1. 超低金利は住宅ローンにメリット大
ここ数年、住宅ローンは低金利の状態が続いています。商品によっては金利1%を切るほどです。超低金利と呼ばれる状況は、住宅ローンを利用してマイホーム購入を検討している人にとって、非常に有利に働きます。
金利負担が軽くなる
住宅ローンの総返済額は金利に影響を受けます。小数点以下のごく小さな数字であっても、数千万円を長期間借り入れた場合、金利の総額には大きな差が出るのです。
例えば40,000,000円を35年ローン・元利均等返済で借りたケースでは、金利によって総返済額は下記のように変わります。金利が低いほど総支払い額が少なく、金利負担が軽いことが分かります。
- 金利0.75%:45,490,000円
- 金利1.0%:47,420,000円
- 金利1.5%:51,440,000円
- 金利2.0%:55,650,000円
- 金利2.5%:60,060,000円
また1カ月分の利息額は「借入残高×金利×当月日数÷365日」で求められます。例えば借入残高40,000,000円・金利1%ならば約32,876円です。
2%に金利が上昇すると約65,753円となり、こちらからも低金利だと負担が軽いということが分かります。
金融機関が融資に積極的
低金利になると、金融機関は積極的に資金を融資に回し始めるといわれています。金融機関は手持ちの資金を日銀に預金し利息を得ていますが、低金利の状況では貸し出した方が利益を得やすいからです。
2016年にマイナス金利政策が導入された際の金融機関は、まず資金を国債の購入に振り分けました。すると国債価格は上昇し、相対的に利回りが低下したのです。
住宅ローンの金利は国債の利回りと連動しているため、低金利の状態が続いています。結果的に住宅ローンの金利が下がることで、積極的な融資が行われる状態です。
2. 変動金利は金利上昇のリスクが大
金利が下がり利用しやすくなっている住宅ローンですが、金利1%を下回る商品は変動金利タイプがほとんどです。低金利が魅力的な変動金利の住宅ローンを利用する際には、仕組みとリスクを理解しましょう。
変動金利の仕組み
住宅ローンの金利は年利で示されるため、40,000,000円を金利1%で借り入れると、1年間の利息は単純計算で400,000円です。しかし実際に1年間に支払う利息の額は400,000円より低くなります。
それは返済により元金が減ることで利息も減るからです。例えば毎月元金に対し100,000円支払う場合、上記の例では初月の利息は約32,876円ですが、2カ月目は約32,794円と減っています。
変動金利で借りた場合、利息を計算するときに使う金利の割合が一定期間ごとに変わります。見直しは半年ごとに実施されますが、実際に変わった金利の適用を受けるのは5年ごとです。
金利は日銀の定める政策金利に影響を受けます。ここ数年は低金利が続いていますが、いつ上がるかは分かりません。
返済の負担が増す
低金利が続けば固定金利より変動金利の方が有利です。しかし金利上昇の影響を受けると、状況は一変する可能性があります。
変動金利では政策金利に合わせて適用される金利が変わるため、場合によっては負担が大きく増える可能性があるからです。現状では政策金利が引き上げられる可能性は低いと考えられています。
ただし金利が上昇傾向になれば、利息の返済分が増え、当初予定していた返済計画が実行できない事態も考えられます。変動金利でコストを抑えているつもりが、総返済額が膨らみ、返済しきれなくなるケースもあり得るのです。
元金がなかなか減らない事態も
住宅ローンの金利が上昇すると、元金がなかなか減らず返済が苦しくなることもあります。変動金利の見直しは半年に一度行われていますが、金利が上がっても実際の支払い利息に適用されるのは5年に一度です。
加えてその上昇幅も125%を上限と定められています。この仕組みにより、金利が急上昇しても急激に負担が増えることはありません。
その反面、なかなか元金が減らず返済が進まない場合があります。定められた金額を払っていても利息分に満たず、どんどん残債が増えていくという事態が起こる可能性があるのです。
3. 将来の金利を予測することは困難
低金利がこのまま続くなら変動金利を利用したい、けれど今後金利が上昇するなら固定金利で契約したい、と考えている人が大半でしょう。しかし将来の金利は誰にも分かりません。
住宅ローン金利は政策の影響を受ける
住宅ローンの金利は政策の影響を受けます。変動金利も固定金利も、そのときどきの政策により変動しているのです。
変動金利は、金融機関が企業へ短期融資を行う際の金利である『短期プライムレート』に影響を受けます。日銀の金融政策に影響を受けやすい指標といわれていますが、2009年1月から変動していません。
また固定金利は『10年もの国債』の利回りと日銀の金融政策に影響を受けます。近年は量的・質的金融緩和が実施されており、長期金利を引き下げる動きが顕著です。
いつまでも低金利が続く保証はない
長く低金利の状況が続いていますが、だからといって今後も同様の金利が続くとは限りません。住宅ローンは35年といった長期間にわたり返済していくため、その間には金利が上昇する局面もあるでしょう。
実際に1990年前後には、変動金利の基準金利が最高8.5%という時期もありました。現状においては、世界的に見ても金利は低めで推移していくという予想が優勢です。
その反面、いつまでも低金利を続けるのではなく、財政健全化を進めなければいけないという指摘もあります。つまり実際にどのように金利が動くかは、誰にも分からないのです。
4. 金利上昇に備えるには
返済の負担が増加するリスクのある金利上昇には、どのような方法で備えればよいのでしょうか? 具体的な対策を紹介します。
固定金利で住宅ローンを組む
固定金利で住宅ローンを契約すると、金利上昇の影響を受けずに返済ができます。契約時点で完済までの総返済額が決まるため、計画的な返済がしやすい点もメリットです。
低金利の状況では変動金利より利息は高くなりがちですが、金利が変わらない安心感を得られます。
繰り上げ返済用の資金を貯めておく
貯蓄も金利上昇のリスクを減らせる備えの一つです。低金利のうちは月々の返済額を抑えて手元資金を増やしていき、金利上昇により負担が増え始めたタイミングで繰り上げ返済を利用します。
早期に元本を減らし完済できるため、金利上昇の影響を最小限に抑えられる方法です。
いざというときは借り換えを検討
現時点で変動金利の住宅ローンを契約しているなら、固定金利の商品への借り換えを検討する方法もあります。低金利のタイミングであれば、固定金利であっても比較的低い金利で利用可能です。
金利が上がり始める前の借り換えで、残り期間の金利を固定すれば金利上昇による影響を受けません。借り換えは審査に通過しなければいけないため、安定した収入と健康の維持がポイントです。
5. 金利が上昇した場合の対処を検討しておこう
ここ数年は低金利が続いていますが、金利上昇はいつ起こるか分かりません。そのため事前に金利上昇のリスクを知り、対策を行うことが大切です。
金利が上がれば支払い利息も上がるため、総支払い額が膨らみます。上げ幅によっては滞りなく支払いを続けても利息分さえ払いきれず、残債が増えていく場合もあるのです。
そのような事態を避けるためには、固定金利での契約や借り換え・貯蓄による備えが有効です。固定金利を利用すれば、金利が上昇しても影響を受けません。
また十分な貯蓄があれば、早期に完済でき金利上昇の影響を受けにくくなります。金利の仕組みを理解し、上昇局面における対処方法を検討することで、完済まで安全に住宅ローンを利用できるでしょう。