1. 住宅ローン借り換えは複数の手数料が発生
新規手続き・完済手続き・登記手続きなど、住宅ローンの借り換えではさまざまな手数料がかかります。それぞれについて詳しく解説します。
新しく借りる住宅ローンの手数料
借り換え先の金融機関に支払う手数料は、保証料・事務手数料・印紙税の三つです。
保証料は、返済ができなくなったときに肩代わりしてくれる保証会社へ支払う手数料です。
ローンを組む際に金融機関へ支払う事務手数料は、『定率型』と『定額型』の2種類があります。
印紙税は、ローン契約時に課税される税金です。借入額に応じた金額を支払います。
借入額 |
印紙税額 |
100万円超500万円以下 |
2,000円 |
500万円超1,000万円以下 |
10,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 |
20,000円 |
5,000万円超1億円以下 |
60,000円 |
1億円超5億円以下 |
100,000円 |
保証料と事務手数料は、金融機関によって金額が異なります。保証料を無料としているケースもありますが、その場合は事務手数料が多めに必要となります。
事務手数料が安く設定される金融機関もありますが、その場合金利が高めになることが一般的です。
単なる保証料・事務手数料の金額の大小だけでなく、金利もあわせて考慮することが大切です。
現在のローンを完済する際の手数料
借り換え前の時点で返済中の金融機関には、全額繰り上げ返済手数料を支払う必要があります。金融機関や商品により金額は異なります。繰り上げ返済の手続き方法によっては無料になるケースもあるため、手続き前に確認しましょう。
現在の金融機関に保証料を支払っているなら、保証金が返戻される際に保証会社事務手数料が発生します。ただし、返戻される金額などによっては、手数料がかからない場合もあります。
全額繰り上げ返済をする場合は、繰り上げ返済する時点で発生中の未払い利息も清算しなければなりません。
手数料ではありませんが、諸費用を見積もる上で見落としやすい費用です。
登記手続きに関する手数料
住宅ローンを組むときには、金融機関が対象物件を担保に入れます。契約者がローンを返済できなくなった場合に、金融機関が物件を競売にかけ、売却で得たお金を残債に充てるためです。
物件を担保に入れるためには、物件の登記簿に抵当権を設定しなければなりません。借り換えをする際は、物件を担保に入れる金融機関が変わるため、抵当権の抹消と新たな設定を行う必要があります。
抵当権の抹消と設定には、それぞれ登録免許税がかかります。登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士に支払う報酬の用意も必要です。
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2. 借り換え手数料のモデルケースについて
住宅ローンの借り換えをする際に、実際の手数料はいくらかかるのでしょうか。
住宅ローンの残債が23,000,000円、残りの返済期間が20年、金利2%のケースでかかる手数料の目安を、パターン別に紹介します。
事務手数料が定率型のパターン
保証料が無料で、事務手数料が定率型の場合、モデルケースは以下のようになります。ローン残債が少ないほど、事務手数料も安くなる仕組みです。
項目 |
金額 |
印紙税 |
20,000円 |
保証料 |
0円 |
事務手数料 |
506,000円(23,000,000円×2.2%) |
抵当権設定費用(登録免許税) |
92,000円(23,000,000円×0.4%) |
抵当権設定費用(司法書士報酬) |
約50,000円 |
抵当権抹消費用(登録免許税) |
2,000円 |
抵当権抹消費用(司法書士報酬) |
約20,000円 |
合計 |
約690,000円 |
手数料が低い分保証料がかかるパターン
事務手数料を定額型で安く設定している場合は、保証料を高額にしているケースが一般的です。定率型と異なり、費用の総額がローン残債の影響を受けません。
項目 |
金額 |
印紙税 |
20,000円 |
保証料 |
約400,000円 |
事務手数料 |
33,000円 |
抵当権設定費用(登録免許税) |
92,000円(23,000,000円×0.4%) |
抵当権設定費用(司法書士報酬) |
約50,000円 |
抵当権抹消費用(登録免許税) |
2,000円 |
抵当権抹消費用(司法書士報酬) |
約20,000円 |
合計 |
約617,000円 |
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3. 手数料の支払い方法について
借り換え時に負担する手数料は、いくつかの支払い方法があります。ローンに含む場合と現金で支払う場合に分けて解説します。
住宅ローンに含めるか別枠で借りる
住宅ローンの借り換えで発生する手数料は、融資額に含めることが可能です。
借り換えで10,000,000円の融資を受け、手数料が500,000円かかる場合は、10,500,000円のローンを組めることになります。
実際、諸費用を現金で支払うのではなく、融資額に含めることの方が一般的です。自己資金に余裕がない人や、現金を持ち出したくない人にもおすすめです。
