1. 住宅ローン控除を受ける手続き
マイホームを住宅ローンで購入しても、何もしなければ住宅ローン控除は受けられません。住宅ローン控除の対象となっているのかを確認し、控除を受けるために必要な確定申告を行いましょう。
住宅ローン控除対象となる条件
住宅ローン控除は誰でも受けられるものではありません。まず『2021年12月31日まで』に購入した住宅に住み始めていることが条件です。加えて住み始めるのは、新築や取得した日から『6カ月以内』という期限があります。
適用を受ける年の12月31日まで住み続けることも条件です。住宅は床面積『50平米以上』かつその半分以上が居住用であることも求められます。
さらに返済期間が『10年以上』のローンが対象です。所得の制限もあり、控除を受ける年の合計所得が『3,000万円以下』でなければいけません。
またそれまでに住んでいた住宅など居住用財産を譲渡し『長期譲渡所得の課税の特例』を適用されている場合、一定の期間内は住宅ローン控除の対象外です。
入居翌年に確定申告が必要
所得税や住民税の控除を受けられる住宅ローン控除を利用するには、入居した翌年に確定申告をします。会社員の場合には『1月~3月15日』が手続きの期限です。
個人事業主をはじめ毎年確定申告をしている人は『2月16日~3月15日』の一般申告と合わせて手続きしましょう。
初回の還付金が振り込まれるタイミング
手続きが正常に完了すると、確定申告書に記載されている口座に初回の還付金が振り込まれます。振り込まれるタイミングは『1カ月~1カ月半後』が目安です。
インターネットを使いe-Taxで手続きをすると、通常のタイミングより早く、確定申告から『3週間』程度で振り込まれます。
2. 確定申告の手順
住宅ローン控除により還付金を受け取るのに必要な確定申告は、どのような手順で実施するのでしょうか?必要書類の準備や確定申告書の作成・提出方法について解説します。
必要書類を準備
まずは下記の通り、必要な書類を用意しましょう。
- 確定申告書:税務署で取得か国税庁のホームページからダウンロード
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書:税務署で取得か国税庁のホームページからダウンロード
- 源泉徴収票:勤務先で発行
- 住宅ローンの年末残高証明書:金融機関から10月頃に自宅へ送付
- 登記簿謄本:法務局で取得
- 売買契約書もしくは建築請負契約書:不動産会社から受け取る
確定申告書にはAとBがあります。会社員で所得が給与所得・雑所得・配当所得・一時所得のみであれば確定申告書A、それ以外の人は確定申告書Bを利用しましょう。
また本人確認用に『マイナンバーカード』もしくは『マイナンバーの分かる書類+身分証』が必要です。
確定申告書等の作成
書類を用意したら確定申告書等を作成しましょう。国税庁の『確定申告書等作成コーナー』を利用すると、計算も自動ででき簡単です。作成は下記の手順に沿って行います。
- 『作成開始』をクリック
- 提出方法を選択
- 『利用規約に同意して次へ』をクリック
- 申告する年の申告書等の作成をクリックし『所得税』を選択
- 『作成開始』をクリックしたら順番に情報を入力
- 最後にマイナンバーの情報を入力し完成
手軽に使えるインターネットを利用した作成方法ですが、初めて取り組むと時間がかかる場合もあるでしょう。途中で保存する機能を利用すれば、続きから作業を再開できます。
参考:
期間内に納税地を管轄する税務署へ提出
作成した確定申告書は、期間内に税務署へ提出します。提出先は『所属する納税地を管轄している税務署』です。一般的には、住民票の住所がある住所地を管轄している税務署へ提出すれば問題ありません。
住所地を管轄する税務署が分からないときには、国税庁のホームページにある『国税局・税務署を調べる』で検索しましょう。東京都では区内に税務署が2カ所以上存在する地域もあるため、確認しておくと安心です。
提出方法には『e-Tax』『郵便・信書便』『税務署の受付へ提出』の3種類あります。e-Taxの利用にはマイナンバーカードが必要です。
取得に1カ月ほどかかるため、あらかじめ手続きしておきましょう。加えて利用者識別番号も取得します。
参考:
万が一間違えてしまったら
確定申告書の内容を間違えたまま提出してしまうケースもあるでしょう。そのようなときには正しい内容に修正すればOKです。
誤りに気付いたのが確定申告期限内であれば、正しい内容で確定申告書を作り直し期限内に提出します。期限を過ぎてから間違いに気付いた場合、手続きには2種類あります。
多過ぎる税額で申告していたなら『更生の請求』をします。作成した更生の請求書を税務署へ提出し、内容が認められると払い過ぎた分の税金が還付される仕組みです。申告から5年以内であれば請求できます。
税額を少なく申告していたなら『修正申告』が必要です。税務署の指摘を受ける前であれば、延滞税はかかりますが過少申告加算税はかかりません。
3. 確定申告したらいくら返ってくる?
