1.4人家族の生活費の目安
家計の見直しを行う上で、自分の生活費が平均よりも高いのか低いのかを知ることは重要です。4人世帯における1カ月の消費支出はどのくらいが平均的なのでしょうか?
消費支出の平均は約32万円
総務省統計局が発表する『家計調査』によると、2020年の4人世帯における消費支出平均は、31万5,402円です。消費支出には以下の項目が含まれます。
- 食費
- 住居費
- 光熱・水道費
- 家具・家事用品
- 通信・交通費
- 保健医療費
- 教育費
- 被服・履物
- その他(交際費・小遣い・雑費など)
地域や世帯員の年齢層によって若干の差はありますが、全国の平均値は生活費を見直す上での指標になります。消費支出が平均を大きく上回っていれば、改善の余地は大いにあるといえるでしょう。
参考:家計調査(家計収支編)総世帯・詳細結果表(2020年)世帯人員・世帯主の年齢階級別 表4|総務省統計局
最も割合が高い支出は「食費」
消費支出の中で、最も高い割合を占めるのが『食費』です。食費には食材のほか、調理食品や酒類、外食などが含まれます。
総務省統計局の家計調査によると、4人世帯の1カ月の平均食費は8万7,071円で、消費支出の約27%を占めています。支出全体における食費の割合(%)は『エンゲル係数』と呼ばれ、生活水準が低いほどエンゲル係数が高くなるのが一般的です。
エンゲル係数、すなわち食費の割合を下げるには、普段から『節約』を心がけることが重要といえます。外食の回数を無理なく減らすと同時に、自炊の際はできるだけ食材を無駄なく使うのがポイントです。
買い物の際は、業務スーパーや野菜の直売所などの『食材が安く買える場所』を利用しましょう。スーパーの隅に並ぶB級品や、訳あり食材を活用して節約するのも賢い方法です。
参考:家計調査(家計収支編)総世帯・詳細結果表(2020年)世帯人員・世帯主の年齢階級別 表4|総務省統計局
2.生活費見直しの流れ
育ち盛りの子どもがいる家庭の場合、食費を大きく削るのは好ましくありません。食費以外の生活費に改善すべき点がないかチェックしましょう。家計簿をつける習慣がない人は、この機会に自分に合った家計管理を模索することをおすすめします。
収支を見える化する
貯金が貯まらない人は、家計管理が得意でない人が大半です。毎月どれだけの収入があり、いつ・何にお金を使っているのか把握できなければ、お金は一向に貯まりません。
まずは、月々の収支を『見える化』することから始めましょう。見える化とは、収入や支出を項目ごとに分け、『お金の流れ』を把握しやすくすることです。夫婦共働きであれば、それぞれの収入や資産がいくらあるのかも共有しておくべきでしょう。
近年はクレジットカードや銀行口座と連携すると、自動的に家計簿が作成される優秀なアプリが登場しています。現金払い時はレシートを撮影するだけで、自動的にカテゴリー分けされるため、記帳の煩わしさからも解放されるはずです。
課題や改善点を見つける
収支が可視化されると、これまで見えなかった課題が浮き彫りになります。節約できる項目がないかを家族や夫婦で話し合うと共に、『他者との比較』を加えて問題点や改善点を挙げていきましょう。
政府統計の総合Webサイト『e-Stat』では、総務省統計局による『世帯人員・世帯主の年齢階級別の家計調査(年次)』を公開しています。食費や光熱費、住居費といった各項目の平均支出も掲載されているため、家計簿との比較が可能です。
『節約さえすればお金は貯まる』と思っている人もいますが、生活費を過度に切り詰めるとストレスが溜まります。やみくもに節約するのではなく、支出の中に『浪費』がどのくらいあるのかチェックし、全体に占める割合を減らす努力をしましょう。
- 消費:生活する上で必要な支出
- 投資:将来に向けた支出
- 浪費:なくてもよい支出(娯楽・嗜好品など)
将来の支出をシミュレーションする
月々の支出を全国平均以下に抑えたとしても、『人生に必要なお金』は家庭ごとに異なるため、シミュレーションや目標設定のない節約はあまり意味がありません。
節約は、『いつまでにどのくらいのお金を貯めたい』という目標を立てた上でスタートさせるのが理想です。
収支を可視化し、現時点の課題点を把握したところで、ライフプランに基づいた将来のキャッシュフローを作成しましょう。現在の収入・支出・貯金残高のほかに、これからのライフイベントとそれまでに必要な貯金額を列挙します。
『金融庁』や『日本FP協会』『全国銀行協会』などがWeb上で提供するミュレーションツールを活用し、将来の家計を診断するのも役に立つでしょう。
3.生活費は二つに分類可能
食費や光熱費、通信費といった『生活費の項目』は、『固定費』または『変動費』のいずれかに分類されます。各費用の特徴を知ると、節約の優先順位がつけやすくなるでしょう。
毎月定額でかかる「固定費」
