年収600万円で組める住宅ローン額・頭金の目安はいくら?
金融機関による住宅ローンの審査では、年収に占める年間返済額の割合(返済比率、返済負担率)が重視されます。一般的には、審査の際には3~3.5%程度の審査金利を適用して、返済比率が35%程度が借入額の上限となります。これを、年収の何倍を借り入れるかを示した年収倍率に換算すると、35年返済であれば7~8倍になります。
したがって、年収600万円で組める住宅ローン額の上限は、4,200万~4,800万円程度です。審査基準は金融機関によって異なり、また35年超の融資が可能な金融機関では、最大で年収の10倍程度までの借入が可能なこともあります。
頭金は用意しなくても購入可能ですが、物件価格の10~20%以上の頭金があると金利優遇を受けられる金融機関もあることから、10~20%を目安にする人もいます。
年収600万円の人の平均的な借入額はどのくらい?
住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」によれば、長期固定金利のフラット35の利用者は年収の6~7倍程度の住宅を購入しています。頭金の割合が平均的には10~20%であることを考慮すると、借入額は3,000万~3,800万円程度でしょう。
住宅ローンを借入可能額の上限まで借りることのリスクとは?
上記のように、一般的な金融機関の審査基準をもとに算出した借入可能額の上限と比べると、実際の借入額は1,000万円ほど少なくなっていることがわかります。これは、借入可能額の上限まで借りることがリスクになり得るからです。
金利などの条件にもよりますが、年収600万円の人が4,200万円を金利1%、借入期間35年で借りると、毎月の返済額は12万円前後になります。年収600万円の人の手取りは約460万円であるため、住宅ローン返済のみで手取り収入の30%を超えてしまうのです。
現時点では返済できたとしても、長期にわたる返済期間中には、例えば転職や病気、介護によって収入が減ったり支出が増えたりして、家計が圧迫される可能性があります。
また、変動金利で借りた場合には、金利上昇もリスクの1つです。4,200万円を35年返済で借り入れ、5年後に金利が1%上昇した場合には、毎月返済額は年間20万円以上増えてしまいます。
年収600万円の現実的な借り入れ・返済プランとは?
年収600万円の人が住宅ローンを借り入れる場合の現実的な返済プランについて、借入期間と金利タイプに応じて説明していきます。
1:借入期間で考える現実的な借り入れ・返済プラン
借入期間を長くとれれば、毎月返済額を抑えることができ、また借入金額を大きくすることができます。一方で、借入期間を短くする場合には、借入金額を少なくする必要があります。
一般的には、毎月返済額が手取り収入の25%以内であれば無理のない返済が可能で、30%を超えるとリスクが高くなります。年収600万円の場合には、毎月返済額が7.7万円のときに20%、9.6万円のときに25%、11.5万円のときに30%となります。
借入期間が20年、35年、50年の場合において、毎月返済額が手取り収入の20~30%になる借入金額は次の表のようになります。
借入期間 |
手取り収入の20%の場合 |
手取り収入の25%の場合 |
手取り収入の30%の場合 |
前提条件となる金利 |
20年 |
1,670万円 |
2,090万円 |
2,500万円 |
1.0% |
35年 |
2,730万円 |
3,400万円 |
4,080万円 |
1.0% |
50年 |
3,470万円 |
4,330万円 |
5,190万円 |
1.2% |
多くの金融機関では80歳までに完済することが求められるため、借入期間の上限は年齢によって異なります。また、退職後の返済プランも考慮して借入期間を検討しましょう。
2:金利タイプで考える現実的な借り入れ・返済プラン
住宅ローンの金利タイプには変動金利と固定金利があり、固定金利には全期間固定金利と、3年・5年・10年といった期間固定特約があります。変動金利は金利変動のリスクがありますが、当初の金利で比較すると固定金利よりも低金利です。
借入期間を35年間であるときに、変動金利と固定金利のそれぞれで、毎月返済額が手取り収入の20~30%になる借入額を計算したのが次の表です。
金利プラン |
手取り収入の20%の場合 |
手取り収入の25%の場合 |
手取り収入の30%の場合 |
前提条件となる金利 |
変動金利 |
2,870万円 |
3,580万円 |
4,290万円 |
0.7% |
10年固定金利 |
2,510万円 |
3,140万円 |
3,760万円 |
1.5% |
全期間固定金利 |
2,290万円 |
2,850万円 |
3,420万円 |
2.1% |
