1.住宅ローン減税の基本
住宅ローン減税とはどのような制度なのか、まずは基本をおさらいしておきましょう。制度の目的や適用条件について解説します。
住宅ローン金利負担を軽減するための制度
住宅ローン減税とは、マイホームの購入時に住宅ローンを組んだ際、返済の金利負担を軽減できる制度です。正式名は『住宅借入金等特別控除』といいます。
住宅ローン減税の適用を受けると、年末時点での借入残高に応じた金額が、所得税や住民税から毎年控除されます。適用期間は原則として最大10年間です。
課税所得から差し引く所得控除ではなく、税金から直接差し引く税額控除であるため、大きな節税効果を期待できます。住宅ローン減税を利用するには、確定申告や年末調整による手続きが必要です。
年末借入残高の1%が所得税から控除される
住宅ローン減税では、その年の年末における借入残高の1%相当額が、所得税から差し引かれます。新築物件を取得した場合、1年あたりの控除限度額は原則として40万円です。
10年にわたり年末借入残高が4,000万円以上あるケースでは、毎年の控除額が40万円となるため、10年間で合計400万円の節税につなげられます。
所得税から差し引けなかった分は、翌年の住民税から差し引くことが可能です。確定申告や年末調整で所得税の手続きを済ませておけば、住民税に関する市区町村への申告を行う必要はありません。
減税対象となる条件
住宅ローン減税の適用を受けるためには、適用条件を満たす必要があります。新築物件を建設・購入した場合の主な適用条件は次の四つです。
- 物件取得日から6カ月以内に住み始め、制度の適用を受ける年の年末まで住み続けている
- 住宅の床面積が50平米以上、かつ床面積の1/2以上を居住用としている
- 控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下である
- ローンの返済期間が10年以上である
中古物件を取得した場合は、上記の条件に加え、築年数や耐震基準に関する条件もクリアしなければなりません。
2.控除額の上限は物件により異なる
住宅ローン減税の最大控除額は、物件の種類や消費税の有無などにより変わります。上限額に関する基本的なルールを確認しておきましょう。
消費税の有無で最大控除額が変わる
住宅ローン減税の最大控除額は、物件取得の際に消費税が発生したかどうかで変わります。消費税がかかる物件を取得した場合の最大控除額は年間40万円、消費税が不要の物件なら年間20万円です。
課税事業者から住宅を購入するケースでは、消費税を支払わなければなりません。一般的に、新築物件は不動産会社やハウスメーカーなどの課税事業者が売り主となるため、消費税がかかります。
一方、中古物件は売り主が個人である場合が多く、個人間売買では消費税がかかりません。ただし、課税事業者が所有している中古物件を購入する場合は、消費税が発生します。
消費税増税で控除期間が13年に延長
消費税率10%でマイホームを購入した場合は、住宅ローン減税の適用期間が13年に延長されます。2019年10月1日から2022年12月31日までの間に住み始めた人のうち、一定の条件をクリアした場合、13年間の控除の特例を受けられる可能性があります。
控除期間が13年に延長されるケースでも、当初10年間の最大控除額は『年末残高の1%』または『40万円』のいずれか少ないほうです。
11~13年目に関しては、『年末残高の1%』と『税抜物件価格×2%÷3』の少ないほうが最大控除額となります。
認定住宅を取得した場合の上限は500万円
認定住宅を取得して住宅ローン減税の制度を利用する場合、控除期間10年間の最大控除額は500万円です。1年あたりの上限額は50万円となります。
認定住宅とは、認定長期優良住宅と認定低炭素住宅の総称です。法律の規定に基づく認定を受けた住宅が、認定住宅とみなされます。
消費税がかからない認定住宅を取得する場合、適用全期間の最大控除額は300万円です。13年控除の要件を満たしているケースでは、適用期間が10年から13年に延長されます。
3.減税額の計算方法
住宅ローン減税における減税額の具体的な計算方法を理解しておきましょう。13年控除で最大控除額40万円のケースを例に解説します。
減税額の計算方法と控除の仕組み
住宅ローン減税では、年末のローン残高の1%を、控除期間中に毎年控除できます。その年の年末残高が3,500万円である場合、減税額は3,500万円×1%=35万円です。
年間最大控除額40万円より少ないため、35万円がその年の所得税から減税されます。年末残高の1%が40万円を超える場合、計算結果にかかわらず減税額は40万円です。
ローンの年末残高は返済にともない減っていくため、初年度の控除額が満額だったとしても、最後まで満額をキープできるとは限りません。年末残高が4,000万円以下になる年以降は、減税額も40万円以下になります。
所得税から控除しきれない場合
年末残高の1%または40万円の金額に所得税額が満たない場合は、残った分が翌年度の住民税から減税されます。住民税の最大控除額は次の通りです。
- 消費税率が8%または10%:前年分の所得税の課税総所得金額等の7%(上限13万6,500円)
- 消費税率が上記以外:前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(上限9万7,500円)
所得税だけでは控除しきれない分を住民税から控除し、それでも控除しきれなかったとしても、残りの分は切り捨てとなります。控除可能額が大きい場合でも、全額を差し引けるとは限りません。
11年目以降の計算方法
13年控除が適用される場合は、11年目以降の減税額の計算方法が10年目までとは異なります。次の計算式のうち、いずれか少ないほうが残り3年間の控除額です。
- 年末残高×1%
- 税抜建物取得価格×2%÷3
年末残高と税抜建物取得価格は、いずれも4,000万円が上限です。建物取得価格に土地の購入価格は含まれません。
税抜建物取得価格が3,000万円の場合、上記2番目の計算式に当てはめれば3,000万円×2%÷3=20万円となります。11年目以降の年末残高×1%と比較し、少ないほうがその年の減税額です。
4.減税額計算に必要な情報と入手方法
住宅ローン減税の控除額を計算する際は、年末借入残高・所得税・住民税に関する情報が必要です。それぞれの入手方法を紹介します。
年末借入残高の確認方法
減税額の計算に必要な年末借入残高は、金融機関が発行する『年末残高証明書』で確認できます。年末残高証明書は一般的に、毎年10~11月ごろに送付されるものです。
年末借入残高は、借入時に送付される『返済予定表(償還予定表)』でも分かります。ただし、変動金利などで金利が確定していない部分の予定は確認できません。
金融機関によっては、Webサイトで年末借入残高を確認できるケースもあります。ネット専業銀行以外の金融機関では、ネットサービスの利用申し込みを行う必要があるでしょう。
所得税・住民税の確認方法
給与所得者が所得税を確認する場合は、職場が発行する源泉徴収票を確認しましょう。『給与所得控除後の金額』から『所得控除の額の合計額』を引いた金額が、所得税の計算で用いる課税所得金額となります。
課税所得金額を算出できたら、国税庁のWebサイトにある『所得税の速算表』を使って所得税を計算できます。計算式は『課税所得金額×税率-控除額』です。
住民税は、所得割と均等割を合計して算出します。所得割額の計算式は『課税所得金額×税率-調整控除』です。均等割額は一律の金額で、自治体ごとに異なります。給与所得者であれば、職場から渡される『住民税の決定通知書』で税額の確認が可能です。
5.住宅ローン減税額を計算してみよう
住宅ローン減税の控除額は自分で計算することが可能です。新築物件を購入する場合は、年末借入残高の1%相当額または原則40万円のいずれか少ないほうが、その年の控除額となります。
控除額は最初に所得税から控除され、引ききれなかった分は住民税からも差し引かれます。必要な情報を入手し、どのくらいの節税効果を得られるのか計算してみましょう。
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