1. 子どもの教育費はどれくらいかかる?
子どもの教育費は、公立と私立で大きく異なります。特に負担が大きい大学の教育費を、早い段階から準備しておけば、資金の準備が楽になるでしょう。
進路によって教育費は大きく変わる
文部科学省では、幼稚園から大学までの各段階における、教育費の調査が実施されています。幼稚園(3歳)から大学4年生までの教育費の総額は、全て公立の場合が約800万円、全て私立なら約2,200万円です。
幼稚園から高校までの教育費には、学校教育費や授業料以外に、給食や学習塾の費用も含まれています。大学の教育費は、主に授業料と入学料の金額です。
文部科学省の調査からは、進路により教育費に大きな差が出ることが分かります。全て私立に行かせた場合、全て公立のケースに比べ、1,000万円以上高くなるのが実状です。
参考:
私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について|文部科学省
お金の準備は早いほど有利になる
一般的には、学校の段階が進むほど、教育費の負担も大きくなります。子どもの教育費全体に対し、特に大学でかかる費用負担の割合が大きいのが特徴です。
文部科学省の資料によると、大学の授業料やその他の費用の合計は、国公立で約240万円、私立は約400万円かかります。大学進学費用を貯めておくことが、教育資金の準備における大きな目標の一つとなるでしょう。
高校までの教育費を生活費から捻出すれば、大学の教育資金を貯めやすくなります。子どもが小さいほど教育費もかからないため、早い段階からの準備を意識するのがポイントです。
参考:
私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について|文部科学省
2. 段階別、統計から見る子どもの教育費は
小・中・高等学校のそれぞれについて、教育費の総額や内訳の傾向を、公立と私立に分けて解説します。文部科学省による学習費調査の数値を基に見ていきましょう。
小学校の場合
平成30年度における、小学生の保護者が負担する1年間の学習費の総額は、公立に通わせている場合は321,000円、私立だと1,599,000円です。私立に通わせる場合では、公立の約5倍の学習費をかけていることが分かります。
公立の学習費は近年横ばいであるのに対し、私立は増加傾向にあります。平成20年度に対する平成30年度の教育費の増加額は、公立が13,000円、私立が206,000円です。
学校教育費の内訳を見ると、公立では図書・学用品・実習材料費などの費用が31.2%で、最も多い割合となっています。私立で最も多くの割合を占めているのは、53.7%の授業料です。
学校外での活動費においては、公立・私立ともに、自宅学習や学習塾などの経費が最も多くなっています。公立では学習費全体の8.2%にとどまるのに対し、私立では全体の34.8%を占めているのが特徴です。
中学校の場合
中学生の保護者が負担する、1年間の学習費の総額は、公立に通わせている場合は488,000円、私立だと1,406,000円です。公立は10年前からほぼ横ばいですが、増加傾向にある私立は10年間で170,000円増えています。
公立では発生しない授業料が、私立では学校教育費の40.0%を占めていることから、学校教育費に大きな差が見られます。公立が139,000円であるのに対し、私立は7倍以上の1,071,000円です。
公立の学校外活動費を学年別に見ると、幼稚園から高校の間で、中学3年が最も多くなっています。家庭教師や学習塾など、高校受験のための出費が原因と考えられるでしょう。
参考:平成30年度子供の学習費調査 P.7~8、11|文部科学省
高等学校の場合
高校生の保護者が負担する、1年間の学習費の総額は、公立に通わせている場合は457,000円、私立では970,000円となっています。公立・私立ともに、10年前からほぼ横ばい傾向です。
公立の場合、小・中学校と違い、高等学校では授業料がかかります。学校教育費に対する授業料と学校納付金などの支出の割合が、公立は30%弱であるのに対し、私立は60%強と約2倍です。
公立・私立のどちらも、学年が上がるとともに、学習塾や家庭教師にかかる補助学習費が増えています。公立高等学校の3年時は約210,000円、私立の場合は約270,000円です。
