1. 住宅ローン控除の制度の内容
住宅ローン控除にはどのような目的があり、具体的にどのくらいの控除を受けられるのでしょうか?制度の概要をチェックすることで、減税に役立てましょう。
住宅ローン控除の目的とは
マイホーム購入時に住宅ローンを利用することで税金が安くなる住宅ローン控除は、住宅購入の後押しにつながる制度です。返済の負担が軽くなるため、積極的に住宅を購入しようという人を増やす目的があります。
住宅購入者が増えることで、戸建て住宅やマンションの着工数が増えることも期待されているのです。実際に一般の人々の住宅購入が進み地価が上昇するとともに、経済が発展してきた歴史があります。
そこで土地の運用促進のため、国は住宅ローン控除を通し、多くの人がマイホームを購入できる状態を整えているのです。
所得税からローン年末残高1%相当額を控除
住宅ローン控除を利用すると、ローン年末残高の1%が所得税から控除されます。例えばローン残高が20,000,000円であれば、200,000円が所得税から差し引かれるのです。
サラリーマンの所得税は、源泉徴収として毎月の給料から天引きされています。そのため、住宅ローン控除を受けて差し引かれる分の金額が、還付される仕組みです。
また住宅ローン控除が適用される場合、繰上返済しない方がよいケースもあります。例えばローンの金利が1%未満の場合、繰上返済せずに控除を受けた方が全体の負担が軽減されるのです。
ただし住宅ローン控除の割合は見直される可能性もあります。超低金利が続く中、ローン残高の1%では実態に見合わないと考えられているからです。
控除期間は10~13年間
控除を受けられる期間は『10~13年間』です。最初の10年は先に紹介した通り、年末の住宅ローン残高の1%が控除されます。
さらに消費税が10%に増税された2019年10月1日~2020年12月31日に入居した場合には、11~13年目の控除も受けられるのです。この控除は増加した消費税2%分を還付する目的で行われます。
この期間は『住宅借入金等の年末残高(上限40,000,000円)×1%』『建物の取得価格(上限40,000,000円)の2%÷3』のいずれか小さい額が毎年差し引かれる仕組みです。
また控除期間が13年に拡大される措置は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、期間が延長されています。契約期限の条件を満たす場合に限り、2022年12月31日の入居まで適用されることとなりました。
出典:令和3年度住宅税制改正概要(住宅ローン減税・贈与税非課税措置)
2. 住宅ローン控除の条件と控除上限
所得税から所定の金額が控除される住宅ローン控除が適用されるには、定められている条件を満たさなければいけません。さらに控除金額には上限がある点にも注意が必要です。
新築住宅の場合
新築住宅を購入するときには、下記の条件を全て満たす物件でなければ住宅ローン控除を受けられません。
・減税を受ける本人が住宅引き渡しから6カ月以内に住むこと
・控除を受ける年の合計所得金額が30,000,000円以下であること
・対象の住宅は床面積が50平米以上で、1/2以上が居住用であること
・10年以上の住宅ローンを組んでいること
・住宅に住み始めた年と前後2年間の合計5年間に、『居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例』といった制度を適用されていないこと
出典:No.1213住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
中古住宅の場合
住宅ローン減税は新築住宅を購入するときにだけ適用されるわけではありません。中古住宅でも、耐火基準や耐震基準・贈与や親族からの取得でないこと・床面積が50平米以上などの条件さえ満たせば控除を受けられます。
加えて、取得してから6カ月以内に住み始め、控除を受ける年の年末まで住み続けていることや、合計所得金額が30,000,000円未満であること、10年以上の住宅ローンを利用していることという条件も満たさなければいけません。
『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例』を受けていないことも条件です。また住宅ローン控除はリフォームにも使えますが、省エネやバリアフリーに関する工事を行う場合は、別の減税の方がお得な場合もあります。
出典:No.1214中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
認定長期優良住宅の場合
購入する住宅が認定長期優良住宅の場合には、住宅ローン控除とは別の、認定住宅新築等特別税額控除も受けられます。長期優良住宅とは、長く快適に住み続けるための下記の基準を満たした住宅です。
・バリアフリー
・可変性
・耐震性
・省エネルギー性
・居住環境
・維持保全計画
・維持管理・更新が容易
・劣化対策
・住戸面積
これらの条件を満たすためには、追加で費用がかかります。この費用をかかり増し費用といい、これが控除の対象となるのです。ただし控除対象となるのは、かかり増し費用のうち6,500,000円までと決められています。
そして対象となる費用に10%を乗じて求めた金額が控除される仕組みです。住み始めた年が対象ですが、控除しきれない場合は翌年に繰り越されます。
3. 減税される金額の計算方法
住宅ローン控除の仕組みを知った後は、具体的に減税される金額を計算してみましょう。紹介する計算方法を使えば、減税でどれくらいお得になるかが分かります。
