1. 住宅ローンの頭金の役割
ローンを契約しマイホームを購入する準備として、まずは頭金を用意するのが一般的です。頭金とはどのような役割のある資金なのでしょうか?
不動産購入時に自己資金として入れるお金
頭金は『自己資金』として入れるお金です。住宅ローンで借り入れする金額と合わせて住宅の購入金額として支払います。頭金が多いほど借入額を減らせ、少なければ借入額が増えるというわけです。
頭金をどれだけ用意するかは、月々の返済額に影響を及ぼします。頭金が多めなら月々の負担を抑えられ、少なめなら負担が増える仕組みです。
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支払うのは融資実行日
自己資金として用意した頭金は、ローン契約後『融資実行日』までに支払います。マイホームを購入するときには、申し込み・契約・物件完成・引き渡しという流れで進みます。融資実行日は通常、引き渡しの日と同日です。
住宅ローンの借入金と頭金をそろえ購入資金を全額用意し、あらかじめ営業担当と決定していた入金のタイミングに支払うことで、物件を引き渡してもらいます。
手付金と頭金の違いは?
頭金と混同しやすい費用に手付金があります。どちらも最終的には住宅購入費用の一部として利用されるお金ですが、意味合いが異なることを知っておきましょう。
自己資金である頭金に対し、手付金は契約時に売主に支払うお金です。万が一契約を破棄する場合には、キャンセル料としての役割もあります。
そのため頭金は0円ということもありますが、手付金は基本的に必ず支払う費用です。金額は物件価格の5%に設定されるケースが多いでしょう。
2. 頭金を用意するメリット
住宅購入時の自己資金である頭金を多く用意できると、それだけ多くのメリットが得られます。代表的なメリットをチェックしましょう。
月々の支払金額が低い
まず挙げられるのは、月々の返済額を低く抑えられることです。頭金を多く入れれば、それだけ借入金額を減らせます。
例えば20,000,000円の住宅を頭金1,000,000円で購入する場合と、頭金5,000,000円で購入する場合では、借入金額に4,000,000円の差が出ます。返済期間が同じであれば、頭金5,000,000円の方が月々の支払額は小さくできるのです。
また借入額が少ない分、返済期間を短く設定し、総支払額を少なく抑える計画も立てやすくなります。
優遇金利を受けられる場合がある
多額の頭金を用意できると『優遇金利』が適用される場合があります。
より有利な条件で借り入れできるのは、多くの自己資金を用意できる人であれば、スムーズな完済が期待できると判断されるからです。支払総額を抑えたい場合、頭金を多めに用意するのがおすすめです。
審査に通りやすい
頭金を多く用意できると、審査に通りやすくなることも期待できます。先にも述べた通り、頭金の多さが信頼につながるからです。
また住宅購入金額のうち自己資金の比率が高まれば、借入金額が減少します。借入金額が少ないことも、スムーズな審査通過につながる要因です。
住宅ローン審査について詳しくはこちら:住宅ローン審査の基礎知識。希望額で通すコツ、落ちた場合の対策も
3. 頭金はいくら入れるべき?
