1. 住宅ローンの特徴
住宅ローンの仕組みを理解するために、まずは特徴をチェックしましょう。用途やお得な制度について知ることで、適切な使い方が分かるはずです。
居住用住宅の購入に特化したローン
最も大きな特徴は『居住用住宅の購入』に使えるローンという点です。同じ不動産でも、事業用の建物の購入には住宅ローンを使えません。また住宅であっても、セカンドハウスの購入には使えないローンです。
他のローンと比較して金利が優遇されているのは、自分や家族が住むための住宅を購入する目的のローンだからといえます。低金利を可能にするため、購入した不動産を担保にするのが一般的です。
各種控除や給付金が利用できる
要件を満たす住宅を購入すると、控除や給付金を受けられるのも住宅ローンの特徴です。『住宅ローン控除』は中でも代表的な制度といえます。基準を満たすと、年末ローン残高の1%が所得税から差し引かれる仕組みです。
最大50万円を受け取れる『すまい給付金』も利用できる可能性があります。原則として2014年4月~2021年12月に住宅に入居した人が対象です。消費税10%での購入なら年収775万円が、8%での購入なら年収510万円が適用の目安として設定されています。
また買い替えなどの理由で住宅を売却するときには『譲渡所得税の特別控除』を利用可能です。売却時の利益は、3,000万円までは課税対象からはずせます。
住宅ローン控除についてもっと詳しく
2. 支払い方法と返済期間
融資を受けると住宅ローンの返済が始まります。返済額はどのように支払えばよいのでしょうか?返済期間についても紹介します。
基本は毎月払い
住宅ローンの返済は基本的に『毎月払い』です。月1回の引き落とし日に、指定の口座から返済額が引き落とされます。
加えて1年に2回のボーナスのタイミングに増額して返済する『毎月・ボーナス併用払い』でも支払いが可能です。ボーナス月にまとまった金額を返済することで、それ以外の月は返済額を抑えやすいというメリットがあります。
元利均等返済または元金均等返済から選択
返済方法と同時に契約時に決めなければいけないのが、元金と利息をどのように割り振って返済するかです。全返済期間を通して一定の返済額に設定するには『元利均等返済』が向いています。
ただしローン残高の多い返済初期の頃は、返済額に占める利息の割合が大きく、なかなか元金の残高が減りません。また総返済額も多くなりがちです。
一方『元金均等返済』では、毎月一定の元金にローン残高の利息をプラスし返済します。ローン残高の多い返済開始直後の時期は毎月の返済額の負担が大きいですが、元金の減りが早いため総支払額は少ない方法です。
返済期間は最大35年が一般的
返済期間は『最大35年』で設定されている商品が一般的です。長期間のローンを組むことで、毎月の返済額を抑え、生活費に余裕を持たせながら支払えるのが特徴といえます。
ただし、必ずしも35年ローンを組まなければいけないわけではありません。返済期間をより短く設定することも可能です。期間を短くすると借入可能額が減る・毎月の返済額が増えるといったデメリットがあります。
その反面、早く完済できる・総支払額が減るというメリットもある方法です。購入の予算や毎月の返済額を考慮し、返済期間を検討しましょう。
3. 金利タイプは3種類
融資を受けると元金にプラスして利息を支払います。利息金額を左右するのが金利タイプです。3種類の金利タイプについて知ることで、返済プランに合った選択をしやすくなります。
変動金利
3種類の金利タイプの中で最も利用者が多いのは『変動金利』です。住宅金融支援機構が2020年に行った調査では、全体の62.9%が変動金利を選択していました。
1年に2回適用金利が見直される仕組みですが、その後すぐに返済額に反映されるわけではありません。返済額が見直されるのは5年に1回のみです。加えて増額の幅も返済額の25%以内と定められています。
この制度により、負担が急激に大きくならないよう調整されているのです。ただし金利が急激に上昇した場合、毎月返済していても利息分さえ支払えないという事態に陥る可能性があります。
低金利の間は有利ですが、万が一金利上昇した場合は対策が必要です。例えば借り換えや繰り上げ返済で対応します。
全期間固定金利
『全期間固定金利』は、完済までの金利が契約時点で決まっている金利タイプです。全期間に一定の金利が適用されるほか、途中で金利が上がる段階金利型もあります。
金利の変動がないため、急激に金利が上昇しても返済額が変わらない点は安心につながる要因です。毎月の返済額が一定になり、家計管理をしやすいのもメリットといえます。
ただし金利は変動金利より高めです。返済期間中に金利上昇がなければ、変動金利より総返済額が増えやすいというデメリットもあります。
固定金利期間選択型
適用金利が一定期間固定されている『固定金利期間選択型』で契約すると、最初の数年間は金利が変わりません。そして固定期間が終了した段階で、固定金利か変動金利を選びます。
適用されるのは固定金利終了時点の金利です。契約時より上昇していれば高い金利が適用されますが、下降していればその後の返済はより低金利で負担が減るかもしれません。
固定金利期間は5年・10年・20年などがありますが、一般的に短いほど低金利に設定されます。例えば固定金利期間中に返済資金を貯め、期間経過後に繰り上げ返済をしたいと計画している人に向いているでしょう。
4. 住宅ローンを利用する条件
住宅購入用の大きな資金を低金利で借りられる住宅ローンは、誰でも利用できるわけではありません。利用するために満たすべき条件をチェックしましょう。
対象となる資金の使途は?
住宅ローンでは契約者本人が住む家であれば、新築・中古を問わずどのようなタイプにも使えます。分譲住宅はもちろん、注文住宅やマンションにも利用可能です。
ただし新築と中古では、審査時の担保評価が異なる点に注意しましょう。同様の立地でも、中古は新築より担保評価を低く見積もられます。評価が低過ぎれば、希望額まで借りられない事態も起こり得るのです。
借入金を完済する能力がある
通常の借入には総量規制というルールがあり、年収の1/3までしか融資を受けられません。例えば平均年収と同程度の年収400万円のサラリーマンが借りられるのは、約130万円までです。
しかしこれでは住宅を購入するには足りないため、住宅ローンでは購入する住宅を担保にすることで数千万円の融資を可能にしています。そこで重視されるのが『完済できる能力』です。
単に年収が高いだけでは不十分で、安定性も重視されます。そのため勤め先や勤続年数も考慮されるのです。長年返済が続く住宅ローンでは、年齢や健康状態も重視されます。
5. 住宅ローンの仕組みを理解して契約しよう
住宅ローンを利用しマイホームを購入するときには、仕組みを理解することが大切です。返済方法や金利タイプについて知り、自分に合うものを選ぶことで、無理なく返済できるローンを契約できるでしょう。
また控除や給付金について知ることで、よりお得にローンを利用できます。誰でも契約できる商品ではないという点にも注意が必要です。
数千万円という融資を確実に完済することが求められるため、仕事の安定性や健康状態もポイントといえます。一般的な仕組みを理解した上で、個々の商品の比較をすれば、納得して契約できるでしょう。