1.火災保険の基礎知識
火災保険について詳しく理解するために、まずは基礎知識を押さえることが大切です。火災保険で補償されるものや、代理店型とダイレクト型の違いなどを確認します。
火災保険は建物と家財に関する保険
損害保険の一種である火災保険は、一戸建て・マンション・ビルなどの『建物』と、建物の中にある『家財』が補償の対象です。その名の通り、火災のときはもちろん、風水害や盗難に遭った場合でも補償されます。
ただし補償範囲は商品によって異なるため、契約前に確認しておかなければいけません。地域ごとにリスクの異なる災害もあるため、適切に補償される保険を契約することが大切です。
被害を受けたときには損害額を保険金として受け取れます。ただし、あらかじめ定めた保険金額が上限です。
住宅ローンの融資条件になる
住宅ローンの融資を受けるには、火災保険への加入が条件になっているケースがほとんどです。仮に火災保険に加入せずにローンで一戸建てを購入したとします。
このとき火災で家が消失してしまえば、住宅を失ったにもかかわらず返済し続けなければいけません。新たな住宅を取得するための資金も用意しなければならず、家計は苦しい状態に追い込まれます。
火災保険があれば、このような状態を回避可能です。
代理店型とダイレクト型の違い
火災保険は、契約の仕方によって『代理店型』と『ダイレクト型』に分類できます。代理店型は金融機関や不動産会社など、保険会社以外の窓口で契約するタイプです。
住宅ローンの契約時に金融機関で紹介される火災保険も、代理店型に分類されます。代理店型は複数の保険を同時に比較でき、手厚いサポートも受けられるものの、保険料は高くなりがちです。
一方ダイレクト型は、保険会社と直接契約するタイプの火災保険です。インターネットで申込から契約まで完了するタイプもあり、手軽に加入できます。
保険料は比較的安い商品が多いですが、サポートはあまり充実していません。
2.火災保険加入が不可欠な理由
『失火責任法』という法律があることも、火災保険への加入が必要な理由です。失火責任法の概要をチェックしましょう。
失火責任法により火災の補償は自己責任
過失により火災が起きた場合、自宅が火元で近隣に被害が及んだとしても、損害賠償責任を負いません。つまり失火責任法では、たとえ近隣で起きた火事が原因で自宅に被害が及んでも、それを直すのは自分の責任と定めています。
そこで火事が起こっても修復できるよう、それぞれの家庭で火災保険へ加入します。どこが火元であっても、火事で受けた被害は、自分で加入している保険を使うのが原則です。
たとえ自宅で火事に気をつけていたとしても、近隣で火事が起こる可能性はゼロとはいえません。火災保険に入っていれば、家が全焼したとしても、保険で建て直せます。
失火責任法とは
失火責任法は明治32年に定められた古い法律です。当時の住宅は木造ばかりで長屋も多く、1軒で火事が起こると広い範囲に燃え広がっていました。
そのため火元の住人に損害賠償責任を請求しても、莫大な請求額を払いきれないケースがほとんどだったそうです。そこで重大な過失がなければ、損害賠償責任は負わなくてよいという決まりができました。
重大な過失があれば損害賠償請求の対象に
不注意で起こった火事の場合、火元の住民に損害賠償請求はできません。しかし重大な過失がある場合には別です。例えば、寝たばこや揚げ物中に目を離した隙の引火などが挙げられます。
また何を重大な過失とみなすかは、ケースバイケースです。軽度な過失であっても、火事を起こすのが2度目といった場合には、重大な過失とみなされることもあります。
このようなケースでは、損害賠償請求で修理や建て直し費用を請求可能です。
3.火災保険で補償される損害
火災保険には『保険の対象』が定められており、対象が指定されている災害や盗難などで損害を受けたときに、保険金を受け取り可能です。補償される損害を具体的に確認します。
保険による補償対象
万が一のときに火災保険で補償を受けられるのは『保険の対象』として定められているものです。保険の対象には『建物』と『家財』があります。
建物は建物本体だけでなく、門・塀・車庫など建物とセットとして扱われ移動できないものも含まれます。家財は建物の中にあって動かせるものです。家具・家電・衣類などの日用品を指します。
保険の対象は建物のみ・家財のみ・建物と家財という組み合わせで契約可能です。建物のみとすると家財への被害は補償されず、家財のみなら建物の被害は補償されません。
どちらも補償を受けるには、建物と家財の両方に対して火災保険を契約します。
火災をはじめとする対象の災害による被害
保険の対象が被害を受けたとしても、定められている災害による被害でなければ火災保険の補償は受けられません。火災・落雷・風災・水災などの自然災害や、盗難といった突発的な事故が代表的です。
