1. 住宅ローンの借入先
住宅ローンは、借入先の違いにより3種類に分けることが可能です。民間融資と公的融資、両者の中間に位置するフラット35について解説します。
銀行などによる民間融資
バブル崩壊前の日本では、住宅金融公庫と年金住宅融資の2大公的融資を利用するのが住宅ローンの基本でした。しかしバブル崩壊後の行政改革によりいずれも廃止されました。その後は銀行などが実施する民間融資が主流となり、現在は多くの金融機関がさまざまなタイプの住宅ローンを取り扱っています。
変動型・全期間固定型・当初固定型など、さまざまな金利タイプの商品を用意しているのが、民間融資の特徴です。また、ほとんどの民間融資で団信(団体信用生命保険)への加入を求められます。
金融機関によっては、ATM手数料を割引するといったサービスを付帯させているケースもあります。
フラット35
フラット35は、独立行政法人住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して実施する融資です。全国の300以上の金融機関で取り扱っています。
フラット35の金利タイプは、金利上昇リスクがない全期間固定金利です。法人経営者や個人事業主でも融資を受けやすく、転職直後に申し込んでも借りられる可能性があります。
同じ年収で申し込んだ際、民間融資より多く借りられる点もメリットです。団信への加入が任意であるため、健康状態に不安がある人でも申し込めます。
このように、フラット35は政府系ローンであることを生かし、民間融資より条件が緩い点がメリットです。一定の要件を満たせば、一定期間金利を下げられる制度も用意されています。
公的融資
かつて多くの人が利用していた公庫融資は、『官から民へ』を掲げた2007年の行政改革により、住宅金融支援機構に一部の業務が引き継がれています。しかし、住宅金融支援機構も、個人への直接的な融資は行っていません。
現在個人が利用できる主な公的融資には、財形住宅融資と自治体融資の2種類があります。財形住宅融資は、勤務先の財形貯蓄を利用している人が一定の条件を満たした場合、住宅購入や増改築にかかる資金を借りられる制度です。
自治体融資は都道府県や市区町村が実施する融資ですが、全ての自治体が行っているわけではありません。融資の内容や条件も、自治体ごとに異なっています。
2. 住宅ローンを組む窓口
住宅ローンの申し込みや契約手続きを行う方法には、実店舗で行うタイプとネット経由で行うタイプの2種類があります。それぞれの特徴を押さえておきましょう。
実店舗型
実店舗の窓口で手続きを行う実店舗型は、担当者と対面で直接話せる点が大きなメリットです。疑問点や不安な点がある場合も、相談しながらその場で解消できます。
実店舗型の多くは、信頼度の高い大手金融機関です。平日の営業時間内だけでなく、平日の夜間や土日祝日に受付対応している金融機関もあります。
交渉次第で好条件を引き出せる可能性がある点も、実店舗型のメリットです。住宅ローンに関する情報だけでなく、お得な最新情報なども入手できる場合があります。
ただし、実店舗の窓口で手続きをする場合、金融機関に足を運ぶ時間を作らなければなりません。仕事が忙しく、まとまった時間を確保できない人には、利用しにくいタイプといえます。
ネット銀行
近年は実店舗を持たないネット銀行が増えています。ネット銀行の住宅ローンは、時間を問わず手続きできる上、契約締結まで全てネット上で完結できるのが特徴です。
実店舗型に比べ金利が安い点も、ネット銀行のメリットです。数字上はわずかな差であっても、金額が大きく返済期間が長期にわたる住宅ローンでは、利息の総額に大きな差が生まれます。
多くのネット銀行では、一部繰り上げ返済をするときに手数料がかかりません。実店舗型では有料としているケースが多く、手数料がかからないネット銀行なら、何度でも気軽に一部繰り上げ返済を行えます。
3. 住宅ローンの金利タイプ
住宅ローンの利用を検討する際、選択を迷いがちなのが金利タイプです。住宅ローンの金利タイプは、主に全期間固定金利型・当初固定金利型・変動金利型の三つに分けられます。
変動金利型
現在の主流で、最もオーソドックスといえる金利タイプが『変動金利型』です。
半年ごとに金利の見直しが行われ、5年ごとに月々の返済額が変更されます。金利の上昇による返済額の変更額は、前回の125%が上限です。ただし、125%を超えた分は次回に繰り越され、返済期間が終了しても繰り越し分が残っている場合は、原則として一括返済しなければなりません。
変動金利型の金利は、他のどの金利タイプよりも低く設定されています。低金利の状態が長く続くほど、金利面でのメリットを受け続けられることが特徴です。
一方、金利が大幅に上昇した場合は、返済負担も大きくなります。金利上昇のリスクにも耐えられるような、資金に余裕がある人に向いた金利タイプです。
全期間固定金利型
借入時の金利が返済完了まで変わらない金利タイプが『全期間固定金利型』です。月々の返済額や総返済額は借入時に確定します。全期間固定金利型の代表格がフラット35です。
