1. 住宅ローンの固定金利とは?
契約当初から利率を一定に保てる金利タイプが固定金利です。種類の違いや、異なるタイプを組み合わせる金利ミックスについても解説します。
利率が一定の金利タイプ
住宅ローンの返済方法は、金利タイプにより固定金利と変動金利の2種類に大きく分けられます。このうち固定金利とは、返済開始時から一定の利率をキープするタイプです。
金利は経済情勢の動向などにより上下しますが、固定金利で最初に決められた利率は、その後に市場金利が上下しても期間満了時まで変わりません。金利が低いときに固定金利タイプで住宅ローンを組めば、低金利の恩恵を受け続けられることになります。
一方、変動金利は市場動向の影響を受けて利率が上下する金利タイプです。固定金利より利率は下がりますが、返済中の金利上昇で負担が増えるリスクもあります。
変動金利と固定金利の選び方についてはこちら:〜変動金利か固定金利か〜 正しい金利タイプの選び方
全期間固定型と当初固定金利型がある
固定金利は、借り入れたときに設定された金利が完済時まで変わらない『全期間固定型』と、利率が一定に保たれる期間を限定する『当初固定金利型』の二つに分けられます。
当初固定金利型で選択できる期間には、2年・3年・5年・10年・15年・20年などがあり、金融機関ごとに異なります。10年固定や15年固定など、10年以上の期間が人気です。
当初固定金利型の借り入れ時における利率は、変動型よりは高くなるものの、全期間固定型ほど高くはありません。また期間が短いほど利率は低くなります。
固定期間終了後は再度選択
当初固定金利型では、選択した固定期間が終了したら、返済方法を再度選択しなければなりません。期間終了後に選べるタイプは、固定金利期間選択型と変動型です。
どちらを選ぶケースでも、期間終了時の金利が新たに適用されます。ローン契約時の金利に比べ利率が大幅に上昇していれば、月々の返済額も原則として制限なく増加する点には注意が必要です。
短期間での大きな貯蓄が見込める人や、退職金などまとまったお金が入る予定がある人のような、一定期間後に繰り上げ返済を行いやすい人に向いた返済方法といえるでしょう。
金利ミックスも可能
金融機関によっては、異なる種類の金利タイプを組み合わせた金利ミックスを利用できるケースがあります。
借り入れ総額30,000,000円のうち、20,000,000円を35年固定金利、10,000,000円を変動金利に分けるというような借り方です。
組み合わせの比率や選択できる金利タイプは、原則として自由に設定できます。固定型と変動型に分けるだけでなく、全期間固定型と当初固定金利型を組み合わせることも可能です。
固定型と変動型を組み合わせつつ、金利上昇のリスクを抑えるために固定型の比率を増やすなど、金利ミックスならライフプランに合わせた返済をしやすくなるでしょう。
2. 固定金利のメリット
利率を一定にキープできる固定金利を選ぶことで、どのような恩恵を受けられるのでしょうか。代表的なメリットを押さえておきましょう。
借り入れ時に返済計画を確定できる
固定金利では定期的な利率の見直しが行われないため、市場金利が上下しても借り入れ時の利率が常に保たれます。毎月・毎年の返済額も一定額をキープできることから、長期的な返済計画を立てやすいことがメリットです。
車の買い替え資金・子どもの教育費・老後のための生活費などを積み立てていきたい人でも、毎月の支払いが変わらないため将来に向けてのプランを練りやすくなります。
一方、変動金利では5年ごとに毎月の返済額を見直すのが基本です。契約時に返済計画を確定させたいなら、固定タイプを選びましょう。
急激な金利上昇によるリスクがない
現在は超低金利時代に突入して久しいこともあり、金利タイプの中で最も利率の低い変動型が多くの人に選ばれています。
しかし、変動型は急激な金利上昇によるリスクも大きい金利タイプです。前回返済額の1.25倍以上にはならないというルールが適用される可能性はあるものの、返済にある程度の余裕がなければ、金利上昇に伴い負担は増していくでしょう。
