1.住宅ローンを組む金融機関と交わす契約書
住宅ローンの利用時には、主に以下の3種類の契約書を締結することになるでしょう。どのような契約を交わすのか、それぞれの内容を詳しく解説します。
抵当権設定契約書
住宅ローンを組む際、金融機関は土地や建物に抵当権を設定します。貸し付けたお金を債務者から回収できなくなった場合に、土地や建物を売却して残債に充てるためです。
抵当権設定登記が行われると、債務者と金融機関との間で抵当権設定契約書が締結されます。万が一の際、金融機関が物件を競売にかけて売却できることを約束する書類です。
一般的に、抵当権の設定登記作業は、金融機関が指定した司法書士に行ってもらいます。抵当権設定契約書は、司法書士へ依頼する際に用意しなければならない書類の一つです。
金銭消費貸借契約書
住宅ローンを利用する際は、借入金額・返済期間・金利・金利タイプ・引き落とし口座など、さまざまな取り決めがなされます。これらをまとめて記載した書類が金銭消費貸借契約書です。『住宅ローン契約書』と呼ばれることもあります。
金銭消費貸借契約書を見れば、自分がどのような条件でローン契約を締結しているのか、詳細に確認することが可能です。基本的な利用条件以外に、滞納時の対応や繰り上げ返済時の手数料なども分かります。
金銭消費貸借契約書を交わす際には、さまざまな書類の準備が必要です。住宅ローンにおける最重要書類に位置づけられるため、なくさないようにきちんと保管しておかなければなりません。
保証委託契約書
住宅ローンを組むにあたり、債務者と金融機関との間に保証会社を入れる場合があります。保証会社に債務の保証を委託する際、交わされる契約書が保証委託契約書です。
保証会社を利用する場合は、債務者が返済不能に陥った際、保証会社が金融機関に『代位弁済』を行います。代位弁済とは、第三者が借り主の代わりに借金を返済することです。
ただし、代位弁済が行われても、債務自体がなくなるわけではありません。債権は保証会社に引き継がれるため、債務者は保証会社から弁済請求を受けることになります。
保証会社には保証料を支払う必要があるため、ローン契約者の負担を抑える意味で保証会社を使わない金融機関もあります。しかし、万が一の際に金融機関がリスクを負わなければならないことから、保証料無料のローンは審査が厳しめになりがちです。
2.住宅ローン契約書確認のポイント
住宅ローンを契約する際は、書類の内容に間違いがないか、しっかりと確認することが大切です。理解できない部分があるなら、契約時に疑問を解消しておきましょう。
内容に誤りがないかよく確認する
住宅ローン契約書にはさまざまな項目が並んでいます。間違った内容のまま契約してしまわないように、細かい部分までチェックしましょう。
特に確認が必要な重要項目は、借入金額・借入金の使途・金利・返済期間・返済方法・返済日です。団信に加入する場合は、団信に関する内容も記載されます。
連帯債務者や連帯保証人を立てて借入を行う場合は、該当者の情報も確認が必要です。全ての内容に誤りがないことを確認してから、署名捺印を行いましょう。
不明点を残さない
住宅ローン契約書では、金融や法律に関する数多くの専門用語が使われます。内容を細かくチェックする際、理解できない言葉や言い回しが目に留まることもあるでしょう。
不明点をそのまま放置すると、後から大きな問題に発展する事態にもなりかねません。金融機関の担当者に聞くなどして、全ての疑問を解消しておくことが大切です。
専属の担当者がいない場合は、金融機関が設けている住宅ローン専用のコールセンターなどに聞けば、丁寧に教えてくれるでしょう。
3.契約時の注意点
住宅ローンの契約を締結する際は、印紙代と必要書類に注意しましょう。それぞれについて気を付けるべきポイントを解説します。
印紙代が必要
契約書にはさまざまな種類があり、中には印紙代を必要とするものがあります。印紙代とは、収入印紙を貼ることが義務づけられた書類に課される税金のことです。印紙税とも呼ばれます。
収入印紙の貼付を義務とする書類を『課税文書』といいます。住宅ローンに関する契約書のうち、金銭消費貸借契約書や売買契約書は課税文書の一種です。5万円以上の領収書にも、収入印紙を貼らなければなりません。
課税文書に印紙を貼らなかった場合や、印紙を貼っていても消印がなかった場合は、所定の過怠税が徴収されてしまいます。印紙代が必要な契約書は、収入印紙が適切に貼られているか確認しましょう。
必要書類を忘れずに持参
住宅ローン契約書を交わす際は、さまざまな書類の用意が必要です。契約内容により準備すべき書類の種類は異なるため、事前にきちんとチェックしておかなければなりません。
契約内容にかかわらず準備が必要な書類は、『運転免許証や健康保険証などの本人確認書類』『融資金の入金口座を確認する書類』『住民票』『印鑑証明書』です。
金銭消費貸借・抵当権設定・保証委託の契約書は、金融機関側で準備してもらえます。必要書類に関して不明点がある場合は、金融機関に問い合わせましょう。
4.マイホーム購入時に必要なその他の契約書
物件取得時にはいくつかの契約書が交わされます。ローン契約に関するもの以外の契約書についても、内容を理解しておきましょう。
売買契約書
物件購入時には、買い主と売り主が売買契約を交わします。売買契約が成立すると、売り主は所有権移転や引き渡しなどの義務を負い、買い主は売買代金の支払義務を負います。
売買契約の基本的な内容を記載した書類が売買契約書です。売買契約書には、物件の詳細・売買代金・付帯設備・権利・契約不適合責任などに関する項目が並びます。
建物に関することやトラブルが発生した際のことなど、物件取得に関するさまざまな内容が記載されているため、契約前にしっかりとチェックしておきましょう。
売買契約書は課税文書であり、収入印紙の貼付が必要です。また売買契約時には、一般的に売買代金の10%程度の手付金を支払わなければなりません。
重要事項説明書も要確認
不動産を売買する際は、買い主に対して重要事項説明を行うことが法律で義務づけられています。誤った認識を持ったまま購入するのを防ぐために設けられているルールです。
重要事項説明は、宅地建物取引士が押印した重要事項説明書を買い主に交付した上で、宅建士との対面で契約前に行われます。
重要事項説明書は、物件や取引条件などに関する事項が詳細に記載されている書類です。売買契約書と重複する部分もありますが、売買契約書に比べかなり細かい部分にまで言及しています。
重要事項説明書の内容をしっかりと理解し、納得した上で売買契約を交わさなければなりません。分からない部分があれば、宅建士に分かりやすく説明してもらいましょう。
媒介契約書
物件売買時に不動産会社を利用する場合、売り主や買い主は不動産会社と媒介契約を締結します。一定の契約内容を記載し、不動産会社が売り主や買い主に交付する書類が媒介契約書です。
国土交通省は、媒介契約で定めるべき基本項目を『標準媒介契約約款』で定めています。標準媒介契約約款とは、利用者にとって不利な契約になることを防ぐために告示されているものです。
媒介契約書を交わす際は、標準約款に基づいて作成されているか確認しましょう。標準約款に記載されていない条件でも、契約書に盛り込んでもらうことで不利益を被らずに済む場合があります。
4.各契約書の内容はしっかり確認しよう
住宅ローンを利用する際は、金融機関と各種契約書を締結します。物件購入時にも、売り主や不動産会社と契約を結ばなければなりません。
それぞれの契約書には、数多くの重要項目が並んでいます。契約後に大きなトラブルを起こさないためにも、書類の内容にはしっかりと目を通しておきましょう。