参考:平成30年度子供の学習費調査 P.9~11|文部科学省
3. 大学や専門学校は最も大きな負担に
国公立大学・私立大学・専門学校の費用を、文部科学省のデータを基に解説します。1人暮らしの場合は、さらに費用がかかる点も押さえておきましょう。
費用は国公立と私立で大きく変わる
国立大学の入学料は282,000円、授業料の年額は535,800円です。4年間でかかる費用は、535,800×4年+282,000円=2,425,200円と計算できます。公立大学もほぼ同じ金額です。
私立大学の場合、入学金は249,985円、年間の授業料は904,146円です。毎年発生する施設設備費181,902円と合わせて計算すると、4年間での費用は4,594,177円となります。
専門学校の学費もチェックしておきましょう。入学金241,860円・授業料700,744円・施設設備費94,186円で2年間の学費を算出すると、1,831,720円となります。
参考:
私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について|文部科学省
1人暮らしはさらに費用が増す
実家から通えない大学に進学した場合、一般的には1人暮らしをすることになります。全国大学生活協同組合連合会の調査によると、親元を離れて大学生活を送る人の割合は51.3%です。
このうち、仕送りをもらっていない人の割合は7.1%に過ぎません。毎月の仕送りの平均額は72,810円です。支出合計額の平均は129,090円となっており、仕送りとの差額のほとんどは奨学金とアルバイトでまかなわれています。
このように、大学生の子どもが1人暮らしをする場合は、学費以外にも経済的な負担が大きくなります。仕送りだけでは生活できない学生が多いこともポイントです。
参考:第55回学生生活実態調査 概要報|全国大学生活協同組合連合会
4. 教育費用のおすすめの貯め方
子どもの教育費用を早いうちから貯められる方法としては、学資保険・財形貯蓄・投資の三つが挙げられます。それぞれの特徴を知り、自分に合ったものを検討しましょう。
手堅く積み重ねるなら学資保険
子どもの教育費用を貯める定番の方法が『学資保険』です。毎月一定額の保険料を支払い、進学時など節目の時期や満期時に、まとまった金額の保険金を受け取れます。
保険料が毎月自動的に引き落とされるため、自分で貯金するのが苦手な人におすすめです。契約者に万が一のことがあり支払いができなくなっても、以降の支払いが免除され、保険金も満額保障されます。
生命保険料控除を適用できる点もメリットです。支払った保険料の金額に応じて、所得税や住民税から控除されます。契約の条件によっては、払い込んだ保険料以上の保険金を受け取れるケースもあります。
職場に財形貯蓄があれば活用する
勤務先の福利厚生に『財形貯蓄』が導入されているなら、教育資金のために活用するのも一つの方法です。給料やボーナスから一定額が天引きされ、積み立てを行います。
給料やボーナスが支払われたら自分で資金を移動させる必要がなく、自動的にお金が貯まる仕組みを作れる点がメリットです。預け入れ開始から1年経過すれば、好きなタイミングで一部または全部を引き出せます。
利用目的の制限がないことから、教育費用を貯める目的でも問題なく制度を利用できます。預金保険の対象となるため、元本割れの心配もありません。
投資を検討するなら「つみたてNISA」
学資保険や財形貯蓄は手堅くお金を貯められますが、『増やす』要素はほとんどありません。貯めた資金を増やすことまで考えるなら、投資を検討するのもおすすめです。
初心者に向いている投資制度の一つに、『つみたてNISA』があります。投資額が年間400,000円までなら、最長20年間にわたり運用益が全額非課税になる制度です。最大8,000,000円を非課税で運用できます。
つみたてNISAで投資できる対象商品は、長期かつ低コストの運用に適した投資信託です。リスクを抑えつつ少額から投資できるため、投資初心者でも取り組みやすいでしょう。
5. 国の子育て・就学支援制度を活用する
高校生以下の子どもがいる家庭では、児童手当や就学支援制度を活用することで、家計の負担軽減や教育費用の貯蓄につながるでしょう。主な制度と概要を解説します。
児童手当は通算すれば大きな金額に
