1.住宅ローン控除を受ける条件
ローン契約者が単身赴任中の住宅ローン控除の扱いについて知るために、まずは控除が適用される条件を確認しましょう。条件を満たすことで控除の対象となります。
自己居住用である
控除を受けられるのは『マイホーム』のみです。個人が住宅ローンを契約して住宅を購入し、契約者本人やその家族がそこに住む場合に対象となります。
同じく住宅を買うとしても、別荘やセカンドハウスとして使うケースだと控除を受けられません。また購入後に賃貸物件として貸し出す予定の場合には、住宅ローンではなく投資用不動産ローンを利用します。
利用するローンの種類が異なるため、投資用物件の購入では控除は適用されません。
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新築・取得から6カ月以内に入居
単にマイホームを購入するだけでは、控除の対象にならない可能性もあります。住宅を新築もしくは購入したら、契約者やその家族が『6カ月以内』に引っ越すことも条件です。
加えて引っ越した年の『12月31日』まで、引き続き住み続けていなければなりません。実際に住んでおり控除の対象となることは、引っ越した年の12月31日時点の住民票で確認されるからです。
2.単身赴任になった場合の扱い
ローンの利用目的や入居について、住宅ローン控除には適用のための条件があると分かりました。では契約者が単身赴任することになり購入した住宅に住めなくなった場合には、どのように扱われるのでしょうか?
家族が住み続ければ控除の対象
契約者本人が転勤や転地療養などの理由から単身赴任になったとしても、家族が6カ月以内に引っ越し、年末まで住み続けていれば控除の対象です。契約者はやむを得ない事情で、その住宅に住んでいない状態にすぎません。
やむを得ない事情が解消すれば、家族の元へ戻ってくると考えられます。そのため単身赴任であれば、実際には契約者が住んでいないとしても、引き続き住んでいるものとして扱われる仕組みです。
結果的に控除の対象となり、年末ローン残高の0.7%を所得税や住民税から控除されます。
参考:No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等「2 転勤等により居住の用に供することができない場合で、住宅借入金等特別控除等の適用を受けることができるとき(適用要件)」|国税庁
住民票の異動は問題なし
遠方へ単身赴任する場合、住民票を異動することになるでしょう。控除の適用を受けるにあたり、契約者の住民票がある場所は問われません。
家族が購入した住宅に住み続けていれば、契約者が住んでいるものと扱われます。住民票を異動したとしても、控除の適用に影響は出ません。
海外駐在の場合は取得時期に注意
ただし単身赴任先が海外の場合には、注意が必要です。住宅を取得した時期によっては、家族が住み続けていたとしても控除を受けられないかもしれません。
具体的には『2016年3月31日』以前に取得した住宅は、契約者が海外駐在の間は控除を受けられません。駐在先から戻り、再び住宅に住み始めたときに控除期間が残っていれば、その期間分は控除が適用されます。
海外への単身赴任中も控除の対象となるのは『2016年4月1日以降』に取得した住宅です。ただしこのケースでも、単身赴任中に国内で源泉所得が発生しなければ、控除対象外として扱われます。
参考:No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等「2 転勤等により居住の用に供することができない場合で、住宅借入金等特別控除等の適用を受けることができるとき(適用要件)」|国税庁
3.家族帯同で転勤する場合
契約者が単身赴任をするとき、国内であれば控除対象です。一方、行き先が海外だと、住宅の取得時期によって適用されるかどうか異なります。では家族も一緒に引っ越す家族帯同では、どのように扱われるのでしょうか?
家族帯同の場合は適用外
単身赴任で住宅ローン控除が適用されるのは、購入した住宅に家族が住み続けているからです。家族がいるということは、契約者はそこに戻ってくると考えられるため、住んでいるのと同じように扱われます。
では家族も一緒に引っ越す場合はどうでしょうか?契約者はもちろん家族も全員住んでいない住宅には、居住しているとはいえません。居住していることが条件の制度のため、控除対象外です。
参考:No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等「2 転勤等により居住の用に供することができない場合で、住宅借入金等特別控除等の適用を受けることができるとき(適用要件)」|国税庁
再度住み始めたときに残存期間があれば再適用
転勤先に家族全員で住んでいる間は控除を受けられません。しかし再び購入した住宅に住み始めると、控除の適用が再開されます。
例えば購入した住宅に住み始め2年で転勤になり、3年間家族全員が転勤先で暮らしたとします。このとき控除期間が10年間なら、対象となるのは最初の2年と戻ってきてからの5年間です。
転勤先に住んでいる期間も控除期間に含まれますが、その分の延長はありません。
4.住宅に家族が住み続けるか否かが重要
転勤といったやむを得ない事情で、購入した住宅に住めない場合もあるでしょう。このとき住宅ローン控除の対象になるかどうかは、住宅に家族が住み続けるか、契約者とともに引っ越すかで決まります。
契約者が単身赴任しても家族が住宅に住み続けるなら、引き続き控除の対象です。たとえ契約者が住宅に住んだことがなくても、住んでいるものとして扱われます。
ただし単身での海外駐在では、住宅の購入時期によって扱いが異なる点に注意しましょう。また家族全員で引っ越すケースでは、住宅に住む人が誰もいなくなり控除対象外です。
住宅ローン審査、ここがポイント!
