住宅ローンをボーナス払いにするメリット
ボーナス払いで住宅ローンを返済すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?代表的な利点を紹介します。
毎月の返済負担が軽くなる
まず挙げられるメリットは『月々の返済額を抑えられる』という点です。借入金額や返済期間・金利が同じであれば、ボーナス払いの割合を高くするほど、毎月の返済額は低くなります。
月々の返済額が減れば、その分、生活費に使える金額が増えて余裕が生まれます。そのため家族が増え生活費が増加する、子どもの進学のために塾の費用がかかるなど、毎月の予算を多く取りたい場合に向いているでしょう。
返済期間を短縮できる
ボーナス払いの利用は、毎月返済のローンと6か月に1回返済のローンを併用している状態です。そのため毎月の返済額が同じであれば、元本が減っていくスピードは月々の返済のみよりも早くなります。
元本が減ればその分『返済期間を短くする』ことにもつながるため、早期の完済が可能です。この効果は期間短縮型の繰り上げ返済に似ています。
繰り上げ返済では、自分で計画的に貯蓄し定期的に手続きをしなければいけませんが、ボーナス払いであれば自動的にまとまった金額の返済が可能です。
住宅ローンをボーナス払いにするデメリット
毎月の負担を減らしつつ返済期間を短縮できるボーナス払いですが、利用する際には注意しなければいけません。十分な検討をせずに設定すると、思わぬデメリットが出てくる可能性があります。
支払い総額が多くなるケースも
借入先の金利によっては、月々の返済のみよりもボーナス払いを併用した方が『総支払額が増える』可能性があります。というのも、ボーナス払いは6か月に1回の支払いのため、返済しない期間は元金が減りにくいためです。
元金が減らない間は利息が増えていくため、それに従い総支払額が増加します。低金利の間はそれほど気にならない金額ですが、金利が上がればその分、差額が大きくなり、総支払額も膨らみやすくなるのです。
ボーナス額の変動リスク
住宅ローンの借り入れ時には、現在のボーナスの金額を念頭にボーナス払いを設定するでしょう。しかし今後も現在のボーナス額を維持できる保証はありません。ボーナス額が変動すれば、支払い不能に陥ることもあります。
例えば景気や勤務先の業績が悪化すると、まず影響を受けるのがボーナスです。月々の給与はなかなか変えられませんが、経費削減のためにボーナスを減額する企業は多々あります。
また転職や独立により、ボーナスがない給与や報酬の形態になることもあるでしょう。支給額の変動リスクがあるボーナスを見込んだ返済計画を立てていると、貯金を取り崩して対応しなければならないケースもあります。
定年後も支払いが必要
定年まではボーナスを6か月ごとに受け取れていても、定年退職後はなくなります。そのため完済時期が60歳を過ぎるなら、定年後に無理なく支払えるかについても考慮しなければいけません。
現役時代は余裕を持って支払えていたとしても、定年後はボーナス払いの支払いが滞る可能性があります。また定年後に雇用が継続されたとしても、ボーナスの支給がない・大幅に少ないといったケースもあるのです。
住宅ローンでボーナス払いを利用する場合の返済額のシミュレーション
それでは、実際にボーナス払いを利用したときにはどれくらいの負担があるのでしょうか。3,000万円を借り入れた場合に、金利タイプやボーナス返済の比率によって、毎月返済額がどのように変わるのかの目安を、それぞれの金利タイプの平均的な水準の金利でシミュレーションしていきます。
3,000万円を変動金利・返済期間35年で借りる場合
まずは、3,000万円を変動金利0.8%・返済期間35年で借りた場合のシミュレーションを見ていきましょう。ボーナス返済の比率が上がるにつれて毎月返済額が下がり、ボーナス返済時の返済額が増えていきます。
ボーナス返済比率 |
毎月返済額 |
ボーナス返済時の返済額 |
0% |
81,918円 |
0円 |
10% |
73,726円 |
49,221円 |
20% |
65,534円 |
98,443円 |
30% |
57,342円 |
147,665円 |
ボーナス返済なしの場合には毎月返済額は約8.2万円ですが、ボーナス返済比率が30%になると約5.7万円へと約2.5万円負担が軽くなります。しかし、ボーナス返済時の返済額は約14.8万円となり、この金額を別途準備しておかなければいけません。
変動金利であることから、金利が上昇したときには毎月返済額とボーナス返済時の返済額の両方が上がることに注意が必要です。