幅広い補償範囲が設定されていますが、契約プランによって対象の災害は異なります。加入する火災保険の補償範囲をよく確認しておくことが大切です。
地震保険は追加が必要
さまざまな災害が補償範囲に含まれる火災保険ですが、地震は対象外です。地震の被害に対策するには、火災保険に『地震保険』を付帯します。地震保険は火災保険とセットでなければ契約できません。
地震保険に加入していれば、地震・噴火・地震によって起こった津波などの被害も補償の対象です。運営に国が関わる火災保険は、公共性の高さが特徴といえます。
大規模な地震により保険会社が補償しきれないときには、保険会社に代わり国が保険金を支払う仕組みです。
4.保険料に影響を与えるもの
同じ火災保険を選んだとしても、保険料はさまざまな要素により異なります。代表的なのは建物の構造や設定する保険金額などです。保険料に影響する要素を確認し、適切な料金で契約しましょう。
建物の構造級別
火災に備える火災保険では、建物の燃えやすさによって『構造級別』を設定し分類しています。住宅の構造級別は下記の3種類です。
- M構造:マンションといったコンクリート造の共同住宅
- T構造:コンクリート造の戸建住宅・鉄骨造の戸建住宅・省令準耐火建物に当てはまるツーバイフォー住宅
- H構造:木造の共同住宅・戸建住宅
M構造は最も燃えにくく、T構造・H構造の順で燃えにくさは低下します。燃えにくく火災のリスクが低ければ、その分保険料も低くなる仕組みです。
保険金額
『保険金額』をいくらに設定するかという点も、保険料に影響します。保険金額は建物や家財の再調達にかかる金額と同額に設定するのが一般的です。
保険料を安くしたいからと、再調達にかかる費用に満たない保険金額に設定すると、いざというときに修復や再建ができない可能性があります。契約することは可能ですが、リスクがある点に注意しましょう。
また補償を充実させるために保険金額を高く設定すると、その分保険料は高額になります。
その他の要素
ほかにも保険料を左右する要素は複数あります。例えば『床面積』は広ければ広いほど保険料が高く設定される仕組みです。また『築年数』が古いほど火災の被害が大きくなりやすいため、保険料が高くなります。
『所在地』も保険料に影響する要素です。場所によって災害の起こりやすさは異なるため、リスクが高い地域は保険料も高く設定されています。
また『契約期間』によっても保険料は異なるものです。契約期間は1~10年のうち任意で選びますが、期間が長いほど割引が大きくなり割安の保険料になります。
5.火災保険の選び方
実際に火災保険を選ぶときには、保険料はもちろん補償内容や災害リスクを考慮した上で決定するのがよいでしょう。よく検討し選ぶことで、自宅に最適の火災保険を契約できます。
保険料はいくらか
火災保険の保険料は長い期間払い続けるものです。1カ月の差は1,000円だとしても、10年たてば12万円の違いになります。同等の補償内容であれば、できるだけ安いプランを探すことで節約が可能です。
1社だけで決めるのではなく、複数の保険会社に見積りを依頼して、保険料を比較しましょう。また保険金額をいくらに設定するかによっても保険料は変わります。
建物は再調達価額で設定し、家財は必要な補償額をよく検討して設定することが大切です。保険金額を高く設定し過ぎても、実際に支払われるのは損害額が上限と決まっています。
必要以上の金額で設定すると、その分無駄な保険料の支払いにつながるため注意しましょう。
補償内容は十分か
保険料の安さを重視して契約すると、補償が不十分な火災保険を契約してしまうかもしれません。補償の対象とするのは建物のみで十分と考える人もいるでしょう。
しかし火災で大きな被害を受けたときには、建物だけでなく家財の大半も被害を受けているはずです。個別に購入する分にはそれほど大きな金額でなくても、全てまとめて購入するとなると、大きな支出になります。
このようなとき、家財保険があれば買い替えの費用も保険でカバー可能です。家族にとって十分な補償が受けられる内容になっているか、よく検討しましょう。
また対象となる災害の範囲も確認します。自動車の衝突を補償する内容もありますが、道路に面していなければ不要かもしれません。
所在地の災害リスクに合っているか
リスクの高い災害は、住宅の所在地によって異なります。災害リスクを考慮して補償の範囲を決めると、ぴったりのプランで契約できます。
国土交通省や各自治体が公開しているハザードマップを参考にすると、どの補償が必要か分かりやすいでしょう。水災が発生しやすいなら水災の補償を付ける、というように対策が可能です。
過剰な補償で余計な保険料を払うことも、必要な補償がなく万が一のときに役立たないことも避けられます。
6.戸建て・マンションの違いで注意したいこと
戸建てとマンションによって異なる注意点もあります。戸建てであれば周辺環境の影響を受けやすく、マンションであれば専有部分・共用部分の区別がポイントです。