通らない理由や対策を解説
住宅ローンの審査は仮審査(事前審査)→本審査の流れで進みます。仮審査と本審査は目的が異なり、仮審査は「その人に融資が可能かどうか」、そして物件の売買契約後に行う本審査では「本当に融資をしていいか」の観点での審査になります。
仮審査では審査の受付基準に合致しているかどうかや本人の返済能力、個人信用情報などが比較的簡易にチェックされます。本審査ではたくさんの書類のチェックや物件の担保価値の精査など、多岐にわたる項目を仮審査よりも厳密に審査されます。
本審査も通過したら金融機関とローン契約し、住宅の決済を行うことになります。
| 審査にかかる期間
仮審査は即日〜1週間程度、本審査は1〜2週間程度を要します。住宅購入時はなにかと慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
| 仮審査のポイント
仮審査では大きく3つ、「本人の属性情報」「返済能力」「個人信用情報」がチェックされます。細かく見ていきましょう。
・「本人の属性情報」
申込時の年齢や完済時の年齢、年収や雇用形態、勤続年数など、金融機関が個別に定めている受付基準に合致しているかが審査されます。「正規雇用であること」「勤続1年以上であること」「年収は300万円以上」など細かな条件が金融機関ごとに定められており、それらに合致している必要があります。具体的な基準は非公表のケースが多いものの、「◯◯銀行 商品概要」と検索するとある程度は銀行公式サイトで確認できます。
・「返済能力」
収入に対して借り入れ額が過大でないかが審査されます。代表的な指標として年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」があります。住宅ローンの年間返済額の計算には実際の金利ではなく、審査上のみ使われる「審査金利」が使われます。金融機関によって異なるものの、概ね3%前後という高めの審査金利でストレスをかけて計算されます。また、年間返済額には住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなどの借り入れの返済も考慮されます。
返済比率の上限は多くの金融機関が非公表ですが、目安は30%〜35%です。フラット35の場合は年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%と公表されています。
・「個人信用情報」
個人信用情報とはクレジットカードの支払いなどの履歴情報です。過去に延滞などのネガティブな履歴があると、住宅ローン審査にはマイナスに作用します。
| 本審査のポイント
本審査では様々な資料の提出のうえ、「仮審査の申告内容との相違がないか」「担保評価」が主に審査されます。
・「仮審査の申告内容との相違がないか」
仮審査で申告した年収と源泉徴収票の金額が違っていないか、借り入れがある場合はその内容が仮審査の申告内容と違っていないかなど、仮審査で金融機関に申告した内容との整合性がチェックされます。
・「担保評価」
住宅ローンで物件を購入すると、通常は金融機関によって「抵当権」が設定されます。抵当権とはいわば担保のことであり、申込人が住宅ローンの返済ができなくなったとき、その物件を売却して融資金の回収に充てるためです。そのため、購入しようとする物件の価値が借り入れ額に対して著しく低くないかをチェックされます。また物件そのもののスペック、例えば耐震基準や適法物件かどうかなども、金融機関の定める基準と照らし合わせられています。
| よくある本審査落ちのパターンやNG行為
・仮審査の申告内容と異なる点があった
仮審査と本審査で申告内容に相違があると落ちる確率が高まります。例えば仮審査で申告した年収と提出した源泉徴収票の年収が違えば、返済能力の計算が狂うことになります。
・別の借り入れを行う
住宅ローンの審査中に別の借り入れを行うと返済比率に悪影響が出ます。ローンという名称ではありませんがクレジットカードのリボ払いも借り入れと同じ扱いです。気軽な買い物が原因で住宅ローン審査に落ちる可能性もあるため注意が必要です。また、審査期間中はローンの延滞にも普段以上に注意しましょう。
・転職や退職
審査中に転職すると通過は難しくなります。金融機関は現在の勤務先で長く働き続けることを前提に住宅ローンの返済能力を見繕っているため、その前提が崩れるのです。さらに勤続年数の基準を満たせなくなる可能性が高くなります。
・健康上の問題で団信に加入できない
『団体信用生命保険(団信)』へ加入できず、住宅ローンを利用できないケースもあります。団信とは契約者が死亡したり高度障害に陥ったりした際、ローン残高を肩代わりしてくれる保険です。
生命保険のため、加入するためには過去3年ほどの病歴や治療歴などを告知しなければなりません。そのため健康状態によっては、団信の審査に通過できない場合があります。一般的な住宅ローンは団信への加入が必須とされているため、加入できなければ契約できません。
| 審査に通りやすくなるコツ・対策
・頭金(自己資金)を多めに入れて借入金額を下げる
自己資金を多めに確保して借入金額を引き下げることで審査に通りやすくなります。多くの自己資金を貯蓄できる人と言えるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
借り入れ額が少なくて済むため返済負担も軽減され、返済比率を引き下げることもできます。金融機関によっては自己資金の割合に応じて優遇金利を適用してもらえる点もメリットです。
・借り入れがある場合はなるべく返済しておく
自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、なるべく繰り上げ返済をして残高を減らしておくことも大切です。返済比率を引き下げる要因になるため、審査に通りやすくなります。
・ペアローンや連帯債務、収入合算を検討する
配偶者に収入がある場合は、ペアローンや連帯債務、収入合算により審査を通りやすくすることができます。例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借り入れ額)は10倍と非常に高いですが、ペアローンや連帯債務で夫婦2名とも債務者になれば、年収倍率は5倍まで下がります。一般的には、年収倍率は高くても7倍以内であれば審査に通りやすくなります。
収入合算とは夫婦の片方が債務者、もう片方は連帯保証人となる方法です。こちらも連帯保証人分の年収を一定程度加味した審査を受けられるので、単独で組むよりは有利です。
| 本審査は複数の金融機関へ申し込もう
住宅ローンの本審査への申し込みは、複数の金融機関で並行することが可能です。万が一審査に落ちたり減額承認されたりしたときに備え、複数の金融機関へ申し込んでおくとよいでしょう。複数の金融機関で本審査承認を得られたら、最も希望に近い条件のプランで契約に進めばOKです。
審査通過後であっても契約に進んでいなければキャンセルできるため、契約を決めたローン以外はキャンセルしましょう。その後は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行日を待つだけです。
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