1. 住宅購入者の傾向
年代・利用率・完済期間の観点から、近年の住宅購入やローンの傾向を紹介します。住宅購入者に関する一般的な数字を知っておきましょう。
年代は30代・40代がボリュームゾーン
国土交通省の『令和元年度 住宅市場動向調査報告書』によると、初めて住宅を購入した人の年齢は、30代が最も多くなっています。
新築物件(注文住宅・分譲戸建住宅・分譲マンション)では、30代の割合が5割前後です。全体の約2~3割を占める40代や、約1~2割を占める30歳未満と比べ、大きな差をつけています。
中古物件(中古戸建住宅・中古マンション)になると40代の割合が多くなり、30代と同程度です。30代と40代を合計すると、全体の約6~7割を占めます。
新築物件の平均年齢は30代半ば~後半、中古物件は40代半ば~後半です。これらの結果から、初めて住宅を購入した人の年代は、30~40代がボリュームゾーンであることが分かります。
住宅ローン利用率は新築物件ほど高い
『令和元年度 住宅市場動向調査報告書』では、住宅ローンの有無についても調査が行われています。中古物件より新築物件の方が、住宅ローンの利用率は高めです。
数値が最も高い注文住宅では、78.6%の世帯が住宅購入にローンを利用しています。分譲戸建住宅と分譲マンションのローン利用率は、それぞれ69.3%と61.7%です。
新築住宅の中で最も利用率が低い建て替え注文住宅でも、59.1%の世帯が住宅ローンを利用しています。
中古物件の場合、中古戸建住宅と中古マンションでの利用率は、それぞれ48.4%と49.4%です。新築物件では約6~8割、中古物件でも約5割の世帯で、住宅購入のためにローンを組んでいることが分かります。
30年以下で完済するケースが大半
住宅金融支援機構の『2020年度 住宅ローン貸出動向調査』によると、2019年度におけるローン返済期間の平均年数は27年となっています。
5年ごとに区切った返済期間別に見ると、最も割合が大きい期間は『25年超30年以下』で、全体に対する割合は44.4%です。30年以下の返済期間の割合を合計すると76%になります。
『30年超35年以下』で完済する割合は、2016年度の13.1%から2019年度には23.6%まで増えています。ローン返済期間が年々延びているのが特徴です。
借り換えをするケースの割合は、2016年度から年々小さくなってきているため、最初から長めにローンを組む人が増えていることが分かります。
出典:2020年度 住宅ローン貸出動向調査(住宅金融支援機構)
世帯年収は750万円前後が多い
住宅ローンを組んだ家庭の平均世帯年収は住宅の種類によって異なっており、注文住宅では全国平均で744万円です。ただし注文住宅でも、三大都市圏では781万円なので約40万円の差があります。
最も高額なのは新築分譲マンションで798万円でした。一方、民間の賃貸住宅に住んでいる世帯の平均世帯年収は477万円となっており、持ち家を購入する層とは年収に開きがあることがわかります。
2. 住宅ローン借入額の平均
『令和元年度 住宅市場動向調査報告書』から分かるローン借入額の平均を、住宅タイプ別に紹介します。しかし平均額はあくまでも目安であり、返済額を考慮して借入額を決めることが重要です。
住宅タイプ別の平均借入額
新築の注文住宅の場合、土地を購入した住宅購入資金の平均額は約4,615万円です。このうち自己資金の平均が約1,254万円、借入金の平均額は約3,361万円となっています。
既に土地を持っている建て替え注文住宅のケースでは、購入資金の平均額は約3,555万円です。内訳は自己資金が平均約1,725万円、借入額の平均は約1,830万円であることが分かります。
分譲戸建住宅と分譲マンションの場合、借入金の平均額はそれぞれ約2,830万円と約2,702万円です。中古戸建住宅と中古マンションでは、中古戸建住宅が平均約1,575万円、中古マンションが約1,551万円となっています。
