1. 住宅ローン控除を受ける条件
住宅ローン控除とはどのような制度なのでしょうか。2025年時点での制度の仕組みや控除対象となる条件など、まずは基本をおさらいしておきましょう。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除は、住宅を購入・新築・リフォームした際に、一定の条件を満たせば税額控除を受けられる制度です。正式名は『住宅借入金等特別控除』といい、一般的に『住宅ローン減税』とも呼ばれています。
控除を受けられる期間は、原則として13年間です(中古の場合は10年間)。その年の12月31日時点における、ローン残高の0.7%相当額を、所得税や住民税から控除できます。
控除限度額は住宅の性能や新築か中古かによって異なり、最大で455万円です。所得控除と異なり、住宅ローン控除は税額から控除額を直接差し引ける税額控除であるため、大きな節税効果を期待できます。
住宅ローン控除の制度変更の詳細はこちら:【2024年最新】住宅ローン控除の上限金額は?計算方法とメリット・デメリットを解説
控除対象となる条件
住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。控除対象となるための主な条件は以下の通りです。
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控除を受けようとする年の合計所得金額が2,000万円以下
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住宅の床面積の合計が原則50平米以上で、床面積の1/2以上が自身の居住用であること
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住宅ローンの返済期間が10年以上
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購入した物件が自分の居住用である(投資用や別荘ではない)
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住宅の引き渡し日または工事の完了から6カ月以内に住み始め、控除を受ける年の年末まで引き続き住み続けている
また、後述するように物件の種類によって控除額の上限が異なります。
参考:
No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
2. 夫婦で住宅ローン控除を受ける方法
住宅ローン控除を夫婦どちらも受ける方法には、ペアローンと連帯債務型での借入方法があります。それぞれどのような仕組みなのか詳しく解説します。
ペアローンを組む
一つの物件に対し、夫婦が別々にローン契約を締結する借入方法が『ペアローン』です。それぞれの年収を個別に審査するため、どちらかが単独で借りる場合に比べ、借入額を大きく増やせる可能性があります。
ペアローンでは、夫婦それぞれが相手の契約における連帯保証人となります。2人とも個々の契約で住宅ローン控除を受けることが可能です。
主債務者の死亡時に保険金で残債を完済できる団信にも、夫と妻それぞれが加入できます。ただし、片方が死亡して保険金が充当されても、もう片方のローンはそのまま残る点に注意が必要です。
連帯債務型でローンを組む
住宅ローンにおける『連帯債務型』とは、1件の契約の返済義務を複数人で負う借入方法です。夫婦の収入を合わせて借入額を増やす収入合算を行う際に、よく利用されます。
連帯債務型でローンを組んだ場合、物件の所有名義はそれぞれの持分を決めた夫婦共有名義となります。それぞれが自分の持分割合に対する返済義務を負いますが、金融機関はどのような形でも請求することが可能です。
連帯債務型では、夫婦のそれぞれが住宅ローン控除を利用可能です。団信への加入は、2人ともできる金融機関と、片方しか加入できない金融機関に分かれます。
連帯保証は対象外
収入合算による借入方法には、連帯債務型以外に『連帯保証型』もあります。夫婦の片方が主債務者となり、もう片方が連帯保証人となる形です。
連帯保証型の収入合算では、主債務者しか直接の返済義務を負いません。連帯保証人は住宅の所有名義人になれないため、住宅ローン控除の利用は不可能です。
連帯保証型では、連帯保証人が団信に加入できないこともポイントでしょう。団信に加入している主債務者が死亡したら保険金で残債をまかなえますが、連帯保証人が死亡しても主債務者のローンはそのまま残ります。
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3. 控除額の計算方法
夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用する場合の、控除額の計算方法を紹介します。連帯債務型を利用するケースでは、所有権の持分割合に応じる点を覚えておきましょう。
それぞれの借入額で計算
夫婦で住宅ローン控除を利用するケースでは、それぞれの借入額を基準とし、別々に控除額を算出します。
ペアローンで夫婦が個別に住宅ローンを組んだ場合は、それぞれの年末残高の0.7%を合計した金額が、住宅1件あたりの控除額です。夫の控除額が20万円、妻の控除額が10万円の年なら、2人で30万円の控除を受けられることになります。
ただし、住宅ローン控除は満額受けられるとは限りません。住宅ローン控除は、最初にその年の所得税から控除し、残りを翌年分の住民税から控除する仕組みです。さらに、住民税の控除上限額は9万7,500円と定められています。
