし既に契約している親子リレーローンを返済し終わるまでは、別の住宅ローンを組めません。
加えて親の死亡後の負担についても検討しましょう。住宅ローンの契約時には団体信用生命保険(団信)への加入はほぼ必須です。
親子リレーローンの団信では、親が加入する・子どもが加入する・半分ずつ加入するといったケースがありますが、場合によっては想定以上の残債を引き継がなければいけない場合もあります。
親が死亡した場合トラブルになりやすい
同居予定の親子が使うことの多い親子リレーローンで住宅を購入すると、それぞれの持分はローンの返済割合に応じて決められます。親が健在のうちは特に問題になりません。
トラブルに発展する可能性があるのは、親が死亡し持分の相続を行うときです。子どもが自分1人であればスムーズに相続できますが、兄弟姉妹がいると持分の分割を主張されるかもしれません。
このようなトラブルを回避するために、購入時に物件の名義を子どもにしておくという対策もあります。しかし名義を子どもにすると、住宅ローンの返済額に贈与税がかかる点に注意が必要です。
子どもの住宅取得のための贈与には非課税の特例がありますが、親子リレーローンには適用されません。
相続税の課税対象になる
親子リレーローンで購入した住宅は、親と子どもの共同保有として扱われることがほとんどです。親が死亡し財産の相続をするとき、共同保有している住宅のうち親の持分が相続の対象となります。
そのため遺族である子どもがこれまで通り家に住み続けるには、親の持分を相続しなければいけません。親の持分が多い場合や、住宅の立地によっては、多額の相続税を納めなければいけないケースもあります。
ローンの返済だけを考えていると、必要な相続税を用意できないこともあるでしょう。親子リレーローンを利用するなら相続税に備えることも大切です。
5. 親子リレーローンをおすすめできるケース
借入可能額が増える・借入期間が長くなるなどの可能性がある親子リレーローンですが、子どもの負担につながるデメリットもあると分かりました。メリット・デメリットを踏まえた上で、どのような人が利用に向いている商品なのか見てみましょう。
毎月の返済額を抑えたい場合
できるだけ毎月の返済額を抑えたい人にとって、親子リレーローンの利用は有利に働きやすいでしょう。返済期間を長く設定しやすいため、同じ借入金額でも毎月の返済額を抑えられるのです。
月々の負担が低くなれば、余裕ができた分を貯蓄に回せます。子育てや車の買い替えなどに必要な資金を計画的に貯めやすいですし、住宅ローンの繰り上げ返済にも取り組みやすいでしょう。
計画的に返済しつつ、日ごろの暮らしも充実させたい人にぴったりです。
単独では住宅ローンを組めない場合
親も子どもも1人では住宅ローンを組めないこともあるでしょう。単独では難しくても、親子リレーローンなら借りられる可能性があります。
例えば高齢で新規に住宅ローンに申し込めない親でも、年齢の基準が子どもの年齢となる親子リレーローンであれば使えるかもしれません。また子どもは年収が低く、希望通りの金額を借入できないこともあるでしょう。
2人の収入を合わせられる親子リレーローンの特徴を生かせば、希望金額を借入でき理想のマイホームを手に入れられる可能性が高まります。親子それぞれの弱みをカバーし合い、希望をかなえやすくなるのです。
6. 子のライフプランを検討して判断しよう
親子リレーローンを検討しているなら、子どもの将来をよく検討した上で契約の決断をしましょう。2人で1本の住宅ローンを契約するため、より多くの金額を借りやすいですが、デメリットもあります。
例えば子どものライフステージの変化に対応するのが難しい点です。新しい家が欲しくなっても、新たな住宅ローンを契約できません。
また相続トラブルが起こる可能性もあります。共同保有で住宅を所有している場合、親の持分が相続の対象となるため、兄弟姉妹と遺産分割でもめるかもしれません。
メリットは大きいですが、将来的なデメリットもある方法のため、契約前に自分たち家族に向いているか、よく検討して利用しましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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