1. 住宅ローンの年齢制限
一般的に住宅ローンでは、申し込み時の年齢と完済時年齢に上限が決められています。主な設定年齢や返済期間との関わりについて解説します。
申し込み年齢の上限
住宅ローンを利用できる年齢は、金融機関ごとに上限が定められています。上限を超えた年齢に達していると、住宅ローンは組めません。
長期固定金利型住宅ローンの代表格である『フラット35』では、申し込み時の年齢が満70歳未満であることを利用条件としています。主な民間金融機関でも、65~70歳を上限年齢に定めているのが一般的です。
住宅ローンは、比較的高齢でも利用できることが分かります。現在の年齢が40歳前後なら、年齢のみで審査に落ちる可能性は低いといえるでしょう。
完済時年齢にも上限がある
住宅ローンでは、申し込み段階の年齢だけでなく、完済時の年齢にも上限が定められています。フラット35の場合、完済時の上限年齢は80歳未満です。
民間金融機関でも、一般的には80歳未満を上限年齢としています。金融機関によっては、81歳未満や85歳未満に設定しているケースもあります。
完済時年齢の上限は、返済期間と関わりがあることに注意が必要です。50歳でローンを組む場合、返済期間を35年にしようとしても、完済時の上限年齢が80歳未満なら30年までしか設定できません。
一般的な申し込み年齢の上限である70歳でローンを組んでも、最長10~15年までしか返済期間を設定できないことになります。
2. 40歳以降で家を買うメリット
家族構成がすでに確定している点や、ライフプランの予測を立てやすい点が、40歳以降にマイホームを買う主なメリットです。それぞれについて詳しく解説します。
家族構成が確定している
40代でマイホームを購入するメリットとして、一般的に家族構成がすでに確定していることが挙げられます。家の大きさや間取りを考える際に、将来の家族構成まで考慮する必要がありません。
若いうちに家を買うと、家族が増えたときにリフォームを必要とするケースもあるでしょう。住宅ローンを組んでいる場合は、ローンの返済とは別の出費が発生してしまいます。
住宅ローンのみを考えると、ローンを組む時期が早いほど返済期間に余裕を持たせやすいため、月々の返済負担を抑えられるでしょう。しかし、家族が増える可能性があるなら、その分出費も増える可能性があることを意識する必要があります。
ライフプランの見通しが立っている
将来におけるライフプランの予測がしやすい点も、40歳以降で家を購入するメリットの一つです。40代になるとキャリアプランの見通しがある程度立っているため、将来にわたり得られる収入を計算しやすくなります。
大きな出費が必要なタイミングを予測しやすい点もポイントです。家族構成が確定していれば、子どもにかかる出費の見通しも立てやすくなるでしょう。
収入や支出における不確定要素が少ない40代以降なら、ローンの返済金額をライフプランの支出に組み込みやすくなります。転勤の可能性も低くなるため、住み替えの可能性に対する不安も減るでしょう。
3. 40歳以降で住宅ローンを組むデメリット
ある程度年齢を重ねた時点で住宅ローンを組む場合は、デメリットを考慮する必要があります。どのようなリスクがあるのか確認しておきましょう。
返済期間が短くなる可能性がある
40歳以降に住宅ローンを利用して家を買うと、返済期間が短くなってしまう可能性があります。返済期間を長めに設定したい場合は注意が必要です。
返済期間を35年に設定したいなら、完済時の上限年齢が80歳未満の場合、45歳までにローンを組む必要があります。期間をさらに延ばしたい場合は、より早い段階でローン契約を結ばなければなりません。
返済期間が短くなると、支払う利息が減るため総返済額は少なくなります。ただし、返済期間が短くなるほど、月々の返済額は増えていきます。
多くの人が返済期間を長めに設定するのは、月々の返済負担を抑えたいことが最大の理由です。契約時の年齢が上がるほど、月々の返済額が増えやすい点を覚えておきましょう。
定年後も返済が必要になる
返済期間を長く設定したローンを40歳以降に組むと、定年後も返済が続く可能性が高くなります。40歳で35年ローンを組み、65歳で定年を迎える場合、定年後も10年間は返済を続けなければなりません。
一般的に、定年後の年金収入額は、現役時代の収入額より減少します。現役時代の給与収入が多い人ほど、定年後の年金収入との落差は激しいでしょう。
定年後も返済が続く返済期間を設定する場合は、定年後の収入について考慮する必要があります。何も考えずにローンを組んでしまうと、生活が立ち行かなくなり老後破産の状態にも陥りかねません。
4. 年齢が上がると審査は厳し目に
40歳を超えると住宅ローンの審査が厳しくなりやすいため、契約できないケースもあるでしょう。高齢で住宅を購入しローン審査を受ける際に、注意すべきポイントを解説します。
返済比率が上がる
住宅ローン審査でチェックされる重要項目の一つが返済比率です。返済比率とは、年収に対する年間返済額の割合を指します。
返済比率が高くなると、ローン審査に通りにくくなったり、審査を通過しても借入上限額を下げられたりします。返済比率は低く抑えるに越したことはありません。
ローン契約時の年齢が上がると、返済期間が短くなりやすいため、年間返済額は増えます。結果として返済比率も高まることになり、審査が厳しくなるでしょう。
団信に入れない可能性が高くなる
ほとんどの民間金融機関では、ローン契約時に団信への加入を必須としています。団信とは、返済期間中に契約者が死亡などで返済不能となった場合、保険金で残債を完済できる生命保険のことです。正式名を『団体信用生命保険』といいます。
健康状態に問題がある場合、団信には加入できません。40歳を超えると持病などを抱える人が増えてくるため、団信に加入できない可能性が高くなります。
団信へ加入せずに利用できる住宅ローンもありますが、数はかなり限られます。契約者が死亡した際の保障もないため、民間の生命保険に加入する必要があるでしょう。
