1. 住宅ローン契約前に住民票を移すメリット
契約前に新住所へ住民票を異動させると、どのようなメリットがあるのでしょうか?登記費用にも関わるメリットについて解説します。
旧住所のままだと住所変更登記が必要
住宅ローンの契約を旧住所で行うと、登記の手間とコストが増えます。新住所への引っ越しが完了したタイミングで住所変更登記が必要だからです。司法書士に依頼すると報酬として2~3万円かかります。
また不動産登記で登録免許税の軽減措置を受けるために必要な『住宅用家屋証明書』の発行には、新住所の住民票の方がスムーズです。旧住所のままでは証明書を発行できず、軽減措置を受けられない可能性があります。
ケースによっては数十万円もの差額が発生するかもしれません。
住宅用家屋証明書の取得が容易
不動産登記で納付する登録免許税は、自宅の登記であれば軽減措置を受けられます。登記する住宅が自宅であると証明するのに必要なのが『住宅用家屋証明書』です。
住民票を新住所へ移していれば、売買契約書・建物の登記簿・住民票のみで証明書を発行してもらえます。一方、住民票が旧住所のままだと、登記する住宅が自宅なのか分かりません。
そこで『申立書』と、新住所に移れない理由を説明する『疎明資料』の提出も求められます。なぜ新住所へ移れないのかに関しては、相応の理由が必要です。まだ引っ越し準備が整っていないからなど、自己都合による理由では認められないこともあります。
2. ただし転居前の住民票異動は違法
引っ越し前の住所異動は手間やコストの削減に役立つと分かりました。しかしすぐに実行するのは避けた方がよいでしょう。リスクを知り適切な手続きを踏むことが大切です。
金融機関が求める場合も多いが違法行為
金融機関から新住所へ住民票を移すよう指示されるケースもあるため、引っ越し前の住所異動は誰でもできる行為と考えている人もいるでしょう。しかし引っ越し前に転入や転居の手続きをするのは『違法』です。
それでも異動を指示される場合があるのは、契約者の手間やコスト削減に加え、銀行内で発生する事務作業の手間を省略できるからです。
旧住所で登録すると引っ越し後に新住所へ変更しなければいけませんが、新住所で登録すればその作業がなくなります。
転入届を出せるのは引っ越し後
住民票の住所を変更するには『転入届』を役所へ提出します。提出できるタイミングは『引っ越し後』です。さらに引っ越し後ならいつでもよいわけではなく『14日以内』の届出が義務付けられています。
転入届を提出するときには、引っ越し前の住所地で発行してもらった『転出証明書』が必要です。マイナンバーカードを使い転出届を提出している場合には、マイナンバーカードを持参します。
また同じ市区町村内での引っ越しであれば、転出届の必要はありません。引っ越し後に役所で『転居届』を出せば手続きは完了です。
虚偽の申告には罰則あり
転出届・転入届・転居届の提出は、住民基本台帳法で定められている義務です。行政が提供する各種サービスの利用にも関わります。そのため期限内に届出を提出しなければ『5万円以下の過料』が科されるルールです。
また引っ越し前に新住所へ転入届や転居届を出すと、公務員に対する嘘の申し立てを行った違法行為とみなされます。届出が嘘だと判明すると『5年以下の懲役または50万円以下の罰金』が科される可能性があります。
3. その他の問題点
違法行為にあたるという以外にも、引っ越し前の住民票の異動により問題が発生する場合があります。代表的な問題についてチェックしておきましょう。
行政からの郵便物が新住所に届く
住民票を新住所へ移すと、役所から届く郵便物は新住所へ発送されます。中には税金の納付書や手当の手続きに用いる書類などもあるでしょう。大切なお知らせを見逃してしまう可能性があります。
加えて、新住所が更地や工事中で郵便ポストや表札がないと、郵便物が返送されてしまうケースもあり得ます。宛先不明で送り返されてしまうと、新住所へ引っ越していない現状が役所へ知られる可能性が高まります。
子どもの学区に影響が出る
子どもがいる家庭では、通う学校に影響が出るでしょう。学区は原則として住民票をもとに決められるため、新住所へ転入届を提出すると、転校の手続きを取らなければいけない可能性があります。
許可を得れば学区外の学校へ通える可能性もありますが、例外的な措置のため、実際にどのような扱いになるかは問い合わせてみなければ分かりません。想定していた時期と異なるタイミングで転校するといった事態も起こり得ます。
4. 住民票は引っ越しが完了してから移そう
金融機関から引っ越し前に新住所へ住民票を移すよう依頼される場合もあるでしょう。しかし引っ越し前に転入届を出すのは、住民基本台帳法で定められている内容に違反する違法行為です。
実際には引っ越していないのに転入届を出すこと自体も、公務員へ嘘の申し出をしているため罪に問われます。一方で、登記や登録免許税の軽減措置に関する手続きがスムーズな点はメリットでしょう。
しかし違法行為により過料の支払いや罰金・懲役を科される可能性もあります。役所からの郵便物や子どもの学区に影響する点も問題です。そのため住民票の異動は、引っ越しが終わってから行うのが適切といえます。
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