1. 住宅ローン契約までの流れ
住宅ローンを契約するにはまず申し込みが必要です。事前審査・本審査という2段階の審査があるため、それぞれで何を行えばよいのかチェックしましょう。
事前審査申し込み・審査実行
『事前審査』は本審査前の簡易的な審査です。この段階では、契約者本人に住宅ローンを利用できる経済力があるかどうかをチェックします。
そのため会社員であれば源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書の写し(3年分)など、年収の分かる書類が必要です。このほかに本人確認のための運転免許証や、購入したい物件のパンフレットなども提出します。
インターネットで申し込むと自己申告のみでよいケースもあり、その場合は資料の提出が不要です。また金融機関によって、審査通過に必要な基準や契約時の条件はさまざまです。
どの金融機関が向いているか判断が難しいときや、審査に通過できるか不安なときには、複数の金融機関へ事前審査を申し込むのもよいでしょう。
本審査申し込み・審査実行
事前審査に通過したら『本審査』に申し込みます。複数の金融機関から事前審査通過の通知が届いたら、その中から希望に合致するものを選びましょう。
事前審査は年収が主なチェックポイントですが、本審査では物件や健康状態についても詳しく審査されます。
住宅ローンは購入する物件を担保とすることが通常です。そのため希望借入額と物件の資産価値が釣り合っていなければいけません。万が一契約者が返済不能となっても、貸し出した資金を回収できるかという点でチェックされます。
健康状態の告知は『団体信用生命保険』へ加入するために必要です。契約者が死亡・高度障害などの場合に残債を肩代わりする保険で、一般的に加入が義務付けられています。
物件の売買契約は事前審査中に行う
事前審査と本審査は、金融機関との間でやり取りが発生します。物件の購入に必要な『売買契約』は事前審査中に締結します。
売買契約のタイミングは、事前審査申し込み後の内見から1週間後が目安です。例えば土日に内見をした場合、翌週の土日に売買契約へ進むという流れが多いでしょう。
契約時には『本人確認書類』『印鑑』『手付金』『印紙代』などを用意します。
2. 住宅ローン契約から実行までの流れ
無事に審査を通過し、売主との売買契約も完了したら、金融機関との契約を行う段階です。契約から融資実行までの流れを見てみましょう。
金融機関と契約を締結
住宅ローンを利用するために金融機関と締結する契約を『金銭消費貸借契約(金消契約)』といいます。契約時には契約者本人はもちろん、連帯債務者や保証人の同席も必要です。
契約に関わる全ての人がそろった上で、重要事項の説明を受け契約内容を確認し、契約書への署名捺印を実施します。このとき必ずチェックするのが、借入額・借入年数・金利です。
契約締結後に誤りを見つけても訂正できません。気付いた点があれば署名捺印の前にクリアにしましょう。また同じタイミングで火災保険加入の確認や、抵当権設定契約も行われます。
契約時には『収入印紙』『住民票』『印鑑登録証明書』『実印』『通帳・銀行印』『本人確認書類』などを持参します。
融資実行・残金決済
『融資実行日』『残金決済日』『物件引渡日』は、同日になるケースがほとんどです。そのため売主・金融機関と事前に打ち合わせをし、日程を調整しておく必要があります。
融資された資金が売主へ振り込まれ、物件の登記と抵当権の設定が行われたら、全ての手続きが完了です。
3. 各手続きに必要な期間
住宅ローンの手続きには時間がかかります。具体的にどのくらいの日数が必要なのかを知り、必要となる期間をイメージしましょう。
事前審査は即日から1週間程度
チェック項目がそれほど多くない事前審査は、長くても1週間ほどで審査結果が分かります。購入する物件を決め、不動産会社経由で事前審査へ申し込むケースでは『2~4日』ほどかかるのが一般的です。
中には即日で回答が出る金融機関もあるでしょう。またインターネットで申し込むと『1~2日』で結果が出るケースもあります。
金融機関の混雑具合によっても、結果が出るまでの日数は変動します。申込者が多い時期には、通常よりも時間がかかりやすいでしょう。
本審査は1週間から1カ月程度かかることも
より詳細な審査が行われる本審査には『1週間~1カ月』ほどの期間が必要です。審査項目が多くなることはもちろん、支店・本店・保証会社のそれぞれで確認が行われるため、結果が出るまでに時間がかかります。
さらに年収に対して希望借入額が大きい・自営業者で経営状況の確認が必要・ほかに複数のローンがある・中古マンションを購入するといったケースでは、審査の期間が長くなりがちです。
加えて書類に不備が見つかると再提出が必要となる場合もあります。そうなるとさらに時間が必要です。事前のチェックで不備を出さないよう注意し、万が一不備があったときには速やかに対応するよう心がけましょう。
