1. 購入物件が住宅ローン控除対象となる条件
控除が認められるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まずは基本的な適用要件をチェックしておきましょう。
延床面積が基準以上
住宅ローン控除の適用を受けるためには、購入住宅の延床面積が50平米以上必要です。そのうち1/2以上を、居住用として使用していることも求められます。
マンションの場合、通路や階段などの共有部分は、延床面積に含めません。登記簿に記載されている床面積で判断します。
店舗や事務所と併用している住宅では、それらの部分も含めた建物全体の延床面積が、50平米以上でなければなりません。
2021年度から適用される税制改正により、2021年度以降は延床面積が40平米以上の場合でも、控除を適用できる見込みです。これまでよりやや狭い単身用物件なども、控除を受けられるようになります。
出典:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 出典:令和3年度税制改正の大綱|財務省
耐震基準を満たしている
中古物件の取得に控除を適用させる場合は、一定の耐震基準を満たした建物でなければなりません。『耐震基準適合証明書』があれば、建物が耐震基準に適合していることを証明できます。
耐震基準適合証明書は、自動的に発行されるものではありません。自分で指定確認検査機関や建築士事務所などに申請すれば、物件を確認した上で発行してもらえます。
書類の準備が遅くなると、控除の適用を受けられなくなる可能性もあるため、早めに申請しておくことが大事です。
出典:No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
取得日と居住日の条件を満たしている
住宅ローン控除を受けるには、住宅を新築または取得した日から6カ月以内に、新居へ移り住んでいなければなりません。また、適用年の年末まで新居に引き続き居住していることも条件です。
中古物件の取得後、入居前に増改築を行った場合、新型コロナウイルス感染症の影響により工事が遅延する場合があります。
これにより控除要件を満たせなくなったケースでも、一定の条件をクリアすれば控除を受けられる可能性があります。新型コロナ税特法による、期間限定の特例措置です。
出典:報道発表資料 住宅ローン減税の適用要件が弾力化されます!|国土交通省
2. ほかに満たす必要がある条件
年収とローン期間についても、控除を受けるための要件が定められています。対象物件を自宅として利用しなければならない点にも注意が必要です。
年収が制限以内
住宅ローン控除の適用要件には、所得に関する条件が含まれています。控除を受ける年の合計所得金額は、30,000,000円以下でなければなりません。
所得とは年収から必要経費を差し引いたものです。所得額は年収額より小さくなるため、年収が30,000,000円を超えていても、所得が30,000,000円以下なら要件を満たします。
会社員の所得は、年収から給与所得控除を引いた給与所得です。個人事業主や副業をしている人は、年収から自分で経費を差し引き、所得を算出する必要があります。
2021年度以降に40平米以上の物件で制度を利用する場合、50平米未満の物件なら所得制限は10,000,000円以下です。税制改正により、延床面積の要件変更と併せて改正されています。
出典:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 出典:令和3年度税制改正の大綱|財務省
住宅ローン期間が10年以上
住宅ローン控除を受けるには、借入期間を10年以上に設定していなければなりません。ローン期間の要件で問題になるのが、繰り上げ返済を行ったケースです。
繰り上げ返済とは、当初定めた返済金額より多めに返済することを指します。返済期間を短縮する目的で行われるのが一般的です。
繰り上げ返済によりローン期間が短くなった場合でも、最初に返済を開始した月から10年以上ローンが残っていれば要件を満たします。
例えば、物件購入後の5年経過時に繰り上げ返済を行い、残りの返済期間が4年間になれば控除の対象外です。残りの期間が5年以上あれば、引き続き控除の適用を受けられます。
出典:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 出典:繰上返済等をした場合の償還期間|国税庁
自宅として利用する物件である
住宅ローン控除は、マイホームを購入または取得する際に利用できる制度です。自宅として居住する物件でなければなりません。
別荘や賃貸物件として利用する目的の場合には、住宅ローンを組んでいても控除の対象外となります。
制度の利用中に、やむを得ず賃貸物件として貸し出すことになった場合、自分が住んでいない間は控除を受けられません。再び自宅として利用を開始すれば、控除の適用も再開させられます。
自分が住んでいない期間は繰り延べできません。適用期間10年のうち、残り4年間のタイミングで3年間不在にしていれば、再び制度を利用できる期間は1年間です。
出典:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 出典:No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等|国税庁
3. 中古マンションで控除を利用する注意点
新築物件における控除額は、年末のローン残高の1%です。年間400,000円まで控除できます。中古物件では控除上限額が変わる可能性があることや、築年数の要件があることに注意が必要です。
売主が個人か業者かで上限額が変わる
中古マンションを業者から購入する場合、控除上限額は新築と同じ年間400,000円です。年末のローン残高の1%相当額を控除するケースでも、年末残高の限度額は新築と同様の40,000,000円となります。
売主が個人のケースでは、控除上限額が年間200,000円まで下がります。対象とする年末残高の上限額も20,000,000円です。
消費税が非課税となる物件には、年間の控除上限額が200,000円となる、2014年時の金額が適用されることとなっています。個人間売買では消費税がかからないため、このルールが適用されるのです。
出典:No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
対象になる物件、ならない物件がある
中古物件で控除を受ける条件には、築年数の要件も定められています。木造なら築20年以内、マンションなどの耐火物件なら築25年以内が、控除を受けるための要件です。
ただし、耐震基準適合証明書を提出すれば、築年数の要件が緩和されます。築25年以上経過している中古マンションでも、耐震を証明することで減税措置を受けることが可能です。
耐震基準適合証明書を発行してもらうためには、対象マンションが耐震基準を満たしていなければなりません。また、物件の引き渡し後は、証明書を発行できないケースがほとんどです。
出典:No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
4. 中古マンション購入後に控除を受ける方法
住宅ローン控除の制度を利用するための手続きは、購入初年度と2年目以降で異なります。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は会社の年末調整で対応可能です。
購入初年度は確定申告が必要
控除の適用を受ける場合、物件を購入した年の分は確定申告が必要です。入居した年の翌年2月16日~3月15日に、納税地の所轄税務署長へ必要書類を提出しなければなりません。
確定申告に必要な書類は、ローン残高証明書・源泉徴収票・登記事項証明書・不動産売買契約書の写し・本人確認書類の写しです。築年数の要件を満たしていない場合は、耐震基準適合証明書も準備する必要があります。
ネットでの申請環境が整っているなら、『e-tax』での申請が便利です。税務署へ足を運ぶことなく、自宅から確定申告を行えます。
出典:No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
2年目以降は年末調整で代替できる
会社員の場合、初年度に確定申告を行っていれば、2年目以降は勤務先の年末調整で申請可能です。通常の年末調整の書類に加え、『住宅借入金等特別控除申告書』と『借入金の年末残高等証明書』を提出する必要があります。
住宅借入金等特別控除申告書は、確定申告を行った年に税務署から送付される書類です。残高証明書は、ローンを組んだ金融機関から毎年送られてきます。
年末調整を利用しない個人事業主は、2年目以降も確定申告を行わなければなりません。年収20,000,000円以上の会社員も同様です。
出典:No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
5. 購入する物件が対象か事前に確認しよう
住宅ローン控除の制度には、延床面積・ローン期間・所得などに関し、控除を受けるための要件が定められています。
中古マンションの場合は、さらに耐震基準や築年数の要件も加わります。取得物件が要件を満たしているか、事前にきちんと確認することが重要です。
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