住宅の種類 | 住宅ローン平均借入額 |
注文住宅(新築・土地資金含む) | 3,361万円 |
注文住宅(建て替え) | 1,830万円 |
分譲戸建住宅 | 2,830万円 |
分譲集合住宅 | 2,702万円 |
中古戸建住宅 | 1,575万円 |
中古集合住宅 | 1,551万円 |
返済できる金額かが重要
住宅ローンを組んだ後、実際に返済する金額は借入額と利息の合計です。平均借入額だけを参考にしても、利息を含めた総返済額や月々の返済額は分かりません。
現金一括なら30,000,000円で購入できるケースでも、ローン借入額や金利、返済期間によっては、総返済額が40,000,000円を超える場合もあります。
住宅ローンは元金と利息額を毎月少しずつ返済していくのが一般的です。家計や今後のライフイベントなどを考慮し、できるだけ負担を抑えた返済を意識する必要があります。
完済までの間に返済できなくなった場合、購入した住宅を手放さざるをえなくなる可能性もあるので注意しましょう。
理想の返済比率は20%以下
借入額を考える際の指標の一つが『返済比率』です。返済負担率とも呼ばれ、『年間返済額÷額面年収』の計算式により求められます。
返済比率は20~25%が目安とされていますが、手取り年収で計算すると割合がさらに大きくなります。できるだけ返済負担を減らすためには、額面年収での計算で20%以下に抑えるのが理想です。
返済比率は融資の有無や借入額の上限にも影響を与えます。返済比率を上げれば借入限度額を増やせる可能性はあるものの、家計の負担増につながりやすいことも覚えておきましょう。
3. 平均的な借入の条件
住宅ローン利用者の実態を知るためには、平均的な借入の条件を把握しておくことも大事です。金利や返済方式の傾向について解説します。
変動金利派が6割
住宅ローンの金利タイプは、変動金利と固定金利の二つに大きく分けられます。住宅金融支援機構の『住宅ローン利用者の実態調査』によると、2020年4~9月に借入を行った人のうち、約6割が変動金利を選択しています。
固定金利に比べ低金利の恩恵を受けやすい点が、変動金利の大きなメリットです。今後の金利がほとんど上がらないと考えている人が6割超いることから、変動金利を選ぶ人の割合が多くなっていると考えられます。
金融機関によっては、異なる金利タイプを組み合わせて融資できる『ミックスプラン』を選べる場合があります。変動金利における金利上昇リスクの分散を図れることが特徴です。
返済期間は30年超が多い
住宅ローンは基本的に最長35年とされていますが、実際のデータを見てみると30年〜35年程度で組んでいる人が多いと言えます。新築は平均31~33年程度となっており、長期の住宅ローンを組む人が多くなっています。
一方、中古住宅の場合は戸建も集合住宅も30年をやや切っており、比較的短めの期間でローンを組む人も多いものと推察されます。
住宅の種類 | 住宅ローン平均返済期間 |
注文住宅(新築) | 32.1年 |
注文住宅(土地) | 33.8年 |
分譲戸建住宅 | 32.7年 |
分譲集合住宅 | 31.5年 |
中古戸建住宅 | 28.1年 |
中古集合住宅 | 28.9年 |
返済方式は「元利均等返済」が多数派
住宅ローンの返済方法は、『元利均等返済』と『元金均等返済』の2タイプに大きく分けられます。
元利均等返済は、月々の返済額を一定に保てる返済方法です。返済プランを立てやすいため、多くの人が元利均等返済を選択しています。
月々の返済額のうち、元金部分の返済額を一定に保つ返済方法が元金均等返済です。返済開始当初は利息額が大きくなるため、借入初期の返済負担は増加します。
ただし、総返済額は元利均等返済より元金均等返済の方が小さくなります。家計に余裕があるならば、元金均等返済を選んだ方がお得です。
4. 自己資金はいくら必要?
