1. フラット35を繰り上げ返済する方法
住宅ローンは、短期間で返済が完了すれば、それだけ利息の支払いを抑えられます。そこで活用されるのが、前倒しで返済を進める『繰り上げ返済』です。フラット35で繰り上げ返済する場合には、どのような手続きが必要なのかチェックしましょう。
ウェブサイトまたは金融機関窓口で手続き
フラット35で繰り上げ返済を行う場合、金融機関の窓口で行う方法と、ウェブサイトから申し込む方法の2種類あります。
金融機関の窓口で手続きする場合は、フラット35を申し込んだ金融機関に行きましょう。金融機関から渡される申請書に必要事項を記入し、期日までに金融機関に提出すれば手続きは完了です。
このとき、繰り上げ返済の方法によっては念書の提出を求められる場合があります。
ウェブサイトから申し込む場合は、『住・My Note』という専用サイトにアクセスします。まず『繰上返済ご利用サービス』をクリックし、『繰上返済シミュレーション・一部繰上返済のお申込み』に進みます。
各条件を入力して、表示される内容を確認し、問題がなければ『申込み』をクリックして完了です。
住・My Noteの機能と登録方法
『住・My Note』は、住宅金融支援機構の住宅ローンやフラット35の利用者専用のサイトです。繰り上げ返済の手続きだけでなく、住宅ローンの借入金残高照会、証明書類の郵送依頼などをこのサイトから行うことができます。
同サイトの利用には、IDの取得が必要です。IDの申請はフラット35の契約者本人以外は行えず、融資実行日の3営業日後から申請が可能になります。IDの取得は『住・My Note』のサイトから可能で、申請に際してはメールアドレスが必須です。
参考:住・My Note(す・まい のーと)|住宅金融支援機構
団信保証料の返金を受けられる
住宅ローンを利用する際には、一般的に『団体信用生命保険』の利用が推奨されています。
これは加入者に不慮の事態が起き、死亡または所定の高度障害状態となった場合に、住宅の持分、返済割合等にかかわらず、住宅ローンの残債が全額弁済される保障制度です。
加入できるのは告知日ベースで満15歳以上、満70歳未満で、保障は最長満80歳まで続きます。ただし、一般的な生命保険と同様に、契約者の健康上の理由などで加入できない場合もありますが、その場合でもフラット35への加入は可能です。
フラット35の場合、2017年10月1日以降に申し込みをした人には、支払い金額の中に団体信用生命保険の加入に必要な費用が含まれています。
そのため繰り上げ返済により完済して脱退する場合には、支払い済みの特約料のうち、未経過の保障月数に相当する部分につき金額の返戻を受けられます。
参考:住宅ローンを全額返済した場合、特約料の返金はありますか?|住宅金融支援機構
2. フラット35の繰り上げ返済の注意点
ローンの支払総額の圧縮等メリットが多い繰り上げ返済ですが、注意すべき点もあります。フラット35の繰り上げ返済を行う際の注意点について、詳しく解説します。
返済1カ月前までに金融機関へ連絡
フラット35の繰り上げ返済を行う際には、1カ月前までに、現在返済中の金融機関に申し込む必要があります。これは一部繰り上げの場合も全額繰り上げ返済の場合も同様です。
繰り上げ返済を申し込む前には、返済予定金額、繰り上げ返済した後の手続きなどについて必ず金融機関に相談しましょう。
なお、繰り上げ返済をした結果、返済期間(初回返済日から最終回返済日まで)が10年未満になった場合には、所得税の税額控除からは外れるので注意が必要です。
返済は10万円または100万円以上から
繰り上げ返済できる最低金額は、金融機関の窓口で手続きを行う場合と、『住・My Note』のサイトから行う場合で異なります。
金融機関の窓口で手続きを行う場合は、繰り上げ返済できる額は100万円以上です。一方『住・My Note』から手続きを行う場合には、10万円以上から繰り上げ返済できます。
いずれの場合も、繰り上げ分の返済日は月々の返済日と同じなので、それまでに引き落とし口座に入金しましょう。
3. 住宅ローンの繰り上げ返済は2種類
住宅ローンの繰り上げ返済には、『期間短縮型』と『返済額軽減型』の2種類があります。ここではそれぞれの方法について、その内容を詳しく解説します。
期間短縮型
『期間短縮型』は、繰り上げ返済することで返済期間を短縮させる方法です。期間短縮型の場合、月々の返済額に変更はありません。しかし、短縮された期間分の利息の支払いが軽減されるメリットがあります。
例えば借入額3,000万円で返済期間30年、金利が1.5%固定の住宅ローンで、返済開始から5年後に100万円繰り上げ返済をした場合、返済期間は約13カ月短縮されます。
期間短縮型の場合、繰り上げ返済の時期が早いほど利息支払い節約効果が高く、さらに金利が高いものほど節約効果が大きくなります。
返済額軽減型
『返済額軽減型』の場合は、繰り上げ返済を行っても返済期間そのものは変わりませんが、月々の返済額が軽減されるメリットがあります。
同じ金額で繰り上げ返済を行った場合に、期間短縮型と比較すると、利息軽減効果は期間短縮型の方が大きくなります。しかし毎月の返済額を下げることができれば、浮いた分を子どもの教育費などに充当できるなど、月々の家計が助かる効果があります。
なお変動金利型のローンの場合には、金利水準が常に変動するため、繰り上げ返済をしたからといって、必ずしも返済額が少なくなるとは限りません。
4. 繰り上げ返済に最適なタイミングは?
