1. 住宅ローンの借入額は年収の何倍まで?
年収を基準に住宅ローンの借入額を考えるとき、目安は年収の何倍になるのでしょうか?年収以外に審査で重視される項目についても解説します。
近年の目安は年収の6倍から7倍
住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」(2024年度)によると、住宅を購入した世帯の年収倍率の平均値は6~7倍でした。住宅の種類により違いはありますが、全国平均でも年収の7倍近い価格の物件を購入しています。
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土地付き注文住宅:7.5倍
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マンション:7.0倍
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注文住宅:6.9倍
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建売住宅:6.7倍
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中古マンション:5.5倍
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中古戸建:5.3倍
地域別では、年収倍率がおよそ8倍に及ぶ住宅の種類もあります。
住宅ローンは年収以外の要素も審査される
住宅ローンの審査では年収(手取りではなく額面)が重要な基準の1つですが、それ以外の要素も考慮されます。特に重視されるのは収入の安定性です。収入が高くても、それが一過性のものでは審査に落ちる可能性があります。
一方、安定性のある正社員や公務員であれば、収入がそれほど高くなくても審査に通過する可能性が高いでしょう。特に勤務先が大手企業であれば、安定性については強いアピール材料になります。
安定性についての審査には、勤続年数も重要です。短い期間で転職を繰り返していれば、勤務先が大企業でも評価されないかもしれません。2年以上勤めているのが目安です。
また、年齢も審査に影響するポイントといえます。新規借入は64~65歳までの金融機関がほとんどです。
◆審査に落ちる要因の解説記事はこちら!
住宅ローン審査に落ちるのはなぜ? 審査に落ちる理由と対策・ポイントを徹底解説!
2. 住宅ローン審査で重視されるのは返済比率
年収に関する審査は、返済比率に基づいて行われます。返済比率が何を意味する数値なのか、基本の意味や計算式のほか、適切な比率についてもチェックしましょう。
返済比率(返済負担率)とは?
返済比率とは、年収に対する1年間の返済額の割合です。住宅ローンの審査で特に重要な基準として用いられている数値で「年間返済額÷年収×100」で計算可能です。
例えば年収500万円の人が1年間に100万円ずつ返済する場合には、返済比率は「100万円÷500万円×100=20%」となります。返済比率が金融機関の定める基準に収まっていれば、年収が十分であると判断されます。
反対に、金融機関が定める基準を超える希望借入額で審査へ申し込むと、基本的に審査には通りません。
金融機関の審査基準は30%から35%
金融機関が返済比率の審査基準としているのは、一般的に『30~35%』です。フラット35であれば、年収400万円未満は30%以下、400万円以上なら35%以下と定められています。
例えば年収500万円であれば、年間返済額175万円までの住宅ローンなら審査に通過できる計算になります。
そのほかの金融機関では、年収をより細かく区切り、基準を細分化しているケースが多いといわれています。ただし、その基準は金融機関によって異なり、また公表もされていません。
適正な返済比率を検討しよう
返済比率の上限を超えない範囲であれば、基本的に住宅ローンの審査は通ると考えてよいでしょう。しかし返済比率をもとにした判断は、あくまでも借入可能額の基準であって、無理なく返済できる金額というわけではありません。
前述の通り、年収500万円の人が返済比率35%で借入すると、年間返済額は175万円です。すると、残りの金額は年間で325万円、1か月に約27万円と計算できますが、所得税・住民税などもかかってくるので、この金額が自由に使えるわけではありません。
返済を続けられるかどうかは家族構成やライフスタイルなどによって異なるものです。そのため、金融機関の基準ではなく、自分の生活に合った返済比率での借入を意識しなければいけません。一般的には返済比率が「20~25%」の範囲なら、無理なく返済しやすいといわれています。
3. 住宅ローンの借入額を増やしたい場合の対処法
自分の収入だけでは希望する借入額まで融資を受けられない場合もあるでしょう。そのようなときに役立つ対処法を解説します。
ペアローン・収入合算を検討
1人分の収入で借りられる金額で不足するなら、配偶者や親など同居親族と協力して住宅ローンを契約しましょう。例えば、2人が個別に住宅ローンを契約する「ペアローン」を利用する方法があります。
物件に対し契約する住宅ローンは2本になり、個別に借入上限額を決定するため、借入額を大きく増やせるかもしれません。また、互いに相手の連帯保証人になるのが特徴です。
「収入合算」は、申込者の収入に合算者の収入を合わせた金額で審査へ申し込む方法です。同じ返済比率でも、収入が増えれば借入額を増やすことができます。
ただし合算者の収入を含められる上限は金融機関によりさまざまです。できるだけ多くしたいと考えるなら、全額を合算できる金融機関を選びましょう。
住宅ローン以外の借入を返済する
ほかの借入を完済することも、住宅ローンの借入額アップに役立ちます。審査で重視される返済比率は、全ての返済の合計額です。カーローン・教育ローン・クレジットカードのリボ払い・携帯電話の機種代金の分割払いなどが含まれます。
例えば1か月の返済額10万円まで融資を受けられる人でも、住宅ローン以外にカーローンを月3万円支払っていたら、借入上限額は月7万円になってしまいます。
審査へ申し込む前にカーローンを完済すれば、月10万円の返済額まで住宅ローンを借りられるようになります。
4. 住宅ローンを無理なく返済するためには?
