1. 30代夫婦の生活費、理想と現実
30代の夫婦2人暮らしでは、一般的にどのくらいの生活費が必要なのでしょうか?まずは理想の配分と、平均的な生活費を見ていきましょう。
消費税や物価上昇など逆風が多い
貯蓄して将来に備えたい・生活費を理想の配分にしたいと考えても、順調に進められないのには理由があります。買い物をするたびに支払う消費税10%も、その一つです。
1カ月に200,000円の買い物をするとしたら、消費税だけで20,000円の支払いです。1年間では240,000円になります。
30年ほど前の1990年の消費税は3%で、同じように毎月200,000円買い物しても年間にかかる消費税は72,000円でした。消費税だけでも以前と比較してこれだけの差が出ています。
加えて物価の上昇も家計に響く要因です。1990年の消費者物価指数89.6に対し2023年10月時点では107.1と、バブル崩壊後に物価は約2割上がっています。
物価が上昇する(インフレ)ということは、実質的に現金の価値が目減りすることを意味します。同じ10,000円でも以前より少ないモノしか買えないため、より多くの生活費が必要です。
気になる生活費の金額は
総務省の調査によると、30代の2人以上の勤労者世帯では1ヶ月の生活費は平均321,000円です。日々の暮らしに必要な食費や光熱費などに加え、住宅を購入しローンの返済が始まるケースもあるでしょう。
住むエリアやライフスタイルによって生活費は異なりますが、おおよそ300,000円前後の生活費であれば一般的といえます。
参考:月々の生活費は平均していくらくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター
生活費の理想的な割合とは
1カ月の生活費を何に使うか考える際には、理想的な割合を意識するとよいでしょう。目安は下記の通りです。
- 住居費:20~30%
- 水道光熱費:5%
- 食費:15%
- 家具・家事用品費:3%
- 通信費や保険料などの固定費:10%
住居費は、生活費の中でも大きな割合を占める支出です。収入の30%を超えると家計を圧迫し過ぎてしまいます。賃貸でも持ち家でも、住居費は一度決まるとなかなか下げられません。
無理なく支払える金額か、よく検討してから決めるとよいでしょう。
通信費や保険料も一度契約すると、見直すまでずっと同じ金額を支払い続ける固定費用です。10%以内に収めるには、格安SIMや掛け捨て保険を利用するなど工夫しましょう。
2. 30代の貯蓄と老後の備えについて
老後を考えて貯蓄を始める30代もいるでしょう。具体的にいくらぐらいの貯蓄を用意できるとよいのでしょうか?
30代で貯めておきたい金額の目安は
30代で貯める資金の目安として『年齢×100,000~200,000円』という計算式を覚えておくとよいでしょう。
例えば35歳であれば3,500,000~7,000,000円を目安に貯めます。夫婦とも同じ年齢であれば、7,000,000~14,000,000円を目標にするとよいでしょう。
貯金額はライフイベントに従い上下するため、目安を下回る時期も出てきます。厳密に目安をクリアすることを目指すのではなく、夫婦のペースに合わせ、余裕を持った資金計画を立てることが大切です。
老後までを考えると必要なお金は
仮に65歳で定年退職し、90歳まで年金を受給したとします。この間夫婦で受給できる年金額は、2022年の総務省の調査によると月に220,418円です。
社会保障給付金とその他の収入と合わせると246,237円ですが、全ての支出をまかなうには22,270円足りません。25年間この不足分を貯蓄で補うとすると、6,681,000円必要です。
また厚生労働省によると、現在の30代が年金を受給し始めるときには、今よりさらに受給額が下がる見込みです。2019年には、現役時代の収入に対して61.7%を受け取れていますが、2046年頃には51.9~50.8%まで低下するといわれています。
それに伴い年金の受給額は30,000円ほど低下すると考えられるため、1カ月の赤字は約60,000円です。25年間分を用意するには、18,000,000円は貯めておかなければいけません。
参考:
家計調査年報(家計収支編)2022年 家計の概要 P.18|総務省
平成26年 財政検証 給付水準の将来見通し P.4|厚生労働省
3. どうしたら貯まる?貯蓄体質になる方法
定年退職し年金を主な収入源として生活するには、十分な貯蓄が必要と分かりました。必要な老後資金を貯めるために、貯蓄体質を身に付けましょう。
