1. 独身者は老後にどれくらい備えている?
独身者の老後貯金を考えるにあたり、まずは単身世帯の貯蓄状況を知っておきましょう。全体の半数近くが貯蓄ゼロである点もポイントです。
独身者の貯蓄平均額は?
金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査』では、単身世帯の金融資産保有状況が公開されています。
令和2年における金融資産保有額の平均は6,530,000円です。
前年より80,000円増加しましたが、過去10年の中で最も多い平成29年時の9,420,000円と比較すると3,000,000円近く減っているという結果が出ています。
金融商品別に見ると、全体に対して最も多い割合を占めているのが、2,760,000円の預貯金です。以下、2,400,000円の有価証券、1,120,000円の保険と続きます。
参考:家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)2020年 P.3|金融広報中央委員会
金融資産の中央値は50万円
金融資産保有額の平均6,530,000円は、全く貯蓄がない世帯も含んだ調査結果です。金融資産を保有していない世帯は、全体の5.1%を占めています。貯蓄ゼロの世帯を除いた場合、金融資産保有額の平均は10,440,000円です。
またこの調査では、金融資産保有額の中央値が500,000円となっています。中央値とは、調査対象データを全て順に並べたとき、真ん中に位置するデータです。
中央値は平均値に比べ、より実態に近い数値になります。一部の富裕層が金額を押し上げている平均値6,530,000円ではなく、中央値500,000円の方がより現実を反映した金額です。
参考:家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)2020年 P.3〜4|金融広報中央委員会
2. どれくらい貯金があれば老後は安心か
独身者でも安心して生活できる、老後資金の目安額を解説します。年金だけに頼っていると、老後破産する恐れがあることも知っておきましょう。
独身でも2,000万円近くは必要
総務省の『家計調査報告』では、平成30年における高齢単身無職世帯の家計収支が分かります。60歳以上の単身無職世帯では、毎月の支出合計が約162,000円、実収入は約123,000円です。
収支の差は約162,000円-約123,000円=約39,000円となり、この分だけ月々の生活費が足りません。老後期間を25年間とすると、約39,000円×12カ月×25年=約11,700,000円不足することになります。
老後は生活費だけでなく、介護費や葬儀費の準備も必要です。仮に、介護費5,000,000円・葬儀費2,000,000円と設定すれば、独身世帯に必要な老後資金は約18,700,000円と計算できます。
参考:家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)II 総世帯及び単身世帯の家計収支 P.18|総務省
年金頼みは老後破産のリスク大
老後における収入の大半を占めるのが公的年金です。少子高齢化が進む中、公的年金の支給水準は、今後ますます低下することが予想されています。
総務省の調査結果からも分かるように、年金だけでは老後の生活を支えられていないのが実情です。年齢を重ねるにつれ、生活費だけでなく、住宅の維持費や孫への出費、医療費・介護費なども必要になるでしょう。
赤字が続いて生活が立ち行かなくなると、『老後破産』を招き生活保護を頼る事態にもなりかねません。安心して老後を過ごせるように、今のうちから老後のための貯金を考えておくことが重要です。
3. 節約の心構えとおすすめのやり方は
老後貯金を増やすためには、普段から節約する意識を持つ必要があるでしょう。無理のない節約の考え方や、おすすめの節約方法を紹介します。
無理なく節約するためのポイント
節約するために何もかも切り詰めてしまうと、ストレスを抱えてしまい長続きしにくくなります。無理のない範囲で、長期にわたりコツコツと続ける意識を持つことが大切です。
厳しい制限ばかり設けるのではなく、息抜きにお金をかける部分も作るのがおすすめです。貯金する明確な目的や金額を決めれば、達成率を確認しながら、楽しく節約を続けられます。
日常的に実践しやすい取り組みを意識するのもポイントです。水道光熱費・通信費・交通費など、固定費の節約を実践すれば、ルーティン化しやすい上に大幅な節約へとつなげられます。