『固定費』とは、毎月必ず発生する定額の費用のことです。ほとんどは一定額ですが、光熱費や水道費のように、利用状況によって金額が上下するものも含まれます。
- 住居費(住宅ローン・家賃)
- 光熱・水道費
- 通信費
- 定額サービス(アプリ・動画配信サービスなど)
- 保険料
- 教育費(習い事の月謝・給食費など)
- 契約駐車場費
日々の行動によって変わる変動費は、節約し続けるのが難しいですが、固定費は一度見直せばその効果が長く続きます。食費や交際費を削るよりも、ストレスがないのも利点でしょう。節約において『固定費を先に見直す』のは基本中の基本といえます。
月によって変わる「変動費」
『変動費』は、その月の生活パターンによって金額が変動する費用を指します。食費は変動費の代表格で、安い食材で自炊を多くすれば費用は減り、逆に外食が増えれば費用がかさみます。
- 食費
- 交際費
- ガソリン費
- 日用品費
- 医療費
- 美容費
- 被服費
- レジャー費・娯楽費
変動費は支出に占める割合が比較的大きいため、節約すれば目に見える効果が期待できますが、無理して切り詰めるとストレスが溜まりやすくなります。『収入-固定費=変動費』とし、変動費に充てられる月々の上限を決めておくとよいでしょう。
4.見直したい三つの支出
無理なく節約をするコツは、毎月定額で引き落とされる『固定費』を先に見直すことです。
保険料や住宅ローンは一度契約したら終わりではなく、定期的に見直し、必要があれば切り替えを行います。通信費や光熱費もコストカットできるプランを積極的に探してみましょう。
光熱費やスマホ代などの固定費
家賃や教育費を削るのは難しいですが、光熱費や通信費は工夫次第でいくらでも安くなります。
以前は、家庭に電気を供給する会社は一部の大手に限られていましたが、2016年4月以降は『電気の小売』が全面的に自由化され、利用者は電力会社や契約内容を自由に選べるようになりました。
自分たちのライフスタイルに合った電力会社や料金プランを選択すれば、年間で数万円の節約も不可能ではありません。
光熱費同様、『通信費』にも見直しの余地があります。2021年以降は大手キャリアや格安スマホ事業者が次々と新料金プランを発表し、値下げ合戦ともいわれる状態が続いています。
この機会に各社のプランを比較して、乗り換えを検討するのもありでしょう。
住宅ローン等の借り入れ
住宅ローンを組んでいる場合は、『借り換え』も視野に入れましょう。借り換えとは、新たにローンを組み、現在返済中のローンを一括返済することを指します。
金利が低い金融機関に借り換えができれば、毎月の返済額の負担が大きく軽減できる可能性があります。
借り換えを決めるポイントは、『金利の差』と『返済期間』です。金利差は0.5~1%が理想ですが、それ以下でも借り換えた方が総支出を減らせる場合があります。元金が大きく、残りの返済期間が長いほど借り換えによる低金利の恩恵を享受できるでしょう。
ただし、借り換え時には保証料や抵当権設定費用などの各種手数料がかかるため、金利だけではなく、手数料を含めた総支払い額で比較する必要があります。
生命保険
死亡保険や医療保険、がん保険などの『生命保険』は定期的に見直しを行いましょう。
子どもが生まれて家族が増えると、『もしものときに備えたい』と思う気持ちが強くなりますが、保障内容が大きくなると、月々の家計が圧迫されてしまいます。
貯金額がなかなか増えないときは、最低限の保障だけを残し、余った分は貯金に回すのがベターです。必要な保障や金額は、『ライフステージ』ごとに変わるため、自分や子どもの年齢を考慮しながら、今の保険が適切かどうか判断しましょう。
日本には高額療養費制度や遺族年金、傷病手当金などの公的な保障制度があります。公的な保障で賄えない部分を民間保険でカバーするイメージで保険を見直してみましょう。
5.節約する際の注意点
『節約=しんどいもの』という印象のまま節約をスタートさせると、途中で挫折してしまう可能性があります。モチベーションを維持しながら、楽しく節約できる方法を自分なりに考えてみましょう。節約時の注意点と長く続けるコツを紹介します。
ストレスを感じる節約は避ける
過度に生活費を切り詰めたり、好きなものを我慢したりするとストレスが溜まり、リバウンドで不必要な浪費に走ってしまう恐れがあります。
とりわけ交際費や食費、娯楽費などの『変動費』の節約には注意が必要です。日常のささやかな楽しみまでなくなってしまうと、仕事のストレスが発散できなかったり、夫婦喧嘩が絶えなくなったりする危険性も考えられます。
『マイホームを持ちたい』『子どもの大学進学資金を貯めたい』など、節約をする目的はさまざまですが、家族の健康と幸せが損なわれてしまっては元も子もないことを覚えておきましょう。
楽しく節約する方法を見つける