まずは家計をきっちり管理する
共働きでしっかり稼いでいるのに貯まらないなら、まずは家計管理から始めましょう。1カ月にいくらの収入があり、支出として何にどれだけ使っているのか把握するのです。
このとき夫婦でお互いにどれだけ収入があり、何にいくら使っているか明らかにします。我慢したくない・干渉されたくないといった理由で収入と支出を明かさずにいると、貯金は難しいでしょう。
まず収入を把握するには、毎月の給与のほかに臨時収入があればそれも加えます。支出は下記の費目ごとに管理するのが一般的です。
- 食費
- 住居費
- 水道光熱費
- 日用品費
- 被服費
- 医療費
- 交通費
- 教育費
- その他
ポイント目的のクレカ決済は罠
日常的にクレジットカードで支払いをしていると、家計を把握しにくくなる可能性がある点に注意しましょう。カードの提示だけで支払いが完了する上、後から請求されるため、使い過ぎても気付きにくいのです。
ポイントが貯まりお得な側面もありますが、ポイント目的に衝動買いをしてしまいやすいデメリットもあります。使い過ぎをうまくコントロールできないと、クレカが原因でなかなか貯められない事態にもなりかねません。
手取りの2割を先取り貯蓄する
月末に余った分を貯金しようと思っていると、なかなか貯まりません。確実に貯めるなら『先取り貯蓄』を実施しましょう。生活費として給与を引き出す前に、毎月定額を貯金用口座へ積み立てるのです。
貯金した分をなかったものと扱えば、決まった金額の中でやりくりする力も身に付けられます。自然とお金を貯められる仕組み作りが可能です。
企業が福利厚生として用意している財形貯蓄や、金融機関の積立定期預金を利用すると、自動的に差し引かれるため継続しやすいでしょう。
ストレスをコントロールする
貯蓄をするにはストレスのコントロールもポイントです。これまで貯められていないのなら、支出を減らすために買い物を我慢しなければいけないこともあります。
欲しいものを全て我慢すれば、貯蓄スピードは上がるかもしれません。しかしストレスがたまり、反動で衝動買いしてしまう可能性も出てきます。
ストレスをコントロールするには、支出を『ショウ・ロウ・トウ(消費・浪費・投資)』に分け、バランスを取ることが大切です。ロウにあたる支出も5%程度までと上限を決めて、予算を設定します。
すると貯蓄しながらでも楽しみを我慢せずに済み、ストレスをコントロールしやすくなるのです。
4. 資産形成は「複利」を意識しよう
単にお金を貯めているだけだと、物価上昇の影響で目減りする可能性があります。老後資金として資産形成する際には、複利を意識して目減りしないよう運用することも大切です。
複利は長期になるほど有利に
『複利』とは、利子にも利子が付くことです。例えば1,000,000円を投資し5%で運用すると1年後には1,050,000円になります。このとき利子の50,000円も含めて再投資すると複利効果を利用可能です。再び5%で運用できれば、1,102,500円になります。
一方『単利』では、利子の50,000円は再投資しません。2年目に投資するのは1年目と同じ1,000,000円のみのため、受け取れるのは1,050,000円です。
2年間の運用結果では、複利と単利の差は2500円ですが、長期間再投資を続けるとその差は大きくなり続けます。投資する金額によっては数百万円の差が出ることもあるのです。
複利のメリットを生かせる投資法は
利子も含めて再投資することで、複利のメリットを得るには『積立投資』を利用するとよいでしょう。設定したタイミングで一定金額の金融商品を購入する、積立預金のような仕組みです。
少しずつ長期間にわたって購入し続けるため、価格の変動によるリスクを受けにくく初心者にも取り組みやすい方法といわれています。さらに『NISA』や『iDeCo』を利用すると節税にもつながりお得です。
5. 生活費の無駄を減らして貯蓄しよう
30代の共働き夫婦では、お互いの収入や支出が不透明でなかなか貯金ができていないというケースもあるでしょう。まずは家計全体の収入と支出を把握することから始め、生活費の無駄を減らしていきましょう。
今の30代が年金受給者になる頃には、受給できる年金と毎月の支出との差額は約60,000円になるといわれています。65歳から25年間の赤字分を補填しようと思うと、夫婦で18,000,000円の資金が必要です。
将来の暮らしを支える資金確保のためにも、貯蓄の仕組み作りと複利を利用した投資による資産形成が役立ちます。