3,000万円を10年固定金利・返済期間35年で借りる場合
次に、3,000万円を10年固定金利1.4%・返済期間35年で借りた場合のシミュレーションを見ていきましょう。変動金利のときと同様に、ボーナス返済の比率が上がるにつれて毎月返済額が下がり、ボーナス返済時の返済額が増えていきますが、金利が高いため、毎月返済額とボーナス返済時の返済額が大きくなっています。
ボーナス返済比率 |
毎月返済額 |
ボーナス返済時の返済額 |
0% |
90,392円 |
0円 |
10% |
81,353円 |
54,358円 |
20% |
72,314円 |
108,716円 |
30% |
63,275円 |
163,074円 |
ボーナス返済なしの場合には毎月返済額は約9.0万円ですが、ボーナス返済比率が30%になると約6.3万円へと約2.7万円負担が軽くなります。ボーナス返済時の返済額は約16.3万円となり、こちらにも金利の影響があらわれます。
10年固定金利の場合には、当初10年間は金利変動の影響を受けませんが、11年目以降に金利変動の影響を受けることになります。金利が上がっている場合には負担がさらに増えてしまいます。
3,000万円を全期間固定金利・返済期間35年で借りる場合
続いて、3,000万円を全期間固定金利2.0%・返済期間35年で借りた場合はどのようになるでしょうか。変動金利・10年固定金利と同様に、ボーナス返済の比率が上がるにつれて毎月返済額が下がり、ボーナス返済時の返済額が増えていきますが、金利がさらに高いため、毎月返済額とボーナス返済時の返済額が大きくなります。
ボーナス返済比率 |
毎月返済額 |
ボーナス返済時の返済額 |
0% |
99,378円 |
0円 |
10% |
89,440円 |
59,798円 |
20% |
79,503円 |
119,596円 |
30% |
69,565円 |
179,395円 |
ボーナス返済なしの場合には毎月返済額は約9.9万円ですが、ボーナス返済比率が30%になると約7.0万円へと約2.9万円負担が軽くなります。ボーナス返済時の返済額は約17.9万円となります。
全期間固定金利は完済まで返済額の変動がありません。返済額は大きいのですが、金利が上がった場合でも負担が増えることはありません。
3,000万円を変動金利・返済期間20年で借りる場合
返済期間が短い場合に返済額はどれくらいになるでしょうか。3,000万円を変動金利0.8%・返済期間20年で借りた場合でシミュレーションしてみましょう。返済期間が短くなると、毎月返済額もボーナス返済時の返済額も大きくなり、ボーナス比率を高めないと毎月返済額が10万円を超えることになります。
ボーナス返済比率 |
毎月返済額 |
ボーナス返済時の返済額 |
0% |
135,308円 |
0円 |
10% |
121,777円 |
81,309円 |
20% |
108,246円 |
162,619円 |
30% |
94,715円 |
243,928円 |
ボーナス返済なしの場合には毎月返済額は約13.5万円ですが、ボーナス返済比率が30%になると約9.5万円へと約4.0万円負担が軽くなります。しかし、ボーナス返済時の返済額は約24.4万円と大きな金額になります。
ボーナスは将来にわたって支給が保証されているわけではないため、ボーナスを当てにして返済を続けていくことにはリスクが伴います。仮にボーナスの支給がなくても返済可能な範囲で予算を検討することが重要です。
住宅ローンのボーナス払いが苦しくなった場合の対処法
ボーナスは将来にわたって支給が保証されているものではないため、ボーナスが減ったり、支給されなくなったりしたときには、ボーナス払いに頼った返済が負担になってしまいます。ボーナス払いが苦しくなった場合の対処法は限られていますが、返済条件の変更や借り換えなどの方法があります。
金融機関に返済条件の変更を相談する
ボーナス払いの場合でも、返済が難しくなったときには延滞する前に金融機関へ相談することが最も重要です。事情にもよりますが、金融機関が認めれば、返済期間の延長や、元金(元本)の返済が一時的に猶予されることで、月々の負担が軽くなることもあります。
延滞を発生させ、返済不能に陥ってしまった場合には一括返済や物件の売却を要求せざるを得なくなってしまいますが、その前の段階であれば柔軟に対応してくれる場合があります。なお、返済条件の変更に際しては再審査や手数料が必要なケースもあるため、具体的な条件も確認しておきましょう。
他の金融機関に借り換える