中学生以下の子どもがいる場合、子どもの年齢や人数に応じた『児童手当』が支給されます。一般的な支給額は、0~3歳未満なら1人あたり毎月15,000円、3歳以上中学校卒業までは毎月10,000円です。
児童手当にまったく手をつけず全額貯金すれば、合計で約200万円貯まります。国公立大学の4年間でかかる費用の大半を、児童手当だけで補える計算です。
第3子以降は中学校卒業まで15,000円支給されるため、さらに多くの教育資金を貯められます。毎月の支給額は少額でも、通算すると大きな金額になることを意識しましょう。
高等学校等就学支援金は多くの家庭が利用
子どもが高校生になったときには、『高等学校等就学支援金』を利用できる可能性があります。高等学校の教育費用の一部を、国が負担する制度です。
年収約910万円未満の世帯が対象となるため、多くの家庭が該当するでしょう。実際に、全国の約80%の生徒が、高等学校等就学支援金制度を利用しています。
令和2年4月からは、年収約590万円未満の世帯の支給上限額が引き上げられました。引き上げ後の支援額は、私立高等学校の平均授業料を勘案した水準です。
高校生等奨学給付金という制度も
生活保護世帯や住民税所得割非課税の世帯なら、『高校生等奨学給付金』の対象になります。教科書代や教材費など、授業料以外の教育費を支援する制度です。
高等学校等就学支援金との併用もできます。住民税所得割非課税世帯の年収の目安は約270万円未満です。実際に対象となる年収は、家族構成などにより異なります。
高校生等奨学給付金を利用する際は、毎年7月ごろに、学校または住んでいる都道府県へ申し込まなければなりません。手続き方法や必要書類について、早めに問い合わせておくことが大事です。
6. 教育費を借りる手段は
教育資金が足りない場合は、奨学金や教育ローンでお金を借りるのも一つの方法です。それぞれの概要や注意点を解説します。
奨学金
奨学金制度を利用すれば、進学のためにお金を貸してもらえます。代表的な奨学金である日本学生支援機構の貸与型奨学金は、大学生や専門学校生を対象とした、国が実施する制度です。
学費や生活費をまかなうために、毎月一定の金額が支給されます。奨学金の借り主は子ども本人です。無利息と利息付の2タイプがあり、どちらも卒業後に子ども本人が返済しなければなりません。
日本学生支援機構の奨学金以外にも、民間育英団体や地方公共団体の奨学金、学校独自に運営する奨学金があります。それぞれで応募基準や要件が異なるため、学校や役所に問い合わせて確認しましょう。
教育ローン
教育費用を借りる方法としては、教育ローンも挙げられます。親がローンを組んで資金を融資してもらうため、奨学金と異なりローンの返済義務者は親です。
教育ローンは、国が実施するタイプと金融機関が実施するタイプの2種類に分けられます。国の教育ローンは、世帯年収に制限が定められています。融資上限額は、子ども1人あたり原則として350万円です。
一方、金融機関の教育ローンでは、住宅ローンと同じように返済能力をチェックする審査が行われます。融資上限額も金融機関によりさまざまです。
成績に関する要件が支給額に影響する奨学金と違い、教育ローンにはそのような条件がありません。年間通していつでも申し込みできることも、教育ローンの特徴です。
どちらも借金のため返済が必要
奨学金の返済は、10年以上にわたり続くこともあります。奨学金の利用は親だけで決めず、借金を返済しなければならないことを含め、子どもとじっくり相談して決めることが重要です。
教育ローンの利用を検討する場合は、住宅ローンや老後資金への影響を考慮しましょう。無理にローンを組んでしまうと、日々の生活や老後のプランに悪影響を及ぼすことにもなりかねません。
一般的に、教育ローンは奨学金に比べて金利が高く、借りた翌月から金利が発生します。返済額が大きくなりやすい点にも注意が必要です。
7. 子どもの教育費は計画的に用意しよう
子どもの教育費は進路によって大きく変わります。子どもが小さいうちは費用が少なくて済むため、大きな負担になる大学の資金を貯めるためにも、早めに準備しておくことがポイントです。
教育費用を貯める方法としては、学資保険・財形貯蓄・投資が挙げられます。国の支援制度や奨学金の利用も視野に入れながら、後で困らないよう計画的に用意しましょう。