年収800万円で住宅ローンはいくら借りられる?
まずは、年収800万円の人が住宅ローンをいくらまで借りることができるかについて解説します。住宅ローンの借入可能額は金融機関によって異なりますが、一般的な水準は年収に対する倍率や、返済負担率から算出することができます。
年収に対する倍率から算出
住宅ローンの借入額が年収の何倍になっているかを、年収倍率とよびます。例えば年収800万円の人が2,400万円の住宅ローンを借りた場合には、年収倍率は3倍です。
正社員・公務員で35年ローンを組める45歳までの人の場合には、一般的に年収倍率として7~8倍まで借入できると言われています。つまり、年収800万円の人は、5,600万~6,400万円程度の借入であれば、審査における不安は少ないでしょう。なお、一部の金融機関では、年収の約10倍まで借りられることもあります。
ただし、返済期間が短い場合や勤続年数が短い場合、自営業の場合などには、借入可能額は少なくなります。
返済負担率から算出
金融機関における審査では、年収に占める年間返済額の割合が審査基準となっており、これを返済負担率(返済比率)といいます。例えば年収800万円の人が年間返済額160万円の住宅ローンを組んだ場合には、返済負担率は20%です。
住宅金融支援機構による長期固定金利の「フラット35」では、返済負担率の審査基準が年収400万円未満は30%、400万円以上は35%となっています。つまり、年収800万円の人であれば、年間返済額として280万円まで借入可能です。フラット35の金利は約2%であることから、借入可能額としては約7,000万円であるといえます。
変動金利の場合には、審査時に用いる審査金利(金融機関によって異なり、3.0%程度)にて判定されることから、約6,000万円までの借入であれば審査に通りやすいといえるでしょう。
物件別に見る住宅ローン利用者の現状
住宅金融支援機構が公表している「フラット35利用者調査」(2023年度)をもとに住宅ローン利用者の現状を見てみると、平均借入額は新築住宅では3,000万円台から4,200万円程度、中古住宅では2,000万円台前半となっています。また、購入した物件に対する平均年収倍率は5.3~7.6倍でした。
長期的には不動産価格の上昇の影響で、平均借入額・平均年収倍率ともに上昇傾向にあります。
住宅の種類 |
平均借入額 |
平均年収倍率 |
土地付新築注文住宅 |
4,171万円 |
7.6倍 |
新築マンション |
3,889万円 |
7.2倍 |
新築注文住宅 |
3,040万円 |
7.0倍 |
新築建売住宅 |
3,092万円 |
6.6倍 |
中古マンション |
2,393万円 |
5.6倍 |
中古戸建 |
2,182万円 |
5.3倍 |
住宅ローンの頭金の平均額は?
国土交通省が公表している「住宅市場動向調査」(令和6年度)では、住宅購入者の購入資金の内訳を調査しています。初めて住宅を購入した人(一次取得者)の場合、1,080万~1,857万円の自己資金を入れており、この多くは住宅ローンの頭金になっていると考えられます。
近年は頭金なしで住宅ローンを組むことも一般的ですが、借入可能額が物件価格に達しない場合や、両親などからの贈与に税制優遇があることなどにより、平均値としては頭金を入れる人は少なくありません。また、頭金を入れると金利が安くなる住宅ローン商品が多いことから、これを目安に考える人もいます。次に説明するメリット・デメリットを参考に、最もお得な借り方を検討しましょう。
住宅購入に頭金を入れることのメリット・デメリット
住宅の購入時に頭金を入れることには、メリットだけでなくデメリットもあります。そのため、資金計画を作る際には頭金の有無を含めて念入りに検討する必要があります。
メリット
頭金を入れると借入額が減ることになります。そのため、月々の返済額の負担を軽くしたり、返済期間を短くすることができます。また、支払う金利の総額を減らすことができ、とくに金利が高いと節約できる金額が多くなるため、固定金利の利用時や、将来の変動金利の上昇のリスクに備えるときには有効です。
フラット35をはじめ、頭金の比率が一定以上であると金利が安くなる住宅ローン商品もあるため、これも頭金を入れることのメリットになります。
デメリット
まとまった頭金を入れると手元に残る資金が減ってしまうため、引越費用や家具・家電の購入費用などの資金を圧迫しないように注意が必要です。また、頭金を入れることによる金利の節約効果よりも、積立投資などの資産運用に回したほうが期待値が大きいとも言われており、そのような選択肢も考慮してみましょう。
なお、団体信用生命保険(団信)の保険金は住宅ローンの残高と一致します。頭金が少ないほうが保険金額が大きいことも、頭金を入れることのデメリットです。
年収800万円での月々の返済額はいくらが適正?