節約を始めるのは簡単ですが、1年、2年と長く続けるのはそう容易ではありません。長続きさせるコツは、ストレスフリーで楽しく節約する方法を早い段階で見つけることでしょう。
近年は、買い物やサービス利用でポイントを貯める『ポイ活』をする人が増えています。現金払いをクレジットカードや電子マネーなどの『ポイントが貯まる決済手段』に切り替えるだけで、0.5~1%前後が還元されるため使わない手はありません。
節約上手といわれる人々は、『家族で旅行に行く』『月に数回は思いっきり美味しいものを食べる』など、節約のご褒美を適度に取り入れながら、節約のモチベーションを維持しています。『使う』と『貯める』のメリハリを意識することも大切です。
6.計画的に貯金するコツ
貯金は継続できなければ意味がありません。貯金をする目標を立てた上で、給料の何割を貯金に回すか計算してみましょう。『収入額-支出額=貯金額』という計算式ではなく、先に貯金する分を確保してしまうのが賢い方法です。
貯金の具体的な目標を立てる
『貯金をする目的』を明確にし、『目標額』を設定するのが最初のステップです。多少の我慢や負担を強いられる節約は途中で挫折しやすいですが、目標を設定することで節約に対するモチベーションがキープできます。
全体的な目標を決めた後、半年ごと、1年ごとの具体的な目標額を設定しましょう。10年間で1,000万円貯める場合、必要な貯金額は1年間では約100万円、半年では約50万円です。
一般的に、月々の貯金額の目安は『手取り金額の1~2割前後』といわれています。夫婦の手取り年収が500万円程度であれば、1年間で100万円を達成するのは無理がないといえるでしょう。
人生の三大支出を意識する
必要な貯金額は、『ライフイベント』を意識して算出するのがポイントです。とりわけ、『マイホーム購入資金』『子どもの教育資金』『老後資金』は人生の三大支出ともいわれます。
住宅購入の時期や子どもの人数・年齢によって必要な資金が変わるため、夫婦間でよく話し合って具体的な資金計画を立てましょう。
マイホーム購入の場合、物件購入費用のほかに、不動産の登記費用やローン手数料などがかかります。購入後は、維持管理費や固定資産税が継続的に発生するため、全てを考慮した上で準備資金を決めなければなりません。
子どもがいる場合は、ローンの返済と教育費の支払いが同時進行となる可能性が高いでしょう。教育費の支払いを優先し、子どもが独立した後に退職金で住宅ローンを繰上返済するのも一つの手です。
先取り貯蓄をする
貯金の目的と目標額を設定した後は、貯金が自動的に貯まる仕組みを作りましょう。計画的に貯金ができている人の多くは、『先取り貯蓄』を活用しています。
通常は、収入から生活費を差し引いた残りの分を貯金に回しますが、先取り貯蓄では『収入額-貯金額=支出額』というように、『貯金分』を先に確保するのが特徴です。
先取り貯蓄の代表的なサービスには、銀行の『自動積立定期預金』や『定額自動入金サービス』、各企業の『財形貯蓄制度』などがあります。
財形貯蓄制度は主に『一般財形貯蓄』『財形年金貯蓄』『財形住宅貯蓄』の三つの種類があり、目的に応じた使い分けが可能です。
資産運用も検討しよう
資産運用とは、将来的な資産形成のため、手持ちの資産をさまざまな方法で運用することを指します。
貯めることを目的とする『貯蓄』と、お金を増やすことを目的とする『投資』があり、両者をバランスよく取り入れることで、目的に沿った資産形成が実現します。
現金や預貯金、貯蓄型の保険商品は元本が保証される一方で、インフレでは実質的な価値が目減りするリスクをはらんでいます。貯金の目的や目標金額によっては、投資信託や株式投資などの『投資』も検討しましょう。
初心者におすすめなのが、少額・長期・分散に特化した積立型の投資商品です。NISAを活用して毎月一定額を長期にわたって積み立てる『積み立て投資』は、運用コストやリスクを抑えながら無理なく資産運用できるのがメリットです。
運用で得た収益や利子を再び投資すれば、利益が倍に膨らんでいく『複利効果』も狙えるでしょう。
7.生活費の見直しをしてみよう
ある程度の収入があるにもかかわらず、貯金が一向に増えない人は、収入と支出のバランスが崩れている可能性があります。現時点における全ての資産をリストアップすると共に、毎月の収支を可視化してみましょう。
家計の見直しで最初にやるべきことは『固定費』の削減です。不規則に変動する『変動費』を削っても節約効果が持続するとは限らないため、額は小さくても毎月発生する費用を削った方が効率的といえます。
家計管理や資産運用に関して迷いや悩みがあれば、フィナンシャルプランナーに相談するのも賢明です。自分の状況に似たモデルケースを参考にしたり、ライフプランシミュレーションツールを使って家計を診断したりするのも有効でしょう。
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