現在借りている住宅ローンの金利が高い場合や、返済期間が短い場合には、借り換えによって負担を軽減できる可能性があります。住宅ローンは、金利が低く、かつ返済期間が長いほど毎月返済額は少なくなるという特徴があるのです。
公務員のような住宅ローンを借りやすい属性の場合はこの方法を利用しやすいことから、複数の金融機関を比較して、より好条件の住宅ローンを借りられるように検討しましょう。なお、借り換えには諸費用がかかるため、それを考慮しても十分なメリットがあるかどうかのシミュレーションを行っておきましょう。
支払い方法の変更は可能?注意点は
一度設定したボーナス払いは変更できないのでしょうか?ボーナス払いでの支払いが難しくなったときに行う、支払い方法の変更について見ていきましょう。ボーナス払いをやめたい場合の注意点も紹介します。
金融機関ごとに対応が異なる
ボーナス払いの変更については金融機関ごとに対応が違うため、まずは契約している金融機関に確認しましょう。割合を変更できることもあれば、ボーナス払いなしのプランへ変更できるケースもあります。
返済に無理がありそうだと感じる場合には、できるだけ早く金融機関に相談し、返済計画を見直すことが大切です。相談の結果、思うようなプランに変更できない際には、借り換えも検討するとよいでしょう。
再審査が必要。変更費用もかかる
金融機関によっては返済方法の変更が可能ですが、返済条件が変わるため再審査を受けなければなりません。今と同じ金利での借入ができない可能性もある点に注意しましょう。
返済条件の変更費用は、金融機関により異なります。数百円という金融機関もあれば、数千円かかるところもあるのです。フラット35は無料で条件変更ができます。
借り換えでボーナス払いのないプランに変更する際も、審査に通過する必要があります。費用は条件変更をするよりも高額で、手数料などの諸費用が必要です。
諸費用の金額によっては総返済額が高くなる可能性もあるため、よく考えて借り換えするかを検討しましょう。
毎月の返済額は上がる
条件を変更してボーナス払いの割合を下げたり取りやめたりすると、ボーナス月の返済額は減らせます。しかし『毎月の返済額は上がる』でしょう。
借入額は変わらないため、これまでボーナス月に返済していた金額については、毎月の支払いに均一にならすことになります。すると返済期間を変えずに完済するためには、毎月の返済額を上げなければいけません。
返済額が上がると生活費に支障が出る場合には、ボーナス払いの条件変更とともに返済期間の延長も申し込めば、月々の負担を減らせます。
ボーナスの賢い使い方
住宅ローンをボーナスで返済するときには、よく計画を立てることが大切です。賢く返済に充てることで、無理することなく早い時期の完済を目指せます。
ボーナス払いは無理のない金額で
返済にボーナスの大部分を使えば、その分住宅ローンは早く返せますが、ほかの支出に使えるお金は減ってしまいます。例えば固定資産税の支払いや、将来必要な修繕費の積み立て・子どもの教育費などです。
これらの費用にボーナスを使えない場合、まとまった金額が用意できず、新たなローンを契約しなければいけないこともあるでしょう。それでは住宅ローンを早いペースで返せていたとしても、本末転倒です。
その時々に必要なことに適切にお金を使えるよう、ボーナス払いは余裕を持った金額に設定しましょう。
繰り上げ返済に利用する
ボーナス払いを設定すると、ボーナスが減額されたり、ほかにまとまったお金が必要になったりしても、使える金額が限られてしまいます。そこでおすすめなのが『繰り上げ返済』です。
余裕があるときにだけ返済すればよいため、ボーナスの使い方の自由度が高まります。教育費やリフォームなどが必要なときには、そちらへ充てることも可能です。
繰り上げ返済には、早期返済を目指せる『返済期間短縮型』と、月々の負担を減らし生活費に余裕を持たせられる『返済額軽減型』があります。
住宅ローンのボーナス払いは計画的に
住宅ローンの返済にボーナス払いを利用するなら、無理のない返済計画を立てましょう。今のボーナス額で支払える金額でも、将来的に勤務先の業績悪化により減額した場合や、定年退職後には返済できない可能性もあります。
返済が難しいと感じ始めたときには、できるだけ早い段階で借入している金融機関へ相談することが大切です。ボーナス払いの割合を減らす・取りやめるといった条件変更ができます。
再審査が必要な上、月々の返済額は増えますが、完済まで支払い続けやすくなるでしょう。入念に返済計画を立ててからプランを決定することで、確実な返済が可能です。
変動金利・固定金利の違いとは?