1週間ごとに使える予算を決める
無駄遣いを抑えるためには、1週間ごとの予算を決め、その中でやり繰りできるように生活するのがおすすめです。使えるお金が明確になるため、予算を守りやすくなるでしょう。
手取り月収から貯蓄分や固定費を前もって差し引き、残りを週ごとに割り振れば、1週間分の予算額を算出できます。食費や日用品費など、費目別に細かく分けて予算を決めれば、より管理しやすくなるでしょう。
子どもの外食費や外出時のお土産代など、費目が決まっていない出費も、きちんと費目を設定することで無駄遣いを防げます。もしものときのために予備費も用意しましょう。
買い物は安さだけで選ばない
スーパーで普段より安い商品が目に入ると、つい買ってしまいたくなる人も多いでしょう。しかし、安く購入できたとしても、必要のないものであればそれは無駄遣いです。
値引きされた食品は長持ちしないケースが多いため、無理に料理を作ったり捨ててしまったりする事態にもなりかねません。本当に必要かどうか考えて選ぶことが重要です。
食品が安くなっている場合は、保存がきく商品を選んで買いだめるのがおすすめです。豪雨の日や暑過ぎる日など、来店客数が減りやすい日は、保存がきく商品でも早い時間帯から値下げされやすくなります。
定期的に冷蔵庫を空にする
無駄な食材を買い過ぎると、冷蔵庫がなかなか空になりません。食費が高くなりやすい家庭の冷蔵庫は、常に多くの食材であふれています。
冷蔵庫が定期的に空になるようコントロールできれば、必要な分だけ食材を買えるようになります。1週間ごとに冷蔵庫を空にするペースで、食材を使い切る方法がおすすめです。
冷凍庫を上手に使えば、食材の無駄も減らせます。冷凍庫に入っている食材が多いほど、それぞれが冷やし合って庫内の温度が低く保たれるため、省エネにもつながります。
キャッシュレス決済やポイントを活用する
買い物での支払い時にキャッシュレス決済を活用すれば、ポイントが貯まったりキャッシュバックが受けられたりします。よりお得に買い物できる点がメリットです。
アプリと連動してキャッシュレス決済を使うことで、家計管理もしやすくなるでしょう。どこで何を買ったのかが分かりやすくなるため、無駄遣いの防止にもつながります。
節約の方法としては、買い物などで貯まったポイントを活用するのもおすすめです。上手にポイントを貯められれば、買い物に使ったり商品やギフト券に交換したりできます。
4. 最低限やっておきたい資産形成
独身者が老後資金を貯めるおすすめの方法に、財形貯蓄とiDeCoが挙げられます。それぞれの特徴や仕組みを理解し、できる範囲で取り組んでみましょう。
財形貯蓄
『財形貯蓄』とは、給与から一定額を天引きして貯蓄する制度です。天引きされたお金は、銀行の定期預金や保険などの金融商品に積み立てられます。
財形貯蓄の種類は、一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の三つです。年金財形や住宅財形は、元金5,500,000円まで利子が非課税となります。
給与から貯蓄分が天引きされるため、貯蓄が苦手な人におすすめの資産形成方法です。勤務先の福利厚生制度に導入されているなら、利用を検討してみましょう。
iDeCo
『iDeCo』は、老後資金を貯められる私的年金制度です。日本に住む20歳~60歳未満の人なら誰でも加入できます。
自分で決めた掛け金を自分で選んだ金融商品に積み立て、60歳以降に運用益をプラスした掛け金を受け取れます。受け取り方法は年金と一時金から選択可能です。
iDeCoの掛け金は、全額が所得控除の対象となります。年末調整や確定申告で手続きすれば、所得税の負担を軽減できるため、今のうちから節税できる点がメリットです。
運用益と利息に税金がかからない点や、受け取り時に税制優遇がある点も、iDeCoをおすすめするポイントです。預貯金より大きく資産を増やせる可能性があるため、老後資金を確保する方法の一つとして考えておきましょう。
5. 節約と堅実な貯蓄で1人老後に備えよう
老後の生活を支える収入の大半は公的年金ですが、年金だけでは老後破産するリスクが高まります。年金収入で不足する分を、貯蓄でまかなう必要があります。
独身者でも、老後のために20,000,000円近くの資金を用意しておかなければ安心できません。上手な節約方法や堅実な貯蓄方法を知り、今のうちから老後資金を貯めて『1人老後』に備えましょう。