1. 住宅ローン控除に年収制限はある?
住宅ローン控除の適用を受けるためには、所得制限などの要件をクリアする必要があります。詳しく見ていきましょう。
合計所得金額は2,000万円以下
住宅ローンを組んで自宅を購入する場合は、住宅ローン控除の適用を受けられる可能性があります。住宅ローン控除は正式名称を『住宅借入金等特別控除』といい、一定の条件を満たせば所得税や住民税の税額を低減できる制度です。
住宅ローン控除には所得制限があり、控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。所得とは年収から経費などを差し引いた金額であるため、年収で考える場合は基準となる金額がさらに上がります。
所得以外に満たす必要がある条件
住宅ローン控除を受けるためには、購入した住宅の床面積が50平米以上でなければなりません。さらに、40平米以上50平米未満の物件は、所得制限は「1,000万円以下」である必要があります。
高所得者が1LDKや2DKなど50平米未満の小規模住宅を購入しても、住宅ローン控除は利用できないことになります。単身者に人気のコンパクトな物件を、高所得者が投資用として購入するのを防ぐことが狙いです。
借入金の返済期間が10年以上にわたる点も、条件として挙げられます。10年未満の短期ローンでは、住宅ローン控除の適用を受けられません。
>>参考:住宅ローン控除の上限金額は?計算方法とメリット・デメリットを解説
2. 2022年度からの改正内容
税制改正大綱によって、住宅ローン減税の適用条件は年々変化しています。
控除率と合計所得金額の上限が引き下げられた
かつて住宅ローン控除は「年末の住宅ローン残高の1%相当額」の優遇を受けることができる制度ですが、2022年度税制改正によって「0.7%」に引き下げられました。
これは、長引く低金利によって1%以下の住宅ローン金利を使う人が増えたことで、支払う利息よりも税控除の方が上回る「逆ざや」が問題視されてきたためです。
また、所得制限も2022年度の税制改正によって、上限は「3,000万円」から「2,000万円」へと引き下げられることになりました。
納税額の大きい高所得者層ほど「逆ざや」の恩恵を受けやすい制度設計になっていたことも、改正の一因になったと見られます。
住宅の環境性能の高さに応じて優遇が拡大
長期優良住宅や低炭素住宅といった認定住宅に対する優遇はこれまでもありましたが、2022年度改正では太陽光発電等でエネルギー消費を実質ゼロとする「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」や、省エネ基準適合住宅への優遇が拡大しました。
控除率は1.0%から0.7%に引き下げられたものの、住宅の環境性能や所得水準によっては、従来制度よりも多額の控除を受けられる場合もあるでしょう。
3. 所得と年収の違いに注意
住宅ローン控除の適用条件は、年収ではなく所得を基準としています。所得の計算方法や所得額の確認方法を知っておきましょう。
所得は収入から必要経費を引いた金額
住宅ローン控除では所得制限が設けられています。年収ではなく所得を基準としていることに注意が必要です。
所得とは、収入から必要経費を差し引いて残った金額を指します。会社員に対して勤務先から支払われる給料やボーナスが『給与所得』です。
給与所得は、源泉徴収される前の給料やボーナスを合計した『給与収入金額』から、必要経費に該当する『給与所得控除』を差し引いて算出されます。会社員自ら経費の計算を行う必要はありません。
所得税や住民税は、給与所得の金額を使って計算します。年金受給者の場合は、必要経費にあたる『公的年金等控除額』を、年金収入から差し引いて所得を算出します。
個人事業主や副業を持つ人の場合
個人事業主が住宅ローン控除を利用する場合も、基準となるのは所得です。一般的には、事業で得た収入から必要経費を差し引き、事業所得を算出して判断基準とします。個人事業主の場合は会社員と異なり、自分で経費を計算しなければなりません。
会社員が副業を行っているケースでは、給与所得に加え、副業で得た全ての所得が控除の対象です。事業所得や不動産所得以外に、株で得た配当所得なども含まれます。
住宅ローン控除は所得が多いほどメリットも大きいため、副業分を足せば節税につながるでしょう。
所得額を確認する方法
自分の所得額を知りたい場合は、毎年配布・郵送される書類で確認することが可能です。確認できる書類は、会社員と個人事業主で異なります。
会社員の場合は、毎年6月ごろに勤務先から配布される『特別徴収税額の通知書』を確認しましょう。『総所得金額1』の欄に、所得額が記載されています。
市県民税を納付書や口座引き落としで納税している個人事業主なら、毎年6月ごろに役所から郵送される『納税通知書』で確認可能です。2枚目の『小計』をチェックしましょう。
これらの書類が見当たらない人は、役所の窓口で発行してもらえる『所得証明書』内の『総所得金額』欄で確認できます。
4. 控除額の上限に注意
住宅ローン控除で適用される控除上限額は、新築物件か中古物件かによって異なります。住宅性能によって上限が変わることも覚えておきましょう。
令和7年度税制改正後の適用は以下の表となっております
出典:住宅ローン減税(国税庁HP)
5. 住宅ローン控除でいくら返ってくる?
住宅ローン控除で実際に控除される金額の計算方法を解説します。控除可能な金額は所得税から先に差し引かれ、余った分があれば住民税からも控除されます。
控除額の計算方法
住宅ローン控除額は、原則年末のローン残高の0.7%と年間最大控除額の、いずれか少ない金額が適用されます。例えば、年末時の残高が20,000,000円の場合、0.7%は140,000円です。
控除しきれなかった分は住民税から控除
控除可能な金額をその年の所得税から控除しきれなかった場合は、余剰分を翌年の住民税から控除します。住民税から差し引ける金額には上限があり、住宅を取得したときの消費税率により異なります。
2014年3月以前に取得した場合の控除上限額は97,500円、14年4月以降の取得なら136,500円です。それぞれ、前年課税所得の5%・7%と比較し、いずれか少ない金額が控除上限額となります。
住民税の控除適用にあたり、役所への申告は不要です。確定申告や年末調整で住宅ローン控除の手続きが済んでいれば、余剰分が自動的に住民税から控除されます。
6. 住宅ローン控除の最新の条件を確認しよう
住宅ローン控除には、年間合計所得が2,000万円以下でなければならないという条件があります。
今後も住宅ローン控除は条件が変わる可能性があります。毎年のように条件が修正されている制度だからこそ、最新情報のチェックが欠かせません。
住宅ローン控除制度を含め、モゲチェックでは今後も住宅ローンに関するニュースを発信していきます。
>>参考:住宅ローン控除の上限金額は?計算方法とメリット・デメリットを解説
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住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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