1.住宅ローン控除の基本
住宅ローン控除とはどのような制度なのでしょうか。控除額の計算方法や還付を受けられる時期など、まずは基礎知識をおさらいしておきましょう。
年末残高に応じ一定額が所得税から控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで住宅を取得した際、一定の条件を満たせば年末残高に応じた金額を所得税から直接差し引ける制度です。『住宅ローン減税』と呼ばれることもあります。
制度を利用するための主な条件は以下の通りです。
- 年間所得が2,000万円以下
- ローン返済期間が10年以上
- 建物の延べ床面積が40平米以上かつ、床面積の1/2以上を居住用として使用している
- 引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居し、年末まで住み続けている
中古物件の場合は、さらに築年数や耐震基準などの条件をクリアしていなければなりません。
控除額の計算方法
住宅ローン控除における限度額は、2022年以降に適用を受ける場合は年末時点におけるローン残高の0.7%です。年末残高が2,000万円の場合は2,000万円×0.7%=14万円となります。
ローンの返済を続けていると残高は年々減るため、残高の0.7%相当額も減っていきます。
確定申告または年末調整後に還付
住宅ローン控除は、所得税が直接減額される制度です。ただし、実際には差し引く前の所得税を納付した後、差し引かれる金額分が還付金の形で戻ってきます。
還付金を受け取れる時期は、翌年の確定申告後またはその年の年末調整後です。一般的に、年末調整で手続きした場合はその年の12月の給料や賞与と一緒に受け取れます。
確定申告を書類の提出により行った場合、還付されるのは申告から1~2カ月後です。e-Taxで申告すれば、申告後3週間程度で受け取れます。
2.所得税額が控除額より少ない場合
住宅ローン控除では、所得税が減額された後、余剰分が出るケースがあります。残った分の扱いについて詳しく解説します。
住民税から控除される
住宅ローン控除は、所得税から控除額が直接差し引かれる制度です。所得税額が52万円、住宅ローン控除額が20万円の場合、控除適用後の所得税は52万円-20万円=32万円となります。
差し引ける分が所得税額より少なく、差し引き後に余剰分が発生するケースでは、余剰分は住民税から引かれます。
所得税が15万円、住宅ローン控除額が20万円なら、適用後の残りは20万円-15万円=5万円です。5万円は翌年の住民税から差し引かれます。
控除額の上限に注意
住民税から差し引ける金額には上限が設けられています。所得税に関しては上限がないため全額差し引けますが、住民税は全額差し引けるとは限りません。
住民税の上限額は、『前年分の所得税における課税総所得金額の7%』と『13万6,500円』のいずれか少ないほうです。
3.住民税から控除される仕組み
住宅ローン控除で住民税額も減る場合の手続きについて解説します。反映される時期が所得税とは違う点も覚えておきましょう。
追加の手続きは不要
住宅ローン控除で所得税を減らす場合は、年末調整や確定申告による手続きが必要です。一方、住民税にも適用されるケースでは、別途追加の手続きを行う必要はありません。
給与支払報告書や確定申告書などから市区町村が内容を確認し、自動的に住民税の控除が行われる仕組みとなっています。
納税後に還付金を受け取る所得税の場合と異なり、住民税は市区町村で直接減額されます。還付金が後日支払われるという仕組みではありません。
控除が反映されるタイミング
住民税は前年の所得を基に算出されるため、翌年にならなければ金額が決定しません。所得税の控除がその年分の税額から差し引かれるのに対し、住民税に関しては翌年分の税額が対象となります。
きちんと引かれているかどうかは、毎年5~6月に送付されてくる『住民税決定通知書』で確認することが可能です。住民税決定通知書は、サラリーマンの場合は職場から手渡され、確定申告をした人なら納付書と一緒に自宅へ送付されます。
住民税の控除は年末調整や確定申告の書類を確認して行われるため、それぞれの手続きが間に合わなければ反映されない点に注意しましょう。
4.ふるさと納税への影響は?
住宅ローン控除と同様に、ふるさと納税も税額から直接差し引ける魅力的な制度です。併用する際の方法や注意点を解説します。
住宅ローン控除とふるさと納税の併用は可能
ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄付を行うことで、寄付金から自己負担分2,000円を除いた分が税額控除の対象となる制度です。地域の特産品などを返礼品として受け取れるメリットもあります。
ふるさと納税は住宅ローン控除との併用が可能です。どちらも税額控除を受けられるため、併用することで大きな節税効果を得られます。
ふるさと納税の税額控除を受けるには、確定申告または『ワンストップ特例制度』で申請しなければなりません。ワンストップ特例制度とは、寄付先が年間5自治体以下なら確定申告をしなくても控除を受けられる仕組みです。
住宅ローン控除額が減る場合がある
ふるさと納税の寄付金控除申請をワンストップ特例制度で行う場合は、全額が住民税から差し引きされます。住宅ローン控除は最初に所得税が減るため、併用しても互いの影響を受けません。
一方、ふるさと納税の申請を確定申告で行うケースでは、所得税と住民税の両方が対象です。所得税はふるさと納税から先に控除されます。
住宅ローン控除で所得税から引けない分は住民税から差し引けますが、併用する場合は住民税からの差し引き分がより多くなります。
住宅ローン控除では住民税からの控除額に上限が設定されているため、残りの全額を差し引けるとは限りません。住民税からも引けない分は切り捨てとなり、税額控除を満額受けられない可能性があります。
ワンストップ特例制度は初年度は使えない
ふるさと納税の申請で特例制度を利用できるのは、その年に確定申告を行う必要がない人に限られます。
住宅ローン控除を利用する際は、サラリーマンでも1年目に必ず確定申告をしなければなりません。ワンストップ特例制度の利用条件から外れてしまうため、ふるさと納税の申請も確定申告が必要です。
2年目以降はサラリーマンなら年末調整で申請できるため、ワンストップ特例制度を使えます。
ただし、高額医療費の手続きなどで確定申告が必要な年は、ワンストップ特例制度が使えない点に注意が必要です。
5.条件に応じ住民税からも控除される
住宅ローン控除は、年末残高に応じた金額が、その年の所得税から差し引かれる制度です。引けない分が発生した場合は、翌年の住民税からも差し引けます。
ふるさと納税と併用する場合は、満額控除を受けられない可能性がある点に注意が必要です。仕組みをしっかりと理解し、より節税効果が高まる方法を利用しましょう。
今後も住宅ローン控除は条件が変わる可能性があります。毎年のように条件が修正されている制度だからこそ、最新情報のチェックが欠かせません。
住宅ローン控除制度を含め、モゲチェックでは今後も住宅ローンに関するニュースを引き続き発信していきます。
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住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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