所得税と住民税の両方から控除しても、控除しきれない分が残った場合は、ほかで埋め合わせされることはなく消滅する点に注意が必要です。
参考:新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。|総務省
連帯債務型は所有権の持分に応じる
連帯債務型の収入合算では、住宅の所有権をそれぞれの持分割合で分け、共有名義とするのが基本です。夫婦2人が住宅ローン控除を利用する場合は、所有権の持分に応じて毎年のローン残高を計算するのが一般的です。
例えば、夫3/5・妻2/5の割合で所有権の持分を分けている場合は、年末のローン残高も同じ割合で分けて控除額を算出することになるでしょう。
一般的に、住宅の所有権の持分は、夫婦の出資割合と同じ割合を設定します。出資割合と異なる割合で持分を設定すると、片方に贈与税が課されるケースもあるため要注意です。
4. 住宅ローン控除を受ける手続き
夫婦で住宅ローン控除を利用する場合、1年目にはそれぞれが確定申告をする必要があります。ただし、会社員の場合、2年目以降の確定申告は不要です。
夫婦それぞれ確定申告が必要
夫婦で住宅ローン控除を受ける場合は、2人とも確定申告を行う必要があります。ペアローンを利用しているケースでは、それぞれが個別のローン契約になっているため、申告作業で迷う部分は少ないでしょう。
一方、連帯債務型の収入合算で借りている場合は、毎年のローン残高に注意が必要です。一般的に、連帯債務型では、年末のローン残高を持分割合で分ける必要があります。
年末残高等証明書に記載されている年末の借入金額は、ローン全体の借入金額です。確定申告時に提出する『住宅借入金等特別控除額の計算明細書』には、それぞれの持分割合で分けた借入金額を記入することになるでしょう。
同じく計算明細書に記入する取得対価も、所有権の持分割合で分けた金額を記入します。控除の対象となる金額は、負担割合に応じた借入金額と、持ち分比率をかけた取得対価のいずれか少ない方です。
2年目以降の手続き
住宅ローン控除を利用する1年目は必ず確定申告を行わなければなりません。ただし、会社で年末調整を行う会社員なら、2年目以降は年末調整で手続きできるため確定申告は不要です。
2年目以降の年末調整では、以下の書類を提出しましょう。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
特別控除申告書は、毎年10月ごろに税務署から送られてくる書類です。また、年末残高等証明書は、同じく毎年10月ごろに金融機関から届きます。
夫婦のどちらも職場で年末調整を行っているなら、2年目以降は確定申告をせずに済みます。ただし、手続きを忘れた場合は、2年目以降でも確定申告が必要です。
5. 共同で住宅ローンを組むメリット・デメリット
夫婦で住宅ローンを組めば、借入額を増やせたり2人で控除を受けられたりするメリットがあります。一方で、離婚時や死亡時のリスクなど、デメリットがあることも理解しましょう。
それぞれが控除を受けられる
ペアローンや連帯債務型で住宅ローンを組めば、夫婦で住宅ローン控除の制度を利用できます。より大きな節税効果を期待できる点がメリットです。
連帯債務型の場合、同じ金額のローンを単独で組むより、共同名義にしてローンを持分割合で分けた方が、世帯として受けられる控除額は増えます。
持分割合により控除で得をする金額も変わってくるため、自分たちはどのくらいの金額を控除されるのかシミュレーションしてみるとよいでしょう。
借入額を増やせる
夫婦で利用できるペアローンや収入合算は、借入額を増やしたい場合によく利用される借入方法です。
一つの物件に対して2件のローン契約を結ぶペアローンは、夫婦の収入が同程度なら、借入額を大幅に増やせる可能性があります。どちらも安定した収入がある場合におすすめです。
契約を一つにしたまま夫婦の収入を合算できる収入合算は、もう少し借入額を増やしたい場合に向いています。配偶者がパート勤めでも、年収を合算しやすい点がメリットです。
離婚や死亡時にリスクがある
ペアローンや連帯債務型を利用するケースでは、住宅が共有名義になります。万が一離婚した場合、住宅の持分に関してもめやすい点がデメリットです。
離婚後に2人とも家に住まず、家も売却して構わないなら、売却代でローンを完済すれば穏便に解決できるでしょう。しかし、どちらかが家に残る場合は、さまざまな問題が発生しやすくなります。
死亡時にリスクがあることも、夫婦共同でローンを組むデメリットの一つです。それぞれが団信に加入できるケースでは、片方が死亡しても、もう片方にはローンが残ります。引き続き自分のローンを支払い続けなければなりません。
夫婦両方の返済能力が審査される
ペアローンを利用する場合は、夫婦が別々の住宅ローンを組むため、それぞれに通常の住宅ローン審査が実施されます。
連帯債務型や連帯保証型の収入合算で借入を行っているケースでも、連帯債務者や連帯保証人に対して審査を実施するのが一般的です。年収や返済能力などをチェックされます。
過去に金融事故の経験があるなど、何らかの問題を抱えていれば、審査には通りにくくなるでしょう。主債務者に問題がなくても、配偶者に返済能力を疑われる要素があるなら注意が必要です。
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6.ペアローンで住宅ローン控除を受ける際に気を付けたいこと
ペアローンを利用すれば、共働き夫婦のそれぞれが住宅ローン控除を受けることができます。ただし、適用を受けるうえではいくつかの注意点があるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