確定申告をして住宅ローン控除を受けると、還付金はいくら受け取れるのでしょうか?還付金の金額についてチェックしましょう。
年末のローン残高で決定
還付金の金額は年末のローン残高によって異なります。そのため同じように住宅ローン控除を受けていても、返ってくる金額は人それぞれです。
10年目までは『年末ローン残高×1%』が所得税から控除されます。例えば年末ローン残高が3,000万円あれば30万円の還付を受けられる計算です。
また2019年10月1日~2020年12月31日の期間内に住宅を消費税10%で購入した人は、11~13年目も控除を受けられます。その際の控除額は『年末ローン残高の1%』か『(住宅取得額-消費税額)×2%÷3』のどちらか少ない金額です。
還付金が想定より少ない場合
先に計算した通り、年末ローン残高が3,000万円あれば計算上は30万円の還付金を受け取れるはずです。しかし実際に振り込まれる金額は30万円より少ないケースがあります。
住宅ローン控除は、所得税から差し引かれる形で還付される制度です。そのため所得税より多く還付されることはありません。控除額が30万円でも所得税額が25万円なら、還付されるのは最大25万円です。
また年末ローン残高が5,000万円の場合、通常通り控除額を計算すると50万円と求められます。しかし住宅ローン控除は40万円が上限のため、最大40万円までしか還付されないのです。
控除しきれなかったら住民税から減額
所得税で住宅ローン控除の金額を控除しきれなかった場合、残りは翌年度の住民税から差し引かれます。先ほどの例で控除額30万円・所得税25万円のケースを紹介しました。
このとき控除しきれていない5万円は、住民税から引かれます。所得税の住宅ローン控除適用には確定申告が必要ですが、住民税への適用は自動で行われるため、特別な手続きは不要です。
4. 2年目以降の確定申告は必要?
住宅を購入した翌年の確定申告は必須です。では2年目以降はどのような手続きが必要なのでしょうか?
会社員は年末調整のみでOK
会社員として働いているなら、確定申告を行うのは最初の1回のみです。2年目以降は勤務先での『年末調整』で手続きできます。必要な書類は下記の通りです。
- 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅ローンの年末残高証明書
住宅借入金等特別控除証明書と住宅借入金等特別控除申告書は、確定申告した年の10月頃に税務署から届きます。このとき9年分の書類が届く点に注意が必要です。紛失したら税務署に再発行を依頼しましょう。
また年末調整で書類の提出を忘れた場合には、1月末までなら勤務先に修正を依頼可能です。それ以降であれば確定申告で手続きします。
個人事業主は確定申告が必要
2年目以降であっても『個人事業主』として働いているのであれば、確定申告が必要です。個人事業主には会社員のような年末調整の仕組みがないため、毎年行う確定申告で住宅ローン控除に必要な書類を提出します。
提出する書類は年末調整と同様です。1年目の確定申告より書類が少ないため、書類をそろえる負担を軽減できます。
5. 繰上返済や借換えした場合はどうなる?
[caption id="attachment_1452" align="alignnone" width="1280"] (出典) pexels.com[/caption]
長い住宅ローンの返済期間中には、繰上返済や借換えをする場合もあるかもしれません。そのようなとき、住宅ローン控除はどのように扱われるのでしょうか?
繰上返済をしても控除対象
まとまった資金ができた時点で住宅ローンの繰上返済を検討している人もいるでしょう。繰上返済をすると、返済期間が当初の契約より縮まります。
しかし返済期間が短くなったとしても、ローン返済が始まったときから最後の返済日まで10年以上の期間があれば、住宅ローン控除の対象です。ただし繰上返済が総合的に考えて得かどうかは、ケースにより異なります。
金利が1%を上回る住宅ローンであれば、控除期間中でも繰上返済をした方が有利ですが、1%を下回る金利で契約しているのであれば、控除期間終了後の繰上返済の方が有利でしょう。
借換えは条件を満たせば対象に
借換えをすると、原則的には住宅ローン控除の対象外となります。借換えにより新しく契約した住宅ローンは、以前の住宅ローン消滅のための借入金だからです。
そのため控除の対象となる、住宅の新築・取得・増改築に用いられた住宅ローンに当てはまりません。ただし下記を満たす場合には、例外として借換えも住宅ローン控除の対象です。
- 新たな住宅ローンがそれ以前の住宅ローンの返済に充てるものだと明らかなこと
- 新たな住宅ローンが住宅ローン控除の対象となる要件に当てはまること
参考:No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき|国税庁
6. 住宅ローン控除の確定申告は早めに準備を
住宅を購入する際に、住宅ローン控除の対象となるローンを契約したなら、早めに確定申告の準備を始めましょう。2年目以降は年末調整で手続きできる会社員も、1年目は確定申告が必要だからです。
必要書類をそろえたら、国税庁ホームページの『確定申告書等作成コーナー』を使い、確定申告書を作ります。そして住所地を管轄する税務署へ、e-Tax・郵送・窓口のいずれかで提出しましょう。
慣れない作業には時間がかかるかもしれません。修正が発生する可能性もあるため、早めに取りかかっておくと安心です。