1.住宅ローン金利の動向
(1)金融市場の動向と住宅ローン金利
住宅ローン金利は、金利市場の値動きの影響を受けます。そのため、日本銀行(以下、日銀)やFRB(Federal Reserve Board(連邦準備制度理事会)、米国の中央銀行)の金融緩和政策や、日米の金利市場・株式市場の動向を確認することが欠かせません。
日銀の金融政策は4月の決定会合で据え置かれ、【短期金利はマイナス金利、長期金利は0%付近にキープ】するという、イールドカーブ・コントロール政策を継続することが決まりました。また、FRBの4月会合でも、現行のゼロ金利政策が据え置かれています。
これにより、日米ともに、市場金利は低く留め置かれる状態が続くことが予想されます。
[日銀の金融政策については以下参照]
アフターコロナの住宅ローン金利予想〜固定金利が上昇含みとなるワケ〜【2021年3月アップデート】
ところで、金利市場には、日米の株価動向も影響します。株価が上がるとき、安全資産とされる債券(国債など)が売られる場合があるためです。債券価格が下落するとき、債券利回り(≒金利)は上昇します。
その株価は、日米ともに年初から上昇を続けてきたものの、足元では一服しています。国内ではコロナ禍による緊急事態宣言が再度発令されたこと、米国では急速なワクチン投与によってコロナ禍そのものに対する耐性が付いているものの、株式などの値上がり益に対する増税案の発案が、株価の重石となっているためです。
今後日本でもワクチン投与が進むと、景況感が改善するとみられます。そうなると、株価や長期金利が上昇することで、住宅ローンでは固定金利が上昇する可能性があります。
ただし、そうした中でも、日銀がイールドカーブ・コントロール政策を継続する以上、固定金利の上昇幅も限定的となるでしょう。
こうした点を踏まえ、住宅ローン金利について、変動金利は低位安定、固定金利は市場動向次第では上昇含みという従来からの予想を維持します。
<住宅ローン金利予想と市場金利のイメージ>
住宅ローンの 金利タイプ |
参照する 市場金利 |
日銀の金融緩和 の影響 |
予想 |
変動金利 |
短期金利 (短期プライムレート) |
マイナス金利(▲0.1%)の影響を受ける |
低位安定 |
固定金利 |
長期金利 (スワップレート。 スワップレートは 国債利回りとほぼ連動) |
イールドカーブ・コントロールの 影響を受ける (長期金利を0%±0.25%以内の変動に留める) |
市場金利次第では 固定金利は上昇含み (ただし上昇幅は限定的) |
[あわせて読みたい]
アフターコロナの住宅ローン金利予想〜固定金利が上昇含みとなるワケ〜【2021年3月アップデート】
(2)今月の住宅ローン金利まとめ
今月の各金利タイプ・金融機関セクター別の住宅ローン金利の動きは下記の通りです。
変動金利は、みずほ銀行の0.375%という驚異的な低金利が継続されたほか、楽天銀行が0.01%引き下げるなど、引き続き低位安定しています。
固定金利は、長期金利が足元で低下したことから、全般的にやや低下しています。
変動(ネット系)
金融機関 |
ローン名 |
2021年4月 |
2021年5月 |
差 |
ソニー銀行 |
変動セレクト住宅ローン |
年0.457% |
年0.457% |
- |
楽天銀行 |
住宅ローン(固定特約付き) |
年0.537% |
年0.527% |
-0.010% |
住信SBIネット銀行 |
ネット専用全疾病保障住宅ローン (通期引下げプラン) |
年0.440% |
年0.440% |
- |
auじぶん銀行 |
住宅ローン(変動金利/全期間引下げプラン) |
年0.410% |
年0.410% |
- |
イオン銀行 |
住宅ローン金利プラン(定率型) |
年0.520% |
年0.520% |
- |
PayPay銀行 |
住宅ローン(全期間引下型) |
年0.380% |
年0.380% |
- |
平均 |
- |
年0.457% |
年0.456% |
-0.010% |
変動(メガ)
金融機関 |
ローン名 |
2021年4月 |
2021年5月 |
差 |
みずほ銀行 |
住宅ローン(全期間重視プラン) |
年0.375% |
年0.375% |
- |
三菱UFJ銀行 |
住宅ローン(全期間で金利引き下げ~ ずーっとうれしい金利コース) |
年0.475% |
年0.475% |
- |
三井住友銀行 |
住宅ローン (最後までずーっと金利引き下げ) |
年0.475% |
年0.475% |
- |
平均 |
- |
年0.442% |
年0.442% |
- |
変動(地銀)
金融機関 |
ローン名 |
2021年4月 |
2021年5月 |
差 |
北海道銀行 |
道銀住宅ローン 変動金利バリュープラン |
年1.175% |
年1.175% |
- |
七十七銀行 |
77住宅ローン |
年0.875% |
年0.875% |