手数料分のみ、別枠でローンを組める場合もあります。
また、保証料の支払いに関しては、借入時に一括で支払う外枠方式と、ローンの金利に上乗せする内枠方式に分けられます。
内枠方式における保証料の金利の相場は0.2%です。借り換え後のローンを金利0.5%で組んだ場合は、保証料を一括で支払わない代わりに、金利0.7%でローンを返済していくことになります。
自己資金もしくは親族に借りる
自己資金に余裕があるなら、手数料は一括で支払うのがおすすめです。新しく組んだローンの融資額を増やさずに済むため、借り換えのメリットを損ないません。
現金の用意が難しく、借入額にも組み込みたくないなら、親や親戚を頼ってみるのも一つの方法です。ただし、贈与税が発生する可能性がある点に注意しなければなりません。
贈与税の基礎控除額1,100,000円を超える金額を受け取ると、贈与税が課されてしまいます。きちんとした借用書を作成し、贈与ではなく借入であることにすれば、贈与税を支払わずに済みます。
4. 住宅ローン借り換えのメリット・デメリット
住宅ローンの借り換えには、メリットだけでなくデメリットもあります。どちらもしっかりと理解した上で、借り換えを検討することが大切です。
返済期間や返済額を減らせる
住宅ローンの借り換えをする最大のメリットは、返済期間を短縮したり、返済額を減らしたりできることです。ボーナス返済をなくすなど、条件の変更もできます。
『借り換え後の金利差が1%以上』『ローン残高が10,000,000円以上』『返済期間が10年以上』の三つを満たしていれば、借り換えでメリットを受けられる可能性が高まります。
残債が残り少ない場合や、数年後に返済が終わる場合は、借り換えをするメリットはほとんどないでしょう。手数料が加算される点にも注意が必要です。
金利タイプを見直すことが可能
変動金利を利用中の人が固定金利で借り換えたり、固定金利を利用中の人が変動金利で借り換えるなど、金利タイプを見直すことができます。
ただし、一般的に固定金利は変動金利より金利が高めです。
低金利の状態が今後も続くとすれば、変動金利のほうが得をする可能性が高いため、よく考えて金利タイプを決める必要があります。
変動金利の動向が気になる形はこちらの記事でもチェック!
SMBC日興証券トップアナリストに聞く!アフターコロナの住宅ローン金利予想とおすすめの金利タイプ
団体信用生命保険の内容を見直せる
住宅ローンの契約時には、団体信用生命保険(団信)への加入を求められるのが一般的です。団信に加入していれば、契約者が死亡したり高度障がいの状態になったりしても、団信からの保険金でローン残債を完済できます。
団信にはさまざまな種類があり、基本保障以外の保障の種類も団信ごとに異なります。住宅ローンを借り換えるということは、ローンを新しく組み直すことになるため、団信にも加入し直すことになります。
魅力的な保障が付いた団信に加入できるローンに借り換えれば、団信の内容を見直すことが可能です。
返済期間や返済額に大きな変化がなくても、保障が充実している団信に切り替えることができれば、そのこと自体が借り換えのメリットになります。
必ずしも得になるわけではない
借り換えを検討する際は、得にならない可能性がある点に注意しましょう。特に気を付けたいポイントは、借り換え時に手数料などの費用がかかることです。
借り換えで総返済額を減らせても、手数料が加算されることにより総返済額がほとんど変わらないケースもあります。
借り換えのメリットがあるかどうかは、手数料などの諸費用と利息差を比較すれば判断することが可能です。利息差が諸費用を上回れば、借り換えにより得をするでしょう。
手数料などの諸費用は、さまざまな条件によって決められます。諸費用がどのくらいの金額になるのか、借り換える前に金融機関に確認しましょう。
健康に問題があると借り換えできない場合も
住宅ローンの借り換えでは、別の金融機関で新しくローンを組み直すことになります。最初のローン契約時と同様に、借り換え時にも団信に入り直す必要があります。
ただし、契約者の健康状態に問題がある場合は、団信に加入できません。団信への加入を義務づけている金融機関では、借り換えできなくなります。
フラット35など、団信への加入が任意のローンなら、健康に問題があっても借り換えできます。契約者に万が一のことがあった場合、家族に返済義務が残る点には注意が必要です。
5. 借り換え後の住宅ローン控除はどうなる
住宅ローン控除の適用を受けている場合、借り換え後は継続して受けられなくなる場合があります。控除を受け続けられる条件を確認しましょう。
条件を満たせば継続して受けられる
基本的に、住宅ローンの借り換えをすると、住宅ローン控除の対象外となります。ただし、新しいローンが引き続き同じ住宅の返済に充てられるものだと証明できれば、控除の適用を受けられます。
住宅ローン控除の適用条件を満たしている必要もあります。年間所得金額が30,000,000円以下であることなど、控除を受ける際にクリアすべき条件は、借り換え後もクリアしていなければなりません。
逆に、借り換え前のローンで控除の適用条件を満たしていなくても、借り換え後に適用条件を満たしているなら、控除の適用を受けられます。
参考:
返済期間10年以上に注意