一方、固定金利は返済中に市場金利が上昇しても利率が変わらないため、返済負担が増加するリスクもありません。
住宅ローンの金利動向を正確に予測することは不可能です。低金利時代が長く続いているからといって、これから先も数十年にわたり低金利であるとは限りません。先行きが不透明な金利の動向に不安を感じるなら、固定金利を選ぶのが無難といえます。
金利リスクについて詳しくはこちら:住宅ローンの金利リスクについて考えてみよう
3. 固定金利のデメリット
変動型より返済額が増えることや、利率が下がっても恩恵を受けられないことなど、固定金利の不利な点を紹介します。タイプを検討する際の参考にしましょう。
変動金利より支払額は多くなる
契約時の利率を比較した場合、変動金利より固定金利の方が高めです。固定金利では金利上昇によるリスクがない分、あらかじめ利率が高く設定されています。
金融機関によっては、変動金利と固定金利で約1%の金利差を設けているケースもあります。金利が1%高くなると、条件によっては返済総額が約10,000,000円増えることもあるため、安定性だけを重視して固定金利を選ぶのは危険です。
自分が希望する融資額と返済期間で固定金利を選んだ場合に、実際の返済総額がどのくらいの金額になるのか、変動金利を選んだケースとの比較も行いながら慎重に検討する必要があるでしょう。
今月の固定金利はこちら:住宅ローンランキング(固定金利)
金利が下がっても恩恵がない
固定型には金利上昇のリスクがない反面、金利が下がっても恩恵を受けられません。契約時に定められた利率が期間満了までそのまま適用され続けるため、市場金利が下降している状況でも全くメリットを受けられない金利タイプです。
固定金利を選択する場合は、スタート時の利率をいかに低く抑えられるかが重要なポイントといえるでしょう。全期間固定型の代表格である『フラット35』では、取得する住宅が一定の条件を満たすことで、一定期間利率を引き下げられる制度が設けられています。
市場の金利動向を注視しつつ、金利引き下げ制度などの利用も検討しながら、契約の適切なタイミングを見極めることが大事です。
4. 固定金利に向いている人
将来的な金利の動きが不安な人や、毎月の支払額を安定させたい人は、固定金利に向いています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
金利上昇の不安を抱えたくない人
近年の住宅ローン契約者の大半は、低金利のメリットに魅力を感じ、変動型の金利タイプを選んでいます。
しかし、現在の金利水準がいつまで続くのかは誰にも分かりません。最長35年もの長期にわたり支払いを続ける間に、金利が高くなる可能性は十分にありえます。
利率が1%違うだけで、総支払額に数百万円の差が生まれると聞けば、今後の金融動向が気になり不安を覚える人もいるでしょう。
先行きの見通しが立たないことに対して心配しやすい人は、変動型は向きません。できるだけ返済総額が増えないように意識しながら、固定型を上手に選択するのがおすすめです。
返済額を一定にしたい人
固定タイプを選ぶことで、毎月の支払額を同額にキープし続けられます。長期間にわたるマネープランをきちんと設計したい人に向いているでしょう。
人生設計を立てるときには、さまざまな要素を細かくシミュレーションする必要があります。
例えば、子どもが私立の学校に入学する予定なら、しばらくは家計の支出におけるローン返済を一定にしたいと考えるでしょう。車を買い替える予定がある場合や、老後のための生活資金として貯蓄したい場合も、支出を安定させることでお金が貯まりやすくなります。
ライフイベントを含めた人生の進め方に明確な目標があるなら、リスクを回避できる固定型を選ぶのが賢明です。
5. 特徴を知ってライフプランに合った金利を選ぼう
住宅ローンの固定金利は、利率を一定に保てることが特徴です。全期間固定できるタイプと、固定期間を選択できるタイプの2種類があります。
金利上昇のリスクに不安を感じたくない人や、ライフプランをきちんと立てたい人におすすめです。メリット・デメリットをしっかりと理解し、自分に合った返済方法を選ぶようにしましょう。