住宅ローンを抱えていると、住宅ローン控除など税金面で優遇を受けられる場合があります。そのため繰り上げ返済を行う際には、最適なタイミングを見極める必要があります。繰り上げ返済に適したタイミングについて解説します。
住宅ローン控除が終了した後
繰り上げ返済をする場合、住宅ローン減税をすべて受けてからする方がいいのか、手元の資金に余裕ができたら少しでも早い時期に行う方がいいのか悩むところです。
どちらが得なのかについては、借入金額や金利など複雑な要素が絡んでいるため、簡単には判断できません。シミュレーションツールなどを利用して比較したり、それでも判断がつかない場合にはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。
一般論としては、高い金利で借入を行っている場合には、住宅ローン控除の期間にかかわらず、できるだけ早い時期に繰り上げ返済を行う方が有利になるケースが多いようです。
具体的には、金利が1%より高い場合にはできるだけ早く、金利が1%未満の場合には住宅ローン控除を最大限に活用した方が得になるケースが多いといえます。
早い方が利息を減らせる
借入金額3,000万円、金利1.5%、返済期間35年で、200万円を繰り上げ返済する場合でシミュレーションしてみます。
住宅ローンの返済を開始してから10年後に繰り上げ返済すると、軽減できる利息は約85万円になります。一方、20年後に繰り上げ返済した場合は、軽減できる利息は約46万円です。
あくまで一定の条件を定めた上でのシミュレーション結果ですが、他の要素を排除して単純に利息の軽減効果だけでいえば、繰り上げ返済は早い時期に行うほど、支払総額を減額できる効果が大きくなります。
将来の資金繰りには注意
住宅ローンを組むときには事前審査があるため、収入と支出のバランスを考えた上で、基本的には無理なく返済できる範囲で支払い計画が立てられています。
しかし繰り上げ返済を行う場合には、ケースによっては日常の生活費を多少圧迫してでも無理して行うケースがあります。
ただ、いつどんなトラブルが発生するのかは誰にも分かりません。手元資金がなくなるまで繰り上げ返済した後に、病気やケガ、災害などの不可抗力により突然収入が断たれたり減額されたりすると、たちまち生活が困窮してしまいます。
そのため繰り上げ返済を行う際にはあまり無理せず、子どもの学費などを中心に、将来必要になる資金なども十分計算しながら行うことが必要です。
5. フラット35からの借り換えも検討しよう
フラット35は、全期間固定金利型の住宅ローンであるため、市場の金利変動に関係なく、完済時まで金利が固定されています。市場金利が低い場合には、フラット35を利用し続けると変動金利の住宅ローンより利息負担が重くなるケースがあります。
そこで検討したいのが、フラット35からの借り換えです。
金利が安くなる場合がある
変動金利型の住宅ローンの場合、銀行が企業に対して融資する際の最優遇金利である『短期プライムレート』と連動した金利が採用されています。そのため金利が低い昨今は、変動金利型の住宅ローンの金利も非常に低水準に設定されています。
低金利の時代には、フラット35から変動金利型の住宅ローンに乗り換えることで、返済総額を減額できる可能性があります。
フラット35は、物件購入価格の9割を超える金額の借入も可能ですが、その場合には金利の設定が高くなります。こうしたケースでは特に、変動金利の住宅ローンに乗り換える効果が高まります。
変動金利に変更できる
フラット35から変動金利の住宅ローンへの借り換えは可能です。より金利が低い住宅ローンに借り換えれば、毎月の返済額を減額することができます。しかし変動金利の場合、金利が上昇した場合には毎月の返済額が増額するリスクもあります。
変動金利による金利上昇へのリスクを回避しながら、さらに毎月の返済額を減額する方法として、フラット35からフラット35借換融資へ借り換えるという方法もあります。
市場金利が低下している昨今は、フラット35の金利も以前より低く設定されているため、借り換えをすることで金利が下がる可能性があります。
団信の保証内容を見直せる
住宅ローンを借り換えると、団体信用生命保険(団信)も加入し直すのが一般的です。団信の保障内容は、金融機関ごとに異なります。借り換えを行うことにより、団信の保証内容の見直しにもつながります。
ただし、一般的な生命保険と同様、団信の場合も年齢や健康状態によって加入できない場合があります。すると借り換えそのものができなくなるケースや、団信加入のために0.1~0.3%程度金利が上乗せされるケースもあります。
さらに借り換え前の団信の方が保証が手厚い場合もあるので、借り換えの際には団信についても事前にチェックしましょう。
6. フラット35の繰り上げ返済は方法の確認を
繰り上げ返済は、ローンの支払総額を減額できるなどメリットが多い方法です。ただし、最低金額のルールや、返済日の指定など、手続き前にチェックしておくべき項目が多いことに注意しましょう。
それ以外にも、住宅ローン控除との兼ね合いも考慮し、実施すべき時期も慎重な検討が必要です。