- |
常陽銀行 |
常陽住宅ローン ずっとうれしい金利引下げ (全期間重視プラン) |
年0.625% |
年0.625% |
- |
千葉銀行 |
全期間割引プラン |
年0.605% |
年0.605% |
- |
横浜銀行 |
全期間安心プラン |
年0.440% |
年0.440% |
- |
八十二銀行 |
変動金利型 |
年0.925% |
年0.925% |
- |
静岡銀行 |
カスタムFLEX |
年0.625% |
年0.625% |
- |
京都銀行 |
京銀住宅ローン |
年0.775% |
年0.775% |
- |
山口銀行 |
YCG住宅ローン |
年0.925% |
年0.925% |
- |
福岡銀行 |
一本勝負 |
年0.975% |
年0.975% |
- |
平均 |
- |
年0.795% |
年0.795% |
- |
10年固定(メガ)
金融機関 |
ローン名 |
2021年4月 |
2021年5月 |
差 |
みずほ銀行 |
住宅ローン(全期間重視プラン) |
年0.650% |
年0.600% |
-0.050% |
三菱UFJ銀行 |
プレミアム住宅ローン [固定3年・固定10年・固定20年] |
年0.740% |
年0.740% |
- |
三井住友銀行 |
住宅ローン (最後までずーっと金利引き下げ) |
年1.350% |
年1.350% |
- |
平均 |
- |
年0.913% |
年0.897% |
-0.016% |
フラット35
金融機関 |
ローン名 |
2021年4月 |
2021年5月 |
差 |
楽天銀行 |
フラット35 |
年1.370% |
年1.360% |
-0.010% |
上記各金融機関セクター別のローン金利の平均値を時系列で示した住宅ローン金利インデックスの動きは、下図の通りです。
変動金利型では、楽天銀行が0.01%下げたことから、ネット系がやや低下しました。4月にみずほ銀行が0.375%という驚異的な金利の提供を始めたことから、先月に引き続き、メガバンクの平均がネット系を下回るという状況が続いています。
固定金利型では、長期金利の低下を受け、メガバンクの10年固定が低下しました。また、フラット35の金利も0.01%低下しました。
ネット上での金利競争の激化やコロナ禍の影響、金融緩和の長期化を踏まえ、今後は固定金利が上昇含みとなるものの、変動金利は低位安定することを予想します。
2.結局どれがいいの?モゲチェックおすすめの金利タイプとその理由
以下の通り、コロナ禍の影響を受けデフレ圧力が強い現在の経済環境を考えると、当面金利は現在の低水準のまま推移すると予想されます。
住宅ローンの金利タイプは、金利水準が低く推移することが予想される、変動金利をおすすめします。
(物価水準)
生鮮食品・消費増税の影響を除いた消費者物価指数(以下、コアCPI)の動きは下図の通りです。
日銀は2%のインフレを目指して大規模な金融緩和を続けていますが、その日銀が注視しているコアCPIは足元でまだマイナス圏内にあり、インフレは顕在化していません。
コアCPIは前年同月と比べた指標になります。
下図を見ると、今年に入りコアCPIが復調しているように見えますが、コアCPIは前年同月との比較であり、コロナ禍が世界的に拡大した2020年初頭と比較していることになるため、インフレに向かっていると見ることはできません。
したがって、日銀による大規模な金融緩和が継続することが見込まれます。
(長期金利の動き)
10年国債利回り(長期金利)の動きは下記の通りです。
2019年半ばに底をつけた後、徐々に上昇してきたものの、金利水準としては今だに0%近辺を上下しています。
これは、金融緩和を続ける日銀が、長期金利の変動幅をコントロールしているためです。海外の金利上昇につられる局面もありますが、日銀の政策によって、日本の長期金利は一方的な上昇とはならないのが現状です。
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(変動金利の将来予測)
モゲチェックが開発した計量モデルから予測される、変動金利型住宅ローン金利の将来予測は下図の通りです。
向こう8年ほどは今と変わらず、9年後頃から徐々に上昇し、最大1.1%近辺まで上昇した後低下します。
住宅ローンは残高が多く残っている返済初期ほど、より多くの利息を支払うことになります。そのため、35年の返済期間のローンでも、利息総額の半分近い利息を最初の約10年で支払ってしまうことになるのです。
したがって、新規借り入れ・借り換えいずれの場合も、今から10年程度先までの金利水準が重要であり、その観点から、より金利水準の低い変動金利型をオススメします。
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3.モゲチェックおすすめの住宅ローン団信!
