1.今月の住宅ローン金利の動向
1−1 サマリー
2024年3月の住宅ローン金利は、変動金利に関してはSBI新生銀行による借入額1億円以上向けのキャンペーンやソニー銀行の借り換え限定キャンペーンの終了により、平均値としてはやや上昇する結果となりましたが、これら以外は特段大きな変化がありませんでした。
固定金利は全体的に見ればやや上昇する結果となりました。2月は固定金利に影響を与える長期金利(10年国債利回り)がほぼ横ばい圏で推移したため、金融機関が固定金利をプライシングするタイミングによって上昇・低下が異なっているものと考えられます。
結果的には変動金利・固定金利の金利差はほぼ縮まっていないことから(後述)、金利水準の高い固定金利で金利上昇リスクをヘッジする理由は乏しく、変動金利の利用が優位であるとモゲチェックでは考えています。
1−2 住宅ローン金利インデックスの動き
主要なネット銀行、メガバンク、地方銀行の変動金利、メガバンクの10年固定金利、フラット35の金利をそれぞれ平均したモゲチェックの独自指標、「住宅ローン金利インデックス」の動きは下図の通りです。
変動金利は低位安定、固定金利は高止まりが続いており、両者の金利差も縮小する気配のない状況となっています。
2月 | 3月 | 前月比 | |
変動(ネット系) | 0.342% | 0.374% | +0.033% |
変動(メガ) | 0.398% | 0.398% | - |
変動(地銀) | 0.645% | 0.645% | - |
10年固定(メガ) | 1.367% | 1.390% | +0.023% |
フラット35 | 1.820% | 1.840% | +0.020% |
※インデックスの内訳と主要な銀行の金利の前月との比較は、本稿の最下部「6.参考情報」に掲載しています。
2.変動金利をおすすめする理由と将来予想
モゲチェックでは固定金利よりも変動金利の利用をおすすめしています。このように変動金利をおすすめするのには、大きく2つ理由があります。
1.最初の10年で利息の半分を支払うことになる
2.変動の基準「短プラ」が上がらない見込みである
それぞれ解説していきます。
①最初の10年でほぼ半分の利息を支払う
まず1つ目に、住宅ローンは返済の初期、特に最初の10年の利息負担が大きいことが挙げられます。
住宅ローンは通常「元利均等返済」方式で返済します。これは返済の初期ほど利息返済の割合を高めることで毎月の返済額を一定にし、住宅ローン利用者が返済しやすくするためです。
裏返すと、残高が多く残っている返済の初期ほどより多くの利息を支払うことになり、返済期間が35年の場合、利息総額の半分近い金額を最初の約10年で支払うことになります。
そのため、返済総額を抑えるためには、返済初期ほど低い金利を利用することが肝心です。
より金利水準の低い変動金利であれば元本返済が早く進むので、万が一将来的に金利が上がるようなことがあっても、返済額の増加を抑えることができます。
(例)借入金額3,500万円・金利0.5%・35年返済の場合、利息総額約320万円のうち、最初の10年でおよそ半額の約150万円を支払うことになります。
②変動金利の基準「短プラ」が上がらない見込みである
次に、変動金利と固定金利では基準となる金利指標が異なっており、変動金利のベースとなる指標が上がっていない点が挙げられます。
変動金利は「短プラ(短期プライムレート)」と呼ばれる金利指標がベースとなっていますが、短プラは2009年頃から全く変化がない状態です。
短プラは二本立てとなっている日銀の金融政策のうち「短期金利操作」、つまりマイナス金利政策の影響を受けます。しかし、実は2016年にゼロ金利からマイナス金利へと政策金利が引き下げられた際、短プラは下がっていません。
このところ日銀は相次いで政策修正をしており、マイナス金利が近い将来廃止されゼロ金利になるのではないかという声も聞かれますが、こうした経緯を踏まえると日銀がマイナス金利を撤廃したとしても、銀行は短プラを引き上げる論理的な理由がないと考えられます。
変動金利利用者が住宅ローン利用者の7割を占める中、国民生活への影響の大きさからも、金融機関は短プラや変動金利を上昇させることには相当慎重にならざるをえないでしょう。そのため、変動金利は当面低金利が維持されるとモゲチェックでは予想しています。
>>日銀動向と住宅ローンの関係、解説はこちら
https://mogecheck.jp/articles/show/Mye15AOPqL87q6Gxj9Dv
まとめ:変動がおすすめ。固定金利は約1,000万円以上損する可能性も
いかがでしたか。最後に、変動と固定でどのように返済額が変わるのかをご紹介します。
上述の金利インデックスから、最安の変動金利とフラット35の金利差をとったグラフが以下です。今月は0.01%とわずかに縮小したものの、依然として1.47%と大きな金利差となっています。これは毎月返済額で約2.4万円、総返済額で約1,020万円もの差がつく計算となります(借入額3,500万円、35年返済の場合)。
解説の通り、今後固定金利が低下するとしても変動金利の優位性は揺るがないと考えており、1,000万円以上も多く返済して金利上昇リスクをヘッジする理由は乏しいとモゲチェックでは考えています。迷った場合はまず変動金利を検討すると良いでしょう。
参考記事
>>住宅ローン変動金利はいつ何%へ上がる?2050年までの金利予想
>>【住宅ローン金利まとめ】バックナンバーはこちらから(毎月更新)
3.自分の住宅ローンはどうすればいい?タイプ別対処法!