信頼や借入金額を減らすことにつながる頭金は、たくさん用意できるとそれだけ有利になることが分かりました。では具体的にどのくらいの金額を用意するとよいのでしょうか?相場や頭金を入れるときの注意点を解説します。
相場は物件価格の10〜20%
頭金の相場は物件購入価格の『1~2割』といわれています。例えば35,000,000円の新築マンションを購入する予定なら、3,500,000~7,000,000円を目安に用意するのがおすすめです。
なぜなら金融機関の住宅ローン借り入れ可能額が、物件価格の80~100%に設定されているからです。支払い能力の判断により緩和されることもありますが、頭金を1~2割用意できれば利用しやすくなります。
また国土交通省の『令和元年度 住宅市場動向調査 報告書』に記されている、物件購入者の自己資金比率の平均は下記の通りです。このデータからも、2割以上の頭金を用意している購入者が大勢いることが分かります。
- 新築注文住宅:27.2%
- 分譲戸建て住宅:26.5%
- 分譲マンション:39.4%
ある程度の現金は手元に残しておこう
頭金をたくさん入れるほど返済の負担は軽減します。ただし貯金を全て頭金として使い切ってしまうのは避けましょう。ある程度の現金を手元に残しておくことが大切です。
マイホーム購入時には頭金のほかに、諸費用もかかります。新築物件なら購入価格の5~7%、中古物件なら7~10%が諸費用の目安です。仮に35,000,000円の新築マンションを購入するとしたら、およそ1,750,000円にもなります。
また購入直後には、引っ越し費用や家具・家電の買い替え費用なども必要です。近い将来にあるかもしれない、車の買い替えや子どもの進学にも備えなければなりません。
貯金の中から、諸費用・生活予備費・将来への貯蓄を差し引いた分が、頭金に充てられる金額と考えます。
4. 頭金なしでも住宅ローン借り入れは可能
購入金額の1~2割が相場の頭金ですが、必ず必要というわけではありません。頭金0円でも住宅ローンの借り入れはできます。頭金を入れないメリットや注意点をチェックした上で検討しましょう。
低金利時代はフルローンもアリ
金利が高いタイミングで借り入れする場合、頭金をできるだけたくさん用意することが、支払利息の負担を抑えることにつながりました。しかし超低金利の状態が続く中では、住宅ローンの支払利息はかつてほど多くかかりません。
そのため頭金を多く入れることよりも、手元資金を残す方が大きなメリットを得られると考える人が増えています。
将来的に子どもの教育資金や車の購入費用など大きな支出が見込まれるのであれば、低金利の住宅ローンを目一杯借りて手元に現金を残しておくのも有効です。
さらに勤務先や年収といった条件さえ合えば、貸し出しに応じる金融機関が多いこともあり、フルローンでの住宅購入も選択肢としてアリという状況です。
頭金を入れないメリット
頭金を入れないことにもメリットがあります。代表的なメリットは、早い段階で借り入れし月々の負担を抑えられる点です。フルローンでの住宅購入であれば、それほど多くの資金を貯められていない20代でも手が届きます。
20代であれば長い時間をかけた返済ができるため、毎月の返済額を抑えながらマイホームを持てるのです。加えて頭金を貯めるまでの家賃の負担がなくなります。その上、手元資金にも余裕を持てるのは魅力的でしょう。
理想の住宅を見つけたとき、購入のタイミングを逃さずに済むというのもメリットです。頭金なしで購入する選択肢があれば、頭金がないからと購入を諦める必要がありません。
頭金を入れると住宅ローン控除が減る
住宅ローン控除とは、住宅購入に際し住宅ローンを借り入れた人が受けられる税控除のことです。
住宅ローンの年末の残高に応じて税控除が計算されるので、頭金を多く出して借入金額を小さくすると、住宅ローン控除額が減少することになります。
2022年以降の住宅購入では年末残高の0.7%相当額の控除が受けられるので、0.7%より低い金利で借りるのであれば、住宅ローン控除を最大限利用できる範囲内で多めに住宅ローンを借りるのは得といえるでしょう。
リスクの把握は不可欠
フルローンによる住宅購入はメリットもありますし、選択肢の一つとして有効です。ただしリスクについて知った上で利用しましょう。
勤務先や年収によっては、そもそも住宅ローンを利用できない可能性があります。また借り入れできても、総返済額が増え返済期間も長く設定されます。さらに金利が上昇すると、返済の負担が大きくなる可能性もあるのです。
返済の負担が大きく支払いが難しくなると、住宅を売却しローンを支払わなければならないこともあります。このようなとき、頭金0円ではローン残高が大きく、売却した金額のみで返済しきれないケースがあるのです。
高額のローン残高の返済を、自己資金でまかなう必要が出てきます。
5. 頭金の金額はライフプランと合わせて検討
マイホームを購入するときに用意する自己資金を頭金といいます。頭金が多いほど借入金額は少なくなるため、返済の負担を軽減することが可能です。
ただし貯金を全て頭金に充てると、諸費用やその後の生活に必要な資金が不足する可能性があります。そこで手元資金をある程度残した上で、頭金を用意することが大切です。
また超低金利が続く状況では、頭金を入れずに住宅ローンを契約する選択肢もあります。手元資金を残しやすい方法ですが、リスクがある点に注意して利用しましょう。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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