5. 40歳以上で住宅ローン審査に通過するコツ
40歳を超えていることに不安を感じるなら、ローンの利用を検討する際に以下のポイントを意識してみましょう。自己資金を用意したり、複数の金融機関に申し込んだりすれば、審査に通過する確率を高められます。
自己資金を用意する
住宅ローン審査は、借入希望額を少なくするほど通過しやすくなります。より多くの自己資金を用意すれば頭金を増やせるため、借入希望額を減らすことが可能です。
頭金を多く準備することで、自己資金に余裕があると判断される点もポイントです。ローン審査では長期的な返済能力の高さをチェックされるため、融資金額が少なく自己資金が多ければ、審査に通りやすくなります。
現在の自己資金が十分でないなら、多少の時間をかけてでも自己資金を貯める努力をしましょう。自己資金を多めに準備することは、安心して返済を続けられることにもつながります。
複数の金融機関に申し込む
40歳以上であることが原因で、何らかの不安要素がある場合は、複数の金融機関にローン審査を申し込むのも一つの方法です。
一般的なカードローンなどと異なり、住宅ローン審査は複数の金融機関に審査を同時に申し込んでも、結果に悪影響は与えません。審査基準は金融機関により大きく異なるため、複数の金融機関に申し込めば、ローンを組める可能性は高まります。
複数の仮審査に通った場合も、本審査に申し込む金融機関を一つに絞る必要はありません。全ての本審査に申し込み、複数の審査に通過すれば、よりよい条件のローンを選んで契約できます。
6. 無理なく返済できる資金計画のポイント
ローンを組んで将来に向けた資金計画を立てる際は、無理のない返済を意識する必要があります。プラン作成におけるポイントについて解説します。
返済比率は20%が目安
多くの金融機関では、融資可否の条件として、返済比率の上限を設定しています。フラット35の場合、年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%です。他の金融機関も、同じような数値に設定しています。
ただし、この数値はあくまでも融資可否の条件です。返済比率を30%に設定した場合、多くの家庭では家計を圧迫し、返済が苦しくなるでしょう。
無理なく返済できる返済比率の目安は、20~25%とされています。返済中も余裕のある生活を送りたいなら、返済比率は20%以内に抑えるのが理想です。
ライフイベントごとの支出を整理
住宅ローンの返済は数十年もの長期にわたるため、返済計画をきちんと立てておくことが重要です。プランを練る際は、ライフイベントにおける支出を整理しましょう。
子どもがいる場合は、入学など節目の時期にお金がかかります。車の買い替えや住宅のリフォームなども考慮しなければなりません。
老後のための貯蓄を意識することも大事です。収入から貯金に回せる分が出るような計画を立てましょう。自己資金のうち余裕がある部分を、積立投資などに使うのもおすすめです。
手元に現金を残しておく
審査に通りやすくするために頭金を増やし過ぎると、手元に残る現金が少なくなり、万が一の際に対応できなくなります。頭金を決める際は、手元に現金が残るような金額の設定を意識することが重要です。
一般的な生活予備資金の目安は、会社員なら生活費の半年分、自営業者の場合は約1年分といわれています。
返済比率を設定する際も、割合が高くならないようにしなければなりません。手元の現金に余裕があっても、月々の返済が苦しくなれば、自己資金を取り崩さなければならなくなるでしょう。
7. 定年後の返済に向けての対策
40歳以降で住宅ローンを利用する場合は、定年後の返済も考慮する必要があるでしょう。繰上返済の活用・リレーローンの検討・売却を視野に入れた物件選びなど、今のうちから検討できる対策を紹介します。
繰上返済を活用する
住宅ローンの契約時に設定した契約期間を、返済中に短縮することは不可能です。ただし、返済期間中に期間短縮型の繰上返済を行えば、完済時期を早められます。
繰上返済は、ローンの返済期間中に想定外の収入があったり、予定していた大きな支出がなくなったりした際に活用できる仕組みです。返済期間を短縮できれば、定年後の返済負担を軽減できるでしょう。
近年の繰上返済は少額から行えるようになっています。一部繰上返済なら手数料がかからない金融機関もあるため、余裕のあるタイミングで小まめに行うのがおすすめです。
リレーローンを検討
定年後の返済対策としては、リレーローンの利用を検討するのもおすすめです。リレーローンとは、親子が一緒にローンを組み、二代にわたって返済する借入方法です。
リレーローンを利用すれば、親が定年退職したタイミングで、債務者を子どもに変更できます。親の収入が少なく、単独では契約できない場合にも活用できます。
リレーローンを組むためには、親子が現在同居中か、将来的な同居を予定していなければなりません。親子の両方に安定した収入があることも求められます。
売却を視野に入れた物件選びをする
定年後の返済に不安を感じるなら、老後を迎えるタイミングでの売却を視野に入れて、家を買う方法もあります。
将来的な売却を視野に入れる場合は、売却価格が売却時のローン残高を上回っている状態が理想です。中古物件の売却価格の相場は、築年数・立地などの条件や、不動産会社から入手できるデータなどから予想できます。
できるだけ高い価格で売れる物件を選ぶためには、立地・物件の広さ・間取りを重視しましょう。ただし、定年までは住むことになるため、自分たちが求める住みやすさも加味する必要があります。
8. 40歳からの住宅ローンは計画性が重要
40歳を超えていても、審査基準をクリアすれば住宅ローンを組むことは可能です。年齢が上がると審査が厳しくなるため、審査に通るコツを押さえておく必要があります。
返済期間が短くなり、返済負担が増しやすい点にも注意が必要です。定年後の収支も考慮し、無理のない資金計画を立ててローンを組みましょう。