借り換え後の住宅ローン返済期間は、10年以上に設定しなければなりません。10年未満の返済期間でローンを組んでしまうと、継続して控除を受けられなくなります。
借り換えで返済期間を短くしたいと考えている場合でも、新しいローンの返済期間を10年未満にしないよう気を付けましょう。
ただし、借り換え後の控除期間が10年延長されるわけではありません。控除の残り期間が3年であれば、借り換え後もそのまま3年の期間が残ります。
参考:No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき|国税庁
6. 住宅ローン借り換え手数料を金融機関別に比較
住宅ローンの借り換え時には手数料がかかりますが、その金額は金融機関によって異なります。大きく分けて、保証料もしくは上乗せ金利がかかる場合と、事務手数料(融資手数料型・事務取扱手数料)がかかる場合があります。
金融機関 |
商品名 |
保証料・上乗せ金利 |
事務手数料 |
住信SBIネット銀行 |
住宅ローン(通期引き下げプラン) |
不要 |
借入金額の2.2% |
SBI新生銀行 |
パワースマート住宅ローン |
不要 |
借入金額の2.2% |
UI銀行 |
住宅ローン |
不要 |
借入金額の2.2%+3.3万円 |
auじぶん銀行 |
住宅ローン(全期間引下げプラン) |
不要 |
借入金額の2.2% |
PayPay銀行 |
住宅ローン(全期間引下型) |
不要 |
借入金額の2.2% |
楽天銀行 |
住宅ローン |
不要 |
借入金額の0.99% |
ソニー銀行 |
住宅ローン |
所定の金利上乗せ |
4.4万円 |
固定セレクト住宅ローン |
不要 |
借入金額の2.2% |
|
変動セレクト住宅ローン |
不要 |
借入金額の2.2% |
|
イオン銀行 |
イオン銀行住宅ローン(手数料定率型) |
不要 |
借入金額の2.2% |
イオン銀行住宅ローン(手数料定額型) |
金利上乗せ0.2% |
11万円 |
|
三菱UFJ銀行 |
住宅ローン |
不要 |
借入金額の2.2% |
みずほ銀行 |
住宅ローン(手数料型) |
不要 |
借入金額の2.2%+3.3万円 |
住宅ローン(保証料一括型) |
融資金額1,000万円、返済期間35年で206,110円 |
3.3万円 |
|
住宅ローン(借入時負担ゼロ型) |
金利上乗せ0.2% |
不要 |
|
三井住友銀行 |
WEB申込専用借り換えローン |
不要 |
借入金額の2.2% |
りそな銀行 |
りそな住宅ローン(融資手数料型) |
不要 |
借入金額の2.2%+5.5万円 |
りそな住宅ローン(金利上乗せ型) |
金利上乗せ0.3% |
不要 |
|
横浜銀行 |
融資手数料型金利プラン |
不要 |
借入金額の2.2% |
常陽銀行 |
ネット申込専用住宅ローン「めぶきdeかりかえ」 |
不要 |
借入金額の2.2% |
きらぼし銀行 |
住宅ローン「選択上手」(保証料一括型) |
融資金額1,000万円、返済期間35年で206,140円 |
3.3万円 |
住宅ローン「選択上手」(保証料分割型) |
金利上乗せ0.2% |
3.3万円 |
|
住宅ローン「選択上手」(融資手数料型) |
不要 |
借入金額の2.2%+3.3万円 |
|
ARUHI |
ARUHI スーパーフラット借換 |
不要 |
借入金額の2.2% |
事務手数料がかからない住宅ローンプランがある金融機関
住宅ローンにはさまざまなプランがありますが、例えばみずほ銀行の「住宅ローン(借入時負担ゼロ型)」や、りそな銀行の「りそな住宅ローン(金利上乗せ型)」は、事務手数料が無料です。事務手数料が無料の住宅ローンは借入時の負担を抑えることができる点が魅力であり、手持ち資金が少ない場合には有力な候補になります。
その一方で、保証料に相当する0.2~0.3%の金利上乗せがあるため、毎月返済額はその分だけ高くなることに注意が必要です。
複数の金融機関でシミュレーションをして比較するのがおすすめ
住宅ローンの借り換えでは、上記のように多くの金融機関で「借入金額の2.2%」以上の事務手数料がかかります。借入金額が大きい場合には事務手数料だけで数十万円から百万円以上になることもあります。
一般的に、借り換えの際の諸費用は借り入れる元本とあわせて月々の返済に回すこともできますが、とくに借入期間が短い場合には、保証料や上乗せ金利を支払うほうが総額では安くなることも少なくありません。複数の金融機関で諸費用の支払いを含めたシミュレーションを行って比較するようにしましょう。
モゲチェックが運営する無料サービス「住宅ローン診断」を利用すれば、現在の住宅ローンの借入条件をもとに、借り換えによるメリット額を比較しながら住宅ローンを選ぶことができます。
7. 借り換えはメリットを冷静に見極めよう
住宅ローンの借り換えでは、数多くの手数料がかかります。新しく契約する金融機関や今まで契約していた金融機関への手数料以外に、登記手続き関連の手数料も必要です。
借り換えをすることでたとえ返済額を減らすことができても、手数料の金額を合わせればメリットがないケースも考えられます。手数料の金額も含め、総合的な視点からメリットを見極め、借り換えを検討することが大切です。