住宅ローン利用時に手元の現金でカバーする分が自己資金です。不動産価格に充てる頭金と、ローン利用や住宅取得にかかる諸経費に分けられます。
頭金の平均は不動産価格の1~2割
不動産価格のうち、物件購入時に現金で支払う分が頭金です。頭金が多いほどローン借入額は少なくなるため、返済負担を抑えられます。
『令和元年度 住宅市場動向調査報告書』によると、注文住宅・分譲戸建住宅・分譲マンションの自己資金比率の平均は、それぞれ19.2%・22.0%・31.5%です。自己資金から諸経費を差し引くと、頭金の割合の平均は不動産価格の約1~2割と分かります。
より多くの頭金を用意できれば、返済比率を下げることにもつながります。頭金が0円でもローンは組めますが、できるだけ返済負担を減らすためにも、頭金として不動産価格の1~2割を用意するのが理想でしょう。
ほかにも諸経費が必要
自己資金に含まれる諸経費としては、印紙税・登記費用・住宅ローン借入費用などが挙げられます。諸経費はローンに組み込まず、現金で支払うのが一般的です。
諸経費の金額は、注文住宅や新築マンションで不動産価格の約3~6%、建売住宅や中古物件で約6~9%が目安です。40,000,000円の住宅を購入するケースでは、約1,200,000~3,600,000円の諸経費が発生することになります。
ローンを組まない場合、ローン借入費用などの経費はかかりません。しかし印紙税や登記費用といった経費は、住宅を取得する際に必ず発生します。
手元に現金は残しておくべき
頭金を多く入れるほど借入額が減るため、返済負担が軽くなります。金融機関によっては、頭金が一定額を超えると、金利を優遇してくれる場合もあります。
ただし、全ての貯蓄を自己資金に充ててしまうと、万が一の際に手元資金がなく困る可能性があります。突然の病気やケガ、会社の倒産や解雇などにより、返済できなくなるリスクも考慮することが大事です。
自己資金額を決めるときは、ある程度の生活予備費を残しましょう。会社員なら生活費の3~6カ月分、自営業者なら6~9カ月分が目安です。
5. 平均値よりも自分に合った条件を
住宅ローンは自分に合った条件で組むことが重要です。平均値にこだわりすぎず、きちんと情報収集した上で、最適なプランを選択しましょう。
最適なプランは人により異なる
年収・貯蓄・生活費は人により異なります。これらの要素が大きく影響する住宅ローンに関しても、人によって最適なプランが違うことを理解しましょう。
金利タイプに関しても、どのタイプが向いているかは状況により異なります。こまめに金利の動向をチェックできる人や、金利上昇リスクにもある程度対応できる人は、変動金利型が適しているでしょう。
金利のチェックを面倒に感じる人や、金利上昇リスクに不安を感じる人は、全期間固定型や固定期間選択型が向いています。
しっかり情報収集してプランを比較しよう
住宅ローンを組む際は、利用する金融機関から選ぶのではなく、自分に合った条件で融資を受けられるプランを選ぶことが重要です。
住宅ローンは銀行が運営する民間融資だけでなく、都道府県や市区町村などによる公的融資もあります。住宅金融支援機構と民間金融機関の連携により運営されている『フラット35』も人気です。
金利・返済方法・諸経費などがそれぞれ違うため、できるだけ多くの情報を集めて比較検討し、自分に合ったプランを慎重に選びましょう。
6. 最適な住宅ローンの組み方は条件によって変わる
公的機関が公表している各種データから、借入額の平均・借入条件・自己資金に関する住宅購入者の傾向が分かります。ローンを組む際の参考情報として役立つでしょう。
ただし、平均値はあくまでも目安であり、最適なプランは人によって異なります。きちんと情報収集を行った上で、自分に合った条件のプランを選択することが重要です。
変動金利・固定金利の違いとは?
