1. フラット35の特徴とメリット
フラット35とは、どのような住宅ローンなのでしょうか。まずは、特徴やメリットをチェックしておきましょう。
固定金利で返済計画を立てやすい
『フラット35』は、住宅金融支援機構と全国300以上の金融機関が連携して実施する、官民協業型の住宅ローンです。
フラット35の金利タイプは、ローンを返済し終わるまで金利が変わらない『全期間固定金利型』です。契約時に月々の返済額が確定し、完済時まで返済額が一定に保たれるため、返済計画を立てやすいという特徴を持ちます。
市場金利に影響されて金利が上下する変動金利と異なり、金利上昇のリスクを負うこともありません。金利が高くなっても毎月の返済額が増えないため、安心して返済し続けられます。
保証人や繰り上げ返済手数料が不要
フラット35では、保証人の用意が不要です。保証会社の保証を受ける必要もないため、借入時に保証料を支払う必要がありません。
繰り上げ返済手数料も不要です。一般的に、繰り上げ返済をするときには手数料を請求されますが、フラット35では無料で繰り上げ返済を行えます。返済方法を変更する際の手数料もかかりません。
ただし、民間のネット銀行では1円から繰り上げ返済できるのに対し、フラット35ではネットでの申し込みでも100,000円以上に設定されています。
フラット35の金利は10年国債金利と相関
毎月見直されるフラット35の金利は、長期金利(国が発行する10年国債の金利)に連動しています。
市場で取引される国債は、景気の上向きが予想されると、売るほうが多くなるため価格が下がって金利は上がります。このように、長期金利は景気が上向くと高くなり、景気が悪くなると低くなる傾向にあるのが特徴です。
10年国債金利の動向に注目していれば、フラット35の金利の動きを捉えやすくなります。フラット35の利用を検討する際は、金利の傾向を見る材料として、10年国債金利にも関心を持つとよいでしょう。
2. フラット35Sはフラット35プランの一つ
フラット35には、さまざまな種類の商品が用意されています。中でも、長期優良住宅の取得で利用できるフラット35Sは、優遇金利が適用される魅力的なプランです。
長期優良住宅なら低金利で利用できる
長期優良住宅など省エネ性や耐震性に優れた住宅を取得する場合は、金利を一定期間引き下げられる『フラット35S』を利用できます。
長期優良住宅とは、長期間の使用に耐えられる条件を満たし、国の認定を受けた住宅です。『地震に強い』『メンテナンスしやすい』『環境に優しい』などの特徴を持ちます。
長期優良住宅として認可されるためには、バリアフリー性・耐震性・省エネ性・可変性など、国が定める一定の条件を満たさなければなりません。新築して取得する場合は、着工前に役所の窓口で認定申請を行う必要があります。
参考:「長期優良住宅」ってどんな住宅なの?|住宅金融支援機構
条件に応じて二つの金利プランを用意
フラット35Sでは、通常のフラット35の金利から、一定期間さらに金利を引き下げられます。2021年4月時点での金利引き下げ幅は年0.25%です。2017年10月に、年0.3%から年0.25%へ変更されています。
金利引き下げが適用される期間は、プランごとに異なります。フラット35Sの金利Aプランなら当初10年間、Bプランの場合は当初5年間です。
AプランとBプランは、住宅の技術基準レベルの差で分けられています。金利引き下げ期間が長いAプランを利用するためには、より高い技術が用いられた長期優良住宅でなければなりません。
3. フラット35の気になるデメリット
さまざまなメリットがあるフラット35には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。主なデメリットをチェックしましょう。
どんな住宅でも利用できるわけではない
フラット35を利用するためには、ローンの対象となる住宅が、物件検査をクリアしなければなりません。物件検査は、住宅金融支援機構が定めた基準に沿って実施されます。
新築住宅と中古住宅のそれぞれに、住宅の規模・規格・構造・床面積・劣化状況などの基準項目が定められています。新築の場合は、設計検査・中間現場検査・竣工現場検査・適合証明書の交付と進む流れが一般的です。
物件検査は、第三者である検査機関に所属する専門家が実施します。検査には手数料がかかり、手数料はフラット35の利用希望者側の負担です。
頭金が少ないと金利が高い
フラット35では、融資率により金利が変わります。融資率とは、住宅の建築費または購入費に対する借入額の割合です。
頭金を1割以下に抑え、融資率が9割を超えると、金利が0.4~0.5%高くなります。金利を上げたくない場合は、頭金を物件取得費の1割以上入れなければなりません。
低金利が続けば損をする
フラット35にかかわらず、一般的に固定金利は変動金利に比べ、金利が高めに設定されています。現在のような低金利時代においては、市場金利に応じて金利が上下する変動金利のほうが得です。
