住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの繰り上げ返済とは、当初に決められた返済予定よりも前倒しして借入金を返済することをいいます。住宅ローンの利息は元本に対してかかるので、繰り上げ返済をして元本を前倒しして返済すれば、将来支払う利息を減らすことができます。
銀行が事業へ融資する際などには繰り上げ返済が認められていないか、高額の手数料がかかることがありますが、住宅ローンでは契約者が希望すれば、無料もしくは少額の手数料で繰り上げ返済をすることができます。
繰り上げ返済には、借入金額の一部を返済する一部繰り上げ返済と、全部を返済する全部繰り上げ返済があります。
住宅ローンの繰り上げ返済の種類
一部繰り上げ返済を行うと、その後の返済は、毎月返済額が変わらずに返済期間が短くなるか、返済期間は変わらずに毎月返済額が減るかのどちらかになります。選択する場面に備えて、これらの違いを理解しておきましょう。
1:期間短縮型
毎月返済額は変わらずに、返済期間が短くなる方法が期間短縮型です。期間短縮型は大きな利息軽減効果を得られます。返済期間が短くなることで、その期間にかかる利息がなくなるためです。
特に高金利で借り入れしている場合には、利息軽減効果がより大きくなります。
2:返済額軽減型
返済期間は変わらずに、毎月返済額が軽減される方法が、返済額軽減型です。月々の返済額の負担を軽減したい場合に向いています。
そのため、繰り上げ返済後の生活費に余裕を生み出せるのがこの返済額軽減型のメリットです。利息軽減効果は期間短縮型よりも劣りますが、先々の家計の支出が増える予定がある場合では、収支の余裕を持たせやすくなります。
住宅ローンの繰り上げ返済を行うメリット・デメリットとは?
繰り上げ返済には支払う利息が減るなどのメリットがありますが、住宅ローンの借入残高や手元資金が減ることにはデメリットもあります。メリットとデメリットを比較して判断しましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済を行うメリット
繰り上げ返済を行うメリットは大きく3つあります。
1つ目は将来支払う利息が減少することです。繰り上げ返済によって元本を減らせば支払う利息は将来にわたって減少します。例えば2,000万円を金利1%、返済期間35年間で借りると、35年間で支払う利息は約371万円です。しかし、5年目に500万円を繰り上げ返済すると、支払う利息を約300万円に減らすことができます。
2つ目は、保証料を一括前払いで支払っている場合には、その保証料の一部が戻ってくることです。手数料がかかるため、少額の繰り上げ返済では返金がないこともありますが、まとまった金額を繰り上げ返済した場合には返金を期待してよいでしょう。
3つ目は、借入残高が減ることで心理的な負担感が和らぐことです。住宅ローンのことが気になって仕方がない人は、繰り上げ返済をすると気持ちが楽になるかもしれません。
住宅ローンの繰り上げ返済を行うデメリット
一方で、繰り上げ返済をすることにはデメリットもあります。
1つ目は、手元資金が減ってしまうため、教育費や自動車購入、病気・ケガの治療費などのまとまった支出が生じてしまうと、お金が足りなくなるリスクがあります。一般的に、教育ローンや自動車ローンは住宅ローンよりも金利が高いため、住宅ローンを繰り上げ返済してこれらのローンを借りることになると、結局は支払う利息が増えてしまいます。
2つ目は、団信(団体信用生命保険)に加入している場合にはそのメリットが減ってしまいます。その理由は、団信は保険金額が住宅ローン残高と連動するためです。
3つ目は、後述するように住宅ローン控除が減ったり、控除を受けられなくなってしまう可能性があります。
他にも、金融機関によっては繰り上げ返済に手数料がかかる場合があることもデメリットといえます。
◆参考◆住宅ローンの繰り上げ返済はデメリット・リスクだらけ?メリットや最適なタイミング
繰り上げ返済ではなく住宅ローン控除の適用期間を待つほうがいい?
住宅ローンを借りるメリットの1つは住宅ローン控除による減税です。繰り上げ返済をするときには住宅ローン控除に影響を及ぼさないかどうかを十分に検討しておきましょう。
住宅ローン控除の金額は住宅ローン残高の影響を受ける
住宅ローンを組んでいると、最大10年間もしくは13年間にわたり、所得税・住民税から住宅ローン控除を受けることができます。この控除額を決める要件の1つが住宅ローン残高であり、年末時点の残高の1%もしくは0.7%が控除額の基準となります。
繰り上げ返済をすると残高が減るため、そのぶん住宅ローン控除も減ってしまう可能性があります。また、住宅ローン控除の適用を受けるには10年以上の住宅ローンを組んでいる必要があり、繰り上げ返済によって返済期間が10年未満に短縮されてしまうと、そもそも控除を受けることができなくなってしまいます。
住宅ローン控除のほうが支払う利息を上回ることも多い
住宅ローン控除の控除率は、借り入れた時期によって毎年末の住宅ローン残高の1%もしくは0.7%となっています。住宅ローン金利がこの控除率を下回っている場合には、基本的には繰り上げ返済をするよりも住宅ローン控除を受けたほうがメリットが大きくなります。
借入金利がこの水準よりも高い場合には繰り上げ返済を考慮するメリットがありますが、金利の安い他の住宅ローンに借り換えるほうがより大きなメリットがある可能性もあります。
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返済初期は団信による保障の価値が大きい
住宅ローン控除が適用される返済初期は、住宅ローン残高が大きい時期です。大半の住宅ローンは団信への加入が必須となっており、この団信は住宅ローン残高と保険金額が連動しています。繰り上げ返済をすると住宅ローン残高が減るため、団信による保障の価値が少なくなってしまうのです。
3,000万円の住宅ローンと500万円の手元資金があるときに万一のことがあった場合には、500万円の資金はそのままに住宅ローン残高が0円になります。一方で、500万円を繰り上げ返済した後に万一のことがあると、住宅ローン残高は0円になるものの、手元資金がない状態になります。繰り上げ返済に使った500万円が戻ってくることはありません。
繰り上げ返済と資産運用、どちらがお得?
手元資金は繰り上げ返済をする他にも、資産運用に回す方法があります。繰り上げ返済と資産運用では、どちらのほうがお得になるのでしょうか? 例えば適用金利0.7%で残り30年間の返済期間がある住宅ローンを借りていて、500万円の手元資金がある場合を考えてみましょう。
この500万円を繰り上げ返済に回すと、今後30年間で支払う利息を約54.5万円減らすことができます。
一方で、株式投資信託などによって年率2%で運用できた場合には、30年後には500万円が905.7万円となり、売却時の税金を考慮しても約324.5万円の収益になります。
運用のリターンは確実ではないものの、運用に回したほうが大きく得をする可能性があることは知っておきましょう。
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まとめ
住宅ローンの繰り上げ返済には総返済額を下げる効果があります。しかし、手元資金が減ることによって問題が生じたり、住宅ローン控除が減る可能性があったりすることから、繰り上げ返済をするかどうかの判断は慎重に行うべきです。また、手元資金は繰り上げ返済のほかにも、資産運用に回すという活用方法があります。
なお、そもそも借入金利が高い場合には、繰り上げ返済よりも借り換えのほうがメリットが大きくなります。月々の返済額が負担に感じる場合には、まずは借り換えを検討してみてはいかがでしょうか。