特徴やメリット・デメリットを解説
住宅ローンの基本的な金利タイプで、年2回(4/1と10/1)見直しされることから変動金利と呼ばれています。
金利の急変動で利用者が困らないよう、返済額を5年間据え置く「5年ルール」や月々の返済が25%以上増えないようにする「125%ルール」を設定している金融機関も多く存在します。固定金利に変更するオプションが付帯しており、金利上昇時には固定金利に切り替えることも可能です。
| 変動金利のメリット・デメリット
メリット:銀行間の低金利競争が激しく金利水準が低いため、月々の返済額を抑えることができます。
デメリット:将来金利が上がり、月々の返済額が増えるリスクがあります。対策として、金利が低いうちにしっかり貯蓄をして万が一の金利上昇に備えると良いでしょう。
| 5年ルール・125%ルールとは?
5年ルールとは、変動金利が上がっても月々の返済額を5年間一定とするルールです。5年ルール有りの場合、最初の5年間は変わらず、6年目から返済額が増えることになります。5年ルール無しの場合、翌月や翌々月から返済額が増えます。
金利が上がっても返済はすぐには増えず、5年間は変わらないというメリットがある一方、6年目になるまでは本来より低額での返済となり、完済時に未払利息が発生する可能性がある点がデメリットとなります。
125%ルールとは、5年ルールを適用している金融機関で返済額が増える際、今までの返済額の1.25倍を上限とするルールです。例えば従来の月々の返済が10万円の場合、返済がどれだけ増えても12.5万円が上限となります。
返済額が増えても上限値があるのがメリットとなる一方、5年ルール同様に本来よりも安く返済が進むため、予定通りに残高が減らず完済時に高額返済が必要となる可能性がある点がデメリットです。
| 変動金利の推移・相場は?
変動金利はバブル崩壊以降、ほぼ一貫して低下傾向を続けてきました。しかし2024年になって日銀のゼロ金利解除により、変動金利が遂に引き上げられることとなりました。いよいよ「金利のある世界」に突入したことになります。しかしながら、依然としてネット銀行を先頭に、変動金利が顧客獲得競争の主戦場という状況は続いています。
| 固定金利とは?
文字通り金利が変わらないのが固定金利です。フラット35のような全期間固定金利のほか、5年、10年など一定期間の金利を固定する固定期間選択型もあります。
| 固定金利のメリット・デメリット
メリット:返済額が変わらない安心感があります。変動金利より金利水準は高いものの、一定期間または全期間の返済額が変わらないため、長期の返済計画や生活設計を立てやすいことが特徴です。
デメリット:金利水準が高く、返済額が多くなります。返済中に大規模な金利上昇が起こらない限り、変動金利を使った場合に比べて固定金利を使う方が多額の返済となるでしょう。また固定期間選択型の場合、6年目や11年目など固定期間が終了するタイミングで、当初固定期間よりも高い金利に切り替わることが多いこともデメリットです。
| どんな人が変動金利・固定金利に向いている?
少しでも返済額を抑えたい方やコストパフォーマンスを重視する方には変動金利がオススメです。日本銀行の金融緩和政策や住宅ローン業界の競争激化を踏まえ、モゲチェックでは変動金利は今後も低金利が続くと予想しています。
一方、固定金利は金利や返済額が変化するリスクをなくしたい方に向いています。例えば最初の10年間が子どもの教育費がかさむ時期と重なるなど、住宅ローンの返済額が増えることをどうしても避けたい方には10年固定金利がオススメです。
| 変動金利・固定金利の利用割合
変動金利を選ぶ人の割合が年々増え続け、全体のおよそ7割とほとんどの住宅ローン利用者が変動金利を選んでいます。また、固定期間選択型は2割、全期間固定型は1割であり、年々減少しています。
(出所:独立行政法人住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」より)
| モゲチェックのオススメは?
モゲチェックでは低金利政策が長期化する可能性が高いとの見通しや、住宅ローン業界で顧客獲得競争が激しくなっていることから、変動金利では安定した低金利が続くと予想しています。
迷った方はまず変動金利から検討することをオススメします。最新情報は住宅ローンランキングでチェック!