月々の返済額が一定に保たれるため、返済プランを立てやすい点がメリットです。金利の動向をチェックするのが苦手な人にも向いています。
将来的な金利上昇のリスクに不安を感じる場合も、金利が変わらない全期間固定金利型なら安心です。今後どれだけ金利が上昇しても、借入時の金利が最後まで適用されます。
ただし、全期間固定金利型の金利は、変動金利型より高めです。返済完了時まで金利が低水準を推移し続ければ、変動金利に比べ損をすることになります。
当初固定金利型
『当初固定金利型』とは、返済開始後の一定期間は金利が変わらないタイプです。2年・5年・10年・15年など、金利を固定する期間を決めて返済します。
固定金利期間終了後は、変動金利に戻るのが基本です。引き続き期間を決めて固定金利を選択することも可能ですが、その時点での金利が適用されます。
一定期間家計を安定させたいケースで、よく選ばれている金利タイプです。期間終了後に固定金利を再設定する場合、返済額の上昇幅には上限がないため、返済額が大幅に増加する可能性があります。
4. 返済方法は2種類
住宅ローンの返済方法は、元利均等返済と元金均等返済の2種類に分かれています。それぞれの仕組みを理解しておきましょう。
元利均等返済
住宅ローンにおける月々の返済額は、元金と利息を足して計算します。元金と利息の合計を一定に保ち、月々の返済額が変わらない返済方法が『元利均等返済』です。
元金均等返済に比べ、返済開始当初の返済額を少なめに抑えられます。返済額を一定にキープできるため、返済計画を立てやすい点もメリットです。
2種類ある返済方法のうち、多くの人が元利均等返済を選択しています。借入期間を同じ長さに設定した場合、元金均等返済より総返済額が多くなることには注意が必要です。
元金均等返済
『元金均等返済』とは、月々の返済額のうち、元金部分のみ一定に保つ返済方法です。利息は返済が進むにつれ減っていくことから、返済額は返済開始当初が最も多くなります。
返済開始初期に多少無理をしてでも、後半の返済負担を抑えたい場合におすすめの返済方法です。元利均等返済に比べ、総返済額も少なくなります。
返済開始時の返済額が大きいため、借入可能額が減額されやすい点がデメリットです。金融機関が借入可能額を決める際は、初期の返済額を考慮します。
5. 住宅ローンの選び方
さまざまな種類が用意されている住宅ローンの中から、自分に合ったローンを選びやすくなる方法を紹介します。選び方の基準が分からない場合の参考にしましょう。
複数の金融機関に申し込むのが一般的
カードローンやクレジットカードを作る場合、申し込みを複数の会社へ同時に行うと、審査に通りにくいといわれています。
しかし住宅ローンの申し込みは、複数の金融機関へ同時に行っても問題ありません。仮審査だけでなく、本審査も同様です。
住宅ローンの審査基準は金融機関により異なるため、申し込みは複数の金融機関へ同時に行いましょう。何社か審査に通過すれば、より有利な条件で借りられる会社を選べます。
ただし、あまりにも多くの会社へ同時に申し込むと、そのこと自体が審査に悪影響を及ぼしかねません。多くても3~4社程度に絞って申し込みましょう。
金利や手数料などを比較
住宅ローンを選ぶ際に、最重要視すべきポイントは金利です。実際に適用される適用金利が低いほど、月々の返済額や総返済額を抑えられます。
現在は超低金利時代に突入しているため、金利タイプは多くの人が変動金利型を選択しています。金利上昇リスクや返済プランの立てやすさなども考慮し、自分に合った金利を選ぶ必要があるでしょう。
金利と併せて重視したいのが手数料です。住宅ローンを組む際はさまざまな手数料が発生し、金額も比較的大きくなります。
手数料負担が大きくなると総支払額も多くなるため、思わぬ負担を強いられることにもなりかねません。一般的に、手数料はローンに組み込めない点にも注意しましょう。
提携ローンを使うメリット
住宅ローンの種類には、『提携ローン』と呼ばれるものがあります。提携ローンとは、購入した住宅を取り扱う不動産会社が、金融機関と提携して実施する住宅ローンです。
住宅ローンの審査では、申込者だけでなく物件の審査も行われます。提携ローンでは物件の審査が済んでいるため、通常の手続きより短期間で手間なく手続きを済ませられることがメリットです。融資も受けやすくなるでしょう。
提携ローンには、独自の優遇金利が用意されている場合もあります。ローン契約の手続きの多くを不動産会社が代行してくれるため、手続きが楽になる点も魅力です。
6. 住宅ローンの基本を知り自分に合った選択を
住宅ローンの種類は、借入先・手続きの窓口・金利タイプ・返済方法などにより分けられます。それぞれの違いを理解すれば、比較する際の重要な判断材料になります。
ローンを選ぶ際は、金利や手数料などを比較し、複数の金融機関に申し込むのがポイントです。さまざまな角度から商品を比較し、自分に合った住宅ローンを選びましょう。
変動金利・固定金利の違いとは?