ここまでの金利見通しを踏まえ、住宅ローンをすでに利用中の方、これから住宅ローンを組む予定の方、それぞれのタイプ別にアドバイスをまとめました。
ご自身の状況と照らし合わせて参考にしてください。
3−1 すでに住宅ローンを借りている方
①変動金利を利用中の場合
モゲチェックでは変動金利の基準金利が上昇する可能性は低いと予想しています。引き続き変動金利をご利用いただくことをおすすめします。
ただし、利用中の変動金利が0.8%以上の方は、総返済額を大きく削減できる可能性があるので、住宅ローンの借り換えを検討してみてください。
②固定金利を利用中の場合
いま固定特約期間中であれば、その期間中は適用金利が変わりません。
ただし、これから固定特約期間が終了する予定の場合は、固定金利を再選択すると従来よりも高い金利が適用され、返済額が上昇することが一般的です。
全期間固定金利を利用中の方は、完済まで今と同じ金額での返済が続くことになりますが、変動金利や固定特約型の方に比べて割高に金利を支払っている方が多いです。借り換えによって返済額を節約できる可能性が高いでしょう。
変動・固定特約・全期間固定のどちらを利用されている場合でも、いますでに住宅ローンを組んでいる方は、借り換えによって返済額を節約できる可能性があります。借り換えをぜひ検討してみてください。
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3−2 これから住宅ローンを組む予定の方
①変動金利の利用を検討している場合
変動金利は安定した低金利が続くと考えています。引き続き変動金利の利用をオススメします。
ただしローンの借りすぎには注意が必要です。借りすぎかどうかは借入額を年収で割った「年収倍率」でチェックしてみましょう。年収倍率は7倍以内、家計に余裕を持ちたいのなら5倍以内に収めると良いでしょう。
モゲチェックでは、「住宅ローンを借りすぎない + 変動金利で低金利の恩恵を受ける + 資産運用」を3点セットで考えることをオススメしています。
無理のない金額を変動金利で借りて、固定金利を使うときと比べて返済に余裕が出る分はNISAやiDecoなどを活用し資産形成に取り組むと良いでしょう。
年収倍率早見表
②固定金利の利用を検討している場合
モゲチェックでは今後固定金利が低下する可能性があると考えているものの、2022年以降の上昇によってすでに固定金利はかなりの高水準となっています。固定金利を使うことで月々の返済額が高めになってしまう可能性もあるため、住宅ローン固定金利ランキングにて返済額や今月の金利水準をチェックしてみてください。
また、全期間固定よりは20年固定、20年固定よりは10年固定など、短めの固定期間の方が金利水準が低くなるので、何年の固定金利にするかも検討してみてください。
4.今月のイチオシ住宅ローン!
モゲチェックでは、金利水準だけでなく住宅ローンに付帯する団信保障を考慮して住宅ローンを選ぶことを推奨しています。モゲチェックが特におすすめする住宅ローンは下記のとおりです。
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auじぶん銀行はトップクラスの低金利でありながら「がん50%保障」を無料で利用でき、低金利と充実した団信が両立した完成度の高い住宅ローンです。
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PayPay銀行は特別なプラン等に加入することなく低金利を利用できるなど比較的シンプルな商品性、そして無料で利用可能ながん50%保障団信が魅力的です。
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※主な団信の種類と解説を、本稿の最下部「6.参考情報」として掲載しています。
5.その他の住宅ローン情報
住宅ローンに関する様々な情報は、下記コンテンツをご参照下さい。
6.参考情報
6−1 主要銀行住宅ローン金利の前月比較
変動(ネット系)
金融機関 | ローン名 | 2024年2月 | 2024年3月 | 差 |
ソニー銀行 | 変動セレクト住宅ローン | 年0.397% | 年0.397% | - |
楽天銀行 |
住宅ローン (変動金利(固定特約付き)) |
年0.557% | 年0.556% | -0.001% |
住信SBIネット銀行 |
WEB申込コース (通期引下げプラン) |
年0.298% | 年0.298% | - |
auじぶん銀行 |
住宅ローン (変動金利/全期間引下げプラン) |
年0.319% | 年0.319% | - |
イオン銀行 | 住宅ローン金利プラン(定率型) | 年0.380% | 年0.380% | - |
PayPay銀行 | 住宅ローン(全期間引下型) | 年0.250% | 年0.250% | - |
SBI新生銀行 |
パワースマート住宅ローン (変動金利(半年型)/手数料定率型) |
年0.190% | 年0.420% | +0.230% |