所得税額を確認してシミュレーションしよう
所得税額から差し引かれる仕組みの住宅ローン控除を正しく把握するためには、そもそも所得税をいくら納めているのか知らなければいけません。
サラリーマンとして毎月給与を受け取っている場合、所得税は源泉徴収税として給与から天引きされています。そのため給与明細を確認すれば、所得税の金額が分かるのです。
また住宅ローン控除は所得税から引かれる仕組みです。所得税は年収が増えるほど金額が大きくなるため、ローン残高と年収のバランスによっては、控除額を生かしきれないこともあります。
例えばローン残高30,000,000円の控除額300,000円を全額控除されるためには、年収6,000,000円ほどが目安です。
控除しきれない分は住民税で控除される
所得税を全額控除しても控除額が余っている場合には、住民税からも控除されます。この場合、特に申告は必要ありません。控除額が余っている場合には自動的に住民税に反映され差し引かれます。
住民税から控除されていることを確認するには、サラリーマンであれば会社から渡される『住民税の決定通知書』をチェックしましょう。税額の欄にある『税額控除額(5)』という項目で確認できます。
あわせて、給与明細で実際に住民税の金額が減っていることも確認すると確実です。
4. 申告をして住宅ローン控除を受けよう
住宅ローン控除を受けるには申告が必要です。もれなく正しい申告ができるよう、申告の仕方をチェックしましょう。
1回目は確定申告が必要
マイホーム購入後、初めて住宅ローン控除を受けるときには確定申告が必要です。確定申告は大きく下記の4ステップに分けられます。
①書類の準備
②申告書などの作成
③作成した申告書の提出
④税金の納付や還付
確定申告というと、作成した書類を税務署へ持参して提出するイメージを持っている人がいるかもしれません。しかし近年では、税務署に行かずに手続きする方法も広まっています。
例えば『e-TAX』というオンラインでできる確定申告を利用する方法や、作成した書類を郵送で税務署へ送る方法などです。
必要書類が多いため早めにそろえよう
確定申告にはさまざまな書類が必要です。初めて行う場合には時間がかかることもあるため、早めに用意しておくと余裕を持って進められます。必要な書類は下記の通りです。
・マイナンバーカードや通知カード
・確定申告書
・住宅借入金等特別控除額の計算証明書
・源泉徴収票
・土地・家屋の登記事項証明書
・不動産売買契約書や工事請負契約書
・住宅ローンの年末残高証明書
このうち確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算証明書は、税務署に備え付けのものか国税庁のウェブサイトからダウンロードして使います。土地・家屋の登記事項証明書はオンラインでの取得も可能です。
2回目からは年末調整の書類に記入
1回目は確定申告が必要ですが、2回目以降は年末調整で住宅ローン控除を受けられます。手続きは確定申告より簡単で、年末調整の用紙に下記を添えて提出すればOKです。
・その年分の証明書兼申告書
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
年末残高等証明書は、金融機関から11月下旬ごろに送付されるものを使用します。ただし証明書作成後に繰り越し返済をしている場合、記載されている残高と実際の残高が異なることがあります。
実際と異なる残高になっている場合には、金融機関に依頼し正しい金額の証明書を作成してもらわなければいけません。
5. ふるさと納税と併用は可能?
所得税の控除を受けられるのは住宅ローンだけではありません。ふるさと納税でも控除が受けられますが、その場合どのように扱われるのでしょうか?
併用できる。住民税から控除する方法も
ふるさと納税と住宅ローン控除は同時に利用できます。ただし確定申告で手続きする場合には、ふるさと納税を利用することで課税対象となる所得が減少するかもしれません。
所得が減ると住宅ローン控除額も減額される可能性があるため、注意が必要です。住宅ローン控除2年目以降で確定申告の必要がない場合、ふるさと納税の『ワンストップ特例制度』を利用できます。
ワンストップ特例制度では、ふるさと納税による税額控除を住民税から行えます。すると課税所得額は変化しないため、住宅ローン控除との併用がよりやりやすくなるでしょう。
医療費控除等で確定申告する場合は注意
医療費控除も住宅ローン控除やふるさと納税と併用できます。ただし年末調整では手続きができないため、確定申告をしなければいけません。ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用できない点に注意が必要です。
3種類の控除は、どれも所得税と住民税を対象としています。そのため確定申告で手続きをすると、フルに活用できない可能性があるのです。控除上限に影響するため、事前のシミュレーションが大切です。
6. 手厚い優遇でマイホーム購入を後押しする制度
住宅ローン減税は、マイホームの購入を後押しする制度として利用されています。年末ローン残高の1%を所得税から控除することで、返済の負担を軽減する制度です。
控除を受けるためには、条件を満たした住宅を購入することとあわせて、確定申告の手続きが必要です。2年目以降は年末調整でも手続きができます。どちらの場合も必要書類をそろえたうえで手続きします。
ふるさと納税や医療費控除とも併用できますが、控除額の上限に関係するため、事前にシミュレーションをした上で利用するとよいでしょう。うまく活用することで、よりお得なマイホーム購入が可能になります。