すでに説明したように、住宅ローン審査における返済負担率の基準は35%程度ですが、上限いっぱいまで借りると返済の負担はかなり大きくなります。一般的には、返済負担率を20~25%に収めると無理なく返済できると言われ、この水準が適正な人が多いでしょう。返済期間と金利タイプによって、適正な返済負担率となる借入額はどれくらいでしょうか。
返済期間別のシミュレーション
年収800万円の場合、月々の返済額が13.3万円のときに返済負担率が20%になり、16.7万円のときに返済負担率が25%になります。返済期間が15~35年のときに金利1.0%、35年超~50年のときに金利1.2%として、ボーナス返済なし、元利均等返済の場合の適正な借入金額を計算すると、次の表のようになります。
返済期間 |
返済負担率20%(月々13.3万円) |
返済負担率25%(月々16.7万円) |
15年 |
2,220万円 |
2,790万円 |
20年 |
2,890万円 |
3,630万円 |
25年 |
3,520万円 |
4,430万円 |
30年 |
4,130万円 |
5,190万円 |
35年 |
4,710万円 |
5,910万円 |
40年 |
5,060万円 |
6,360万円 |
45年 |
5,550万円 |
6,970万円 |
50年 |
6,000万円 |
7,530万円 |
返済負担率が同じでも、返済期間を長く取れる人は借入可能額が大きくなり、ゆとりをもった返済が可能です。最長35年返済で住宅ローンを組む人が多いことから、年収800万円の場合には、4,710万~5,910万円を目安に考えるとよいでしょう。
より高額の借入が必要な場合には、金利はやや上がってしまうことが多いものの、35年超の住宅ローンの利用も考慮しましょう。ただし、より長期の住宅ローンを組むときには、退職後まで返済が続いてしまうおそれがあることや、変動金利の場合は将来の金利上昇のリスクをより多く負うことになってしまうことに注意が必要です。また、返済のペースが遅いため、売却時に住宅ローン残高が売却額を上回る「残債割れ」が生じるリスクもあります。
その一方で、返済額にゆとりが生じるため、生活に余裕が生まれたり、資産運用に回すことができる資金を増やせる利点があります。団信のメリットがより大きくなったり、住宅ローン控除がより多く受けられたりするといった特徴もあります。
金利タイプ別のシミュレーション
続いては、年収800万円の人が住宅ローンを借りるときに、金利タイプによってどのくらい月々の返済額や総返済額に差が出てくるのかをシミュレーションしていきます。35年間の借入の際の適正な借入額として、5,000万円をボーナス返済なし、元利均等返済で借りた場合で考えていきます。
金利タイプは、変動金利(金利0.7%)、10年固定金利(当初10年間は固定金利1.6%、11年目以降は変動金利1.2%)、全期間固定金利(金利2.0%)の3つのパターンを計算すると、月々の返済額と総支払額はそれぞれ次の表のようになります。
金利タイプ |
月々の返済額 |
総支払額 |
変動金利 |
134,260円 |
56,389,153円 |
10年固定金利 |
当初10年:155,553円 11年以降:148,381円 |
63,180,543円 |
全期間固定金利 |
165,631円 |
69,564,969円 |
金利の変動がないと仮定した場合には、総支払額が最も安くなるのは変動金利であり、10年固定金利と比べて約680万円、全期間固定金利と比べて約1,320万円の差があります。
10年固定金利は当初の10年間、全期間固定金利は最長35年間にわたって金利が変動せず、金利上昇局面でも返済額が増える心配がないというメリットがあります。しかし、今後金利が上昇しなかったり、その上昇幅が小さかったりした場合には、総支払額の差は埋まりません。そのため、固定金利で借りたときには、金利上昇を心配しなくてもよい状況になったところで、より金利の低い住宅ローンに借り換えることも考えましょう。
なお、借り換えの際にはモゲチェックの無料サービス「住宅ローン診断」をご活用いただくと、簡単に借り換えによる金額的メリットがわかります。また、借り換えが完了するまで、チャットによる住宅ローンアドバイザーのサポートを受けることができます。
住宅ローン負担を抑えるためには
住宅ローンの返済の負担を抑えるうえでは、税制優遇である住宅ローン控除を活用することも重要です。住宅ローン控除は、年末時点の住宅ローンの残高の0.7%を所得税・住民税から差し引くことができる制度で、住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下である人が次の条件を満たす場合に、最大13年間にわたって利用することができます。
・住宅ローンの借入期間が10年以上であること
・住宅の新築・取得から6か月以内に居住を開始していること
・住宅の床面積の2分の1以上は自身の居住用であること
・住宅ローン控除を受ける年の12月31日までその住宅に居住していること
・住宅の床面積が登記面積で50平米以上であること(合計所得金額が1,000万円以下の場合は40平米以上であること)
控除の対象となる上限金額は建物の性能によって差がつけられており、最大で5,000万円(控除額としては年間35万円)までが対象となります。年収800万円の人の所得税・住民税は90万円以上になる場合もあるため、賢く控除を活用して住宅ローンの負担を抑えましょう。
夫婦で住宅ローンを組むときに気を付けること
年収800万円の人はかなり高額の住宅ローンを借りることができますが、それでも借入希望額に達しない場合や、夫婦で住宅ローン控除や団信を利用するメリットがある場合には、2人で住宅ローンを組むことを考慮しましょう。
夫婦で住宅ローンを組むときには、次の3つの方法から選ぶことができます。
方法 |
仕組み |
メリット・デメリット |
ペアローン |
1つの物件に対して、夫婦がそれぞれ住宅ローンを組む |
・住宅ローン控除や団信をそれぞれが使える |
連帯債務 |
1つの物件に対して、夫婦が共同で住宅ローンを組む |
・住宅ローン控除をそれぞれが使うことができ、2人とも団信に加入できる商品もある ・離婚時などのトラブルの要因になりやすい |
連帯保証 |
1つの物件に対して夫婦のどちらかが住宅ローンを組み、もう1人が連帯保証人になる |
・連帯保証人は団信や住宅ローン控除の対象外で、物件の所有権も持たない |
ペアローンと連帯債務は住宅ローンの契約形態に違いはありますが、メリット・デメリットはほぼ同じであり、銀行によってどちらか一方を取り扱っていることが大半です。連帯保証は配偶者の収入が少ない場合などに利用され、団信や住宅ローン控除の対象外にはなりますが、収入のうち一定の割合を合算して審査を受けることができます。
◆参考◆住宅ローンを夫婦で組む方法とは?条件やメリット・デメリット、注意点を徹底解説!
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まとめ
年収800万円の人は、条件によっては6,000万円超の住宅ローンを借りることが可能です。ただし、返済期間や金利タイプによって適正な借入額や返済額は変わります。また、頭金や金利、税制優遇制度も含めて無理のない返済計画を立てることが重要です。
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