平均 | - | 年0.342% | 年0.374% | +0.033% |
変動(メガ)
金融機関 | ローン名 | 2024年2月 | 2024年3月 | 差 |
みずほ銀行 |
住宅ローン (ネットでお手続きの場合 /ローン取り扱い手数料型) |
年0.375% | 年0.375% | - |
三菱UFJ銀行 |
住宅ローン (ずーっと一律優遇コース) |
年0.345% | 年0.345% | - |
三井住友銀行 |
住宅ローン (最後までずーっと金利引き下げ) |
年0.475% | 年0.475% | - |
平均 | - | 年0.398% | 年0.398% | - |
変動(地銀)
金融機関 | ローン名 | 2024年2月 | 2024年3月 | 差 |
北海道銀行 |
道銀住宅ローン 変動金利バリュープラン |
年1.175% | 年1.175% | - |
七十七銀行 | 77住宅ローン | 年0.675% | 年0.675% | - |
常陽銀行 |
常陽住宅ローン ずっとうれしい金利引下げ (全期間重視プラン) |
年0.625% | 年0.625% | - |
千葉銀行 |
ちばぎん “選べる住宅ローンベストチョイス21” 「新築・新規購入コース」 |
年0.625% | 年0.625% | - |
横浜銀行 | 融資手数料型金利プラン | 年0.300% | 年0.300% | - |
八十二銀行 | 変動金利型 | 年0.925% | 年0.925% | - |
静岡銀行 | カスタムFLEX | 年0.500% | 年0.500% | - |
京都銀行 | 京銀住宅ローン | 年0.575% | 年0.575% | - |
山口銀行 | YGC住宅ローン | 年0.575% | 年0.575% | - |
福岡銀行 | プレミアム住宅ローン | 年0.475% | 年0.475% | - |
平均 | - | 年0.645% | 年0.645% | - |
10年固定(メガ)
金融機関 | ローン名 | 2024年2月 | 2024年3月 | 差 |
みずほ銀行 |
住宅ローン (ネットでお手続きの場合 /ローン取り扱い手数料型) |
年1.450% | 年1.400% | -0.050% |
三菱UFJ銀行 | 最初に大きな優遇コース | 年0.860% | 年0.980% | +0.120% |
三井住友銀行 |
住宅ローン (最後までずーっと金利引き下げ) |
年1.790% | 年1.790% | - |
平均 | - | 年1.367% | 年1.390% | +0.023% |
フラット35
金融機関 | ローン名 | 2024年2月 | 2024年3月 | 差 |
楽天銀行 | フラット35 | 年1.820% | 年1.840% | +0.020% |
※ フラット35は買取型/融資比率9割以下/団信加入/借入期間21〜35年の場合の金利を表示
※ 新規借り入れを対象に集計
6−2 参考:変動金利の将来予測
モゲチェックでは、日本国債利回りの動きから変動金利型住宅ローン金利の将来予測をする計量モデルを開発し、毎月予測を行っています。このモデルによる現時点での予測はグラフの通りです。
このグラフからは、変動金利は35年後に向けて3%付近まで上昇する可能性があると読み取れます。ただし、流動性の高い日本国債の利回りからこの予測を行っていることから、今後の金融市況や景気動向によって大きく変化する可能性もあります。将来の金融政策や国内外の景気変動の影響を大きく受けるため、あくまで参考程度と捉えておくのがいいでしょう。
「2−1 最初の10年でほぼ半分の利息を支払う」での解説の通り、住宅ローンは返済の初期ほど多くの利息を支払うことになります。返済初期の金利水準が重要であり、金利水準の低い変動金利をおすすめします。
6−3 参考:主な団信の種類と概要
団信は大きく分けて、一般団信、ワイド団信、疾病団信の3種類があります。
ワイド団信は保障内容が一般団信と同じですが、加入条件が緩和されています。他の団信の審査に落ちてしまった場合でも加入できる可能性があります。
疾病団信は大きく分けて、がん保障、3大疾病保障、8大疾病保障、11疾病保障、全疾病保障の5種類があります。
上図の通り、がんと診断されただけで保険金が下りるがん保障は、全疾病保障には含まれていません。
また、「急性心筋梗塞や脳卒中と診断され手術を受けたり、60日以上所定の状態になった場合に保険金が下りる保障」は3大疾病保障及び8大疾病保障には含まれていますが、11疾病保障や全疾病保障には含まれていません。
このように、疾病保障付き団信の構成は複雑なので、保障対象を細かく分けて考えて、どのような場合に保険金で住宅ローンが完済されるのかしっかり確認する必要があります。
また、団信には無料で付いているものと金利上乗せされるものがありますので、団信を利用する場合に金利がどうなるかも確認する必要があります。
いかがでしたか?
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