典型的な団信の種類と概要は下記図及び表の通りです。
団信には、大きく一般団信、ワイド団信、疾病団信の3種類があります。ワイド団信は加入条件が一般団信より緩和されたただけで、保障内容は一般団信と同じです。
疾病団信は大きく分けて、がん保障、3大疾病保障、8大疾病保障、11疾病保障、全疾病保障の5種類があります。
上図の通り、がんと診断されただけで保険金が下りるがん保障はがん保障、3大疾病保障、8大疾病保障、11疾病保障に含まれていますが、全疾病保障には含まれていません。また、急性心筋梗塞又は脳卒中と診断され手術を受けたり60日以上所定の状態になった場合に保険金が下りる保障は3大疾病保障及び8大疾病保障には含まれていますが、11疾病保障や全疾病保障には含まれていません。
このように、疾病保障付き団信の構成は複雑なので、保障対象を細分化して、どのような場合に保険金で住宅ローンが完済されるのかしっかり確認する必要があります。また、団信には無料で付いているものと金利上乗せされるものがありますので、団信を利用する場合に金利がどうなるかも確認する必要があります。
金利水準や団信のメリットを考慮した上で、モゲチェックが特にオススメするローンは下記の通りです。
(金利の低さを重視する方!)
-
auじぶん銀行/住宅ローン(変動金利/全期間引下げプラン)
金利が業界最低水準で、かつ、無料でガン50%保障や全疾病保障が付いており、低い金利水準と充実した団信が両立した最も完成度の高い住宅ローンです。
(がんのリスクに備えたい方!)
-
ソニー銀行/住宅ローン(変動セレクト住宅ローン)
金利が業界最低水準で、かつ、0.1%の金利上乗せでガン100%保障が利用できます。さらにがんに罹患した場合の各種給付金が充実しており、がんに対する手当が最も充実した住宅ローンです。
(充実した団信を利用したい方!)
-
りそな銀行/りそな住宅ローン(ずーっとお得!全期間型/融資手数料型)
金利が業界最低水準で、かつ、団信革命という、がんを含む3大疾病保障に加え原因を問わず16の症状になったことで保険金が下りる最も充実した団信が利用できます。
4.私の住宅ローンはどうなる?タイプ別の対処法!
上記見通しを踏まえ、今住宅ローンを借りている方、これから住宅ローンを組む予定の方、それぞれのタイプ別に、今後の住宅ローン金利戦略をまとめました。
ご自身の状況と照らし合わせ、参考にしてみてください。
(1)これから住宅ローンの新規利用を考えている
①変動金利を利用したい場合
変動金利は今と同程度の低金利で、当面推移することが見込まれます。
②固定金利を利用した場合
住宅ローン利用が遅くなるほど、実際に適用される金利が高くなってしまう可能性があります。早めの住宅ローン利用を検討してみてください。
また、市場金利はより長期間の金利ほど上昇する可能性があります。全期間固定よりは20年固定、20年固定よりは10年固定など、より短めの期間の固定金利も検討してみてください。
(2)いますでに住宅ローンを借りている
①変動金利を利用中の場合
変動金利の基準金利が上昇する可能性は限定的ででしょう。引き続き変動金利をご利用いただくことをおすすめします。
ただし、今適用されている変動金利が1%以上の場合は、借り換えによって総返済額を大きく削減できる可能性があります。
②固定金利を利用中の場合
いま固定特約期間中であれば、その期間中は適用金利が変わりません。
ただし、これから固定特約期間が終了する予定の場合は、固定金利を再選択すると従来よりも高い金利が適用され、返済額が上昇する可能性があります。
いずれにしても、今の適用金利が1%以上の場合は、借り換えによって総返済額を大きく削減できる可能性がありますのでぜひ検討してみてください。
5.その他の住宅ローン情報
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