特徴やメリット・デメリットを解説
住宅ローンの基本的な金利タイプで、年2回(4/1と10/1)見直しされることから変動金利と呼ばれています。
金利の急変動で利用者が困らないよう、返済額を5年間据え置く「5年ルール」や月々の返済が25%以上増えないようにする「125%ルール」を設定している金融機関も多く存在します。固定金利に変更するオプションが付帯しており、金利上昇時には固定金利に切り替えることも可能です。
| 変動金利のメリット・デメリット
メリット:銀行間の低金利競争が激しく金利水準が低いため、月々の返済額を抑えることができます。
デメリット:将来金利が上がり、月々の返済額が増えるリスクがあります。対策として、金利が低いうちにしっかり貯蓄をして万が一の金利上昇に備えると良いでしょう。
| 5年ルール・125%ルールとは?
5年ルールとは、変動金利が上がっても月々の返済額を5年間一定とするルールです。5年ルール有りの場合、最初の5年間は変わらず、6年目から返済額が増えることになります。5年ルール無しの場合、翌月や翌々月から返済額が増えます。
金利が上がっても返済はすぐには増えず、5年間は変わらないというメリットがある一方、6年目になるまでは本来より低額での返済となり、完済時に未払利息が発生する可能性がある点がデメリットとなります。
125%ルールとは、5年ルールを適用している金融機関で返済額が増える際、今までの返済額の1.25倍を上限とするルールです。例えば従来の月々の返済が10万円の場合、返済がどれだけ増えても12.5万円が上限となります。
返済額が増えても上限値があるのがメリットとなる一方、5年ルール同様に本来よりも安く返済が進むため、予定通りに残高が減らず完済時に高額返済が必要となる可能性がある点がデメリットです。
| 変動金利の推移・相場は?
変動金利はバブル崩壊以降、ほぼ一貫して低下傾向を続けてきました。しかし2024年になって日銀のゼロ金利解除により、変動金利が遂に引き上げられることとなりました。いよいよ「金利のある世界」に突入したことになります。しかしながら、依然としてネット銀行を先頭に、変動金利が顧客獲得競争の主戦場という状況は続いています。
| 固定金利とは?
文字通り金利が変わらないのが固定金利です。フラット35のような全期間固定金利のほか、5年、10年など一定期間の金利を固定する固定期間選択型もあります。
| 固定金利のメリット・デメリット
メリット:返済額が変わらない安心感があります。変動金利より金利水準は高いものの、一定期間または全期間の返済額が変わらないため、長期の返済計画や生活設計を立てやすいことが特徴です。
デメリット:金利水準が高く、返済額が多くなります。返済中に大規模な金利上昇が起こらない限り、変動金利を使った場合に比べて固定金利を使う方が多額の返済となるでしょう。また固定期間選択型の場合、6年目や11年目など固定期間が終了するタイミングで、当初固定期間よりも高い金利に切り替わることが多いこともデメリットです。
| どんな人が変動金利・固定金利に向いている?
少しでも返済額を抑えたい方やコストパフォーマンスを重視する方には変動金利がオススメです。日本銀行の金融緩和政策や住宅ローン業界の競争激化を踏まえ、モゲチェックでは変動金利は今後も低金利が続くと予想しています。
一方、固定金利は金利や返済額が変化するリスクをなくしたい方に向いています。例えば最初の10年間が子どもの教育費がかさむ時期と重なるなど、住宅ローンの返済額が増えることをどうしても避けたい方には10年固定金利がオススメです。
| 変動金利・固定金利の利用割合
変動金利を選ぶ人の割合が年々増え続け、全体のおよそ7割とほとんどの住宅ローン利用者が変動金利を選んでいます。また、固定期間選択型は2割、全期間固定型は1割であり、年々減少しています。
(出所:独立行政法人住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」より)
| モゲチェックのオススメは?
モゲチェックでは低金利政策が長期化する可能性が高いとの見通しや、住宅ローン業界で顧客獲得競争が激しくなっていることから、変動金利では安定した低金利が続くと予想しています。
迷った方はまず変動金利から検討することをオススメします。最新情報は住宅ローンランキングでチェック!