特徴やメリット・デメリットを解説
住宅ローンの基本的な金利タイプで、年2回(4/1と10/1)見直しされることから変動金利と呼ばれています。
金利の急変動で利用者が困らないよう、返済額を5年間据え置く「5年ルール」や月々の返済が25%以上増えないようにする「125%ルール」を設定している金融機関も多く存在します。固定金利に変更するオプションが付帯しており、金利上昇時には固定金利に切り替えることも可能です。
| 変動金利のメリット・デメリット
メリット:銀行間の低金利競争が激しく金利水準が低いため、月々の返済額を抑えることができます。
デメリット:将来金利が上がり、月々の返済額が増えるリスクがあります。対策として、金利が低いうちにしっかり貯蓄をして万が一の金利上昇に備えると良いでしょう。
| 5年ルール・125%ルールとは?
5年ルールとは、変動金利が上がっても月々の返済額を5年間一定とするルールです。5年ルール有りの場合、最初の5年間は変わらず、6年目から返済額が増えることになります。5年ルール無しの場合、翌月や翌々月から返済額が増えます。
金利が上がっても返済はすぐには増えず、5年間は変わらないというメリットがある一方、6年目になるまでは本来より低額での返済となり、完済時に未払利息が発生する可能性がある点がデメリットとなります。
125%ルールとは、5年ルールを適用している金融機関で返済額が増える際、今までの返済額の1.25倍を上限とするルールです。例えば従来の月々の返済が10万円の場合、返済がどれだけ増えても12.5万円が上限となります。
返済額が増えても上限値があるのがメリットとなる一方、5年ルール同様に本来よりも安く返済が進むため、予定通りに残高が減らず完済時に高額返済が必要となる可能性がある点がデメリットです。
| 変動金利の推移・相場は?
変動金利はバブル崩壊以降、ほぼ一貫して低下傾向を続けてきました。しかし2024年になって日銀のゼロ金利解除により、変動金利が遂に引き上げられることとなりました。いよいよ「金利のある世界」に突入したことになります。しかしながら、依然としてネット銀行を先頭に、変動金利が顧客獲得競争の主戦場という状況は続いています。
| 固定金利とは?
文字通り金利が変わらないのが固定金利です。フラット35のような全期間固定金利のほか、5年、10年など一定期間の金利を固定する固定期間選択型もあります。
| 固定金利のメリット・デメリット
メリット:返済額が変わらない安心感があります。変動金利より金利水準は高いものの、一定期間または全期間の返済額が変わらないため、長期の返済計画や生活設計を立てやすいことが特徴です。
デメリット:金利水準が高く、返済額が多くなります。返済中に大規模な金利上昇が起こらない限り、変動金利を使った場合に比べて固定金利を使う方が多額の返済となるでしょう。また固定期間選択型の場合、6年目や11年目など固定期間が終了するタイミングで、当初固定期間よりも高い金利に切り替わることが多いこともデメリットです。
| どんな人が変動金利・固定金利に向いている?
少しでも返済額を抑えたい方やコストパフォーマンスを重視する方には変動金利がオススメです。日本銀行の金融緩和政策や住宅ローン業界の競争激化を踏まえ、モゲチェックでは変動金利は今後も低金利が続くと予想しています。
一方、固定金利は金利や返済額が変化するリスクをなくしたい方に向いています。例えば最初の10年間が子どもの教育費がかさむ時期と重なるなど、住宅ローンの返済額が増えることをどうしても避けたい方には10年固定金利がオススメです。
| 変動金利・固定金利の利用割合
変動金利を選ぶ人の割合が年々増え続け、全体のおよそ7割とほとんどの住宅ローン利用者が変動金利を選んでいます。また、固定期間選択型は2割、全期間固定型は1割であり、年々減少しています。
(出所:独立行政法人住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」より)
| モゲチェックのオススメは?
モゲチェックでは低金利政策が長期化する可能性が高いとの見通しや、住宅ローン業界で顧客獲得競争が激しくなっていることから、変動金利では安定した低金利が続くと予想しています。
迷った方はまず変動金利から検討することをオススメします。最新情報は住宅ローンランキングでチェック!