将来的に金利が上昇し、変動金利の利率が固定金利の利率を超えれば、その時点から固定金利が得をします。ただし、このまま低金利が続けば、固定金利は変動金利より損をし続けることになります。
今後もしばらくは超低金利時代が続くと予想されていますが、いつ金利が上昇し始めるかは誰にも分かりません。金利上昇のリスクに対して不安を感じたくない人に、フラット35はおすすめです。
4. フラット35の申し込みや審査について
フラット35の利用を検討する際に覚えておきたい、申し込みや審査に関するポイントを紹介します。審査に通りにくい要素がないかどうかも確認しましょう。
民間の住宅ローンより条件が多い
フラット35でも、民間の住宅ローンと同様に、申し込み者の属性をもとに融資の可否や借入限度額の審査が行われます。年齢・返済比率・借入額・借入期間など、利用条件が細かく定められています。
特に注意したいポイントが返済比率です。年収4,000,000円未満なら年間合計返済額は年収の30%以下、4,000,000円以上であれば35%以下であることが求められます。
さらに、対象となる住宅も一定の条件をクリアしなければなりません。接道・住宅の規模や規格・戸建型式・断熱構造・床の遮音構造など、さまざまな条件が設けられています。
このように、フラット35は民間の住宅ローンと比べ、細かい利用条件を数多く定めている点が特徴です。
審査にも数多くの書類が必要
フラット35の申し込み時には、さまざまな書類の準備が必要です。借入申込書・所得を証明する書類・土地の登記事項証明書は、建設・購入を問わず用意しなければなりません。
新築・中古住宅を購入する場合は、さらに売買金額の確認書類と、住宅の登記事項証明書が必要です。住宅を建設するケースでは、建設費の確認書類と土地取得費の確認書類を準備しましょう。
実際に申し込む際は、住民票や建築確認通知書など、金融機関ごとに必要な書類もあります。審査を受ける前に、金融機関に確認しましょう。
審査に通りにくい人とは?
借入額を多めに希望すると、審査に通らない可能性があります。年収に対する年間合計返済額が基準値以下になるように、希望借入額を調節しなければなりません。
他のローン返済が残っている場合、返済能力を疑われ、審査に落ちることがあるでしょう。年間合計返済額に含める必要があるため、返済比率を高めてしまうことになります。
税金やクレジットカードの滞納歴があるなど、個人信用情報に傷が付いている人は、ほぼ審査に通りません。返済に関する信用力がないと判断されるためです。
5. フラット35の審査に落ちてしまった場合の対策
フラット35の審査に通らなかった場合は、以下に挙げるポイントをチェックしましょう。
半年後に再び審査を受ける
フラット35の審査は、落ちた後も再審査を受けられます。審査に落ちてから半年以上の時間を空けて、再審査を申し込みましょう。
住宅ローンの審査履歴は、個人信用情報機関に登録されます。審査履歴は半年後に削除されるため、半年以上経過した後に再審査を受ければ、新規申し込みとして審査してもらえます。
一方、審査履歴が残ったまま再審査を受けると、前回の審査での問題点まで考慮して審査されるでしょう。審査に通る可能性は低くなってしまいます。
ただし、収入が大幅に増えるなど属性に大きな変化がある場合は、半年を待たずに審査を受けても通る可能性があります。
申し込む物件を変える
フラット35は、民間の住宅ローンに比べて物件に関する条件が細かく定められています。取得する住宅に少しでも条件を満たしていない部分があれば、審査には通りません。
したがって、他の借入条件は同じでも、物件を変更するだけで審査に通る可能性があります。物件の条件だけが審査に通らない理由であれば、半年を待たずにすぐ審査を受けても通るでしょう。
物件に求められる利用条件は細かく設定されています。物件探しの際は、フラット35の条件を満たしているかどうかもきちんと確認することが大切です。
他の住宅ローンを探す
審査に落ちる理由が分からなかったり、原因が分かっていても手の打ちようがなかったりする場合は、他の住宅ローンに申し込みましょう。
民間の住宅ローンには、さまざまな種類があります。審査基準も金融機関によって異なるため、フラット35の審査に通らなくても期待が持てます。
ただし、複数の金融機関に審査を申し込む場合は、短期間に集中しないようにすることがポイントです。審査を何度も繰り返していることが信用情報から分かるため、よい印象を与えません。
6. フラット35はプランの違いを理解しよう
フラット35は、固定金利で返済プランを立てやすい住宅ローンです。保証人や繰り上げ返済手数料も必要ありません。
長期優良住宅を取得する場合は、金利の優遇を受けられるフラット35Sを利用できます。プランの違いを理解し、きちんと利用条件を確認した上で申し込みましょう。