住宅ローンを無理なく返済するためには、返済期間や金利、借入金額について十分に検討し、十分な貯蓄を作っておくことが重要です。
返済期間を長くする
これまで住宅ローンの返済期間は35年以内とする金融機関が多くを占めていましたが、近年は最長で50年までの融資を行う金融機関が増えてきました。借入額が同じでも、返済期間を長くすることができれば毎月返済額を減らすことができます。
返済期間が長くなるほど支払う金利が増えてしまうデメリットはあるものの、教育費などの負担が重い時期に返済の負担を減らせるため、返済期間を長くするのは有効な方法です。退職後まで返済が残ってしまうことを心配する人もいますが、計画的に返済できるのであれば、退職後まで返済が続いても問題はありません。また、繰上返済で対応することもできます。一方で、返済が難しくなってから返済期間を延ばすことは難しいため、あらかじめ返済期間を長めにとっておくほうが望ましいといえます。
より低金利な住宅ローンを利用する
住宅ローンを取り扱っている金融機関は多いものの、力を入れている金融機関とそうでない金融機関があり、金利には大きな差があります。住宅ローンは長期かつ高額の借り入れであるため、借入額によってはたった0.1%金利差でも毎月数千円、総返済額では数十万円から100万円前後の差が生じることも少なくありません。
各金融機関のウェブサイトで金利を確認して比較することもできますが、モゲチェックの「住宅ローン診断」を利用すれば、簡単により低金利の住宅ローンを見つけることができます。
また借入時だけでなく、数年ごとに借り換えを検討し、より金利の低い住宅ローンを借りるようにしましょう。
借入額を減らす
住宅ローンの返済の負担を減らすには、そもそも借入額を少なくすることも有効です。それには住宅の予算を再検討する方法があるほか、頭金を入れることでも借入額を減らすことができます。特に、両親などからの贈与を受けられる場合には、住宅取得の際の非課税制度を利用して、それを頭金として活用することも有効な手段になります。
ただし、自己資金の多くを頭金に回してしまうと、急な収入減少や支出増加に対応できなくなってしまいます。頭金を入れる場合には、手元に十分な資金を残すように心がけ、将来の支出の見通しと、想定外の支出も考慮して計画を立てましょう。
十分な貯蓄を作る
住宅ローンの返済は長期にわたりますが、その間には急な収入減少や支出増加に見舞われる可能性があります。そのようなときにも無理なく返済するには、十分な貯蓄が必要です。最低でも生活費の3か月分、できれば6か月分以上を貯蓄しておき、余裕があればNISAやiDeCoといった税制優遇のある投資制度も活用して、家計の余力を作っておくようにしましょう。教育費やリフォーム費、自身の老後資金のためにも貯蓄は重要であることから、住宅ローンの返済を続けながら貯蓄習慣をつけられるように、長期的な視野から資金計画を検討する必要があります。
5. 年収別の住宅ローン返済額シミュレーション
年収に応じて住宅ローンの妥当な借入金額の目安は異なります。借入金額の上限に近い年収の7倍、および一般的に無理なく返済できるといわれる年収の5倍を借りて、金利0.7%・返済期間35年で返済していく場合の年間返済額をシミュレーションしました。借入額を年収の5倍程度に抑えると、年間返済額は年収の20%程度になります。
6. 住宅ローンは返せる金額を借りるのが基本
住宅ローンは、平均で年収の6~7倍まで借りている人が多いのが現状です。借入額を決定する際には年収が重要で、返済比率が審査のポイントになりますが、その他にも勤務先や収入の安定性もチェックされます。
審査の際の返済比率の上限は30~35%という金融機関が多いですが、この金額で返済を続けるのは負担が大きく、返済しやすいのは20~25%といわれています。
いくら借りられるのかはもちろん重要ですが、きちんと完済できることも重視して住宅ローンを利用するようにしましょう。