完了まで2カ月程度は見ておこう
事前審査の申し込みから融資実行までは、およそ『2カ月』かかると考えておくとよいでしょう。住宅は購入して終わりではありません。
その後は引越しやそれに伴う諸手続きも必要です。申し込みから2カ月後をめどに準備をしておけば、物件引渡から入居するまでの流れもスムーズに実施しやすいでしょう。
4. 契約をスムーズに進めるコツ
申し込みからおよそ2カ月もかかる住宅ローンの契約は、ポイントを押さえておくことでよりスムーズに進められます。なかなか進まない手続きに不安になることや、同じ書類を取得するために何度も足を運ぶ手間を避けられるはずです。
必要書類を早めに準備
ポイントとしてまず挙げられるのは、必要書類の準備を早めにしておくことです。住宅ローンを契約する際には、各段階で書類の提出を求められます。
本人確認書類であればすぐに提示できますが、住民票や印鑑証明書は市区町村役場で発行してもらわなければいけません。また源泉徴収票を紛失した場合には、会社の担当部署へ再発行の依頼も必要でしょう。
住宅ローンの契約時は、スケジュールがタイトなことも多いものです。事前に必要と分かっている書類については、早めに取得の手配をしておくと、必要なときすぐに提出できます。
不動産会社が窓口として動いてくれる場合には、書類の準備について効率的な方法を案内してくれることもあります。
事前審査を通しておく
事前審査にあらかじめ申し込み、通過しておくこともポイントです。不動産会社へ行くと内見前に事前審査を案内されることがあります。先に審査に通過していれば、住宅を購入できるだけの経済力があると分かるからです。
どのくらいの借入金額で事前審査に通過するかが分かっていれば、物件探しにおいても目星を付けやすくなります。
審査がやり直しになる事態を避ける
本審査に通過したからといって安心してはいけません。融資実行までの間に申し込み内容と条件が変われば、再審査の可能性が出てきます。
例えば新居に合わせて車も新しくしたいと、自動車ローンを組み新車を購入した場合、再審査を受けなければいけないでしょう。住宅ローンの借入額は『返済比率』という年収に占めるローンの割合で決まっています。
返済比率には全てのローンを含むため、新たにほかのローンを組むと借入可能額の上限が変わる可能性があるからです。また転職もこの時期には避けましょう。申し込み時と契約者の状況が変われば、当然再審査となるからです。
5. 住宅ローンの疑問は専門家へ相談
住宅の購入はそう何度もすることではありません。初めての手続きが多く、慣れないこと・分からないことが出てくるのは自然なことです。そのようなときには専門家へ相談すると悩みの解消につながります。
流れや手続きは不動産会社へ
手続きや契約の流れが分かりにくいと感じるときには、不動産会社の担当者へ相談しましょう。次に何が必要でどのような準備をしておけばよいか、分かりやすく教えてくれるはずです。
どの住宅ローンを選べばよいか分からず絞り込めないなら、不動産会社が提携しているローンを選択する方法もあります。提携ローンであれば、住宅の適合審査が不要なことや審査に通過しやすいこともあるでしょう。
中には金利の優遇措置があるローンを提供している不動産会社もあります。相談すると、自力で探すより好条件で利用できるかもしれません。手続きの各段階でサポートを受けやすいのも提携ローンのメリットです。
資金計画はFPへ
自分たちにとって住宅購入が適切かどうか、資金計画のアドバイスが必要なら、ファイナンシャルプランナー(FP)へ相談するとよいでしょう。ほかのライフイベントも考慮したアドバイスをもらえます。
年収や頭金に対して適切な物件選びができていない場合、住宅ローンを契約できたとしても将来の返済が厳しくなるかもしれません。子どもの教育資金を十分に確保できないケースもあるでしょう。
事前に相談し資金計画を十分に練れていれば、暮らし全体のバランスが取れた住宅購入が期待できます。
6. 住宅ローン契約は余裕を持って進めよう
マイホームの購入はすぐにできるわけではありません。事前審査への申し込みから契約締結・融資実行までの流れを押さえ、それぞれの手続きに必要な期間も確認しておきましょう。
事前審査は即日~1週間、本審査は1週間~1カ月ほどかかり、その間に売主と売買契約を結びます。その後、本審査に通過すると金融機関との金消契約締結です。
契約した後は融資実行・残金決済・物件引渡が同日に行われます。ここまでで約2カ月かかるのが一般的です。各段階で必要な書類をチェックし、早めに用意しておくことで、よりスムーズに審査や手続きを進められます。
不明点を専門家へ相談するのもポイントです。不動産会社やFPの意見も参考にして、手続きを進めましょう。