それぞれが住宅ローン控除の要件を満たすかどうかを確認する
ペアローンはそれぞれが住宅ローンを組む方法です。そのため、ともに住宅ローン控除を受けるには、夫婦のそれぞれが住宅ローン控除の要件を満たしている必要があります。たとえば、住宅ローンの返済期間が10年以上であることや、自身の合計所得金額が2,000万円以下という所得制限の要件を満たしていなければいけません。
1人が住宅ローン控除の要件を満たさなくなったからといって、もう1人の住宅ローン控除が増減したりすることはなく、あくまで独立したものとして考えましょう。なお、次に解説するように、住宅ローンの借入金額が異なる場合には、住宅ローン控除の金額が異なるため、その点も知っておきましょう。
物件の持分の比率に注意する
住宅ローン控除を受けるときには、住宅ローンの契約と物件の登記上の所有割合(持分)が一致していることが通常です。例えば、夫が4,000万円、妻が2,000万円の住宅ローンをそれぞれ頭金なしで組んだ場合には、物件の所有割合は2:1になります。これは連帯債務型の住宅ローンでも同じ考え方であり、ローンの組み方によって変わることはありません。
所有割合は頭金も含めて考えることになり、通常は住宅ローンを借りる時点で割合が購入金額と一致することが求められますが、土地と建物で所有割合を分けるなど、複雑な関係になっている場合などには注意が必要です。
なお、住宅ローン控除を受けるには床面積の要件がありますが、これは所有割合によって分割されることはありません。あくまでも居住部分の全体の床面積が要件です。
収入が減少すると住宅ローン控除が減る可能性がある
住宅ローン控除は、その年の所得税額・住民税額を上限に適用されます。そのため、産休や育休、休職、転職などによって年収が大きく減少すると所得税・住民税も少なくなり、控除額が減ってしまうことがあります。自身の所得税額・住民税額では控除しきれないからといって、相手のほうから控除することはできないのです。
そのため、当初は共働きでも出産・育児を機にどちらかが退職した場合などには、退職した人は控除額がなくなってしまう場合もあります。先々の働き方などを見据えて借入金額の割合を調整するなど、控除をなるべく多く得られるように工夫しましょう。
7.よくある質問
住宅ローン控除のペアローンはいくらまで控除できますか?
住宅ローン控除を受けるためには、住宅ローン控除の適用条件に当てはまる物件を購入したり、住宅ローン控除をフルに受けられるだけの収入がある必要があります。ただし、ペアローンを利用することで、住宅ローン控除額を増やせる可能性があります。
例えば【新築・ZEH住宅】の場合、住宅ローン控除の控除対象額は上限4,500万円です。これを子育て世帯の人が単独債務の住宅ローン5,000万円で購入する場合、差額の500万円分は住宅ローン控除を受けられません。
一方、ペアローンで片方(夫)が4,000万円、片方(妻)が1,000万円で住宅ローンを組む場合、5,000万円の全額を住宅ローン控除の対象額とすることができます。このように控除できる上限額以上の住宅ローンを組む場合、ペアローンで分割することで住宅ローン控除額を増やすことが可能になります。
以下は2024年時点の住宅ローン控除の上限額一覧です。計算上、ペアローンでの控除額の最大値は年間70万円となります(5,000万円×0.7%×2=700,000円)。
※2023年中に建築確認を受けている場合や、2024年6月30日までに建築された場合は、上限2,000万円・控除期間10年となる
ペアローンの注意点は何ですか?
ペアローンの注意点として、「借りるときの諸費用が多めにかかる場合があること」「離婚時に手続きが複雑になること」の2点が挙げられます。
ペアローンの場合、住宅ローンが2本になるため事務手数料、印紙代、登録免許税及び司法書士報酬といった諸費用がそれぞれのローンについて発生します。そのため、単独債務で借りる場合よりも諸費用が多めにかかる場合があります。
なお、事務手数料や登録免許税は借り入れ額に比率を乗じて計算されるため、ペアローンだからといって諸費用が単純に2倍になるわけではありません。
また、離婚時に住宅ローンはそのまま残る点にも注意が必要です。離婚時にペアローンをどちらかに一本化するためには金融機関と協議する必要がありますが、そもそも一本化できない可能性もあります。また、他の金融機関に借り換えることも不可能ではないものの、実際には容易ではありません。住宅ローン手続きのほか、税務上の取り扱いも難しく、複雑な対応を取る必要があるでしょう。
住宅ローン控除はペアローンでもそれぞれ確定申告が必要ですか?
住宅ローン控除を受けるためには、初年度は必ず確定申告を行う必要があります。これはペアローンでも同様です。
サラリーマンや公務員であれば、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を受けることができるため、確定申告はマストではありません。
8. 夫婦で控除を受けられる条件を確認しよう
ペアローンや連帯債務型でローンを組めば、夫婦のどちらも住宅ローン控除の制度を利用できます。ただし、連帯保証型の収入合算では、控除を受けることは不可能です。
住宅ローン控除を夫婦で利用できれば、所得税や住民税の大幅な節税につなげられます。控除の適用要件をしっかりと確認し、夫婦でのローンの利用を検討しましょう。
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