毎月返済額が同じであれば、金利が低い変動金利のほうが借入額を増やすことができます。しかし、変動金利や、期間固定特約の特約期間終了後は金利が変動していきます。これらを利用する際には、金利上昇時にも無理なく返済が続けられるような事前準備が望ましいでしょう。
住宅ローンの借入額を決めるときの注意点・ポイント
住宅ローンの借入額を決める際には、以下のポイントに注意しましょう。
借入期間は長くとる
住宅ローン借入期間は借入可能額と密接な関係があります。借入期間が短いと毎月返済額が増加し、返済比率が高くなりすぎると審査に落ちる原因になってしまいます。また、返済が始まってからは、収入の減少や支出の増加に見舞われても、借入期間を延ばすことは原則的にはできません。
一方で、借入後も繰上返済をすれば完済までの期間を短縮することができます。返済不能に陥るリスクを減らすためにも、借りるときには借入期間をなるべく長くとることを基本に考えましょう。
管理費・修繕積立金・固定資産税などの支出を考慮する
住宅を購入すると、毎月の住宅ローン返済の他にも固定資産税などの税金や火災保険料・地震保険料、設備の修繕などといった費用がかかります。
集合住宅の場合には、管理費や修繕積立金、利用する場合には駐車場・駐輪場の利用料の支払いも必要です。また、戸建て住宅の場合には、外壁・屋根の修繕には100万円以上のまとまった費用が生じます。これらの維持費についても考慮した計画を立てる必要があります。
教育資金・老後資金を考慮する
住宅資金・教育資金・老後資金は人生の三大支出と言われます。住宅購入者の多くを占める30~40代の人は、教育資金や老後資金も将来を見据えて準備していく必要があります。
住宅ローンの借入額を検討する際には、教育資金や老後資金を十分に確保できるかどうかも必ず考慮して、長期的な視点で計画を立てましょう。
頭金を入れすぎない
住宅購入時に頭金を入れる人は多いのですが、近年は頭金なしでも住宅ローンを組めるようになっています。頭金を入れると金利が低くなる場合もありますが、手元資金が減ってしまうことと、借入額が減ることにより団体信用生命保険(団信)の保障額が減るというデメリットもあります。頭金を入れないと希望する物件を購入できないときを除けば、頭金を入れる必要はありません。
変動金利なら金利上昇に備える
変動金利は当初の金利が低い一方で、返済中に金利が変動するリスクを負うことになります。近年は歴史的な低金利局面であることから、将来、金利が上昇して返済負担が増加したときに備えて貯蓄をしておく必要があります。
他にも、一般的には好景気が金利上昇の要因になり、好景気のときには企業業績が拡大して株価が上昇するため、投資によって資産形成を進めておく方法も考慮しましょう。
住宅ローンの借入によくあるQ&A
Q.借りられる額が希望より少なかったらどうしたらいい?
住宅ローンで希望する金額が借りられない場合には、共働きであれば収入を合算して住宅ローンを組むペアローンや連帯債務、収入合算の利用を検討しましょう。ただし、これは将来も共働きを継続する前提の選択肢です。それが難しい場合には、頭金を入れて借入額を減らすか、物件購入予算を減らすことを検討しましょう。
◆参考◆住宅ローンを夫婦で組む方法とは?条件やメリット・デメリットについて解説
Q.頭金なしでもローンを組むことはできる?
現在はほとんどの金融機関で、頭金なしでも住宅ローンを組むことができます。頭金を入れるほうが金利が低くなる金融機関もありますが、前述したように頭金を入れることには手元資金の減少や団信の保障額の減少といったデメリットもありますので、頭金をいくら用意するかは慎重に検討しましょう。
Q.住宅ローンを組むときに使える税制度はある?
10年以上の住宅ローンを組んで一定の条件の住宅を購入した場合には、所得税・住民税の一部の還付を受けられる住宅ローン控除(住宅ローン減税)を利用することができます。2025年時点では、最大で年間35万円の控除を13年間にわたって受けることができます。
住宅ローン控除の要件はしばしば変わるため、最新情報を確認しておきましょう。
◆参考◆【2025年最新】住宅ローン控除はいつまで受けられる?期間や終了後についても解説
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まとめ
35年の住宅ローンを組める年齢であれば、一般的に年収の7~8倍までの借り入れを行うことができます。年収600万円の人であれば、4,200万~4,800万円の借り入れは可能です。
しかし借入可能額の上限と、余裕を持って返済できる借入額は異なります。金利と借入期間によって異なりますが、毎月返済額を手取り収入の25%程度までに抑えるには、3,000万円台中盤までの借り入れにとどめる必要があります。
また、住宅ローンの借入額は、住宅関連の他の支出や、教育資金・老後資金の準備までを総合的に考慮して決めることが重要です。