戸建ての場合
建物全体が補償の対象となる戸建て住宅は、同じ価格のマンションと比較して保険料が高くなりやすい傾向があります。全てが自分の所有のため、専有面積が広くなりやすいからです。
また周辺環境に合わせた補償をプラスすると、リスクに備えられます。河川の近くであれば、氾濫によって浸水したり流されたりする可能性があるため、水災の補償が役立つでしょう。
また人通りの少ない場所に住宅があるなら、盗難のリスクが高いかもしれません。盗難補償があれば被害を受けたときに備えられます。
マンションの場合
マンションを購入し火災保険に加入するときには、専有部分と共用部分の違いに注意しましょう。専有部分は住人が住む室内のことです。
共用部分は住人が共同で使用する場所です。エントランス・エレベーター・階段・廊下などのほか、バルコニーも共用部分に分類されます。
住人全員が使用する共用部分は、マンションの管理組合が一括で火災保険に加入するのが一般的です。個々の住人は、それぞれが住む専有部分の火災保険へ加入します。
7.おすすめの火災保険
火災保険の選び方を把握したら、実際にどのような商品があるのか見てみましょう。数ある商品の中から、特におすすめの4種類を紹介します。
ソニー損保「新ネット火災保険」
『新ネット火災保険』の基本補償は、建物に対する火災・落雷・破裂・爆発のみです。風災・雹災・雪災や、水災・水ぬれ・盗難の建物への補償や、家財に対する全ての補償は任意で設定します。
自宅の立地や家財などに合わせたプランで契約できるため、保険料の無駄がありません。災害による被害に対する補償のほか、賠償事故に対する補償の特約も付けられます。
類焼損害・失火見舞費用補償特約を付けていれば、自宅で起こした火事が近隣に燃え移ったときの損害を補償できます。賠償責任は発生しませんが、補償によって関係を維持しやすくなる特約です。
火災保険・地震保険|ソニー損保の新ネット火災保険【公式サイト】
日新火災「住自在(すまいの保険)」
保険料を節約したいなら『住自在(すまいの保険)』も向いています。基本補償に必要な補償をプラスして、自宅に合うプランを作成しましょう。
加えて保険金受取時の自己負担額を変更することでも、保険料を下げられます。例えば自己負担額0円を10万円に変更するだけで、10年分の保険料がおよそ1万2,000円安くなります。
また『すまいのサポート24』も利用可能です。水回り・玄関かぎ・エアコン・給湯器のトラブルと、ハチの巣の調査・駆除を無料で依頼できます。
万が一の補償はもちろん、日常の『困った』にも対応してもらえる保険です。
住宅ローン用火災保険 住自在Web-公式サイト | 日新火災海上保険株式会社
SBI損害保険「SBI損保の火災保険」
特徴的な割引制度を用意しているのは『SBI損保の火災保険』です。同居の家族に喫煙者がいない場合に適用される『ノンスモーカー割引』や、オール電化の住宅に適用される『オール電化住宅割引』があります。
ほかに築年数の浅い物件に向けた『新築割引』もあるため、条件次第では大きな割引を受けられるかもしれません。また補償範囲を選択できるのはもちろん、費用保険も自由に選べます。
例えば、住宅が火災で焼失しても、近くの親類を頼れるため臨時宿泊や仮住まいの必要はないという人もいるでしょう。そのような場合には、費用保険を付けずに契約できます。
東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」
『トータルアシスト住まいの保険』の特徴は、3種類のプランから自宅に合ったタイプを選べる点です。充実の補償で備えるなら『充実タイプ』を、自然災害中心に備えるなら『スタンダードタイプ』を選びましょう。
水災の心配が少ないマンションであれば『マンション向けタイプ』もあります。必要な補償がプランごとにセットになっているため、選びやすいのもポイントです。
大手ならではの体制も魅力といえます。1万人以上のサービススタッフが在籍しており、事故発生時の対応がスムーズです。大きな災害により被害を受けたときにも、スピーディーな対応が期待できます。
トータルアシスト住まいの保険(火災保険) | 東京海上日動火災保険
8.火災保険は複数社の見積りを比較しよう
火災保険はたくさんの保険会社が提供しています。どれを選べばよいか分からないときには、見積りを取って比較するのがおすすめです。
自宅の立地や家族構成を考慮し、適切な補償範囲や補償対象を設定した上で、料金を比較します。同等の補償内容で比較し、保険料の安い商品を選ぶとよいでしょう。
災害の被害を受けたときに、建物の再建や補修、家財の買い替えに役立つ保険です。適切な補償内容で契約すれば、無駄のない保険料で十分な安心を得られます。
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